「吾唯足知」~吾、唯足るを知る
龍安寺の「知足の蹲踞(つくばい)」の教えるもの
(龍安寺蹲踞)
毎年所謂「お盆(盂蘭盆会)」を迎えると、祖先の霊を供養しつつ、少しは”人”と言うものを考えることがある。
昔、修学旅行と言えば京都でした。そして有名な「石庭」(枯山水の方丈庭園)を見るために訪れるのは龍安寺である。この寺は室町幕府の管領、守護大名で、応仁の乱の東軍総帥でもあった細川勝元(禅宗を信仰、自ら医術を研究し医書「霊蘭集」を書き、さらに和歌・絵画にも優れた才能を発揮したという文化人でもあった由)が宝徳2年(1450年)に創建した禅寺だと言う。
実は、この寺にはもう一つ有名なモノがある。それは上の写真の「知足の蹲踞(つくばい)」だ。この一般公開されているものは、方丈(寺院の住持や長老の居室)の北側にあるが、実は本物は非公開の茶室「蔵六庵」の露地にある(→)。蹲踞は茶室に入る前に手や口を清めるための手水鉢(ちょうずばち)のこと。水戸藩主徳川光圀公の寄進によるものと伝えられている。
この蹲踞には右のように「五・隹・疋(但し、上の横棒がない)・矢」と刻まれている。水溜めに穿った中心の正方形を漢字部首の「口」と見れば、上から時計回りに「吾れ唯だ足るを知る」となる。「知足のものは貧しといえども富めり、不知足のものは富めりといえども貧し」という禅の格言を謎解き風に図案化したものと見られてきた。
解りやすく言うと”満足することを知っていれば、人生は幸福に満たされ豊かと言える”とか、”足りないと嘆くより、足りていることに感謝せよ”ともとられている。この教えはなかなか含蓄のあるもので、現在まで多くの人に支持されている。
しかし、私流に解釈すると、そのことは教訓として重要だが、”常に足りないものを知り、得ようと努力し、向上心を持ち続けること”に繋げなければ意味無いのではないか、とも思うのだが。
☆ もう一つ、下に写真を公開する・・・・・・
これは、上に紹介した龍安寺の「知足の蹲踞(つくばい)」に非常によく似たものだが、実は私の家の庭にあるのである。10年前に住宅を移築した際に、私の希望で和風の庭を造ったのだが、これは私の希望というので無く、お願いした庭師さん(親類で今はもう引退している)に全てをお任せしたところ作り上げたものである(考えて見ると、私に教訓を垂れたのかも)。この蹲踞の上には、既に解体した古い我が家にあった山茱萸の老木が移植され枝を垂らしている。
日常的にこれを眺めて居るわけであるが・・・・特に冬期に多いのだが、小鳥がどこからともなくここに来て水を飲んだり、又我が家からプレゼントしたリンゴを突いたりしている。
そしてこれは常に「吾れ唯だ足るを知る」を私に言い聞かせているのであるが・・・・なかなかその境地に落ち着けないでいる。つまり歳の割には何時までも若輩ものの私なのである。
* * * *
(追加)
方丈庭園 - 今回話題の所謂「龍安寺の石庭」である。幅 25 メートル、奥行 10 メートルほどの空間に白砂を敷き詰め、東から5個、2個、3個、2個、3個の合わせて15の大小の石を配置する。この庭はその石の配置から「虎の子渡しの庭」や「七五三の庭」の別称がある。
この庭と蹲踞との関係もあって、「虎の子渡しの庭」とは、話が長くなるので別の機会とするが・・・・、「七五三の庭」とは、東から5、2、3、2、3の5群で構成される石組を、5と2で七石、3と2で五石、そして3で三石と、七・五・三の3群とも見られることによる。古来より奇数はおめでたい数と扱われてきた。この石庭は、どの位置から眺めても必ずどこかの1つの石が見えないように配置されていることでも有名なのである。
そこで、蹲踞の「吾唯知足」には「われ、ただ足る」という意味があって、石庭の石が「一度に14個しか見ることができない」ことを「不満に思わず満足する心を持ちなさい」という戒めの意味が込められているのだという話もあるし、一方「足りないものを見つめ、今の自分が存在することを心から感謝することを忘れてはならない」という想いが込められているとも言われる。
(龍安寺を観る)
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コメント
≪…、向上心を持ち続けること…≫で、
時間軸の数直線(永遠の今)が、創生し・されるのは、
[勾玉]のパワーと[鏡]の[等価性]と[剣](『刀札』)との[HHNI眺望]で、
『幻のマスキングテープ』に・・・
『かおすのくにのかたなかーど』から・・・
令和2年5月23日~6月7日 の間だけ
射水市大島絵本館で・・・
有明山神社に
「吾唯足知」と[吉呼員和]
の[等価性]と観てよい[開運招福の碑]あり。
[HHNI眺望]の自然数は、電子図書
[絵本「もろはのつるぎ」で・・・
投稿: 式神自然数 | 2020年5月23日 (土) 03時00分
『HHNI眺望』で観る自然数の絵本あり。
有田川町電子書籍「もろはのつるぎ」
御講評をお願い致します。
投稿: 式神自然数 | 2020年6月 3日 (水) 06時20分
〇□点線面にモナド棲む
投稿: 草枕 | 2021年11月19日 (金) 06時15分
≪…枯山水の方丈庭園…≫の「吾唯知足」と建仁寺の「〇△□乃庭」とに、≪…自分が存在することを心から感謝…≫の足掛かりに・・・
禅の庭ヒフミヨ言葉公案す
□とはながしかくから創り出す
〇□πと1とを創り出す
ヒフミヨは〇と▢のなぞり逢
ヒフミヨはもろはのつるぎ絵本あり
√6〇÷□ヒフミヨに
ヒフミヨは△回し□なる
投稿: 草枕 | 2022年4月26日 (火) 07時34分
≪…「吾れ唯だ足るを知る」…≫を、[ 吾唯只知 ]として、【 吾唯只今を知る 】として [日々是好日]でありたい・・・
「あかちゃんのわらべうた さよならさんかくまたきてしかく」や「サンカクさん」の絵本の力で、[ 吾唯足知 ]にいろんな△さんが、[ひ・ふ・み・よ・い・む・な・や・こ・と]の[1]を〇さんと□さんを繋げていると観える・・・
大きな△さんが4回((π/2)×4)で一周すると、□さんの1×1の正方形に・・・
中くらいの△さんは、円周の六等分で半径1のハブと辺(弦)1とで6つの正三角形に・・・
小さい△さんは、大きな△さんの辺(√3)を変身(√)し自ら[1]の広さ(1×1)をもって、4回((π/2)×4)で一周すると、□さんの1×1の正方形に・・・
[さよならさんかくまたきてしかく]は、【 さよならさんかくまたきてあした 】と生る。
時間軸の実数直線は、△さんの仕業とか・・・
投稿: 数哲句(らいてう忌ヒフミヨ言葉太陽だ) | 2023年11月14日 (火) 16時34分
立石に春風巻きてヒフミヨに
[1]の存在量化(∃)について、自然数のキュレーション的な催しがあるといいなぁ~
投稿: ヒフミヨ巡礼道(岡潔数学体験館) | 2024年4月26日 (金) 11時13分