キース・ジャレットKeith Jarrett Gary Peacock Jack Dejohnette 「After The Fall」
<My Photo Album 瞬光残像> (2018-No3)
キース復活直後の”トリオ・ジャズ第一号録音”の登場だ!
<Jazz>
Keith Jarrett, Gary Peacock, Jack Dejohnette
「After The Fall」
ECM / Germ / ECM2590/91 /2018
Keith Jarrett (piano)
Gary Peacock (double bass)
Jack DeJohnette (drums)
Recorded live in concert November 14, 1998New Jersey Performing Arts Center; Newark, New Jersey
Produced by Manfred Eicher
大御所のキース・ジャレット・トリオのニュー・アルバムの登場だ。しかしなんともう20年前の録音もの。慢性疲労症候群という難病に冒され、1996年のソロ・ツアーをもって休養に入った後、復帰したのは1998年。ついこのあいだの事ような気でいたがもう20年前になるんですね、その復帰後初のトリオ・ライブとして今回話題になっているものだ。ニュージャージー・パフォーミング・アーツ・センターで行われたライヴの音源。
今まであの復帰してのトリオ第一号アルバムは、2000年にリリースされた人気のパリの1999年録音モノ『Wisper Not』(UCCE-1004/5)であったのだったが、今回のこれはまさにそれこそ正真正銘復帰トリオ第一号として当然ここに注目してしまう代物なのだ。
しかもキース自身が「改めてこのコンサートの音の素晴らしさに驚いた。これは私にとって病気からの復活を示すドキュメンタリーというだけでなく、本当に素晴らしいライヴなんだ。」と語っているようだ。
(Tracklist)
Disc 1
1. The Masquerade Is Over (Live)
2. Scrapple From The Apple (Live)
3. Old Folks (Live)
4. Autumn Leaves (Live)枯葉
Disc 2
1. Bouncin’ With Bud (Live)
2. Doxy (Live)
3. I’ll See You Again (Live)
4. Late Lament (Live)
5. One For Majid (Live)
6. Santa Claus Is Coming To Town (Live) サンタが街にやってくる
7. Moments Notice (Live)
8. When I Fall In Love (Live)
収録曲は上のようだが、アルバム『Wisper Not』とは、Disc2のM1. "Bouncin’ With Bud"と M8. " When I Fall In Love "が共通しているが、このアルバムも全てがスタンダード曲で埋められている。
中でもDisc1のビル・エヴァンスから始まって誰もが演ずるM4. " Autumn Leaves (枯葉)"だが、13分に及ぶハイテンポにしてインプロヴィゼーション豊富な構成で起承転結が見事に計算された曲に仕上げられていて驚いた。う~~ん成る程キースの世界はこれだけリアルタイムに即興しながらも計算し尽くされているところを見せつけるのだ。
Disc 2の、演奏面の味つけに重点が於かれている事が一層濃い思われるソニー・ロリンズのM2. " Doxy "やジョン・コルトレーンのM7. "Moments Notice"なども登場させて、キースの回復を祝しているかのような展開もみせている。
M3. " I’ll See You Again"や M4. " Late Lament" にみるムードは、私の感覚では、ちょっとした人まばらな深夜の酒場のムードを連想して、私の好むところなのだ。それをこのライブに於いて聴かせてくれたというのは、やはり彼は復活した事を彼自身とオーディエンスとでお互いに実感しているようにも思えた。
更にM6. " Santa Claus Is Coming To Town"などお馴染み曲を披露したのは、聴衆サービスにも配慮しているキースがみて取れる。
1998年に復帰第一作目として発表されたピアノ・ソロ作品『The Melody At Night, With You』(POCJ-1464)(→)や、更に2000年には、パリでのトリオ・ライヴを収録した先述の『Wisper Not』と、この二作でキースの復活を実感して喜びに浸った事を思い出す。そして嬉しいことに、今再び感慨深くこのアルバムに接することが出来たのである。
ついでに一言、今回のジャケ・デザインはそれなりに芸術性は高いのでしょうが、私はキースの病気の少々前の『At The Deer Head inn』(POCJ-1225)(→)のようなタイプの方が好きなんですね。こうした懐古的アルバムは何かその時代を感じさせるようなものであったらどうなんでしょうね。
(参考視聴)
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コメント
キースのこの新譜(20年ほど前のものですが)は、あっさりと病気後の回復度合いの想像まで覆してくれました。こうなってくると、もっといろいろ音源を出してくれえ、という気持ちも強いですが、完全主義のキースとアイヒャーなので、また厳選して出てきそうな気はします。予想をはるかに超えるいい演奏でした。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2018年3月11日 (日) 17時19分
910さん、わざわざこちらまでコメント、TB有り難うございます。最近はユーロ系にどうも向いてしまっている私ですが、ふと昔からの私の歩んできたキースへの想いを思い出しながらこのアルバムを聴きました。やっぱり彼の良さは十分感じられるアルバムでしたね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2018年3月11日 (日) 18時48分
風呂井戸さん,こんばんは。TBありがとうございました。
このアルバム,本格的な復帰に向けて手探りの状態ゆえのそこはかとない軽さがあると思いますが,テンションが高ければいいってもんではないと思わせるに十分でした。それだけにこういう音源を聞ける幸せを噛みしめたいと思います。
ということで,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2018年3月13日 (火) 21時51分
中年音楽狂さん、コメント・TB有り難うございます。キースと言えば、私は1980年代の「CHENGES」「CHENGELESS」あたりの即興の美旋律が最も好きなところなんですが、病気回復後の「優しさ」も歓迎なんです。そんな訳でこのアルバムも20年前と言えども・・・こうしてリリースしてくれると感謝なんですね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2018年3月13日 (火) 22時51分