エンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunzi 「MÉNAGE À TROIS」
やっぱりエンリコのピアノは流麗にして美しかった
<Jazz>
Enrico Pieranunzi・André Ceccarelli・Diego Imbert 「MÉNAGE À TROIS」
BONSAI / IMP / BON160901 / 2016
Enrico Pieranunzi (piano)
Diego Imbert (double bass)
André Ceccarelli (drums)
Recorded on Studio de Meudon, Meudon, Frabce at 12-15, Nov, 2015
CAM Jazzとの独占契約の解除があって以来、ちょっとこのところエンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunziはその活動も多方面に広がって、そのピアノ作品は若干難しい面もあったりして少々構えている私で、そんな事から今回このニュー・アルバムにはすぐに飛びつかず様子を見ていた私でありました。ところがブログ友爵士さんは昔からのファンだけあってやっぱり静かにしている私に薦めているので、結局のところ聴くことになったという次第。
今作はフランスのBonsai Musicにて録音した注目のトリオ新作だ。それもクラシックとの融合を図った演奏と言うことで、やっぱり気になる作品でもある。
大体アルバム・タイトルの「MÉNAGE À TROIS」が凄い。これってフランス語で”三人婚”の事ですね、一般には男1+女2で平和な暮らしを営むという私には信じがたい状態。それはこの場合、イタリア人のエンリコ+フランス人二人のトリオってことでしょうか?、それともドラムスはエンリコの長年の朋友アンドレ・チェカレッリ(→)で、それが「2」で、それにベースのフランスのジャズ界のディエゴ・アンベールを加えた「2+1」なのか、とにかく洒落ていて難しいです。私はエンリコのフランスでの遊び心を何処かに秘めたのではと想像もするのだが・・・・。
(Tracklist)
1. Mr. Gollywogg (d'après Gollywogg's Cake - Walk de C. Debussy) 03:57 (Enrico Pieranunzi)
2. 1 ère Gymnopédie 03:47 (Erik Satie)
3. Sicilyan Dream (d'après Siciliano, BWV.1031 de J.S. Bach) 04:42 (Enrico Pieranunzi)
4. Medley: La plus que lente / La moins que lente 07:15 La plus que lente 02:07 (Claude Debussy) La moins que lente 05:08 (Enrico Pieranunzi)
5. Hommage à Edith Piaf (XVème Improvisation, Hommage à Edith Piaf) 04:44 (Francis Poulenc)
6. Le crépuscule 04:00 (Darius Millhaud)
7. Mein Lieber Schumann I (d'après Davidsbündlertänze Op.6 (No.2) de R. Schumann) 07:06 (Enrico Pieranunzi)
8. Medley: Romance / Hommage à Milhaud 05:00 Romance 01:25 (Darius Millhaud) Hommage à Millhaud 03:35 (Enrico Pieranunzi)
9. Mein Lieber Schumann II (d'après Carnaval de Vienne Op.26, Allegro, de R. Schumann) 07:05 (Enrico Pieranunzi)
10. Hommage à Fauré (d'après Improvisation, 5ème des « Pièces Brèves » Op.84 de G. Fauré) 04:38 (Enrico Pieranunzi)
11. Liebestraum pour tous (d'après Liebestraum No. 2 de F. Liszt) 04:18 (Enrico Pieranunzi)
いっや~~なかなか百戦錬磨のエンリコだけあって、単なるクラシックものとは全くの別物です。やっぱりジャズですね。原曲の面影は無いでは無いが、やっぱり一筋縄ではゆかない(良い意味ですが)彼の色彩濃いジャズ化の世界。エンリコの編曲と彼の作曲をドッキングしたりしての快作。つまりクラシックの名曲はあくまでも彼のジャズの誘導の素材でしか無いと言っても良いくらいだ。
さて登場する曲は、ドビュッシー、サティ、バッハ、シューマン、クープラン、リストといった作曲家だ。
バッハと言えば懐かしのジャック・ルーシェを思い出すが、M3.”Sicilyan Dream ”に登場。バッハのイメージはあるが、ルーシェのようにその曲を生かしてジャズにしたというのでなく、全くの別物。つまりエンリコのジャズにその味を効かしたというパターン。編曲の凄さが出ている。
しかし彼にはバッハよりはドビュッシーのほうが合いますね。それはM4.”La plus que lente / La moins que lente ”で味わえる。静かな世界をリリカル路線で聴かせるせるが、後半は彼の曲をドッキングさせて、それはなんとスウィングさせてのジャズ世界。いやはや遊び心も持ち合わせたピアノ達人だ。
M5.” Hommage à Edith Piaf ”これは哀歌ですね。フランスの誇るシャンソン歌手エディット・ピアフへのオマージュだ。
M7.”Mein Lieber Schumann I”シューマンを演ずるエンリコは、彼のベースに流れるクラシックの味そのものを生かしつつ演ずるジャズの流れる美しさに堪能する。
M8.”Romance / Hommage à Milhaud ”これは彼の得意のクラシック流世界。そして気持ちを安らげる1曲に仕上がっている。
まあこのように多彩な世界を演じてくれるエンリコのドラマティックで情熱込めたピアノ・プレイでありながら、彼の持つリリカルなところがしっかり織り込まれた快作だ。
エンリコのクラシック楽曲を知り尽くしての演奏に、どちらかというとジャズ・ピアニストとしてのアレンジの妙にウェイトが置かれていて、それに更にインプロヴィゼーションが加わって、その融合の名演奏のアルバムと言って良いのでは思う。
(視聴)
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コメント
わたしもこのアルバムで久しぶりにエンリコらしさを感じ、ほっとしたところです。
投稿: 爵士 | 2017年5月26日 (金) 10時00分
爵士さん、こんにちわ。
ちょっとこのところ、エンリコのピアノ・ジャズの探究の奥深さに、若干尻込みしていたんですが、このアルバムは私のレベルでも対応できたというところで喜んでおります。
しかし彼の音楽性と技量の深さはやはり尋常ではありませんね。そんなところを感じています。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年5月26日 (金) 15時00分
風呂井戸さん,こんばんは。
クラシックのアダプテーションと聞くと,私も身構えてしまいますが,これはEnrico Pieranunziがジャズのイディオムの中で消化したものだったので,なかなか良かったと思います。
もちろん,記事にも書いた通り,これが彼の最高傑作とは思いませんが,こういうのもありですね。
ということで,TBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年5月27日 (土) 21時39分
中年音楽狂様、コメント有り難うございます。
エンリコには、昔のアルバム「Canto nascosto」のような感動が忘れられず、どうしてもあの世界にオーバーラップして聴いてしまいますので、このところの作品群に戸惑うところもありました。
しかし、こうした彼のジャズ心をしっかり演じてのクラシックの臭いを感じさせての世界は、一つのフランスでの遊び心もあるようにも思います。そこに今回は一つの魅力を感じて聴きました。
そうそうTBも有り難うございました。こちらからも・・・よろしくお願いします。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年5月27日 (土) 22時34分