Trio X of Sweden 「Atonement」
( 2017年に聴いて印象に残ったアルバムを-9 )
美メロによる快感と安心感・安堵感のアルバム
~良識ジャズの典型 ~
<Jazz>
Trio X of Sweden 「Atonement」
Prophone / SWE / PCD171 / 2017
レナート・シモンソンLennart Simonsson(p)
パー・ヨハンソンPer V Johansson(b)
ヨアキム・エクバーグJoakim Ekberg(ds)
レナート・シモンソン、パー・ヨハンソン、ヨアキム・エクバーグの3人によって2002年に結成されたピアノ・トリオ「Trio X of Sweden 」のニュー・アルバム。
調べてみると、この「Trio X of Sweden」はスウェーデン中部のウプサラ県が地域の音楽文化を支える目的で主宰する「ウプランドの音楽(Musik i Uppland)」のアンサンブルのひとつと言うことだ。1987年に「Trio con X」として発足、2002年から現在の名称で活動しているとのこと。
2012年に発表されたアルバム『Traumerei』は、クラシックをジャズアレンジした作品で好評を博したらしいが、私は未聴。ちょっと聴いてみたい気持ちになっている。
今回のこの最新アルバムは、映画音楽やポピュラーミュージックをカヴァーして、シモンソンはじめ彼等のオリジナル曲をも適度に配して、とにかく優しく優雅に聴かせてくれる。アルバム・タイトルの『Atonement』とは”償い”という意味で、これには結構深い意味を込めているのかも知れない。美しくメロディアスでエレガントな作品である。
(Tracklist)
1. I skymningen (Wilhelm Peterson-Berger) たそがれに
2. Somaoh (Lennart Simonsson)*
3. Atonement (Lennart Simonsson)*
4. Nå skrufva fiolen, Fredmans Epistel No 2 (Carl-Michael Bellman)
5. Wedding March (Felix Mendelssohn) 結婚行進曲
6. Urban Reconnection (Lennart Simonsson)*
7. Vallflickans Dans (Hugo Alfvén) 羊飼いの娘の踊り
8. Naomi (Per V Johansson)*
9. Utskärgård (Bobbie Ericson)
10. I hoppet sig min frälsta själ förnöjer, Swedish hymn No 325 (Trad. Hymn)
11. Liksom en herdinna, Fredmans Epistel No 80 (Carl-Michael Bellman) フレードマンの手紙
12. Theme from Schindler’s List (John Williams) シンドラーのリストのテーマ
13. Raindrops Keep Fallin’ on My Head (Burt Bacharach) 雨にぬれても
14. The Mulberry Tree (Lennart Simonsson)*
15. Send in the Clowns (Stephen Sondheim)
(*印:オリジナル曲)
このトリオの演奏は、まずは癖が無いといったところをまず感じますね。対象の曲も確かにジャズ、クラシック、トラッド、ソウル、ポップ、ロックとオールラウンドにこなします。もちろんピアニストLennart Simonssonを中心としての彼らのオリジナル曲も5曲登場している。ポピュラーに知られた曲も、勿論彼らなりきの編曲やインプロヴィゼーションの導入などが成されているが極めてオーソドックスなものに感じるし、なにかジャズの教科書的演奏に聴こえてくるんです。
オリジナル曲も非常に優しいし、聴く方には快感です。特にベーシストのヨハンソンの曲M8. "Naomi" は、なにか懐かしいメロディーで、郷愁におそわれる。そんな思いに連れて行ってくれる良い曲ですね。ベースによるメロディー、それに続くピアノに取って代わるメロディー両者の美しさにホッとするところです。
更にシモンソンのM14. " The Mulberry Tree "(Lennart Simonsson)は、そのピアノの奏でるやや不安げな美メロによるなかなかの名曲。
又なんとM5. " Wedding March" (Felix Mendelssohn)結婚行進曲まで登場するが、これが又結構静かな思索的ジャズに変身なんですね、これはちょっと驚き。
スウェーデンの賛美歌M10. " I hoppet sig min frälsta själ förnöjer, Swedish hymn No 325"などにも心安まります。
その他私にとってはジョン・ウィリアムズの「シンドラーのリストのテーマ」M12. "Theme from Schindler’s List" (John Williams)には美しさと懐かしさで参ったと言ったところです。
こんな良識と快い響きと安心感の漂ったアルバムも珍しい。誰にでも勧められるアルバムです。
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<追記> 2018.1.29
さっそく彼らの2012年のアルバム『Träumerei』(PROPHONE/PCD139)(→)を早速聴くことが出来ました。いやはやこれもにくいアルバムですね。冒頭にM1."Träumerei"が登場するも、美しい中にやっぱりジャズなんですね。トリオ・メンバーのインプロが展開します。そしてM3."Sound the Trumpet"でスウィングするジャズを惜しげも無く展開して圧倒してくる。これはうかうか油断成らないぞと思わせ、そしてその後美しいピアノ・トリオに名曲のオンパレードで又々引き込むのです。Mozartの M10."Lacrimsa"やBachのM11."Air"にはもうメロメロにされました。
(Tracklist)
1. Träumerei Robert Schumann 1810-1856 From Kinderscenen op 15
2. Vid Frösö kyrka / At Frösö Church Wilhelm Peterson-Berger 1867-1942From Frösö Flowers
3. Sound the Trumpet, Beat the Drum Henry Purcell 1659-1695 Welcome Ode for James II
4. Aria Johann Sebastian Bach 1685-1750 From The Goldberg Variations
5. Promenade Modest Musorgskij 1839-1881 From Pictures at an Exhibition
6. Moonlight Sonata Ludwig van Beethoven 1770-1827 Sonata No 14 op 27, 1st Movement
7. Roslagsvår / Swedish Polka Hugo Alfvén 1872-1960
8. Boléro Maurice Ravel 1875-1937
9. Largo Frédéric Chopin 1810-1849 From Preludes op 28
10. Lacrimosa Wolfgang Amadeus Mozart 1756-1791 From Requiem K 626 / Drick ur ditt glas Carl-Michael Bellman 1740-1795 Epistel No 30
11. Air Johann Sebastian Bach 1685-1750
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