マリオ・ラジーニャの作品Mario Laginha Novo trio 「TERRA SECA」
ポルトガル音楽の民族性をジャズ的発展へ
<Jazz>
Mario Laginha Novo trio 「TERRA SECA」
ONC Prodçóes / POR / NRTI017 / 2017
Mario Laginha - piano
Miguel Amaral - portuguese guitar
Bernardo Moreira - contrabass
ジャズへのアプローチは多種多様ではあるが、民族性を生かしたものも最近よくお目にかかる。ポーランドのアンナ・マリア・ヨペクの3部作の小曽根真、福原友裕との「HAIKU俳句」の”Yoake”、”Pandora”、”Do Jo Ji”なんかは驚きだった。
これもポルトガルのジャズ・ピアニストの大御所と言われるマリオ・ラジーニャMario Laginha(1960年、リスボン生まれ)の試みる変則ピアノ・トリオ・アルバム。つまり彼のピアノにベース、ギターというドラムレス構成。彼には一般的なベース・ドラムスとのトリオも結成しているが、これは特にミゲル・アマラルMiguel Amaral演ずるポルトガル・ギターportuguese guitarが大きな特徴だ(→)。ポルトガルというとあの民謡”ファド”が重要だが、あの国を旅行した時に聴いたのを思い出す音色であって、これはあちらでは一般的に使われているギターだと思う(実際には、一般的クラシック・ギターとは異なる流れにあるようだが)。
さて、このアルバムの中身は、ジャズとポルトガル音楽をかけあわせたような作品。サウンドはそれぞれの持ち味を発揮したところだが、やはり“ファド”のような叙情性を感じさせるギターの音が散りばめられている。
そしてやっぱりクラシック的ムードが全体に流れているのである。まあ真剣に向き合って聴くという難しいことは避けて、むしろバック・グラウンド・ミュージック的気持ちで流しているとポルトガル・ムードに浸れて、ちょっと変わった気分にさせてくれるのである。
この作品は、1曲以外は全てオリジナルだというので、それにしてもジャズにポルトガルの素朴なムードは確実にあって、彼の意気込みが感じられる。彼はThe most Creative Contemprary Portuguese Jazz Musiciansと言われている存在だ。
(Tracklist)
1. Terra Seca
2. Dança
3. Quando as Mãos se Abrem
4. Tão Longe e Ainda Perto
5. Fuga para um Dia de Sol
6. Há Correria no Bairro
7. Enquanto Precisares - para o Pedro
8. Pela Noite Fora
9. O Recreio do João
10. Chão que se Move
リーダーのマリオ・ラジーニャは、私は今までに聴き込んだ記憶が無いのだが、ジャズ・ピアニストとしての数十カ国に渡る演奏歴と、数々のオーケストラやビッグバンドに委嘱作品を提供する作曲家としてのキャリアを20年以上に渡って展開する、まさにポルトガルを代表する音楽家のひとりと言うところのようだ。そして紹介など見ると、リーダー作品としては、バッハの作曲技法に影響を受けた自作曲集『Canções & Fugas』(2006年)、ショパンへのオマージュ作品『Mongrel』(2010年)、建築にインスパイアされたピアノ・トリオ編成による『Espaço』(2007年)など、多様かつ個性的な作品を発表し続けていると言うのである。更に、世界の民族性を尊重した音楽作りに貢献しているようで、いやいや今後取り敢えずは少しは注目しておかねばならないと言ったところ。
(視聴)
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コメント
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