シャヒン・ノヴラスリShahin Novrasli 「Emanation」
ジャズの真髄を心得ているかと思わせる展開
~民族性をしっかり確保しつつ~
<Jazz>
Shahin Novrasli 「Emanation」
Jazz Village / AUS / JV570141 / 2017
Shahin Novrasli(p, vo 6), James Cammack(b), Andre Ceccarelli(ds),
Erekle Kolava(perc), Didier Lockwood(vln 3,6)
Audio Mixers: Shahin Novrasli; Vincent Mahey. Liner Note Authors: Shahin Novrasli; Didier Lockwood. Recording information: Studio Sextan, Malakoff, France (04/2016)
シャヒン・ノヴラスリShahin Novrasli は、1977年生まれのアゼルバイジャンの首都バクー出身のピアニスト。これがなかなか若さを越えた技量と民族的センスをしっかり持った曲を展開する。アゼルバイジャンとはどうも馴染みがないが、南コーカサスに位置する共和制国家だという。北はロシア、北西はグルジア、西はアルメニア、南はイランと国境を接する国で、東はカスピ海に面している。こう説明を聞くとなんとなくイメージが湧いてくる。
昔ヨーロッパから日本に帰ってくる航空機のルートに「南回り」といって、この上空を通って、インド、タイ経由で日本に帰ってきたが、この辺りは上空から見るとまさに日本とは全く違った広大な黄色の大地の世界だ。しかしアゼルバイシャンは山岳と緑に恵まれている。そしてこうみると何となくその曲のタイプが想像されるところだが、”コーカサスの文化とヨーロッパの古典音楽とジャズを融合したユニークな独自の音楽を切り拓いている”と紹介されている。
このアルバムは基本的にはピアノ・トリオだ。ただそれに曲によってパーカッション、そしてヴァイオリン(M.3, M.6)が加わったりしている。
(Tracklist)
1. Emanation
2. Song of Ashug
3. Saga
4. Jungle
5. Misri Blues
6. Ancient Parallel
7. Tittle Tattle
8. Yellow Nightingale
9. Land
M6."Ancient Parallel"を聴けば、突然ヴォーカルが登場してビックリ、いやはやこれは中近東方面だと実感する。そんな民族性の強い曲も登場するが、この曲の終盤にはなんと前衛的なジャズに突入する。
M4. "Jungle"のベースの唸るリフも凄いがピアノのインプロヴィゼーションは見事。
M8."Yellow Nightingale"などは、同様にベースの唸りでスタートして、完全にフリー・ジャズに突入、ここでもインプロヴィゼーションの掛け合い風な展開もお見事だ。そしてその流れは快感で、次第に引き込まれて言ってしまう。
シャヒン・ノヴラスリは”5歳からクラシック・ピアノの専門教育を受け、若くして高い評価を受けていた彼だが、アゼルバイジャンの民族音楽"ムガーム"とジャズの融合を成し遂げた音楽家ヴァギフ・ムスタファ・ザデの影響のもと、ジャズの世界へ。96年に自国のコンサヴァトリーに入学以降、キース・ジャレット、チック・コリア、ビル・エヴァンスを研究”と紹介されている。そう思って聴くと、成る程と思わせるところがないではない。これだけスリリングな曲展開をするのだが、どことなく哀愁が漂っているところが私をして魅了させられてしまうのである。更に、M9." Land"などのパーカッション、ドラムス、ベースそしてピアノのそれぞれの音の間の置き方など、とても若さの範疇で無く円熟したミュージシャンの世界と思わせる。
いやはやなかなかジャズ心と、民族の味の深さと、ピアノという楽器の曲に於いての占める位置を達観した世界とのミックスされたミュージックを作り上げたこのアルバムには脱帽の敬意を表したい。お見事。
(視聴)
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