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2017年11月 9日 (木)

大橋祐子トリオ「ワルツNo.4」

(今年聴いて印象に残ったアルバムを-1)
 もう11月、これからあっという間に年末になってしまうんですね。となれば、今年聴いたアルバムを整理しておくことにする。

スタジオとホール録音、「迫真の疲労」と「快感」の違い

<Jazz>
YUKO OHASHI TRIO 「WALTZ No.4」
TERASHIMA Records / JPN / TGCS-9672/9673 / 2017

No4w

大橋 祐子(piano)
佐藤 忍(bass)
守 新治(drums)
Recorded by 江崎友淑 (オクタヴィア・レコード)
Recorded by 佐藤宏章 (ランドマークスタジオ)

 寺島レコード10周年特別企画として昨年末にリリースされたアルバム。ジャズ・ピアニスト大橋祐子の4作目としてピアノ・トリオ作品を録音に凝って作成されたもの。もともと寺島靖国はオーディオ的にジャズ・アルバムを聴いてきた人であるし、こんなスタジオ録音(寺島サウンド)vsホール録音(大間知サウンド)の2枚組CDとして我々に聴かせてくれたのである。
 大橋祐子(東京都八王子市出身)は、もともとクラシック・ピアノを学び、2010年に寺島レコードより『PRELUDE TO A KISS』(TYR1018)でデビュー。その後の諸作に好評を得てきた女性ピアニスト。現在、佐藤 忍(bass)、守 新治(drums)とトリオを結成している。

★ このアルバムの注目点は、オーディオ的に楽しめると言うところだ。先ずは寺島靖国の納得のスタジオ録音、これには寺島靖国プロデューサーとランドマークスタジオ佐藤宏章によるもの。最近は「哀愁とガッツ」というタイトルが有名になった録音。そして今回は、なんとエソテリック社顧問にして、数々の高音質録音に携わる大間知基彰が、アコースティック録音でのオーディオ・マニアに絶大な信頼を得るオクタヴィア・レコード江崎友淑エンジニアと組んだ稲城市立iプラザホールにおける録音の2本立てのCD2枚組。

20170325014811_deco_2【DISC.1】 ホール録音盤
Recorded by 江崎友淑 (オクタヴィア・レコード)
サウンド・プロデュース:大間知基彰 (エソテリック株式会社)
2016年10月5日稲城市立iプラザホール録音

(Track List)
01. セント・ジェームズ病院 (Traditional)
02. エストレリータ (Manuel Ponce)
03. メキシコ (Harvie Swartz)
04. ホーム (Michel Petruccani)
05. ラヴ・ミー・テンダー (Traditional / Elvis Presley)
06. アイ・シンク・アイ・クッド・ビー・ハッピー (Magne Furuholmen)
07. ソー・イン・ラヴ (Cole Porter)
08. プルメリア (Yuko Ohashi)
09. ワルツ #4 (Yuko Ohashi)
10. セント・ジェームズ病院 (別テイク) (Traditional)


【DISC.2】 スタジオ録音盤
Recorded by 佐藤宏章 (ランドマークスタジオ)
サウンド・プロデュース:寺島靖国 (寺島レコード)
2016年9月30日横浜ランドマーク・スタジオ録音

(Track List)
01. セント・ジェームズ病院 (Traditional)
02. エストレリータ (Manuel Ponce)
03. メキシコ (Harvie Swartz)
04. 哀しみのダンス (Leonard Cohen)
05. ダニー・ボーイ (Traditional)
06. アンカー (Yuko Ohashi)
07. アワ・スパニッシュ・ラヴ・ソング (Charlie Haden)
08. アインダ・ベム (Marisa Monte)
09. ニュー・デイズ (Yuko Ohashi)
10. オヴァート (King Fleming)



 約一週間の間隔を開けての同メンバーによる演奏の2タイプ録音であるが、最初の3曲は若干演奏が違うが同一曲。やはり"セント・ジェームズ病院"が聴きどころ。
 まずはなんと言っても寺島サウンドのスタジオ盤の迫力。とにかく生々しいリアルな迫真のサウンド。 切れ味とソリッド感が抜群で有り、低音の重さと迫力も十分。まあドラマチックというところです。
 一方ホール録音は残響も含めてホール感はしっかりとあり、同一のピアノ(Steinway & Sons D274 Concert Grand Piano)とは思えない音色だ。まあこうゆうのをエレガンスな音と言うのだろう。バックのベース、ドラムスは、これは明らかにそのもののバックでの支えに録音されていてトリオ三つ巴というよりは、ピアノ中心主義だ。

W
                                                (寺島靖国)
 これ程異なる音となると、いやはや録音が如何に重要か思い知らされる。
 さてそこで結論を言ってしまおう。とにかく「スタジオ録音」寺島サウンドは凄い。聴いてみればもう文句は言えない迫力である。聴き始めのM01. "セント・ジェームズ病院 "を聴いた瞬間ゾクっとする迫真の迫力音。さてそこは凄いのだが、このCDを聴いていって解るが、ピアノ、ベース、ドラムスが同一の迫力で迫ってきて、そしてこの音ですから、数曲聴くとまず「疲労」に陥る。
 一方、このCDの後に「ホール録音盤」を聴くとベース、ドラムスの音が少々空しくなる。・・・・が、数曲聴き込んでいくと、その繊細にして優しさの音に快感の世界に流れ込むのである。
 さあ、この違いにどちらに軍配を挙げるのだろうか?、それはもう好みの世界であってということになる。さてそこで私の場合であるが、まず聴く時の状態でどちらかを選ぶことになるだろう。ガンガン聴きたい高揚した気分の時は、「スタジオ盤」。夜などに一人でゆったりと安らぎを求めて聴きたいときは「ホール盤」ということになるだろう。つまり両方欲張りだが欲しくなるのであるが、ミュージックを聴き込むとなればホール盤なんでしょうかね。

Photo ★ 最後に大橋祐子のピアノ演奏は?、と言うところだが・・・・目下過渡期ですね。 "セント・ジェームズ病院"はそれなりにジャズ色も感じられ意志がみられるが(10曲目の別テイクが良い)、しかし"エストレリータ"はどこでも聴かれる単なる演奏であって聴く人の心を呼び起こすところは無い。 " ソー・イン・ラヴ"は余韻の使い方に一歩前進あり。 "ワルツNo.4"そして"アンカー"は自己の曲だけあって聴き応えあり。 "哀しみのダンス"は、中盤以降の編曲部になってようやくそれらしくなる。 "アワ・スパニッシュ・ラヴ・ソング"は、こうした美旋律をどう熟すかがポイントだが、味付けはもう一歩。
  (余談)大橋祐子って鼻から口の辺りがダイアナ・クラールに似てますね(特に横顔)。ヴォーカルはどうなんでしょうか?。まさか親父声では?。

(視聴)   「ワルツNo.4」に関する映像が見当たりませんでした・・・・取り敢えず↓

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