フレッド・ハーシュFred Herschのピアノ・ソロ 「open book」
(今年聴いて印象に残ったアルバムを-2)
ハーシュの美学を・・・ピアノの響きと余韻がベストな録音で
<Jazz>
Fred Hersch 「{open book}」
Palmetto Records / USA / PM2186 / 2017
Fred Hersch (piano solo)
Recorded at JCC Art Center Concert Hall, Seoul, South Korea
Track 4 recorded live in concert, November 1, 2016 / All other tracks recorded April 1-3, 2017
注目の20分近くの話題の長曲M4." Through The Forest "(Fred Hersch)が、私の期待した彼のメロディーの美しさがあまり感じられなかった為、それ程感動モノでなかったと言うことで登場が遅くなったが・・・。しかし何度と聴いていると、そこはフレッド・ハーシュだけのことはあって、勿論彼の繊細なタッチの美学はちゃんと散りばめられているアルバムである。
又、録音も彼の弾くピアノ(Steinway)のソロ演奏音を適当な響きと余韻を描く好録音であって、その辺りも快感のアルバムである。
(Tracklist)
1 The Orb (Fred Hersch)- (6:26)
2 Whisper Not (Benny Golson)- (6:27)
3 Zingaro (Antonio Carlos Jobim)- (7:58)
4 Through The Forest (Fred Hersch)- (19:34)
5 Plainsong (Fred Hersch)- (4:51)
6 Eronel (Thelonious Monk/Sadik Hakim)- (5:40)
7 And So It Goes (Billy Joel)-(5:57)
M4. "Through The Forest"は、韓国のステージでの演奏録音版、19 分にわたるインプロもので、彼はこの演奏に関して、「予め考えたアイディアもセーフティ・ネットもなく、音楽的に、感情的に、到達したいところどこにでも趣くままに演奏した」と語っているとか。近年録音された演奏の中でも確かに注目に値するモノであると思うが、"Forest森林"と言うことの何か神秘的な世界感は十分に感じられる演奏だ。そしてその繊細なるタッチのピアノ音は彼ならではの世界であると納得するところ。ただ私の求めるリリカルなメロディーによる美学というところで無かったため、ちょっと空しさも感じられたのである。
一方スタジオ演奏版のオープニングのM1. "The Orb"の静かなるしっとりとした美しさ、 M5. "Plainsong"の優しさには堪能してしまう。A.C.JobimのM3. "Zingaro"も、心に優しく響く、なんとなくクラシックを聴いているようなハーシュの世界となって、聴き入ってしまった。
最後に何故かBilly Joelとなって、M7. "And So It Goes"を非常に聴きやすいメロディー・タッチでありながら哀愁も感じられるところがお見事であった。
やっぱり”ハーシュの美学”は生きているアルバムだ。
(視聴)
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コメント
風呂井戸さん,こんにちは。
このアルバム,"Through the Forest"の響きには戸惑うリスナーが多いとは思います。確かにHerschにしてはアブストラクトな感覚が強いです。ただ,私のブログにも書きましたが,こうした演奏が可能になるだけ彼の健康状態が復活したと言うことだと思っています。
もちろん,来年2月の来日時には,心をとろけさせてくれるようなソロ演奏を期待していますが。その前に来週,出張中にHerschのPocket Orchestraのライブを聞いてきます。あれもHerschにしては異色ですが,いろいろなHerschの側面を理解して,来年のソロを聞きたいと思います。
ということで,TBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年12月10日 (日) 17時33分
中年音楽狂さん、なかなか含蓄のあるコメント有り難うございます。
そうですか、,"Through the Forest"の評価、成る程言われてみればそうですね、異国に行ってのステージで、そこまで集中できるというのも彼の意欲が高揚していると言うことでもありますね。
おっしゃるように、単純に”リリカルなメロディーによる美学”を期待しての世界から、重病を克服しての彼の心も聴き込みたいモノですね。そんな価値のあるミュージシャンだと思います。
投稿: 風呂井戸(photofloyd) | 2017年12月10日 (日) 20時53分