フランク・ハリソン・トリオFrank Harrison Trio 「Lunaris」
ピアノによって語られる内省的、抒情的世界
<Jazz>
Frank Harrison Trio 「Lunaris」
Linus Records / UK /LRCD02 / 2014
Frank Harrison : Piano
Dave Whitford : Bass
Enzo Zirilli : Drums
これも寺島靖国コンピ・シリーズ『Jazz Bar 2017』(TYR-1061)の恩恵で知ることになったものだ。そこに登場した曲"My Love and I"(David Rassin)が収録されているのは、ピアニスト・フランク・ハリソンFrank Harrisonのトリオによるアルバム『Lunaris』である(2014年リリース)。私が注目することになったこのアルバムは、彼としては3作目の作品。
何時しかイギリスの”ピアノ詩人”と言われているらしいフランク・ハリソン。彼はバークリー音楽院で研鑽を積み、イギリスに戻ってからは自国の一流アーティストを中心に共演、活動を続けて来ている。オックスフォードを中心に活動しているようで、現在最もよい年頃を迎えている40歳だ。 彼のピアノ・トリオ作品としては、デビュー作は2006年に発表(アルバム『First Light』)。更に2012年にはLinus Recordsから2nd『Sideways』(LDCD01)をリリース。
(参考)その1stアルバム・・・・
『First Light』(Basho Music/SRCD152)→
FRANK HARRISON(p)
AIDAN O'DONNELL(b)
STEPHEN KEOGH(ds)
このアルバムはかなりの好評で彼が注目を浴びることになったものだという。そんなことから聴くことにしたのであるが、一部のピアノトリオ・ファンにひっそりと愛されて来ていたらしいが、私は今にして聴いているわけである。
当時28歳でのデビューだ。収録9曲で、彼のオリジナルは5曲。歳に似合わずといっていいのか、静寂な雰囲気を醸し出すのが得意で、やはり内省的にして静謐な音楽性に満ちている。ジャケも上のように地味ではあるが、部屋の床の一部にさしてきた陽の光を描いていて、その心を十分に表している。なかなかの好作品。
さて本題に戻るが、ここに取りあげたこの2014年の近作(3rd)では、ベース、ドラムスが変更されているが、相変わらず陰影に富んだクラシカルなタッチで不思議な宇宙空間を描く作品を作り上げているのだ。
(現トリオ・メンバー Harrison, Whitford, Zirilli)(Tracklist)
1.My Love and I
2.I'm Old Fashioned
3.Stars *
4.An Evening of Spaceships and UFOs *
5.Io *
6.Sunrise(Port Meadow) *
7.Ascent *
8.The Bird *
9.BoRG-58 *
10.The Recruited Collier
11.Emily
12:Stars II *
収録12曲中、8曲はハリソンのオリジナル(*印、内2曲(M4、M9)はトリオ・メンバー3人によるもの)。
M4."An Evening of Spaceships and UFOs "は注目曲。ピアノとベースの音とそこに見る間によって描くところが深遠。そして次第にテンポを上げてドラムスも活発に絡んで高揚して行く、この3者のインター・プレイが素晴らしい 。そして再び3者の音一つ一つが間を大切にしつつ静かな情景を描くM5."Io"に繋がって行く 。
一方M6."Sunrise(Port Meadow)"は如何にも明るく、美しい。
彼らはこのアルバムでは、宇宙空間に存在する世界の不思議さと地球の自然の美しさ、更にそこに存在する者達を描こうとしたのだろうか、M1."My Love and I"は抒情的な美しさで満ちている。
どうもこのアルバムは、それぞれの曲が独立しているのでなく、一つのコンセプトによってトータルに構築されていると思われた。
陰影のある中に、深遠な哲学的世界を美と叙情をもって描いているところは素晴らしい。
(視聴)
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