ピンク・フロイドPINK FLOYD ボックス・セット 「THE EARLY YEARS 1965-1972」~その2
シドのサイケデリック時代の回顧とプログレへの道の歩み
PINK FLOYD 「THE EARLY YEARS 1965-1972」
Columbia/Legacy / U.S.A. / 88985361952 / 2016
「1965-1972」ボッス・セットの考察2回目である。これは確かに充実度は高い。しかしかなりマニアックと言えマニアックで、ここまでの要求は、フロイド病でなければ・・・・?と、いったところでしょうかね。とにかく座右に置いて何時でも視聴したいというより、ここにあるぞといったところに満足するタイプのものだ。
1967(若き学生時代からの4人ロジャ-、シド、リック、ニック)
↓
(1968 ギルモア加入5人体制)
↓
(1969 シド脱退4人体制へ)
「1965-1972」ボッス・セットは全7巻のセット構成だが・・・・
■ ピンク・フロイド始動初期の第一巻(1965-1967年もの)
(CD2,DVD1,Blu-ray1)
<CD1>には「ザ・ピンク・フロイド」と名乗っての、シド・バレットの活動性の高い時の音源だ。
特に注目は、バンドとしての最も古いものが納まっていて、それは1965年の6人体制ものだ(バレット、ウォーターズ、メイスン、ライトに加えてボブ・クローズ、既に離れたはずのジュリエット・ゲイルのヴォーカルも聴ける)。この頃はブルース基調のいわゆるロック・サウンドと言われるとおりで、まだサイケデリックというところにはない。この時のもの6曲収納されているが昨年まで公に聴かれなかったもので、マニアには貴重品と言えるもの(参照:下の1~6)である。これはデッカ・スタジオ収録だが、多分初めてのレコーディングと思われる。私は初めて今回聴いたが、学生バンドらしい若々しいもので、バレットと思われるヴォーカルは結構味がある。
続いて、1966年から67年の曲群の登場。本来のバレット、ウォーターズ、メイスン、ライトの4人体制になってからのもので、放送禁止になった経過のある”Arnold Layne”始め、良く聴いた懐かしの数々が登場する。今まで初期フロイドものと言うのは一般的にはこの時からの曲であった(7~16)。
<CD2>には、ライブ音源が収録されている。この1967年STOCKHOLMライブはヴォーカル抜きの収録もの。ここにウォーターズの”Set the controls for the heart of the sun”が既に異色を放ち始めている。これがアルバム『神秘』への流れの開始であったのだ。”Reaction in G”、”Scream the last scream”などの未発表テイクも聴ける。
更に、初お目見えの約30分の映像作品の為のサウンドトラックとして収録されたスタジオ・ライブ・セッションもの(’67年)。これは未公開もので、今回初の正規リリース。
DVD、Blu-ray収録映像には、シド・バレットと言うと難しい顔つき画像が多いのだが、ここでは意外に明るい表情の映像で結構画質も良好で問題なく見れるモノが多くあることだ。勿論ピンク・フロイドのメンバーとしてだが、彼らの学生ムードの残っている初期の映像から始まって、当時の4人体制の息の合った姿がみれる。この頃の4人は実に未来に夢のある若者グループというイメージそのものだ。
そして1967年からのUFOクラブのサイケデリックな彼らの姿が堪能できる。50年前のロンドンのアンダー・グラウンドの姿を見るという意味でも貴重。
■ 第2巻 1968年ギルモア加入から5人体制そしてバレット脱退
~リーダーは、シド・バレットからロジャー・ウォーターズに
(CD1,DVD1,Blu-ray1)
ここでは、シドの抜けた後のウォーターズの奮戦がピンク・フロイドの歴史としては最も重要であるのだが、その姿が後の世界的なバンドに成長する芽生えとして見ることが出来て楽しい。
シド・バレットの不完全状態から脱退までの不安定状態の補充としてウォーターズが引っ張り込んだフレッシュなギルモアを加えての5人体制が姿を現すが、これもつかの間で、結局シド抜きの4人体制となる。
<CD> シドに変わってウォーターズが作曲するようになり”Julia Dream”(後に「RELICS」に収録)の美しい曲が登場する。
又未発表曲の”Song1”、”Roger's Boogie”が納められていて初聴きだ、これは貴重もの。
1968年BBC Raio Sessionものとして、彼らの当時の代表的曲となる異様であり美しい曲”Murderotic Woman”(後の”Careful with that axe, eugene”)、”The massed gadgets of hercules”(後の”神秘A Saucerful of secrets”)も登場。更に彼らにとっての当時大事な曲”Embryo”(ウォーターズ作詩作曲、1983年「WORKS」で陽の目を見るも、回収騒ぎとなったもの)も聴ける。こうして如何にもピンク・フロイドだと味わえる時を迎えるのだ。ここから世界を駆け上がる。
アルバム『神秘A Saucerful of secrets』リリース期でロジャー・ウォーターズ主導により、コズミック・サイケデリック・サウンドを強調している。又ここでは曲”太陽讃歌”、”神秘”がメインだが、ロジャー・ウォーターズの”Corporal Clegg”の反戦歌の登場に注目しなければいけない。又曲”神秘”も実は戦争に纏わるもので戦争・戦後の風景を描いている(4パートに別れる小組曲で後の曲作りの原点)、これから彼のこの”反戦世界”が延々と今日まで続くのである。
この第2巻の1968年の映像ものは価値が高い。ウォーターズのマスコミ嫌いは有名だが、まだ当時は彼らも売り出しに躍起になっていたんでしょうね、多数のライブ、テレビ映像があって、それらが良好映像で納められていて楽しめる。(この後の世界的ロッカーになっての”Atom heart mother”、”Echoes”などはプロ・ショットが激減するのだ)~このボックス・セット企画の映像ものの最も価値あるところである。
ここでライブは、ウォーターズの”Set The Control for The Heart Of The Sun”が彼らの演奏の中心となり、又”Interstellar Overdrive”のウォーターズ流に演奏の変化が出てきており("Pop68",Rome, Italy, 06 MAY1968)その迫力が凄い。
(この企画考察は、どうもまだ続きます・・・・・・・)
(参考視聴)
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コメント
いや、素晴らしいですね。文章を読んだだけでも思わず視聴したくなってしまいます。突然お邪魔して申し訳ありません。
1965年のフロイド流ブルース・ロックのような曲にも興味をそそられますし、67年当時の明るいシド・バレットというのにも驚かされます。
アルバム「ピンク・フロイドの道」以前の様子は、話でしか聞いていなかったので、実際に映像になったものをみるとインパクトが強そうです。
次回も期待していますが、だんだんと購買意欲が高まってくるのが怖いです。
投稿: プロフェッサー・ケイ | 2016年11月21日 (月) 22時43分
プロフェッサー・ケイ様、コメント有り難うございます。
私はフロイドものには目が無くて過去にもいろいろと集めましたので、今回のこのボックス・セットは100%納得しては居ません。つまり過去の持ち物とダブっているものも多いのです。
しかし1965年ものの6人体制の曲には納得しました。ジュリエット・ゲイルの歌が今にして聴けるとは思いませんでした・・・など意義のあるところもあったり、画像はブート時代のものよりは綺麗になっているところは頂きでした。
その他は、アルバムのリミックスでは、4チャンネルもの「アルバム原子心母」「エコーズ」のOriginal 4.0 Quad mixの公開、「ポンペイ」の5.1チャンネル化、そしてBBCラジオ・セッションの公開など得るところはあります。~~まあ私の場合は、実情はこの半値ぐらいだと大いに納得したんですが・・・。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2016年11月22日 (火) 17時52分