« アレッサンドロ・ガラティAlessandro Galati 「WHEELER VARIATIONS」 | トップページ | ゲイリー・ピーコック・トリオGary Peacock Trioのニュー・アルバム 「Tangents」 »

2017年9月15日 (金)

松尾明AKIRA MATSUO TRIO 「BALLADS」

録音の質のリアリティーはハイレベルに確保しているが・・・・
  ~ミュージックとしての熟成度が低く、演奏は並~

<Jazz>
AKIRA MATSUO TRIO 「BALLADS」
TERASIMA RECORDS / JPN / TYR-1058 / 2017

51vbio05l

松尾明 Akira Matsuo (ds)
寺村容子 Yoko Teramura (p)
嶌田憲二 Kenji Shimada (b)


【録音】2017年3月27日
横浜ランドマークスタジオにて録音


 近年、素晴らしい録音モノが増えてきて、そこに感動もあって嬉しいことであるが、そんな意味で注目したアルバムがこれだ。
 以前にもそんな評判で手にしてガッカリしたものでYOKO TERAMURA TRIO『TERAMURA TOKOMOODS』(TERASIMA RECORDS/TYR-1026)があったのを思い出した。基本的にはあのアルバムと大きな差は無いと言っておく、それはその録音サウンドだが、いかにもベースはブンブンと唸って響き、ピアノはキンキンと確かにクリアに鳴る。しかし何か空しいのですね。それはミュージックとしての仕上げに貧しいのである。是非とも比べて欲しいのはつい先頃のリリース盤で言えば、GEORGES PACZYNSKI TRIO『LE VOYAGEUR SANS BAGAGE』(ASCD-161101)がある。これと比較してみると明解だが、そこにはピアノ、ベースのバランス、そしてそこに加わるドラムス、シンバルの鮮烈な響き、それが全て曲としてのバランスの中で、クリアにリアルな音で迫ってくる。つまり曲としての仕上げに明らかな差があるのだ。更に前回紹介のALESSANDRO GALATI『WHEELER VARIATION』SCOL-4024)のそれぞれの楽器とヴォーカルの配置の絶妙さを知るべきである。
 又演奏技術や音に対してのセンスというものが濃縮して快感のミジュージックが出来上がるのだが、その意味に於いてもこのアルバムには感動は無かった。
 はっきり言うと5曲ぐらい聴くと飽きる。

P_matsuoakira 実は宣伝文句は・・・・
「松尾明トリオ4年ぶりとなる作品は、寺島レコード第1弾アルバム『アローン・トゥゲザー』のトリオが再集結!寺島レコードの原点"哀愁"のメロディ、ジャズの名曲、そして長い付き合いのメンバーによる名演、すべてを凝縮した、レーベル10周年にして松尾明トリオの10年間の集大成ともいえる記念すべき作品に仕上がった。」
・・と言うのだが、残念ながら哀愁もあまり感じられない。ただ曲をとにかく一生懸命演奏したモノとして評価するに止まるのである。一番はピアノ・トリオとしての大切なピアニストの演奏に味が感じられないと言うところも大きいでしょうね。

 追記しておかねばならないのは、どうも寺島靖国は録音の技法のそのあたりをやっぱり気にしているらしいことが、ライナー・ノーツを読んで解った。そして録音されたマスターから続いて「Another Mastering Edition」を追加したんですね。しかしそれも録音された音源は同一であることからやはり無理は無理な作業によって何とかしたと思っているようだが、本質的にはそれほど大きな効果は上げていない。

 それには録音時からの方法論にはかなりの工夫が必要であって、そう簡単に脚色出来るものでない。このアルバムを聴くと、狭い部屋での三人の演奏を、一番前で聴いたという感じなのだ。やはりもっと広がり、奥行き、三人のバランスが重要に思う。音の強さを下げたから後方に位置するというのでなく、録音によっては同じ強さの音でも後方に位置して聞こえるという技量があるのだ。

Yoko_t2 今や再生ミュージック・ソースの出来不出来は、半分は技術陣の腕にかかっているというのが一般的な見解だ。これは決して極端な話でないと思う。それにつけてもこのアルバムの寺村容子(→)のピアノにはもう少し思想と繊細さが欲しい演奏でした。

 ちょっと辛辣に書きすぎたが、実は宣伝文句が立派すぎて、聴いてみての反動が大きかったというところなのである。

(Tracklist)
1.  Lupus Walk (Akira Matsuo)
2.  Estate (Bruno Martino)
3.  I'll Be Seeing You (Sammy Fain)
4.  Moonlight Becomes You (Jimmy Van Heusen)
5.  How Deep Is The Ocean (Irving Berlin)
6.  Do You Know What It Means Miss New Orleans (Eddie DeLange, Louis Alter)
7.  Sway To Fro (Kenji Shimada)
8.  Violet For Your Furs (Matt Dennis)
9.  Just A Mood (George Shearing)
10.  Steaway To The Moon (Yoko Teramura)

(参考視聴)TERASIMA RECORDSのサウンド  (Yoko Teramura Trio)

|

« アレッサンドロ・ガラティAlessandro Galati 「WHEELER VARIATIONS」 | トップページ | ゲイリー・ピーコック・トリオGary Peacock Trioのニュー・アルバム 「Tangents」 »

音楽」カテゴリの記事

JAZZ」カテゴリの記事

ピアノ・トリオ」カテゴリの記事

コメント

いつもROMでお世話になっております^^

寺島レコードに関しての記述に非常に共感を覚えました。

最初のアルバムでMAYAのバックでの寺村容子の伴奏が
割合気に入って、上記リーダーアルバム”TERAMURA
YOKO MOODS”を聴きましたがガッカリ^^;;

その後もう一枚寺島レコード(松尾輝トリオ)を買って見て
その金太郎飴的演奏と、相変わらずの録音手法が鼻に
つき見切り(笑)

ヴィーナス同様、素人が過度に録音に口を出すと碌な事に
ならないと言う好例ですかね^^;;

投稿: woo | 2017年9月19日 (火) 11時20分

wooさん、コメント有り難うございます。
 実は、このTERASIMA RECORDSの音に関しての批判的な評価をあまり見てないものですから、実は私のこの感想は、少々不安というか心配でした。しかしそれはどうしてもしっくり来なかった為、こんな事を書かせて頂きました。wooさんのお話しを拝見して、むしろ自分自身で納得している次第です。音楽としての優れた録音、オーディオ的リアルな録音、それぞれ長い歴史の中で試行錯誤して今日を迎えていると思います。とにかく音楽は心地よく聴きたいものですね。貴重なご意見有り難うございました。

投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年9月19日 (火) 14時01分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 松尾明AKIRA MATSUO TRIO 「BALLADS」:

« アレッサンドロ・ガラティAlessandro Galati 「WHEELER VARIATIONS」 | トップページ | ゲイリー・ピーコック・トリオGary Peacock Trioのニュー・アルバム 「Tangents」 »