ヘルゲ・リエン&クヌート・ヘムHelge Lien, Knut Hem 「Hummingbird」
<My Photo Album (瞬光残像)> 2018-No8
「春到来」
ドブロ好きにはたまらないのかも・・・・しかし私にとっては欲求不満
<Jazz>
Helge Lien, Knut Hem 「Hummingbird」
Ozella Music / Germ. / OZ079CD / 2018
Knut Hem - Dobro / Weissenborn
Helge Lien - Piano
このアルバムは、今年に入って早々にお目見えしたものだが、私の狙いはノルウェーのヘルゲ・リエンのピアノ・プレイなのである。このところの彼は、昨年の前作であるヴァイオリニストのAdam Bałdychとの共作 『Brothers』(ACT9817-2)もそうだったが、今作も主役から降りて支え役のピアノ・プレイを披露している。おそらく・・・そうだろうと想像して、今まで聴かなかったのだが、少々暇になっての結果、ここに聴くに至ったというところなのである。
中身はリエンと同国ノルウェーのクヌート・ヘムKnut Hem(1963年-) とのアコースティック・デュオ作品と言っているが、全く対等の両者のインタープレイの作品という印象は無い。それは相い対する楽器との性質が大いに関係するところなのであろうが、今回はリエンのピアノの相手は、ギターの発展形のようなドブロそしてワイゼンボーン(ラップスライドギター)という楽器であり、その結果がこの作品だ。このギター系の持つやや強烈なサウンドを前面においての演奏であるので、ピアノはサポート役に甘んじ、主役的メロディーを奏でるのはドプロということになっている。それもおそらくこのアルバムの目的としたるところであったのだろうと推察され、まあ不思議は無いとしておこう。
(Tracklist)
1. Dis (03:58) *
2. Take Another Five (4:31) *
3. Winterland (7:20) *
4. Moster (3:27) #
5. Music Box (2:57) *
6. Rafferty (5:41) *
7. We Hide and Seek (4:39)
8. Hummingbird (6:42) #
(*印:Knut Hem #印:Helge Lien)
上のTracklistに見るように、曲はオリジナル曲が主体だが、クヌート・ヘムが5曲、ヘルゲ・リエンが2曲と、やはりこのアルバムの主役はヘムのドブロ/ワイゼンボーン(→)演奏とみてよいのだろう。やはり曲の展開はドブロが主役で、リエンのピアノはそれを支えるが如く、曲を優美に流している。
とにかくドブロは高く強く響く。これが好きな人にはたまらないかも知れないが、私自身は好みからは外れるといったところ。(それって不思議なのだが、ロックとなれば、エレキ・ギターが泣いて、キー・ボードはそれを支えるパターンで納得するんですが)
M4.". Moster" と M.6" Rafferty" では、ようやく彼のピアノ・メロディが少々聴けるので、なんとなくホッとする。
タイトル曲のM8." Hummingbird" はリエンの曲で、冒頭ピアノから入るが、彼のピアノの調べもドブロに打ち消される。いずれにしてもこの曲も穏やかに奏でられる美しい旋律が印象的なところだが、私としてはリエンのピアノの調べで聴きたいと思うのである。だが、なかなかそれも許されない。ここでも結局間奏程度に終わってしまう。
このアルバムは、ゆったりとした優しくほのぼのとしたメロディーの美しい曲集である。にも関わらず、結局何だったんだろう?と、若干欲求不満に終わったアルバムでもあった。
もともと私はよっぽどでないと、このようなギター系の楽器とピアノのデュオってあまり納得していない。それはピアノというものは、ギターやヴァイオリンとの関係では、その果たす役割が私の期待するところから薄れてしまう為かも知れない。
ここに見るが如く、ピアノの音とドブロのアンプを通しての音との関係とは、ピアノの調べが優位と言うことには録音による工夫というか操作がない限りはやはりあり得ないと思う。そしてその結果はドブロの世界に落ち着くのである。それがどうも空しいというのは、つまるところ"私の個人的好み"から来るモノといって良いのだろうが、それを如実に示されたアルバムであった。
お笑いであるが参考までに、・・・・ピアノにはやっぱりベースとドラムス(勿論、シンバルの音を含めて)が合いますね。だからその構成のピアノ・トリオが盛んなのでしょう。
(評価)
□ 曲、演奏 : ★★★★☆
□ 録音 : ★★★★☆
(参考視聴) Knut Hem のDobro演奏
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コメント
風呂井戸さま、風呂井戸さまのヘルゲ愛を深く感じました。
でも、このアルバムに参加したヘルゲの気持ちを考えて、、
これでも、いいのではないでしょうかねぇ?
わたしのほうからは、トラバいたしますね。
投稿: Suzuck | 2018年3月27日 (火) 20時24分
Suzuck様、同情のコメント、TB有り難うございます。
おっしゃるように、これはこれで良いのでしょうね(涙)。ただ私はあのドブロがダメなんですね。繊細さと品がどうも・・・・、私の個人的な問題かも知れません。
ところで、この春ポーランドのAdam BałdychとHelge LienがDuoで来日ライブですね(新潟でも)。ヴァイオリンとのDuoの方が良いですね。昔からヴァイオリン・ソナタというのもありますし。楽しみにしています。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2018年3月27日 (火) 21時46分