ロジャー・ウォーターズは叫ぶ「トランプはPIG(豚)だ」 = Desert Trip 2016
復活!問題作ピンク・フロイド「アニマルズ」
このところ米国にて活動しているCreative Genius of Pink Floyd(ピンク・フロイドの創造的鬼才(守護神))の代名詞を持つロジャー・ウォーターズRoger Watersだが、米国大統領選においては、ヒラリー・クリントンやドナルド・トランプ両者の危険性を訴えていた。彼はポーランド系ユダヤ人移民のバニー・サンダースが適任者と当初から語っていたのだが・・・・結果的にはトランプの勝利。
この新年2017年1月になって、トランプ勝利後の「初の記者会見」とやらが話題になっているが、とにかくアメリカ社会においてはその現在の姿が、世界を驚かせる程度の低さを露呈している。
さて話は変わって、ここにロック・イベントを取りあげるのだが、これは昨年2016年10月2週間にわたってカルフォルニア州におけるビッグ・イベント「Desert Trip 2016」(↓)の模様であるが、ブート映像で見ることが出来る・・・大統領選進行中に於いての投票1.5ケ月前のロジャー・ウォーターズの叫びが印象的に記録されている。
<Progressive Rock>
ROGER WATERS 「THE BEST OF PINK FLOYD」
STARLINE / ST1604BDR / 2016
EMPIRE POLO CLUB, INDIO, CA 10. 9 2016
これは映像Blu-ray盤のブート・アルバム、これに見る「Desert Trip 2016」というのもスケールは馬鹿でかいイベントですね。これにはポール・マッカートニー、ボブ・ディラン、ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・フー、ロジャー・ウォーターズ、ニール・ヤングという、ロック界の大物が一度に集結するから圧倒される。
そしてこれはロジャー・ウォーターズのステージ映像版である。このところのウォーターズ得意の横長巨大スクリーン映像とライト・ショー、更には花火とでの演奏は圧巻。
そしてバンドは、あの「THE WALL 世界ツアー」のメンバーを中心に、バッキング・ヴォーカルは女性2人になり、Ian Ritchieのサックスが加わっている。セットリストは下記のような28曲、約3時間、全てピンク・フロイド時代の曲だ。
(Roger Waters set list)
"Speak to Me"
"Breathe"
"Set the Controls for the Heart of the Sun"
"One of These Days"
"Time"
"Breathe (Reprise)"
"The Great Gig in the Sky"
"Money"
"Us and Them:
"Fearless"
"You'll Never Walk Alone"
"Shine On You Crazy Diamond (Parts I-V)"
"Welcome to the Machine"
"Have a Cigar"
"Wish You Were Here"
"Pigs on the Wing 1"
"Pigs on the Wing 2"
"Dogs"
"Pigs (Three Different Ones)"
"The Happiest Days of Our Lives"
"Another Brick in the Wall (Part 2)"
"Mother"
"Brain Damage"
"Eclipse"
"Why Cannot the Good Prevail"
"Vera"
"Bring the Boys Back Home"
"Comfortably Numb"
そしてこのところ印象的なのは、彼が1977年に世間に訴えた社会批判、文明批判のアルバム『ANIMALSアニマルズ』 のウェイトが高くなってきていることだ。
既にこの中の中心3曲のうちの2曲の”Dogs”、”Sheep”はとっくに登場済みだが、このところ遂に”Pigs(Three Different Ones)豚”がメイン曲になりつつある。彼はもともとPig(豚)は資本家の醜い面の象徴として捉えており、あのアルバムにおいて、この曲で痛烈にアジった。それがここに来てトランプの言動とオーバー・ラップして彼の格好の標的になっている。しかもウォーターズにとって「壁」(1979年、アルバム「THE WALL」)は最も人生の究極のテーマであり、ここに来て更にトランプの「メキシコとの壁」騒ぎで益々その関心は高まっているのだ。
”TRUMP IS A PIG”とスクリーンに大々的に映し出し、会場には豚を飛ばし、豚には”FUCK TRUMP AND HIS WALL”、”#STOP TRUMP”、”IGNORANT LYING RACIST SEXIST”、”TOGETHER WE STAND DIVIDED WE FALL”と記されている。そしてあの曲”Pigs(Three Different Ones)”を、ピンク・フロイド時代からのSnowy Whiteのハードなギターと共に、リズム・セッションでごり押し展開をするウォーターズの姿は、あの狂気のはらんだ熱烈な1970年代末期のライブを思い起こす。そして更に今回スケール・アップした会場にて、今日の聴衆をして熱狂の渦に巻き込んでいるのである。トランプをCHARADE(インチキ野郎)とオーバーラップさせ、”そこまでやるのか”と・・・このステージはどうも歴史的に語り継がれそうな雰囲気だ。
このピンク・フロイド時代、ロジャー・ウォーターズのワンマン・アルバム『ANIMALSアニマルズ』は、評論家の間では、かってのフロイドのスペーシー・サウンドとの対比から不評であった。しかもこの曲”Pigs”は、他の2曲と違って、このアルバムの為に彼が急遽書き下ろしたハードな曲であって、ピンク・フロイドに似つかわしくないと言わしめた。更に資本家批判の内容の辛辣さに反発もあった。しかしそれはこの時代、パンクを代表するロックの原点回帰の流れの中で、一部の評論家のピンク・フロイドにも向けられたAOR(Adult-Oriented-Rock, Audio-O-R)化したプログレッシブ・ロックに対する批判へのウォーターズの回答でもあったし、むしろそれによって彼は自己の中にあったものの吐露する道を発見し、過去との決別的アルバム製作となったものだった。この流れは私自身は評論家と違って当時結構評価していたんですが・・・、事実、当時の北米でのライブにみるように若者の興奮度は更に高まり、軒並み沈没したプログレッシブ・ロックの中では唯一生き残るどころか、更にその成功を得たのだった。
今こうして、改めて今回のライブで聴いてみると、なかなか世相批判においてはその現実的厳しさを実感として感じさせ、ロックらしい激しさと観衆を引き込む味のあるハードな曲で大会場向きだ。。
アルバムのリリースから40年近く経った現在、彼が訴えたことが、そのまま社会問題化している事実は、今にして彼の以前からの発想が現代社会の問題点を捉えていること、それをロックとして訴えてきたことなどに注目せざるを得ないのではないだろうか。
(”Pigs”演奏時のスクリーンには下のような文章が映される)
I think apologizing’s a great thing. But you have to be wrong
I will absolutely apologize, sometime in the hopefully distant future. If
I’m ever wrong”
A nation without borders not a nation at
all. We must have a wall “
“ I was down there, and I watched our
police and our firemen,
down on 7-eleven. Down at the world trade centre, right after it came down.”
”I have a great Relationships with Blacks.
I've always had a Great Relationship with the Blacks.”
”My IQ is one of the highest - and you all know it! Please
don't feel so stupid or insecure. it's not your fault ”
”an extreamely credible source ” has called my
office and told me that Barack Obama's Birth certificate is a fraud”
”I'm not a Schmuck. even if the world goes to hell in a handbasket. I
won't lose a penny.”
”You know. it really doesn't matter what
the media write as long as you've got a young. and beautiful. piece
of ASS. ”
”If IVANKA weren't my daughter. perhaps I
would be dating her. ”
”I could stand in the Middle of fifth
avenue and shoot somebody. and I wouldn't lose any Voters.”
彼の近年甦ったアルバム『死滅遊戯』以来のニュー・アルバムもいよいよ最終段階に入っているようだ。おそらく現在の世界情勢からみても単なるミュージックというところには止まらないだろうと思われる。又彼の今年は「北米「US+THEM」ツアー」 も控えている。70歳過ぎても益々盛んなロジャー・ウォーターズは注目せざるを得ない。
(視聴)
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コメント
これは知らなかったですね。
ロジャーがここまで過激にメッセージを送るってのは当然と言えば当然でしょうけど、思う所がたくさんあるんだろうなぁと。
世間的には騒ぎにはならないでしょうけど、ショウビズの世界ではかなりの大御所がコレってのは皆ある意味羨ましいでしょうね(笑)。
さすが、ロジャー。
投稿: フレ | 2017年1月15日 (日) 21時52分
フレさん、おはようございまいす
コメント、TB有り難うございます。フレさんがこのアルバム「アニマルズ」を取りあげたのを思い出しました。もう5年前なんですね(笑)。
このアルバムの評価が実は面白いのです。ウォーターズがここに到達する意味とその価値観、ハードに衣装替えし展開したフロイド・サウンドが如何に価値があったかは知る人ぞ知るでよいのです。
むしろこのアルバムをリリースした当時、フロイドのEarly Yearsを理解していない評論家の中には、サイケデリックからプログレッシブにそしてこのアニマルズに至る価値観は解らなかったんですね。ロックの流れは、時代と共にあって、ただ"原子心母"や”エコーズ”と比較しても意味が無いことを知らなければならないでしょう。これから又、”アニマルズ”や”THE WALL”の価値観がぶり返している世相に恐ろしさを感じます。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年1月16日 (月) 09時38分