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2018年3月31日 (土)

エドガー・クネヒトEdgar Knecht 「DANCE ON DEEP WATERS」

<My Photo Album (瞬光残像)> 2018-No9

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「瞬光・・・・」  (Feb. 2018 撮影)

とにかくピアノの美旋律に酔う

<Jazz>
Edgar Knecht 「DANCE ON DEEP WATERS」

Ozella Music / Germ. / OZ 047 CD /2013

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Edgar Knecht(p), Rolf Denecke(B)、Tobias Schulte(Dr)、Stephan Emig(Perc)

2017jazzbar 昨年の寺島靖国の人気コンピレーション・アルバム『Jazz Bar 2017』(TERASHIMA RECORDS/TYR-1061)(→)の冒頭を飾ったEdgar Knecht による"Lilofee"という曲がある。これが又何とも言えないピアノの美旋律、色々と好きでこの道は聴いてきたとはいえ、とにかく私の知らなかったピアニストである。そんなことで探ってみたのがこのアルバム。
 これは2013年リリースものであって(その後のニュー・アルバムは無し)、遅まきながら寺島靖国は、2017年盤の「Jazz Bar」に選んでいるのだが、それは多分これを落としておいてはいけないと言うことだったのかも知れない。

 このエドガー・クネヒトEdgar Knecht はドイツのジャズ・ピアニストだ。1964年生まれというから、既に円熟期。
 これはピアノ、ベース、ドラムスのトリオに、曲によりパーカッションを加えてのカルテット作品で、1stアルバムは2010年の『GOOD MORNING LILOFEE』(OZ 032CD)で、それに続いてのこれは同メンバーによる2ndアルバムだ(Dr, Perc は若者)。それからすると彼名義のアルバム・デビューは、経過はわからないが遅咲きといえば遅咲きである。

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(Tracklist)
1.  Lilofee
2.  Gedankenfreiheit
3.  Tiefe Wasser
4.  Nachttraum
5.  Fenjas Lullaby
6.  Schwesterlein
7.  Frhling
8.  Wiegenlied

 全曲、エドガー・クネヒトのオリジナル曲構成だが、彼の自国ドイツのトラッド、フォークをベースにしての作品が主力のようだ。その為か、なんとも郷愁を呼ぶ優しさとメローなムードそのものの曲が出てくるのだ。彼のピアノの美旋律もこれでもかとふんだんに散りばめられている。
 特にM1. " Lilofee" 、M3. " Tiefe Wasser"、 M5. " Fenjas Lullaby" とそこにある美的世界は、ユーロ独特のクラシック調のすがすがしさも感じられる。
 M6. " Schwesterlein"を聴いてみて解るが、ピアノ以外にもベースにもどこか美の味付けのあるところが感じられ、その活躍も快感である。この曲は後半のアップテンポに於いてみられるパーカッションの活躍と、カルテット4者の息が合っている様は極めて印象は良い。
  M7. " Frhlig"この曲のように、いかにも民族フォークの流れからの曲もある。
 最後のM8. "Wiegenlied" は、ゆったりと静かな中にこのアルバムの価値感を高めるべく郷愁と思索の心の安まる世界を演出していて、クネヒトの心が滲んでいるようにも聴けた。

 オーソドックスなピアノ・トリオにパーカッションを加えたこのカルテット構成は、クネヒトにとっては納得してのパターンとして演じてきているようだ。とくに長めの曲はスタートはピアノの美しく優雅な調べからスタートして、次第に後半にアップ・テンポに変化して締めくくるパターン。そのアップ・テンポにおいてパーカッションが生きてくる(M2, M4, M6)。
 どこかクラシック調の流れもあって品行方正(笑)にしてオーソドックスなアルバムといったところで、あらゆるミュージック・ファンに愛されそうだ。

(評価)
□ 曲・演奏: ★★★★★ (ジャズの芸術性を極めるというので無く、あらゆるジャンルに適応する世界を描ききったところを評価)
□ 録音    : ★★★★☆

(視聴)

**

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2018年3月27日 (火)

ヘルゲ・リエン&クヌート・ヘムHelge Lien, Knut Hem 「Hummingbird」

<My Photo Album (瞬光残像)>       2018-No8

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「春到来」        

ドブロ好きにはたまらないのかも・・・・しかし私にとっては欲求不満

<Jazz>
Helge Lien, Knut Hem  「Hummingbird」
Ozella Music / Germ. / OZ079CD / 2018

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Knut Hem - Dobro / Weissenborn
Helge Lien - Piano


  このアルバムは、今年に入って早々にお目見えしたものだが、私の狙いはノルウェーのヘルゲ・リエンのピアノ・プレイなのである。このところの彼は、昨年の前作であるヴァイオリニストのAdam Bałdychとの共作 『Brothers』(ACT9817-2)もそうだったが、今作も主役から降りて支え役のピアノ・プレイを披露している。おそらく・・・そうだろうと想像して、今まで聴かなかったのだが、少々暇になっての結果、ここに聴くに至ったというところなのである。

 中身はリエンと同国ノルウェーのクヌート・ヘムKnut Hem(1963年-) とのアコースティック・デュオ作品と言っているが、全く対等の両者のインタープレイの作品という印象は無い。それは相い対する楽器との性質が大いに関係するところなのであろうが、今回はリエンのピアノの相手は、ギターの発展形のようなドブロそしてワイゼンボーン(ラップスライドギター)という楽器であり、その結果がこの作品だ。このギター系の持つやや強烈なサウンドを前面においての演奏であるので、ピアノはサポート役に甘んじ、主役的メロディーを奏でるのはドプロということになっている。それもおそらくこのアルバムの目的としたるところであったのだろうと推察され、まあ不思議は無いとしておこう。

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(Tracklist)
1. Dis (03:58) *
2. Take Another Five (4:31)  *
3. Winterland (7:20) *
4. Moster (3:27) #
5. Music Box (2:57) *
6. Rafferty (5:41) *
7. We Hide and Seek (4:39)
8. Hummingbird (6:42) #
      (*印:Knut Hem  #印:Helge Lien)


Formhall112017holnsteiner049web 上のTracklistに見るように、曲はオリジナル曲が主体だが、クヌート・ヘムが5曲、ヘルゲ・リエンが2曲と、やはりこのアルバムの主役はヘムのドブロ/ワイゼンボーン(→)演奏とみてよいのだろう。やはり曲の展開はドブロが主役で、リエンのピアノはそれを支えるが如く、曲を優美に流している。
 とにかくドブロは高く強く響く。これが好きな人にはたまらないかも知れないが、私自身は好みからは外れるといったところ。(それって不思議なのだが、ロックとなれば、エレキ・ギターが泣いて、キー・ボードはそれを支えるパターンで納得するんですが)

 M4.". Moster"
と M.6" Rafferty" では、ようやく彼のピアノ・メロディが少々聴けるので、なんとなくホッとする。
 タイトル曲のM8." Hummingbird" はリエンの曲で、冒頭ピアノから入るが、彼のピアノの調べもドブロに打ち消される。いずれにしてもこの曲も穏やかに奏でられる美しい旋律が印象的なところだが、私としてはリエンのピアノの調べで聴きたいと思うのである。だが、なかなかそれも許されない。ここでも結局間奏程度に終わってしまう。

 このアルバムは、ゆったりとした優しくほのぼのとしたメロディーの美しい曲集である。にも関わらず、結局何だったんだろう?と、若干欲求不満に終わったアルバムでもあった。

 もともと私はよっぽどでないと、このようなギター系の楽器とピアノのデュオってあまり納得していない。それはピアノというものは、ギターやヴァイオリンとの関係では、その果たす役割が私の期待するところから薄れてしまう為かも知れない。
 ここに見るが如く、ピアノの音とドブロのアンプを通しての音との関係とは、ピアノの調べが優位と言うことには録音による工夫というか操作がない限りはやはりあり得ないと思う。そしてその結果はドブロの世界に落ち着くのである。それがどうも空しいというのは、つまるところ"私の個人的好み"から来るモノといって良いのだろうが、それを如実に示されたアルバムであった。
 お笑いであるが参考までに、・・・・ピアノにはやっぱりベースとドラムス(勿論、シンバルの音を含めて)が合いますね。だからその構成のピアノ・トリオが盛んなのでしょう。

(評価)
□ 曲、演奏 : ★★★★☆
□ 録音   : ★★★★☆

(参考視聴) Knut Hem のDobro演奏

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2018年3月24日 (土)

メラニー・デ・ビアシオMelanie De Biasio 「LILIES」

<My Photo Album (瞬光残像)>       2018-No7

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「異世界」       (Feb. 2018  撮影)


ダークな世界はその止まるところを知らない・・・

<Jazz, Blues, Soul, Rock>
Melanie De Biasio 「LILIES」
Hostess Entertainment / JPN / HSE-4286 / 2017

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Melanie De Biasio : Vocals
Pascal Paulus : Piano, electric Guitars, Clavinet
Pascal Mohy : Piano
Dre Pallemaerts : Drums

 個性派女性ジャズ・ヴォーカリストと言えば、なんといってもこのベルギーのメラニー・デ・ビアシオでしょうね。自己のオリジナル曲を中心に彼女の描く世界は類をみないダークの中に社会派とも思えるメッセージを感ずるところだ。又そればかりでなく女性独特の人生観に自己を裏切らずに訴えているところだと思う。しかも唄もうまい。私の最も注目している一人で、ここでは数回目の登場である。

 そのメラニーの最新盤はつい昨年10月に思ったより早くにリリースされた。遅まきながらここに登場だ。
 今回のアルバムは前作のEP盤『BLACKENED CITIES』(PIASLO-50CD/2016)を別にして3枚目のアルバムだ。なにせ1stアルバムが『a stomach is burning』(IGL193/2007)という強烈なタイトルでデビュー、2ndアルバム『NO DEAL』(PIASR-690CDX/2014)では、そのダークな特異性と音楽性の高さによって圧倒的賞賛を得た。そして直近EP盤『BLACKENED CITIES』では、そのダークさと深刻さが一層増し、もう救う道すらあり得ないところまで沈みきった。そしてその後の今作、果たして何処へ行くのかと興味津々であったのだ。

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1.  Your Freedom Is The End Of Me *
2.  Gold Junkies *
3.  Lilies *
4.  Let Me Love You *
5.  Sitting In The Stairwell *
6.  Brother *
7.  Afro Blue
8.  All My Worlds *
9.  And My Heart Goes On *

                            (*印 Original)

  例の如く音は少ないが深みがある。又その余韻が効果抜群、そして低音から響くメラニーの歌声。それでも冒頭のM1. "Your Freedom Is The End Of Me"は、過去の一連の曲からすればリズムとメロディーの豊富な流れで音もクリア、前作とは異なるスタート。
 なかなか難解なM2." Gold Junkies" 、これも思いの外アップテンポの軽快な曲。しかし決して彼女のヴォーカルは明るくない。この"黄金の中毒者"(?)というのが彼女の重大テーマ、EP盤の前作から続いている。
  M3. "Lilies"になって、いよいよメラニー節の登場。 暗く不安の世界から何処かに光明があるのか?。
  M4. " Let Me Love You" ラブ・ソング?、深刻の愛?。もちろんメラニーの詩"あなたを愛させて、でなきゃ私を刺し殺して・・・ちゃんと殺して、息を引き取るまで・・・でもベイビー私は生きている、だからあなたは私のものになるはず"。
 彼女はもともとフルート奏者、M7. "Afro Blue"でようやくその音が聴ける。
 M8. "All My Worlds" 深く静かに沈み行く世界に更に深くメラニーのスローな歌声。
 M9. "And My Heart Goes On" 深く陰鬱に、唄うと言うよりは・・語り、しかしそこに不思議なメロデイーが流れている。

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 相変わらず総じて暗い。彼女の唄声にしても深く重く暗い。しかしそこに引き込むパワーは凄い。相変わらず背筋にゾクゾクくる世界だ。

 メラニー・デ・ビアシオは、ジャズ、ブルース、ソウルの影響を受けるというベルギー出身のまさに個性派シンガー(1978年生まれ、父はイタリア人、母はベルギー人)。その歌唱力と、音と余韻を曲に仕上げる抜群の能力を身につけている。ベルギーの名門大学ブリュッセル王立音楽院で音楽を探究。2007年に発表したデビュー・アルバム『ア・ストマック・イズ・バーニング』から注目を浴び、2ndアルバム『ノー・ディール』は絶賛を浴びた。2015年、2016年と"モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン"出演のため来日している。

  • (評価)
    □曲・演奏     ★★★★☆
    □唄             ★★★★★
    □録音          ★★★★☆
  • (視聴)

    **

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    2018年3月21日 (水)

    ジャズとオーディオ 寺島靖国「テラシマ円盤堂~曰く因縁、音の良いJAZZ CD ご紹介」

    <My Photo Album (瞬光残像)>       (2018-No6)

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    「待つ」   (Feb. 2018 撮影)

    オーディオ的感覚でジャズを聴く楽しさ

    <書籍>
    ONTOMO MOOK
    寺島靖国「テラシマ円盤堂~曰く因縁、音の良いJAZZ CD ご紹介」


    音楽の友社 2018年3月1日発行

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     こうゆう書籍の発行されるのは歓迎ですね。主たる内容は雑誌「STEREO」雑誌と「レコード芸術」に連載された記事の総集編である。今やジャズ愛好家の中では知らない人はいないと言われるぐらいのジャズ評論家であり、寺島レーベルでCDのリリース、そして本来のジャズ喫茶のマスターというトリプルに活躍中の寺島靖国の執筆ものだ。

     なんといっても、「STEREO」誌の「寺島円盤堂」は2013年からの56題、毎月一題であるので5年分。又「レコード芸術」誌の「クラシック・ファンのための音のいいJAZZ CD」が60題、これも5年分という総集編。興味のある私にはいっぺんにこうして見れるのは有り難い。もう忘れていたものも多く、懐かしく見れるところも楽しいのである。

    Photo_2▶ 巻頭言「オーディオでジャズを楽しむ悦楽」
    寺島靖国と言えば、ジャズ・ファンであると同時にオーディオ・ファン。なにせここでも書いているが、彼はCDの評価に音楽とオーディオどちらに重きを置くかという事になると、それは”7:3”でオーディオという位の大将である。これはまさに極端だろうと思うが、私だったらと考えると”7:7”と言いたいですね。それじゃ10を越えていると言われるが、”5:5”とは言いたくない。つまり両方極めて重要と言いたいのです。こんな話は余談だが、そんなファン心をしっかり掴んだ寺島靖国の話は100%賛成とは言わないが、極めて興味深く又参考になる話なのである。
     もともと今日の若者には、かってのオーディオ・ブームなんかは知らないわけで、とにかく秋葉原の電気街は殆どがオーディオ関係で一色になった時代を過ごしてきた私のような高齢者は、極めてオーディオには関心があるのである。

    総集編「寺島円盤堂」
     
    ここで面白いのは2013年8月号の「ジェーン・モンハイトはCDを聴くにかぎる」ですね、ジャズ・クラブのライブに赴いたら、ロシアの中年婦人がジェーン・モンハイトの顔をして現れた。・・・・と、やはり女性ヴォーカルは、CDによって性能の良いオーディオ装置で、自分にとって魅力ある女性を頭に描きつつ聴くのが良いってことですかね。
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     一方この企画の中でも、やはり録音技師の重要性を訴えていますね、特に注目は最近のイタリアのステファノ・アメリオ(ex : Alessandro Galati Trio盤など)(→)、フランスのヴァンサン・ブルレ(ex : Georges Paczynski Trio盤など)ですね。この点は私も最近非常に注目しているところです。彼はブルレがお気に入りのようだが、私はどちらかと言えばアメリオですね。

    「クラシック・ファンのための音のいいJAZZ CD」
    Cottonw 
    寺島靖国とすれば、ヘイリー・ロレン(→)とかカレン・ソウザはやっぱり注目株のようですね。
     又イゴール・ゲノー・トリオのアルバム『ROAD STORY』の低音を代表的に録音の素晴らしさを書いています。実は私はこのアルバムのリリース当時に、このブログで取りあげているんですが、私の評は”このトリオはなかなか三者のバランスのとれた演奏の展開で、今後も私のような抒情派には向いている。まさに期待株である。又、このアルバムは録音も良く、ピアノの音は勿論、ベースの響き、ドラムス、シンバルの音などクリアーで良い”と当時書いていて、フムフムと寺島靖国の評価にニンマリしているんです。
     又面白いのはキース・ジャレットは嫌いのようだが、私のお勧めの1980年代末のアルバム『Changeless』(ECM/POCJ-2016)は評価しているようですね。

    ▶ 「寺島靖国ジャズオーディオ世界」
     さて、この本には上記の2つの総集編の他に、巻頭言と「寺島靖国ジャズオーディオ世界」と称して①から⑧までの8つの特集も収載されている。

    Contralaindw①ジャズオーディオ世界遺産 ~この音を聴け CDベスト10
       
    Bobo Stenson Trio「Contra La Indecision」(→)が入ってます
    ②巻頭対談 寺島靖国Vs後藤雅洋「ジャズとオーディオの濃密な関係」
       
    かってのシャズにはJBLという絶対論が懐かしい
    ③クロスポイント/音楽とオーディオの交差点~お気に入りディスクは、こんなシステムで 対談寺島靖国×山之内正(オーディオ評論)
       
    ジャズとオーディオ・システムの関わり方
    ④試聴室のオーディオシステムとジャズ喫茶Megのオーディオシステム
       
    CD再生の装置に於けるポイント-ケーブルの話、スーパーツイーターの話
    ⑤ジャズオーディオ、気になる機器探検
       
    スピーカー論
    ⑥クロスポイント/音楽とオーディオの交差点~お気に入りディスクは、こんなシステムで 対談寺島靖国×鈴木裕(オーディオ評論)
    ⑦「メグ・ジャズ・オーディオ愛好会」イベント紹介/林正儀
       
    人それぞれのオーディオ感覚
    ⑧「寺島レーベル推薦盤レビュー」音で聴くジャズを実践。オーディオファンにも好評なCD/林正儀

     なかなかここまで多くのジャズ・アルバムを取りあげて、オーディオ的感覚で聴いて行こうという評価をするのもそう多いわけでなく、その為結構面白く見れた本でした。
     もともと寺島靖国は、ピアノ・トリオ・ファンであったり、ユーロ・ジャズに興味は深いと言うことなど、私からみればその点も同感であって、そんな為かこの冊子は親近感を感じた点でもあったかも知れない。
     更に現実的なオーディオ機器における装置の改善のポイントなどの話の特集もあって、そこそこに興味をそそって参考になったというところです。

    (PS) 私はステファノ・アメリオStefano Amerio派という話をしましたが、その好例は、Alessandro Galatit『WHEELER VARIATIONS』(SCOL-4024)にて聴くことが出来ます。

    (参考視聴) 寺島靖国ジャズ喫茶「Meg」

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    2018年3月18日 (日)

    ヨアヒム・キューンJoachim Kühn New Trio 「Love & Peace」

    <My Photo Album (瞬光残像)>       (2018-No5)

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      「垂直-融解」       (Feb.2018 撮影)

    ニュー・ピアノ・トリオの目指すものは?

    <Jazz>
    Joachim Kühn Trio 「Love & Peace」
    ACT / Germ / ACT9861-2 / 2018


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    Joachim Kühn(p), Chris Jennings(b), Eric Schaefer(ds)
    Recorded by Gerard de Haro at Studios La Buissonne, France, May 15&16,2017

     2015年に新結成して『Beauty & Truth』(2015 年7 月録音) をリリースし、2017年のECHO Jazz Awardにおいて、ベスト・ジャーマン・アンサンブル賞を受賞したドイツのピアニストのヨアヒム・キューンのニュー・トリオ。そしてその第2弾である最新作がここに登場した。

     ピアニストにしてコンポーザーのヨアヒム・キューンは1944年生まれで既にベテランそのものの域に入っている。過去のトリオといえば、30年前の1980 年代に結成したJ.F. ジェニー・クラーク(b)、ダニエル・ユメール(ds)とのトリオが圧倒的に有名。なかなか先鋭的なインプロヴィゼーションが話題で有りながら、そこに美的なセンスがあって人気があった。しかしメンバーを早くに失ったことから、トリオは1998年にて終結してしまっていた。それが十数年経てのここに来て、2015年にクリス・ジェニングス(b)と、エリック・シェーファー(ds)という若いメンバーと”ニュー・トリオ”と称して再び活動を再開したので、否が応でも話題になっているのである。

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                   (New Trio)
    (Tracklist)
    1.  Love And Peace (Joachim Kühn)
    2.  Le Vieux Chateau (Modest Mussorgsky)
    3.  Christal Ship (The Doors)
    4.  Mustang (Joachim Kühn)
    5.  Barcelona - Wien (Joachim Kühn)
    6.  But Strokes Of Folk (Joachim Kühn)
    7.  Lied ohne Worte No. 2 (Eric Schaefer)
    8.  Casbah Radio (Chris Jennings)
    9.  Night Plans (Ornette Coleman)
    10.  New Pharoah (Joachim Kühn)
    11.  Phrasen (Joachim Kühn)


     収録曲をみるとキューン自身の曲が6曲、メンバーの曲が2曲と、11曲中8曲はオリジナル曲という構成で、ここにも意気込みを感ずる。アルバム・タイトル曲のキューンの"Love And Peace" はオープニングに登場して、2分足らずの曲で、意外と聴きやすいなぁ~といった雰囲気を作る。取り敢えずの印象だが、心配するほどの先鋭性は感じられない、彼もこうして若いメンバーと組して意外に達観したおとなしさに落ち着いたのだろうか?。
     MussorgskyのM2. "Le Vieux Chateau"がいいですね。要所要所に懐かしいメロディーがピアノによって顔を出して楽しませてくれる。
     前半数曲は珍しいことに彼の前衛性、先鋭的なところは殆どみせずに聴きやすいトリオに徹している。M4. " Mustang"なんかはリズムカルで軽快で明るくて驚きますね。
     M5.  "Barcelona - Wien"がなんとも美しい。バルセロナからウィーンへの飛行機の中で作曲されたいうのだが、クラシック的フレージングにやや哀愁帯びた美ジャズが交錯して面白いのである。私はこの曲が一押しだ。
     M10. " New Pharoah"になると前衛的なインプロヴィゼーションがやはり顔を出して、M11. " Phrasen"に流れて行くのだが、このあたりはキューンの面目躍如といったところ。

     いずれにせよ、総じてかなり聴きやすいアルバム仕立てで、ホッとするのである。
     えらい聴き惚れて・・・と言うよりは、期待が大きかったせいか、う~~んまあそんなところかなぁ~~と、それなりにと言ったアルバムであった。
     さて、このニュー・トリオはキューンにとっても如何なるところを目指してゆくのか?、まだ私には明確に見えてこない。そんなところが目下の特徴と言えば特徴なのだろうか。
    (評価)
    □ 曲、演奏 : ★★★★☆
    □ 録音    : ★★★★★

    (視聴)

     

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    2018年3月14日 (水)

    ブラッド・メルドーBrad Mehldau 「After Bach」

    <My Photo Album  瞬光残像>  2008-No4

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          「生」      (Feb.2018 撮影)
    (当アルバムBrad Mehldau「After Bach」の最後の曲 "Prayer for Healing"に対しての一枚↑)

    これは今期の注目作だ!:バッハにメルドー流即興で挑戦

    <Jazz>
    Brad Mehldau 「After Bach」
    NONESUCH / USA / 7559-7931-0 / 2018

    Afterbach

    Brad Mehldau (piano)
    Recorded April 18-20, 2017 at Mechanics Hall, Worcester, MA

     いっや~~これは恐ろしいアルバムの登場だ。もともとバロックとして愛されているJ.S.バッハというのは、即興の大家とも言われており、そのJ.S.バッハの「平均律クラヴィーア曲集」から4前奏曲と1フーガの5曲を取り上げ、なんとそれらの後に、それぞれ対応する曲にインスパイアされたブラッド・メルドーにより作られた”After Bach”(バッハにかんがみて・・)オリジナル曲がおそらく即興を主体として続くという驚異の世界。

     バッハに挑戦したジャズは数多いが、私のジャズへの入り口であった50年以上前のフランスのジャック・ルーシェを思い起こし、ジョン・ルイス盤やら、大御所キース・ジャレットの挑戦、更に近年はエドワール・フェルレ、又変わり種セルジュ・デラート・トリオの『Comme Bach...』(ASAWANO084)などもあるが、それらとも全く異なったメルドー流バッハ・ジャズを大胆不敵にピアノ・ソロで演じて見せた。

    Bm1w(Tracklist)
    1. Before Bach: Benediction *
    2. Prelude No. 3 in C# Major from The Well-Tempered Clavier Book I, BWV 848
    3. After Bach: Rondo *
    4. Prelude No. 1 in C Major from The Well-Tempered  Clavier Book II, BWV 870
    5. After Bach: Pastorale *
    6. Prelude No. 10 in E Minor from The Well-Tempered Clavier Book I, BWV 855
    7. After Bach: Flux *
    8. Prelude and Fugue No. 12 in F Minor from The Well-Tempered Clavier Book I, BWV 857
    9.After Bach: Dream *
    10.Fugue No. 16 in G Minor from The Well-Tempered Clavier Book II, BWV 885
    11.After Bach: Ostinato *
    12.Prayer for Healing *

      収録曲は上記の通りで、*印がメルドーのオリジナル曲。オープニングにメルドーによるM1."Before Bach: Benediction"を配置し、それも如何にも導入部は完全にバッハのバロック流の世界を覗かせ、次第にメルドーの世界。そして締めくくるのも彼によるM12."Prayer for Healing"。バッハの曲は5曲、そしてそれをテーマにしたメルドーの5曲が並ぶ作品。何という発想か、それはメルドーだから出来るバッハ解釈なのかも知れない。いやはや解釈というか彼のバッハの曲から描く世界を彼のオリジナル曲として展開させる手法により、見方によってはバッハを越えようという一つの手法にも取れる。

     とにかくM2,4,6,8,10のバッハの5曲を、やや短めではあるがバロック・クラシック曲として軽快にパーフェクトに再現し、それに対しての彼の多分おそらく即興が主体であろうオリジナル・イメージ曲をM3,5,7,9,11と5曲展開する。例の如く左手演奏を巧みに織り込んでのメルドー・ピアノには聴き惚れるのである。
     そして彼のオリジナル曲は不思議にバロック世界を巧みに聴かせながらも、更になんと彼独特のスリリングな展開すらする前衛性をも加味ところは圧巻で緊張感すら持つのだ。従って、バッハの曲に移るとむしろほっと気持ちが安まるところもあるから面白い。

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     そして締めくくりのメルドーの終曲M12."Prayer for Healing" にこれ又痺れる。この安定感、この安堵感は凄い。メルドー自身が為しえたこのバッハへの挑戦に、それに対して11分以上に及ぶ曲を展開し、長年に渡る自己のミュージシャンとしての世界、いやここまで歩んで来た人生を回顧しているのではないかと思わせる素晴らしい世界だ。この郷愁の美的世界、安堵の祈りの境地は為しえた者のみの世界と言えるように思う。
     これはクラシックか、ジャズかと言う以前のメルドーのバッハに対する自己の発見なんであろうと結論づけるところだ。いまやジャズ・ピアニストのナンバー1とも言えるブッド・メルドーの成せる技、恐るべし。

    (試聴)

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    2018年3月11日 (日)

    キース・ジャレットKeith Jarrett Gary Peacock Jack Dejohnette 「After The Fall」

    <My Photo Album 瞬光残像>                  (2018-No3)

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    「回想」                                        (Feb,2018 撮影)


    キース復活直後の”トリオ・ジャズ第一号録音”の登場だ!

    <Jazz>
    Keith Jarrett, Gary Peacock, Jack Dejohnette
    「After The Fall」

    ECM / Germ / ECM2590/91 /2018


    Afterthefall

    Keith Jarrett (piano)
    Gary Peacock (double bass)
    Jack DeJohnette (drums)
    Recorded live in concert November 14, 1998New Jersey Performing Arts Center; Newark, New Jersey
    Produced by Manfred Eicher

     大御所のキース・ジャレット・トリオのニュー・アルバムの登場だ。しかしなんともう20年前の録音もの。慢性疲労症候群という難病に冒され、1996年のソロ・ツアーをもって休養に入った後、復帰したのは1998年。ついこのあいだの事ような気でいたがもう20年前になるんですね、その復帰後初のトリオ・ライブとして今回話題になっているものだ。ニュージャージー・パフォーミング・アーツ・センターで行われたライヴの音源。
     今まであの復帰してのトリオ第一号アルバムは、2000年にリリースされた人気のパリの1999年録音モノ『Wisper Not』(UCCE-1004/5)であったのだったが、今回のこれはまさにそれこそ正真正銘復帰トリオ第一号として当然ここに注目してしまう代物なのだ。
     しかもキース自身が「改めてこのコンサートの音の素晴らしさに驚いた。これは私にとって病気からの復活を示すドキュメンタリーというだけでなく、本当に素晴らしいライヴなんだ。」と語っているようだ。

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    (Tracklist)
    Disc 1
    1.  The Masquerade Is Over (Live)
    2.  Scrapple From The Apple (Live)
    3.  Old Folks (Live)
    4.  Autumn Leaves (Live)枯葉
    Disc 2
    1.  Bouncin’ With Bud (Live)
    2.  Doxy (Live)
    3.  I’ll See You Again (Live)
    4.  Late Lament (Live)
    5.  One For Majid (Live)
    6.  Santa Claus Is Coming To Town (Live) サンタが街にやってくる
    7.  Moments Notice (Live)
    8.  When I Fall In Love (Live)

    Kj1w 収録曲は上のようだが、アルバム『Wisper Not』とは、Disc2のM1. "Bouncin’ With Bud"M8. " When I Fall In Love "が共通しているが、このアルバムも全てがスタンダード曲で埋められている。
     中でもDisc1のビル・エヴァンスから始まって誰もが演ずるM4. " Autumn Leaves (枯葉)"だが、13分に及ぶハイテンポにしてインプロヴィゼーション豊富な構成で起承転結が見事に計算された曲に仕上げられていて驚いた。う~~ん成る程キースの世界はこれだけリアルタイムに即興しながらも計算し尽くされているところを見せつけるのだ。
     Disc 2の、演奏面の味つけに重点が於かれている事が一層濃い思われるソニー・ロリンズのM2. " Doxy "やジョン・コルトレーンのM7. "Moments Notice"なども登場させて、キースの回復を祝しているかのような展開もみせている。
     M3. " I’ll See You Again"M4. " Late Lament" にみるムードは、私の感覚では、ちょっとした人まばらな深夜の酒場のムードを連想して、私の好むところなのだ。それをこのライブに於いて聴かせてくれたというのは、やはり彼は復活した事を彼自身とオーディエンスとでお互いに実感しているようにも思えた。
     更にM6. " Santa Claus Is Coming To Town"などお馴染み曲を披露したのは、聴衆サービスにも配慮しているキースがみて取れる。

    Themelodyatnighteithyou 1998年に復帰第一作目として発表されたピアノ・ソロ作品『The Melody At Night, With You』(POCJ-1464)(→)や、更に2000年には、パリでのトリオ・ライヴを収録した先述の『Wisper Not』と、この二作でキースの復活を実感して喜びに浸った事を思い出す。そして嬉しいことに、今再び感慨深くこのアルバムに接することが出来たのである。

    Atthedeer1_2ついでに一言、今回のジャケ・デザインはそれなりに芸術性は高いのでしょうが、私はキースの病気の少々前の『At The Deer Head inn』(POCJ-1225)(→)のようなタイプの方が好きなんですね。こうした懐古的アルバムは何かその時代を感じさせるようなものであったらどうなんでしょうね。

    (参考視聴)

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    2018年3月 8日 (木)

    福盛進也トリオShinya Fukumori Trio 「For 2 Akis」

    <My Photo Album (瞬光残像)>   (2018-No2)

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           「輝き」                                     (Feb. 2018 撮影)


    日本とヨーロッパの美学の結合~品格のある名盤

    <Jazz>
    Shinya Fukumori Trio 「For 2 Akis」

    ECM / GERM / ECM2574 / 2018

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    Matthieu Bordenave (tenor saxophone)
    Walter Lang (piano)
    Shinya Fukumori 福盛 進也 (drums)

    フランス Pernes-les-Fontainesの(Studio) La Buissonneにて2017年3月録音

     このところリリースされたECM盤の中でも注目されているアルバム。なんと日本とフランスとドイツの美学の結合だ。ベース抜きのピアノ、サックス、ドラムスのトリオ作品。バンド・リーダーは日本人福盛 進也、彼のドラムスがシンバルの繊細にしてスリリンクな音を主体にして響く。ピアノはウォルター・ラングとくるから聴きたくなりますね。

    (Tracklist)
    1. Hoshi Meguri No Uta  星めぐりの歌(宮澤賢治)
    2. Silent Chaos
    3. Ai San San 愛燦燦(小椋佳)
    4. For 2 Akis
    5. The Light Suite : Kojo No Tsuki荒城の月(滝廉太郎)/ Into The Light / The Light
    6. No Goodbye
    7. Spectacular
    8. Mangetsu No Yube 満月の夕(中川敬&山口洋)
    9. Emeraude
    10. When The Day Is Done
    11. Hoshi Meguri No Uta星めぐりの歌 (var.)

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     私はうるさいサックスはお断りなのだが、ここに響くマシュー・ボーデネイヴ(フランス)のテナー・サックスはユッタリとしていてソフトで、その役割はメロディーをしっとりと流すというところで落ち着いている。そうですね、ECM盤ですからそんなところです。そしてウォルター・ラング(ドイツ)のピアノは前衛的なところはお預けで、例の如くの優しく自然の姿を描くが如くの美的センスで演じられている。福盛 進也のドラムスもやや後方に位置して録音され切れ味のよいシャープな響きだが、けっして前面に出るというスタイルでなく、シンバルの響きも快い。

     M1. "Hoshi Meguri No Uta" は、曲が曲だけに懐かしい郷愁感があって聴き惚れる。
     M2. "Silent Chaos" のように静かなシンバルとブラッシングの中に、ピアノが美しく語り始めるパターンは良いですね。後から顔をだすサックスは無くとも十分世界を描ききっていると思うのだが・・・・これは私の好みですけど。
    Sfrbp5833s_2 M5. "The Light Suite : Kojo No Tsuki/ Into The Light / The Light"が面白いですね。荒城の月の世界から広がり発展する宇宙空間までを、ややスリリングな展開をも加味してのドラムス・プレイをみせるジャズの味を忘れずに描ききっている。
     まあジャケ・デザインにみる都会的な世界と言うよりは、日本の郷愁を呼ぶ曲を取り混ぜて、デリケートにして優しく懐かしの哀愁感があるところを描いて、牧歌的な自然の中の人間の美を感ずるところにある。
     トリオの洗練されたインター・プレイも見事で、愛される要素のたっぷりとあるアルバムで、静謐にして品格すら感じられるところがあって、名盤の登場と言ってもよいのではないか。

     福盛 進也は、15歳でドラムを始め、17歳時に渡米、ブルックヘブンカレッジ、テキサス大学アーリントン校を経て、ボストンのバークリー音大を卒業、10年間のアメリカでの活動後、2013年にドイツのミュンヘンへ拠点を移し、以来ヨーロッパ広域で活躍してきた日本人ドラマーで、1984年大阪府阿倍野区生まれである。

    (視聴)

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    2018年3月 5日 (月)

    抵抗の巨匠・アンジェイ・ワイダの遺作映画「残像」

    画家(芸術家)の生きる道は?、芸術の表現の自由は?

    <ポーランド映画>
    アンジェイ・ワイダAndrzej Wajda監督 「Powidoki (残像)」
    DVD / ALBATROS / JPN / ALBSD2157 / 2017

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     ポーランドの映画「灰とダイヤモンド」で知られる抵抗の巨匠アンジェイ・ワイダ監督(1926-2016)の遺作である。第2次大戦後のソビエト連邦下におかれたポーランドで社会主義政権による圧政に不屈の精神で立ち向かった実在の前衛画家ブワディスワフ・ストゥシェミンスキ(1893-1952)の生涯を描いたドラマ。日本では昨年6月公開映画だが、DVDで私の愛蔵盤としたいために昨年末にリリースされたDVDにより鑑賞したもの。

    2008_04_22__andrzej_wajda_2監督 アンジェイ・ワイダ (→)
    製作 ミハウ・クフィェチンスキ
     
    脚本 アンジェイ・ワイダ、アンジェイ・ムラルチク
    撮影 パヴェウ・エデルマン(映画「戦場のピアニスト」)
    音楽 アンジェイ・パヌフニフ
    美術 インガ・パラチ

     (キャスト)
    ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキ : ボグスワフ・リンダ
    ハンナ(学生) : ゾフィア・ビフラチュ 
    ニカ・ストゥシェミンスカ(娘)  : ブロニスワバ・ザマホフスカ
    ユリアン・プシボシ(詩人) : クシシュトフ・ビチェンスキー
    ヴウォジミェシュ・ソコルスキ(文化大臣) : シモン・ボブロフスキ
    ロマン(学生): トマシュ・ヴウォソク

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     とにかく90歳になろうとしていたアンジェイ・ワイダの作品である。彼はこれを最後の作品と思って制作したのだろうか?、あの名作「灰とダイヤモンド」(1958年ポーランド映画)をオーバーラップしてしまう同時代の「己の芸術の魂には妥協が許しがたいという生き様の芸術家」を描くことにより、自らの人生をも描ききったのであろうか。

     映画は、自然の緑の美しい草原にて「絵画と芸術」を語るところから始まる。あのナチスドイツに支配され、アウシュヴィッツ収容所にみるがごとき忌まわしいホロコーストの時代をようやくのこと克服してきたポーランドの平和な姿が描かれているのだ。
     しかし彫刻家の妻カタジナ・コブロと共にポーランド前衛芸術の基盤を築いた主人公の画家ストゥシェミンスキは、アトリエにての描こうとしているキャンバスは、真っ赤な色に変わった(この映画の不吉な「赤」からのスタートは上手いですね)。これはソ連共産主義社会のスターリン像の赤い旗が窓を被ったからであった。
     これは戦後のソ連の属国化したポーランドに於いて、スターリン全体主義思想に支配された中で、自由な表現活動を追求しようとする芸術家の抵抗の孤独な闘いを描いた作品である。欧米の自由主義思想を敵視し、それを根絶しようとする国家主義による圧政の恐ろしさは、主人公の芸術家人生が追い詰められていく姿、又生きるために自己を否定してゆかざるを得ない一般庶民の姿、これらを観るものに現実の厳しさをもって迫ってくる。

    640b<アンジェイ・ワイダのテーマは?>
     一方、この映画に出てくるセリフには多くの考えさせられる言葉が・・・・
    ▶「”わたし(芸術)”は”イデオロギー(社会に支配的集団によって提示される観念=ここでは国家)”より優先する」
    ▶「残像とは、人がものを見た後の網膜に残されるイメージと色だ」
    ▶「人は認識したものしか見ていない」
    ・・・・などなど。
     単に芸術にまつわる含蓄のある言葉と捉えて良いものか、多分単純にそうではないと思うのである。
     共産主義の「赤」、娘のまとうコートの「赤」、妻の作品にみる「赤」など、おそらくここでは「赤」は一つのテーマにしているのだと思う。そして愛妻の美しい瞳の「青」と対比している。そしてこの「青」は「残像」として認識される「赤」の補色(緑みの青=シアン)であるからだ。そしてその補色関係にある両者の色にワイダは意味づけを込めているだろう事を知るべきだ。補色により色は輝くのである。このあたりは単純では無い。
     
    800pxdmitri_shostakovich_2<スターリンの圧政>
     この映画を観るに付け、一方私の頭をよぎるのは、ソ連の作曲家ショスタコーヴィチ(→)の生き様である。やはりスターリン時代に生き抜いた彼の人生も、属国となったポーランドのみならず本国に於いても当然その圧政との闘いであった。「私の交響曲の大多数は墓碑である」(ソロモン・ヴォルコフ編「ショスタコーヴィチの証言」)と言わしめた彼の作品。避難と呪詛を浴び、恐怖にとらわれながらも、音楽だけが真実を語れると信じて生きようとしたショスタコーヴィチ。ソ連の芸術家の抵抗と絶望的なまでに困難な状況の過酷さは、ポーランドにおいてもこの前衛画家ストゥシェミンスキにみることが出来る。

    <この映画の流れ>
     とにかく政府当局の迫害は更にエスカレートし、この画家は社会主義リアリズムを求める党規則に反する独自の芸術の道を進んだ為、名声も尊厳も踏みにじられ、教授職を解かれ身分保障も剥奪され、更に作品をも破棄され、食料配給も受けられないばかりか画材すらも入手困難に追われる。
     病気の身となり、死が迫ってきた彼は、失った妻の為に最後にすることがあると、妻の墓地に敢えて白い花を赤の対立する補色の「青い花」に染めて捧げる。困窮の果てに彼は動くことすら容易でない身で職を求め、裸体のマネキンが並ぶショウウインドーの中で倒れ込み、悲惨な死を遂げる。
     しかし・・・・ここには救いはないのか?、抑圧によるこんな困窮の生活の中で母を喪い、尊敬する父をも喪った幼き娘ニカ(1936-2001)(↓)の姿にみえるたくましい生き様が私には印象深く救いでもある。(参考:実際には、彼女は後に精神科医となり、回想録『芸術・愛情・憎悪――カタジナ・コブロ(母)とヴワディスワフ・ストゥシェミンスキについて』を遺したとのこと)

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    ★ 監督アンジェイ・ワイダは・・・・
     一般に言われるとおり「レジスタンス」の人と言って良いだろう。彼の90歳の人生の中で、彼が求めた「祖国への愛」「自由」は、”ドイツ・ナチの残虐性に対する抵抗”でもあったのは当然だが、むしろ更なる国家全体主義による人民を抑えつける圧制、特にスターリンに代表される国家の名の下に行われる独裁政治による粛正と圧政、そして残虐行為、これらに対する抵抗が人生の全てであったと思われる。何故なら彼は亡命して生きる道もあったにも関わらず、一時は所在・生死すら解らない状態で(事実は解らないが、一時投獄されているという噂もあった)自国ポーランドにて闘い、ようやくにして1989年以降の解放のポーランドを迎えたのであった。
     既に哀しき時代に生きた彼も亡くなって今年で2年になろうとしているが、過去ばかりで無く現在においても、この作品にみる共産主義国の国家的統制社会のみでなく、如何なる国に於いても何処に於いても国家主義・全体主義の名の下に起こりうる悲劇を我々に教えているように思う。

    一人の人間がどのように国家に抵抗するのか。
    表現の自由を得るために、どれだけの代償を払わねばならないのか。
    全体主義の中、個人はどのような選択を迫られるのか。
    これらの問題は過去のことと思われていましたが、
    今、ふたたびゆっくりと私たちを苦しめ始めています。
    ・・・・これらにどのような答えを出すべきか、私たちは既に知っているのです。
    このことを忘れてはなりません。
                          (アンジェイ・ワイダ 2016年初夏)

    (参考映像)

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    2018年3月 2日 (金)

    ノーマ・ウィンストンNorma Winstone 「Songs for Films」

    <My Photo Album (瞬光残像)>   (2018-No1)

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       「いよいよ陽光も・・・・」                         (2018.2.26 撮影)
                
                *          *          *          *

    聴くもお恐れ多いベテランの心象風景

    <Jazz>
    Norma Winstone 「Songs for Films」
    ECM / Germ. / ECM2567 / 2018

    Songsforfilms

    Norma Winstone(voice)
    Klaus Gesing(b-cl, ss)
    Glauco Venier(p)
    with
    Helge Andreas Norbakken(perc)
    Mario Brunnello(violoncello, violoncello piccolo)


     英国の女性ベテラン・ジャズ・シンガーのノーマ・ウィンストンの映画音楽集。なにせ彼女は1941年生まれですから、今や75歳は過ぎている”おばあちゃん”である。しかし驚きはマイルドにして美しい声によりしっとりと歌いあげるから驚きでもある。そして彼女は作詞家でもあり、その為今作でも5曲(下記Tracklistの*印)は彼女の作詞で、それにより更に独特なノーマ・ウィンストン世界を貫徹するのである。
     メンバーは、彼女の歌声と Glauco Venier(ピアノ)、Klaus Gesing(クラリネットとサックス)のトリオに、ノルウェーからパーカッショニスト Helge Andreas Norbakken、そしてイタリアのクラシック・チェロ奏者Mario Brunelloがゲストで参加しているという構成。イタリアにおける2017年録音である。

    A32195614659516024760_jpeg(Tracklist)
    1. His Eyes, Her Eyes
    2. What Is A Youth?
    3. Descansado *
    4. Vivre Sa Vie
    5. Lisbon Story
    6. Malena
    7. Il Postino *
    8. Amarcord (I Remember) *
    9. Meryton Townhall
    10. Touch Her Soft Lips and Part *
    11. Theme from Taxi Driver (So Close To Me Blues) *
    12. Vivre Sa Vie (var.)


     上のように、ニーノ・ロータ、ミシェル・ルグラン、ウィリアム・ウォルトン、バーナード・ハーマン、エンリオ・モリコーネなどによる音楽が登場する。しかし驚くなかれ、Klaus Gesingと Glauco Venierによるアレンジも功を奏して、全く原曲のイメージはなく、完全にノーマ・ウィンストン世界になる。これは彼女の作詞も当然大きな役割を果たしているのだろうと思うところ。
     とにかく静かな中に、決して派手に大げさにならないしっとりとした彼女の歌声が誘導して築かれるところに、ピアノ、クラリネット、チェロなどの演ずることによって、クラシックなムードにフォークの味わいのあるコンテンポラリーな世界を聴くことになるのである。
     そして優美な世界というので無く、どちらかと言えば暗いと言えば暗い。しかし描くところただ沈没して行くところではなく、どこか不思議な展開して行く光を感ずるのである。
     紹介もので見たのだが、「叙情的でカリスマ性に富み、幻想的でリリカルな歌声は、優雅で気高い印象を与える」というところは確かに感じられる。
     いずれにせよ、静かな夜に一人でゆったりと諸々に想いを馳せて聴くには良いアルバムで、明るい陽の光の下での活動的な昼間には向かないと言って良い。

     まあとにかくこのノーマ・ウィンストンは、1960年からジャズ・ヴォーカリストの道を歩んできており既に50年以上の歴史がある。今更我々がああだのこうだのと言う筋合いのものでなく(笑い)、むしろある意味では敬虔な気持ちで聴かなきゃならないのかも知れない。既に2007年に、名誉ある大英帝国勲章(MBE:The Most Excellent Order of the British Empire)を授与されている(彼女の正式な呼称は「Norma Ann Winstone MBE 」となるようだ)彼女で、お恐れ多くもそんな達観した人生観から生まれる心象風景を覗かせて頂く気分にもなるのだ。
     1970年代後半にはピアニストの夫ジョン・テイラーと、トランペット奏者のケニー・ウィ―ラ―とともに「アジマス」というグループを結成しECMレコードに作品を残し、またソロとしてもECMに『Somewhere Called Home』等の名盤と言われる作品がある。更にピアニストのフレッド・ハーシュと共作した『Songs and Lullabies』もある。2001年にはBBCジャズ・アワード・ベスト・ヴォーカリスト賞を受賞という経歴。

    (参考視聴)

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