ケニー・ドリュー・トリオKenny Drew Trio 回顧「Impressins パリ北駅着、印象」他
1961年パリに、自分の発見とユーロ・ジャズへの寄与
~黒人ピアニストの悲哀と新天地での開花~
ちょっと秋の感傷で、諸々回顧をしているところです。近年はユーロ・ジャズの隆盛で、どちらかと言うとそれにはまっている私ですが、そんなことも考えつつちょっと懐かしの30年前のアルバムを聴いているんです。登場するはケニー・ドリュー、彼の欧州から受けた印象と、彼のピアノ・トリオのユーロ・ジャズへ及ぼした影響などに思いを馳せているんです。
ケニー・ドリューは1928年NY生まれで、クラシックを学んだジャズ・ピアニスト。そしてチャーリー・パーカーの影響を受け、所謂ビーバップ・ジャズに傾倒。そして1950年代後半には自己のトリオを結成。しかし当時の社会はなかな彼らのような黒人を受け入れる環境は表向きとは変わって厳しく、人種差別の問題からの解放に望みを託し、つまるところヨーロッパに流れる事も多かった。ドリューもそうした流れの例外で無く、1961年パリに彼は降り立ったのだ。そしてアメリカの世界と異なった人間的暖かさの世界を感じつつ、1964年にデンマークのコペンハーゲンを活動の拠点とし第二のミュージシャンとしての人生を始めた訳だ。(1993年満64歳没)
<Jazz>
KENNY DREW TRIO 「Impressions パリ北駅着、印象」
Alfa Music / JPN / ALCB-9501 / 1988
Recorded Aug. 1, 2 & 3. 1988 at Easy Sound Studio, Copenhagen
Kenny Drew : piano
Niels-Henning Ørsted Pedersen : bass
Alvin Queen : drums
このアルバムは、ケニー・ドリューがヨーロッパの地に完全に住み着き、ヨーロッパの女性を妻とし音楽活動に華を咲かせるのだったが(遅咲きの名ピアニストと言われるところ)、その当時を思い起こしての印象を綴ったアルバムなのだ。
盟友のベーシスト、ニールス・ペデルセンNiels Pedersenと出会って、黒人のジャズを差別無く愛してくれる欧州の聴衆との出会いが相乗効果となり、ドリューの心には演奏にも変化をもたらす生きがいが生まれたのであろう。そしてこのアルバムはそれから20年以上経ってのこの時彼は60歳。
そんなことからか、このアルバムの10曲を右にみるが、彼のオリジナル曲4曲と、彼のトリオのベースのペンデルセンが1曲と、単なるスタンダード曲集と異なるところも聴きどころ。
特にオリジナル曲のM1.”Impressions”が彼の心を描いている。哀愁と美しさが満ちているし、中盤はジャズのスウィングする醍醐味も備えている。
そしてM2、M3の2曲では、魅力あるこの地の明るい表現が伝わってくる。
その後には、シャンソンの”枯葉”を登場させて愛するパリを表現している。
ここに彼の再々スタートのアルバムは、叙情詩的な趣をみせながらも、ジャズの楽しさをも描いたものとなった。
<Jazz>
KENNY DREW TRIO 「Recollection 欧州紀行」
Alfa Music / JPN / ALCB-9502 / 1989
Recorded May. 14 & 15. 1989 at Easy Sound Studio, Copenhagen
Kenny Drew : piano
Niels-Henning Ørsted Pedersen : bass
Alvin Queen : drums
さて、こちらはアルバム「Impressions」の翌年に発表された続編的アルバムだ。(日本タイトルは「欧州紀行」となっているが「回想」とか「追想」と訳すべきでしょうね。リスト→)
こちらは、やはり過去への回想、特に欧州がテーマであろうが、そこには彼がアメリカという地では為しえなかったジャズ・ピアニストとしての満足感が、このヨーロッパで得られたことの喜びに満ちたアルバムになっている。
それは極めて明快で解りやすい華々しい演奏にみられるところだ。このアルバムにはやはりドリューの本質的なところである叙情的な面を見せながらも、躍動感、疾走感のあるダイナミックでメリハリのあるピアノ・トリオが展開される。M2”シェルブールの雨傘”にみる哀愁感と軽快感の異なるタイプをミックスしての演奏は他のピアニストの演奏とは異なるところが聴けるのである。
又M7,”サマー・ノーズ”なんかは如何にも追想している心が伝わってくる。
ケニー・ドリューの影と華に秋の夜長を迎えて思いを馳せてみた。
(試聴)
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