ロベルト・オルサー・カルテットRoberto Olzer Quartet作品 「FLOATIN' IN」
トランペットの加わったカルテットもなかなか・・・・
<Jazz>
Roberto Olzer Quartet 「FLOATIN' IN」
ABEAT Records / ITALY / ABJZ 168 / 2017
Fulvio Sigurtá (trumpet, flugelhorn)
Roberto Olzer (piano)
Yuri Goloubev (bass except 4)
Mauro Beggio (drums except 4)
recorded, mixed and mastered in August 2016 at Artesuono Studios, Cavalicco (UD), Italy, by Stefano Amerio
前回に続いて抒情派ピアニストのロベルト・オルサーRoberto Olzer(イタリア)の登場である。これは今年イタリアのABEATからリリースされた彼のカルテット・アルバム。過去の好評アルバムをリリースしたRoberto Olzer Trio に、オルサーの師であるエンリコ・ピエラヌンツィに賞賛を受けたフルヴィオ・シグルタFulvio Sigurtá (trumpet, flugelhorn)(→)が加わっての相変わらずの抒情派作品に仕上げたもの。
(Roberto Olzer)
(Tracklist)
1. Skyscapes (Yuri Goloubev)
2. Stella By Starlight (Victor Young)
3. Elm (Richie Beirach)
4. Still To Bill (Roberto Olzer)
5. Maybe Next Time (Roberto Olzer)
6. Aphrodite (Roberto Olzer)
7. Stee-Vee (Yuri Goloubev)
8. Vocalise (Yuri Goloubev)
9. Forward (Roberto Olzer)
Victor YoungとRichie Beirachの2曲を除いて全てオリジナル曲。それもロシアのクラシック・ベーシストからジャズに転向したユーリ・ゴロウベフYuri Goloubev(→)の貢献はここでも大きく3曲、そしてオルサー自身は4曲という全9曲が収録されている。”Roberto Olzer Quartet”と名乗っているのは、やはりオルサー主導の作品なのであろう。
それにしても、私のこの上なく好きなRichie Beirachの"Elm "の登場には驚きつつも歓迎だった。 この曲では本来のピアノで演ぜられるあの美しい旋律はトランペットで流し、オルサーのピアノは編曲を加えつつのサポート役での曲構成である。そしておもむろに登場するBass、Drumsが曲の深遠さを役柄を心得てのごとく描く世界はお見事であった。いずれにしてもオルサーのピアノによっての曲の美しさと深みとの情景は抜群に良く、いやはや納得の仕上げである。
私はもともとオーソドックスな、ベースとドラムスとのピアノ・トリオを愛する人間なのだが、全編、トランペットは静かに美しく旋律を哀感ある情感を込めて流すところは、決して悪くなく、心憎いと思わせる。ここで描く抒情的カルテット演奏は如何にもヨーロッパという世界のなにものでもない。こうしてオルサーもトリオから一歩踏み出した訳だが、ピアノ・トリオとは異なった世界へのアプローチは、前進するミュージシャンとしては当然の事なのだろうと思う。カルテット編成による曲に於ける役割の違いを如何に自分のものにしてゆくかという問題を克服して行かねばならないのだが、このカルテットを聴く限り、なんなくその構成を十二分にこなしているようにも思う。それは曲の流れの中での自己抑制を図りつつも、曲自身は究極は自分の憂愁の世界に導いて行くという一つの難作業が見事に結実しているためだ。
オルサーはかってフルートやハーモニカなどとのカルテットを多く経験している為、本アルバムの作成に於いては、意外に何の抵抗もなく首尾良く纏めきったのかも知れない。
さてここに今年リリースの二連発のオルサー作品に恵まれたが、前回紹介のアルバムは、ピアノ・ソロであった為、次作は再びピアノ・トリオ作品に期待してしまうところだ。
(視聴)
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コメント
ソロとカルテット、連日のオルサーですね。視聴してみましたが、風呂井戸さんの評の通りですね。昨年の12月のトリオでのコンサートは期待に違わないものでした。ユーリ・ゴロウベフのベースが極めて印象に残っています。
投稿: 爵士 | 2017年10月21日 (土) 23時33分
爵士さん、コメントどうも有り難うございます。
ユーロ系ジャズの典型的な抒情性あるところを展開するピアニスト・オルサーは今後も楽しみな一人ですね。私はまだライブでは接してませんが、いつかは・・・と、思う人です。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年10月23日 (月) 16時18分
風呂井戸さん、こんにちはmonakaです。
オゾラーのアルバムが多くリリースされるのは、幅の広い層から支持されるからでしょうね。ソロにしろトリオにしろ、缶入りにしろ、彼の特徴がきちんと出るところがすばらしい。
TBさせていただきます。
ところでアルバム・タイトルの入力が違うとおもうのですが。
投稿: monaka | 2017年10月24日 (火) 08時22分
monakaさん、コメント、ご指摘ありがとうございました。さっそく修正しました。
そうそうTBも有難うございました。
しかし、近年ユーロ系は素晴らしいですね。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年10月24日 (火) 09時19分