アンナ・マリア・ヨペックAnna Maria Jopek のニュー・アルバム 「Minione」
描くはポーランドとキューバとの人間的哀感の融合
~ 憂愁の歌姫ヨペックとゴンザロ・ルバルカバの競演 ~
<Jazz>
Anna Maria Jopek, Gonzalo Rubalcaba 「Minione」
Universal Music Poland / Import / 573 980 8 / 2017
Anna Maria Jopek - voice
Gonzalo Rubalcaba - piano
Armando Gola - bass
Ernesto Simpson - drums
Recorded at The Hit Factory Criteria Miami, 22nd-24th August and 20th-22nd December 2016
いや~~出ましたね、お久しぶりのニュー・アルバム。ポーランドのアンナ・マリヤ・ヨペック(1970~)となると、私にとっては好みの世界で3本の指に入るジャズ・ヴォーカリスト、それは憂愁の歌姫である(彼女は1997年よりアルバム・リリースしている。20年のキャリアだ。詳しくは末尾参照)。
最終アルバムが3部作の一枚小曽根真との『HAIKU』となると思うので6年ぶりの登場です。この間、ボックス・セット『Dwa Serduszka Cztery Oczy』や日本ライブも楽しませてもらったりとしてきましたが、今回はなんとこれも私好みのゴンサロ・ルバルカバのピアノ・トリオとの共演。期待に十分です。彼とは2011年のポーランドを歌い込んだアルバム『POLANNA』で共演していたので、今度はルバルカバの故郷キューバに近いMiamiでのお返し共演録音といったところか。
(Tracklist)
1. Twe Usta Klamia/Your lips lie : 5:58
2. Kogo Nasza Milosc Obchodzi/ Who cares for our love 4:14
3. Co Nam Zostalo Z Tych Lat/ What remains of those years? 5:11
4. Nie Wierze Ci / I don't believe you 5:02
5. Besame Mucho 4:23
6. Co Nam Zostalo... Wybrzmienie 1:29
7. Pokoik Na Hozej 6:42
8. To Ostatnia Niedziela / It's the last sunday 4:15
9. Miasteczko Belz 4:36
10. Nie Wierze... Detal 0:28
11. Rebeka 6:01
これは何とも素晴らしい世界を構築してくれました。とにもかくにも私の印象では、キューバ人の多いあの華々しい巨大都市マイアミではあるが、その静かな路地裏の夜に描かれた哀感ある人間模様の世界という感じだ。
この都市の人種的な構成は白人が多いのだが、ここの人口の65.76%はヒスパニックまたはラテン系である。この都市の民族的な構成はキューバ系が1/3と最も多く、アフリカン・アメリカンが2割強と言うところのようだ。
そんな都市の人間模様には、キューバ人であるルバルカバ(ハバナ出身、1963年~)に描かせると現実味が帯びる。このアルバムの曲のアレンジメントはルバルカバによるもので、それだけ彼はヨペクの世界に思い入れを演じたと思う。それを又完全にヨペックの歌い込みによってヨーロッパ的な哀愁を加味して倍増して描ききっている。いやはや恐ろしいコンビの傑作だ。多分これはあの『PORANA』からイメージは作り上げられていたのであろう。
スタートのM1.”Twe Usta Klamia”で完全に哀愁と大人の人間世界のヨペク節に突入。これから逃れられない感覚になる。
M2.” Kogo Nasza Milosc Obchodzi”は軽快で有りながらどこかもの哀しさを感ずる曲仕上げ。
ボサノヴァ調、ときに現れるタンゴ調、これらもここまで彼らの哀感の世界に変容してしまうところが見事だ。
そしてなんともここまで変調したM5.”Besame Mucho ”は希有の一言。ヨペクはハミングで哀愁を漂わせて唄いきる。
そして又、M4.”Nie Wierze Ci”の哀しき暗さは特筆もの。又M11.”Rebeka”の優しさも見逃せない。
アルバム全編を通して揺るぎないヨペクの世界感がひしひしと伝わってくる。
とにかくヨペツクのポーランド・ドラッド探究は勿論、日本やポルトガル、そして他のアンゴラやブラジル、カーボ・ヴェルデなど民族的世界観の追求の一幕であろうか?。今回は、キューバ系世界にその焦点を絞った今作で、彼女のホーランド・ミュージックと世界ミュージツクの融合は一層深みを成している。そして彼女の暦年の磨かれた哀感ある歌唱力に喝采を浴びせるのである。まさに憂愁の歌姫だ。
アンナ・マリヤ・ヨペクの過去のアルバムを参考までに↓・・・
(Anna Maria jopek Discography)
Ale jestem (1997年)
Szeptem (1998年)
Jasnosłyszenie (1999年)
Dzisiaj z Betleyem (1999年)
Bosa (2000年)
Barefoot (2002年)
Nienasycenie (2002年)
Upojenie (with Pat Metheny) (2002年;2008年)
Farat (live) (2003年)
Secret (2005年)
Niebo (2005年)
ID (2007年;2009年)
BMW Jazz Club Volume 1: Jo & Co (live) (2008年)
Polanna (2011年)
Sobremesa (2011年)
Haiku (2011年;2014年)
Minione (2017年)
(視聴)
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コメント
当方にも近日中に配送されるということで、期待に胸膨らませて待っているところです。
投稿: 爵士 | 2017年6月 7日 (水) 23時40分
爵士さん、こんにちわ。
このアルバムは日本盤はないようですし、輸入販売がスムーズでないですね。私も購入には二転三転しての購入でした。ポーランド系はそれほどしっかりした経路が無いのでしょうか?>いずれにしても待つだけの価値は十分と思います。
今や、CD販売の低調から業者もあまり積極的で無いのでしょうか?。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年6月 8日 (木) 11時46分
トラバ、ありがとうございました。m(_ _)m
「描くはポーランドとキューバとの人間的哀感の融合」
いい言葉ですね。ぴったりですね。
ゴンザロの渾身のピアノソロも寄り添いも秀逸で、2人の気持ちが融合して切なく美しい世界でした。
大人の世界を描いた、深夜のアルバムだとおもいました。。
私も、入所が随分遅れたうえに、個人的な事情でしばらく放置され、、
今頃のブログアップとなりました。。
投稿: Suzuck | 2017年7月 3日 (月) 18時11分
Suzuckさん、わざわざコメント、TB有り難うございます。
まさに大人の世界を描いた、深夜のアルバムですね。最近よく聴くアルバムの三本の指に入ります。しかしヨペックはいいピアニストを選びますね。ノルウェーのトルド・グスタフセン、ポーランドはレシェック・モシジェル、日本は小曽根真、そして今回はキューバのゴンサロ・ルバルカバと・・・・私の好きなピアニスト勢揃いです。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年7月 3日 (月) 20時32分