ヘルゲ・リエン・トリオHelge Lien Trio「GUZUGUZU」
ノルウェーから極東日本との更なる深まりが・・・・・・
<Jazz>
Helge Lien Trio「GUZUGUZU」
ozella music / GERM / OZ070CD / 2017
Helge Lien(p)
Frode Berg(b)
Per Oddvar Johansen(ds)
All music composed by Helge Lien
Recorded and Mixed on Raimbow Studio , Oslo, Sept.2-4 2016
ノルウェーのヘルゲ・リエンのピアノ・トリオによるニャー・アルバム。彼のカメラ好きによる写真ジャケのアルバム『Natsukasii』はインパクトがあったが、あれは2012年だったんですね。あのアルバムの抒情性に惹かれてから彼のファンになってしまった。それも私のカメラ好きと、なんとピンク・フロイド好きが彼と一致していることもあって、なお共感してしまったと言うことなんです。
その後このトリオのドラマーは、ペル・オッドヴァ―ル・ヨハンセンに2013年に代わった。そしてアルバム『Badgers & Other Being』発表して2014年に来日。その際には新潟県のライブ会場での一コマで、屋外で彼と一緒に皆既月食を観たり撮影したのを思い出しますが(8, Oct, 2014→)、あのアルバム以来3年ぶりの新生ヘルゲ・リエン・トリオ第2弾(通算5作目)だ(今回のカヴァー・デザインは替わって、リエン作ではないですね)。
そしてこの4月は、またまた来日公演のスケジュールとなっている。
日本好きのヘルゲ・リエンとは言え、アルバム・タイトル”Natsukasii懐かしい”で驚かされたが、今回アルバムは下のTracklistを見てのとおり、なんと日本語の擬音言葉を曲名として創作されたオリジナル曲によって構成されたものとして登場となった。
(Tracklist)
1.Gorogoro (thundering)
2.Guzuguzu (moving slowly)
3.Nikoniko (smilling
4.Garari (completely)
5.Jasmine
6.Chokichoki (cutting)
7.Kurukuru (spinning around)
8.Shitoshito (raining quietly) M1.”Gorogoro”って"thundering"って言うのですから雷鳴ですかね?。転がるようなピアノ演奏、ベースのアルコ奏法による黒い雲の襲うイメージ、そんなところで聴くと面白いのだが・・・・それにしては美しすぎるか。
M2.”Guzuguzu” ("moving slowly"の意味というのもちょっと"?"だが) これはピアノとドラムスの掛け合いが面白い。
彼は、ミュージックというものに関わることになったのは、ピンク・フロイドがその大きな因子であると何時も語っている。
彼のオリジナル曲、そして演奏は、ある時は郷愁的優しさのあるメロディーを聴かせ、またある時はやや前衛的なスリリングな味つけをしてインパクトの効いたドラマティック展開を聴かせる。伝統的ジャズ手法による美に加えインプロヴィゼーションによる革新性(何方かが言っていた言葉ですが私は納得)を追求するタイプだ。今回のアルバムもそんな因子を持って迫ってくる。写真で言えばややスモーキーな柔らかい像とコントラストの効いた堅めの像との絶妙な交錯といった感覚でその点が上手い。
M3.”Nikoniko” (smilling) は、なかなかピアノ表現が難しいと思うが、優しいピアノの音が響く印象の曲に仕上がっている。
M5.”Jasmine”は、この中でも趣向が変わって異国情緒。
M6.”Chokichoki” (cutting)や M7.”Kurukuru” (spinning around)の躍動感と陰影とがドラマチックで、叙情性とは別物。彼らのこれからの一つの方向性を感じさせる演奏だ。
M8.”Shitoshito” (raining quietly) しっとりとした雰囲気でアルバムを納めるのである。
* *
とにかく、今回のアルバムはテーマがユニークそのもので(ウォーターズのピンク・フロイドの頃の手法も感ずる)、何か一歩脱皮というか、壁を破りたい試みというか、前作もそうだったがヘルゲ・リエン・トリオとしての挑戦も感じられる。それは平坦な叙情にのみ収まりきれない何かエネルギーの発露を求めたような印象を持つのである。
(参考視聴) 映像はニュー・アルバム関係は見つからず・・・・参考までに前作から
* *
(試聴) ニュー・アルバムから”Jasmine”
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コメント
風呂井戸さま、トラバありがとうございました。
上越にお出かけだったのですね?
二作目になり、精度が高まってメリハリがパワーアップしましたよねぇ。
時に抒情的、時にアヴァンギャルドなほどにアグレッシブとレンジの広いトリオですよね。擬音言葉に着目するっってユニークな人ですよね。
こちらからも トラバいたします。
投稿: Suzuck | 2017年3月16日 (木) 12時18分
Suzuck様、こちらこそコメント、TB有り難うございます。
そうなんです、上越では楽しませて頂きました。あのとき、彼らは日本海で海水浴をして会場に来たと言ってました。ノルウェーってやはり夏でも日本の10月と同じぐらいの気温のようですね。
今回のアルバムは何か進行形の一段階と思って聴いています。期待株のトリオとして、私自身は何が出来ると言うことではありませんが、とにかく見守っているんです。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年3月16日 (木) 17時41分