ダイアナ・クラールDiana Krallのニュー・アルバム「Turn Up The Quiet」
ヴォーカルを前面に出した懐かしさいっぱいの原点回帰の快作
<Jazz>
Diana Krall 「Turn Up The Quiet」
UNIVERSAL CLASSIC & JAZZ / JPN / UCCV-1162/ 2017
Produced by Tommy LiPuma and Diana Krall
Recorded by Al Schmitt at Capitol Recording Studios, Hallywood, CA
いっや~~、数溜まって来たダイアナ・クラールのアルバム。その中でも今回この新作は”原点回帰”と言っても、彼女のピアノ演奏中心というのでなく(私はもう少しバリバリのジャズ演奏を期待していたんですが・・・)、やっぱりヴォーカル・アルバムですね。録音も完全にダイアナのヴォーカルが前面に強調されている。
まあ、決して悪いわけで無く、ダイアナの相変わらずの親父声の充実感を十分に味わえます。彼女の育ての親と言うべきか、発掘し育て上げた立役者でもあるという巨匠のトミー・リピューマがプロデュース。しかしなんとこれは約10年ぶりの通算8作目のプロデュース作となるようだ。しかし彼はこの3月13日に80歳で発売前に亡くなったと思うが・・・と、すれば彼の記念作でもあり、遺作として感じ取らねばならないだろう(それに十分な内容だ)。
(Tracklist)
1. Like Someone In Love
2. Isn't It Romantic
3. L-O-V-E
4. Night And Day
5. I'm Confessin' (That I Love You)
6. Moonglow
7. Blue Skies
8. Sway
9. No Moon At All
10. Dream
11. I'll See You In My Dreams
12. How deep is The Ocean *
さて、収録曲は前作はポップス曲だったが、今回はジャズ・スタンダードの懐かしの曲のオンパレード(*印:日本盤ボーナス曲)。
スタートM1.” Like Someone In Love ”は、冒頭よりベースの重量感と彼女の低音の効いたヴォーカルがじっくりと迫ってくる。やっぱり彼女のヴォーカルは充実感あって良いですね。
バック演奏はやっぱり従来のアルバムの流れで、ギター、ピアノ、ベース、ドラムス中心で、オーケストラも入るというヴォーカルを支えるパターンで変わっていない。
M2.” Isn't It Romantic ”アンソニ・ウィルソンのギター、ジョン・クレイトンのベース、ジェフ・ハミルトンのドラムスに彼女のピアノがお馴染みのパターンで流れ、それにヴォーカルが乗ってダイアナ流懐かしの曲展開。
M3.”L-O-V-E”こりゃ、ナット・キング・コールですね。1960年代ビートルズ・ロック前の世界を風靡した曲。
M4.”Night And Day ”コール・ポーターの代表作、シナトラも良かったけど、私はセルジオ・メンデスが懐かしい。それをうまく両方のイメージを残してダイアナは熟してくれます。
M7.”Blue Skies ”戦前のヒット。この曲はこのアルバムでは珍しくスウィングする。ダイアナのピアノ・プレイが溌剌として楽しめる。
M8.”Sway”誰もが唄う”キエン・セラ”だ。しかしこれをゆったりと物憂いパターンで唄うところがダイアナ節だ。いやはや昔のザ・ピーナッツが聴いたらビックリでしょうね。
M10.” Dream ”は、ジョニー・マーサーの作曲で、何とも言えない懐かしさいっぱいです。シナトラも唄ったし、映画でも何回と使われた。「足ながおじさん」が有名にもした曲。痺れますね。
M12.”How deep is The Ocean ”日本盤ボーナス・トラックだが、昨年日本ライブで評価の高かった曲。これがなかなか深遠なムードあって良い。M11.” I'll See You In My Dreams”のスウィンギーな曲での外盤の終わりよりは日本盤がお勧めだ。
全体にバラード調のゆったり、じっくりの世界。これはこれで気分良好ですね。アメリカン・クラシックの前々作『グラッド・ラグ・ドール』(2012年)よりは、ムードがあってこの方が私好み。そう思って懐かしがって聴いているとあっという間に終わってしまう。こんな快作でした。
前作『ウォールフラワー』(2015年)はグラミー16回受賞の大御所デイヴィッド・フォスターがプロデュースを務めたポップス・カヴァー集だったが、多分若い人にはそちらの方が承けると思うが、我々のような歳も重ねた人間にとっては、こちらも懐かしさで充ち満ちてしまったというところだ。
さてさて、まだ私の期待のバリバリのジャズ演奏アルバムというところには不満作であったが、これだけスタンダードをポピュラーに仕上げると、これ又ヒット・アルバムとなるのは間違いない。しかし私は又々数年後を期待することになった。
(試聴) ” Night And Day ”
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コメント
風呂井戸さんこんにちは.
ボクもどうしようかずっと迷ったきり、結局今までクリックできずにいました.
一説ではこのアルバムは初期に戻ってピアノが中心になると言ったこともささやかれたこともあったと記憶していますが、結局は最近のヴォーカル路線を踏襲している感じですね.
まぁそれも悪くはないし、聴いていてもそれなりに楽しめるのですが・・・・・・
そろそろピアノ演奏をメインにしたアルバムも聴いてみたい気がしますね.
ボクはボーナス・トラックいらないので安いインポート盤でもクリックするとします.
投稿: la_belle_epoque | 2017年5月 4日 (木) 09時31分
la_belle_epoqueさん、こんにちわ。
そうなんです、当初スタンダード集に原点回帰という噂で、これはてっきり例のカルテツトでピアノ・プレイを主としたアルバムかと想像したんですが、ず~とこのところヴォーカル中心アルバムですね。まぁその方が売れるでしょうから・・・(笑い)。
しかしこのアルバムも、ジャズというある意味でのクセと言うか難しさは全くなく、ポピュラーに楽しめるヴォーカル・アルバムですね。
かっての「stepping out」位に、演奏の比重が高くてもよいのではと・・・又々次回に期待です。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年5月 4日 (木) 14時45分
グッドタイミング!!での評。「ちょうど新作に期待」とブログを書いていたところです。やはりボーカリストが売りですか。まだ我々の期待とは少しずれているんですかね。
投稿: 爵士 | 2017年5月 4日 (木) 21時25分
爵士さん、こんにちわ。
Diana Krallは無条件にとびついています。
今回は、懐かしのスタンダードですが、やっぱり彼女なりの唄い回しで楽しめました。
おっしゃるように、昔のアルバム「stepping out」、「Only trust your heart」のような演奏のウェイトの高いものを期待していたんですが・・・、やっぱり近年のヴォーカル・パターンでした。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年5月 5日 (金) 09時39分