ゲイリー・ピーコック・トリオGary Peacock Trioのニュー・アルバム 「Tangents」
恐れ多い・・・80歳を越えたベーシストの心境の世界に足を入れる
<Jazz>
Gary Peacock Trio 「Tangents」
ECM / GERM / 5741910 / 2017
Gary Peacock (double-bass)
Marc Copland (piano)
Joey Baron (drums)
Rec. May 2016, Auditorio Stelio Molo RSI, Lugano, Switzerland
ゲーリー・ピーコックGary Peacock(1935年-) とくれば、私にとってはキース・ジャレットということになるのだが、ビル・エヴァンスとのお付き合いなどと言う歴戦の経過から、もう現在のジャズ界のピアノ・トリオと比較してみると、一時代前の人ってことなんですね、しかしなんとそれが現在なんです。チャリー・ヘイデン亡き後、うーん、この人でしょうね頑張っているのは。なにせ驚くなかれ、80歳の誕生日を記念して制作されたピーコックのNew Trioの演奏盤、昨年の演奏だ。そしてECMからのリリースである。
彼はなんとECMでの初デビューは1977年の『Tales of Another』ということで、恐れ多くも40年前なんですね。最近は2年前にECMからこのメンバーで、アルバム『Now This』(ECM/4715388/2015)をリリースして絶賛を浴びたのだった。これもピーコックとしては長い歴史に於いては、New Trioと言われるところだが、主として10年以上前から既にこのトリオは、ピアニスト・マーク・コープランドMarc Coplandとドラマー・ジョーイ・バロンJoey Baronとなっていたという結構長い経過とも言える。
全体に明るいとは言えないムードだが、とにかく深みと言うか、彼の心からの響きというか、詩的な世界というか、やっぱり枯れた味わいというところなのだろうか、じっと聴き入る思索瞑想に浸る世界なのである。いずれにしてもピーコックは、昔来日して禅の思想などを学ぶ為ということで、京都で2年間の隠遁生活を送ったこともあるという精神的な深みを目指すタイプであって、彼のこのアルバムもそんなところが見え隠れする。
(Tracklist)
1. Contact
2. December Greenwings
3. Tempei Tempo
4. Cauldron
5. Spartacus
6. Empty Forest
7. Blue In Green
8. Rumblin'
9. Talkin' Blues
10. In And Out
11. Tangents
上のような収録11曲であるが、ピーコックの曲が5曲とほぼ半分、コープランドの曲が1曲、バロンの曲が2曲、3人の共作が1曲、 Northの”Spartacus”、Milesの”Blue In Green”で全11曲。
まずはスタートのM1."Contact"これぞ人間が巨匠と言われるようになっての面目躍如のベースから始まる瞑想と言うか思索というか、そんな世界感。すぐ追従するピアノ、バックでサポートするシンバルが何とも言えない微妙な空間を持ってサポートする。こんな展開をされると、即参ってしまう私なのだ。
M5. "Spartacus" は、美意識では筆頭格のコープランドのピアノが切々と物語と旋律を流すところに力強いベースでお見事な抒情世界。それは同様にM7."Blue In Green" でも味わえる。若干バロンは遠慮気味ですね。
しかしM6. Empty Forest の3者のインプロヴィゼーションと思われる音の交錯と余韻の世界はお見事で、これぞトリオだ。。
M8. "Rumblin'", M9."Talkin' Blues"で見せる軽快な世界は年齢を超えたミュージシャンの描くところですね。
締めのM11."Tangents" では、ピーコックのベースが自分の心境を曲にしたような深い世界を演じる。そこにピアノが流れをアクティブにして暗さの無いところに導いてくれる。
なかなか期待を裏切らない深い世界のベースを聴かせてくれたピーコック、そしてコープランドのピアノとバロンのドラムスが絶妙にトリオを形作って、彼らのオリジナル9曲+αでトリオ健在なりを示してくれた味わい深い作品だ。年齢を感じさせない素晴らしい演奏と言わずに、むしろ年齢だからこそ出来たいぶし銀の作品と評価したい。
(視聴) Gary Peacock Trio
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コメント
風呂井戸さま、トラバをありがとうございました。
余韻も美しく、美意識の高い一枚ですよね。
いつまでも、お元気で活躍してほしいです!
投稿: Suzuck | 2017年9月24日 (日) 17時05分
Suzuck様、コメント、TB有り難うございます。
今やジャズ界も若々しいメンバーの登場と、ベテランというところを越えたオールド・パワーが交錯して楽しいですね。ロックでも70歳以上が頑張っていて、ミュージックの世界には年齢を超えた何かがあるように感じています。
ゲーリー・ピーコックのこのアルバムにみる人の心に迫れる技は、やっぱり貴重です。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年9月24日 (日) 18時29分
風呂井戸さん,こんばんは。TBありがとうございました。
Gary PeacockとMarc Coplandは共演経験も多いですが,そこにJoey Baronが加わるというのは,コンビネーションとしては相当強力ですね。そして,そこから生まれるこの抒情的,耽美的な世界は彼らにしか作れないと思います。
ということで,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年9月24日 (日) 23時12分
中年音楽狂さん
わざわざコメント、TB有り難うございます。
数多くリリースされるアルバムの中で、いぶし銀的に光っていると思っています。
こうゆうアルバムに接すると、ふと色々のことを考えさせてくれて・・有り難いです。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年9月25日 (月) 09時07分