スティーヴン・ウィルソンSteven Wilson ベスト・アルバム 「TRANSIENCE」
ソロ名義ベスト・アルバムの登場~それは美しかった
<Progressive Rock>
Steven Wilson 「TRANSIENCE」
K Scope / Germ / KSCOPE411 / 2016
私にとっては、今やプログレ・ロック界の最も期待の人はスティーヴン・ウィルソンだ。
近作は『HAND.CANNOT.ERACE』(2015)、『4 1/2』(2016)の2作で、ここで既に取りあげたのであったが、今ニュー・アルバムというのはちょっと早い(目下は構想をねっているはずだが)のであるが・・・。
しかし嬉しいことに、ここに彼のベスト盤がリリースされたのだ。それは 2015年にアナログ盤のみでリリースされた『TRANSIENCE』のCD盤。
彼のバンドの「ポーキュパイン・トゥリー」ものでなく、ソロ名義のほうの3アルバムからのベスト盤。その中の数曲は、2016年最新リマスターを施されていて、そこにボーナストラックを追加収録したものだ。
日本盤は高音質のK2HD+HQCD仕様だが、私はまあそこまでは期待しないで一般標準CD盤(ドイツ盤~1000円以下で手に入るので)でお茶を濁している。
基本的に歌モノの寄せ集め集である。
(Tracklist)
1. Transience (Single Version) (3:10)
2. Harmony Korine (2016 Remaster) (5:07)
3. Postcard (4:28)
4. Significant Other (2016 Remaster) (4:31)
5. Insurgentes (2016 Remaster) (3:55)
6. The Pin Drop (5:01)
7. Happy Returns (Edit) (5:11)
8. Deform To Form A Star (Edit) (5:53)
9. Happiness III (4:31)
10. Thank You (4:39)
11. Index (4:47)
12. Hand Cannot Erase (4:13)
13. Lazarus (2015 re-recording) (3:57)
14. Drive Home (7:33)
このアルバム自体は、ベスト盤という性質からみて多くは期待するところに無いが、全体に選曲内容は、(プログレッシブなアプローチの下に、ヘビーでメタリックなサウンドも得意としているスティーヴンであるが)殆ど静かな叙情的な世界を歌い上げる曲集というところ。その為なかなか美しいアルバムに仕上がっている。こうして聴くと、こんなに優しかったのか?と思うところであったが、とにかくちょっと暇つぶしには良い。
* * * *
今回はそんな訳で、スティーヴン・ウィルソンの歩んできた歴史にスポットを当ててみると・・・・
1967年、英国ヘメル・ヘムステッド出身。幼いときに父親の聴くPink Floydの『狂気』に感動、ミュージックというものに興味を持つようになったという。
■バンド活動
80年代には、Porcupine Tree(→)そしてNo-Manというプロジェクトを始動。当初Porcupine Treeはスティーヴンのソロ・プロジェクトであったが、93年以降はバンド形態となり、3rdアルバム『The Sky Moves Sideways』からは完全なバンドとなった。そして計10枚のスタジオ・アルバムをリリースしてくれて(下記)、プログレッシブ・ロックの再興を企ててくれた。それはサイケデリックと言われたり、プログレ・メタルとも言われたが、フロイド、イエス、クリムゾンの英国御三家では、私にとっては嬉しいことに、ピンク・フロイドに最も近い世界を構築した。このあたりはこのブロクでも何回と取りあげてきたので見て欲しい。
(参照:当ブログ・カテゴリー「ポーキュパイン・トゥリー」)
彼は2008年にソロ名義のバンドでアルバムをリリースするようになり、このバンドPorcupine Treeは、2010年に活動休止状態至っているが、15年の経過の中でいくつもの傑作を世に送り出した。
①On the Sunday of Life... (1992)
②Up the Downstair (1993)
③The Sky Moves Sideways (1995)
④Signify (1996)
⑤Stupid Dream (1999)
⑥Lightbulb Sun (2000)
⑦In Absentia (2002)
⑧Deadwing (2005)
⑨Fear of a Blank Planet (2007)
⑩The Incident (2009)
* * *
■目下のソロ活動
2008年には、ミュージシャンとしての一つの転機であったのか、初のソロ名義作品『インサージェンス』を発表。その後既に5枚のスタジオ・アルバムをリリースし、キング・クリムゾンばりのハードにしてメタリックな世界も作り上げている。
(参照:当ブログ・カテゴリー「スティーヴン・ウィルソン」 )
一方、彼のエンジニアとしての手腕も高く買われているところが興味ある重要なポイント。
プログレ系の大御所King CrimsonやEmerson, Lake & Palmerの過去の名盤の再発に当たっては、彼による最新リミックスが施され、高評価を得ている。
彼のサウンドへの拘りはPorcupine Treeのアルバムでも生きていて、2007年発表の『フィアー・オブ・ア・ブランク・プラネット』や、2009年の『ジ・インシデント』、それに加えソロ第2弾の2011年『グレイス・フォー・ドロウニング』などでは、米グラミー賞の”ベスト・サラウンド・サウンド・アルバム”としてノミネートされるに至っている。
<スティーヴン・ウィルソン-ソロ・スタジオ・アルバム>
①Insurgentes (2008年)
②Grace for Drowning (2011年)
③The Raven that Refused to Sing (And Other Stories) (2013年)
④Cover Version (2014年)
⑤Hand. Cannot. Erase (2015年)
⑥4 1/2 (2016年)
(直近ソロ・バンド・メンバー)
Steven Wilson(ボーカル、ギター、キーボード、メロトロン、ベース・ギター、バンジョ)
Guthrie Govan(ギター)、
Nick Beggs(ベース・ギター)、
Adam Holzman(キーボード、ハモンド、ムーグ・シンセ)、
Marco Minnemann(ドラム)
(試聴)
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コメント
現在のプログレ界はスティーヴン・ウィルソンを中心に回っているようで、次回作発表の間にもかかわらず、こうして彼のアルバムが発表されることに感嘆を覚えます。
彼のことですから、それなりの水準を保っているのでしょうね。早速、購入予定にしたいと思います。
投稿: プロフェッサー・ケイ | 2016年10月18日 (火) 22時17分
プロフェッサー・ケイさん、コメント有り難うございます。
スティーヴン・ウィルソンは、私の感覚では第Ⅲ期プログレとして受け止めていますが、今や彼なしには考えられないところですね。エンジニアとしてもクリムゾンに気に入られているところが、彼の現代性を証明しているのでしょう。
益々頑張って欲しいです。
しかしポーキュパイン・トゥリーはどうなってしまうのですかね。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2016年10月19日 (水) 07時44分
トラックバックありがとうございました。今頃になってこのアルバムを取り上げるとは、我ながら流行遅れとは思っています。
それでも、やはり昨年聞いた中では印象に残っているので、取り上げました。今後ともご教示をお願いいたします。
投稿: プロフェッサー・ケイ | 2017年2月 3日 (金) 23時43分
プロフェッサー・ケイさん、こちらまで有り難うございます。
なかなか、世間ではスティーヴン・ウィルソンは(私にとってはメジャーなんですが)、語ってくれる人も少なく、プログレ界(今、こんなことを言っても通じるかどうか)もオールド・パワーに頼りっぱなし・・・つまりプログレは過去のものになっていて、とにかく今や彼の健闘に期待に期待をしています(笑い)。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年2月 4日 (土) 10時42分