ウォルフガング・ムースピールWOLFGANG MUTHSPIELのクインテット・アルバム「 RISING GRACE」
ブラッド・メルドー参加の豪華クインテット
やっぱり一枚上手のハイセンス・ジャズ・アルバム
<Jazz>
WOLFGANG MUTHSPIEL 「RISING GRACE」
ECM / GER / ECM 2515 / 2016
Wolfgang Muthspiel(guitar)
Ambrose Akinmusire(trumpet)
Brad Mehldau(piano)
Larry Grenadier(double-bass)
Brian Blade(drums)
Recorded Jan. 2016 ( Studio La Bussonne, Pernes-les-Fontaines )
ロックの場合、まずはギターに注目するのですが、何故かジャズとなると思いの外、ギターものを私はあまり聴かないんですね。このアルバムも今や押しも押されもしないピアニストのブラッド・メルドーBrad Mehldau参加と言うことで入手したアルバム。現代ジャズを代表するとまで評価のあるオーストリア人ギタリスト=ウォルフガング・ムースピールWolfgang Muthspielの最新作だ。
そしてこれがなんとトランペッターに新進気鋭のアンブルーズ・アキンムシーレAmbrose Akinmusire、そしてアメリカのジャズ界のプライアン・ブレイド(drums)とラリー・グレナディア(double bass)というメンバーの豪華クインテット・アルバム。
しかしこのアルバムはジャズとしてのレベルが高い。メンバーのそれぞれが力むこと無く、これが現代ジャズのセンスと究極の姿だと言わんばかしの世界を構築している。いっやー、恐れ入れました。その上に久々にギターのジャズ心にも触れることが出来た感ありです。
アヴァンギャルドにして、即興の醍醐味と、クインテットとしてのアンサンブルの美しさなど、ECM世界であるからこそ尚更やっぱり一枚上のジャズを聴かせてくれる。
そして何故か大人しいメルドーのピアノと思いきや、しっかりギター、トランペットを支えるが如く弾いているが、やっぱり自己の位置を確保して訴えるところは訴えてくる。M8.”Den Wheeler, Den Kenny ”なんかはその典型です。又 M5.”Wolfgang's Waltz”では相変わらず美しさと流麗なピアノの音が流れてくる。
私は、あまり聴かなかったムースピールですが、確かにリリカルなギターを聴かせてくれますね。エレクトリック・ギター、アコースティック・ギターをこなしてなかなか魅力的。メルドーのピアノやアキンムシーレの控えめなトランペットとのインプロヴィゼーションの交錯もお見事。
収録曲は、ECMの先輩Kenny Wheelerへのトリビュート曲だと言う“Den Wheeler, Den Kenny” などを始めムースピールのオリジナル曲集だ(1曲のみメルドーが本作のために書き下ろした曲M.5."Wolfgang’s Waltz.”)。
いやはや、「ジャズ世界の奥深さとレベルの高さを聴いて見ろ!」と、たたき込まれたアルバムでした。お見事。
(Tracklist)
1. Rising Grace
2. Intensive Care
3. Triad Song
4. Father And Sun
5. Wolfgang's Waltz
6. Superonny
7. Boogaloo
8. Den Wheeler, Den Kenny
9. Ending Music
10. Oak
(参考1)
<ウォルフガング・ムースピールWolfgang Muthspiel>
1965年3月2日オーストリアのシュタイアーマルク州スティリア生まれ。6歳でヴァイオリンをはじめ、13歳からギターを手にする。2人の兄はいずれも音楽を愛し、そんな環境で幼い頃から楽器を演奏しての生活をしていた。それがきっかけでジャズを聴き始め(14歳)、その後グラーツでクラシックとジャズを学ぶ。
ギター奏者として、1986年に渡米し、ミック・グッドリックに師事するためニューイングランド音楽院に入学。卒業後同じくボストンのバークリー音楽大学に入学する。在学中にゲイリー・バートンのバンドに2年間参加し注目を集める(この時、後にたびたび共演するラリー・グレナディアも同バンドに在籍していた)。
卒業後、ニューヨークに渡り1989年初リーダー作『Timezone』を録音する。2002年からウィーンに移住し本格的に活動拠点をヨーロッパに移す。同年自己レーベル、マテリアル・レコーズを設立し、自身の作品や若手ミュージシャンの作品をリリースしている。
多くのアルバムを残しているが、現在はスイスのバーゼル音楽大学の教授でもある。
(参考2)
<アンブルーズ・アキンムシーレAmbrose Akinmusire>
1982年、ナイジェリアの血をひいているが、カリフォルニア州オークランド生まれ。幼少期、教会で4歳から始めたピアノでゴスペルを演奏。12歳の時音楽の授業がきっかけでトランペットを始める。バークレイ高校のジャズアンサンブルに所属。サックス奏者のスティーヴ・コールマンに声をかけられ彼のバンド、ファイブ・エレメンツに加わり、マンハッタン音楽大学在学時まで所属。卒業後はロサンゼルスの南カリフォルニア大学の修士課程に進学。同地のセロニアス・モンク・インスティテュートに入り、ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、テレンス・ブランチャードに師事する。
2007年度“セロニアス・モンク国際ジャズ・コンペティション”で優勝、同年カーマイン・カルーソー国際ジャズ・トランペット・ソロ・コンペティションでも優勝し、一躍ジャズ界の注目の的となったトランペッター。2011年にリリースした『うちなる閃光』が絶賛される。
(視聴)
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コメント
メンツの凄さで発売前から注目していましたが、想像以上に様々な要素のすべてで、見事にバランスがとれた演奏がされていて、のけぞりました。
まさに、「一枚上のジャズ」って感じです。
TBありがとうございます。逆TBさせていただきます。
投稿: oza。 | 2016年12月22日 (木) 06時30分
ozaさん、お早うございます。
わざわざこちらまで有り難うございます。TBも有り難うございます。
このアルバムを聴いて、やはりジャズ世界の奥深さを教えて頂いた感ありでした。トリオやカルテットそしてクインテットと、それぞれがトータルに一つの曲を演じきる世界には、それなりのセンスと共に音楽を熟知したところから築き上げられることがよく解ったアルバムでした。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2016年12月22日 (木) 09時47分