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2018年3月 2日 (金)

ノーマ・ウィンストンNorma Winstone 「Songs for Films」

<My Photo Album (瞬光残像)>   (2018-No1)

 

Img_0810trmonow
   「いよいよ陽光も・・・・」                         (2018.2.26 撮影)
            
            *          *          *          *

 

聴くもお恐れ多いベテランの心象風景

 

<Jazz>
Norma Winstone 「Songs for Films」
ECM / Germ. / ECM2567 / 2018

 

Songsforfilms

Norma Winstone(voice)
Klaus Gesing(b-cl, ss)
Glauco Venier(p)
with
Helge Andreas Norbakken(perc)
Mario Brunnello(violoncello, violoncello piccolo)


 英国の女性ベテラン・ジャズ・シンガーのノーマ・ウィンストンの映画音楽集。なにせ彼女は1941年生まれですから、今や75歳は過ぎている”おばあちゃん”である。しかし驚きはマイルドにして美しい声によりしっとりと歌いあげるから驚きでもある。そして彼女は作詞家でもあり、その為今作でも5曲(下記Tracklistの*印)は彼女の作詞で、それにより更に独特なノーマ・ウィンストン世界を貫徹するのである。
 メンバーは、彼女の歌声と Glauco Venier(ピアノ)、Klaus Gesing(クラリネットとサックス)のトリオに、ノルウェーからパーカッショニスト Helge Andreas Norbakken、そしてイタリアのクラシック・チェロ奏者Mario Brunelloがゲストで参加しているという構成。イタリアにおける2017年録音である。

 

A32195614659516024760_jpeg(Tracklist)
1. His Eyes, Her Eyes
2. What Is A Youth?
3. Descansado *
4. Vivre Sa Vie
5. Lisbon Story
6. Malena
7. Il Postino *
8. Amarcord (I Remember) *
9. Meryton Townhall
10. Touch Her Soft Lips and Part *
11. Theme from Taxi Driver (So Close To Me Blues) *
12. Vivre Sa Vie (var.)


 上のように、ニーノ・ロータ、ミシェル・ルグラン、ウィリアム・ウォルトン、バーナード・ハーマン、エンリオ・モリコーネなどによる音楽が登場する。しかし驚くなかれ、Klaus Gesingと Glauco Venierによるアレンジも功を奏して、全く原曲のイメージはなく、完全にノーマ・ウィンストン世界になる。これは彼女の作詞も当然大きな役割を果たしているのだろうと思うところ。
 とにかく静かな中に、決して派手に大げさにならないしっとりとした彼女の歌声が誘導して築かれるところに、ピアノ、クラリネット、チェロなどの演ずることによって、クラシックなムードにフォークの味わいのあるコンテンポラリーな世界を聴くことになるのである。
 そして優美な世界というので無く、どちらかと言えば暗いと言えば暗い。しかし描くところただ沈没して行くところではなく、どこか不思議な展開して行く光を感ずるのである。
 紹介もので見たのだが、「叙情的でカリスマ性に富み、幻想的でリリカルな歌声は、優雅で気高い印象を与える」というところは確かに感じられる。
 いずれにせよ、静かな夜に一人でゆったりと諸々に想いを馳せて聴くには良いアルバムで、明るい陽の光の下での活動的な昼間には向かないと言って良い。

 

 まあとにかくこのノーマ・ウィンストンは、1960年からジャズ・ヴォーカリストの道を歩んできており既に50年以上の歴史がある。今更我々がああだのこうだのと言う筋合いのものでなく(笑い)、むしろある意味では敬虔な気持ちで聴かなきゃならないのかも知れない。既に2007年に、名誉ある大英帝国勲章(MBE:The Most Excellent Order of the British Empire)を授与されている(彼女の正式な呼称は「Norma Ann Winstone MBE 」となるようだ)彼女で、お恐れ多くもそんな達観した人生観から生まれる心象風景を覗かせて頂く気分にもなるのだ。
 1970年代後半にはピアニストの夫ジョン・テイラーと、トランペット奏者のケニー・ウィ―ラ―とともに「アジマス」というグループを結成しECMレコードに作品を残し、またソロとしてもECMに『Somewhere Called Home』等の名盤と言われる作品がある。更にピアニストのフレッド・ハーシュと共作した『Songs and Lullabies』もある。2001年にはBBCジャズ・アワード・ベスト・ヴォーカリスト賞を受賞という経歴。

 

(試聴)

 

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コメント

こういう映画音楽集をやってもしっかりノーマ・ウィンストンの世界になってしまうのは、ある程度予想はしていたとはいえ、ビックリです。改めて作曲者などを見ても、またビックリの1枚ではありました。

TBさせていただきます。

投稿: 910 | 2018年3月 3日 (土) 07時58分

こちらからもトラバさせていただきますね。

比較的有名な映画音楽を選曲しているのですが、知っている曲も映画の一場面が浮かぶことはあまりなかったし、積極的に作詞していて、やっぱりノーマさまは、一味も二味も違うとおもいました。
幻想的で繊細で仄暗いアンビエントな世界は大好きです。

投稿: Suzuck | 2018年3月 3日 (土) 09時25分

910さん、コメント、TB有り難うございます。
購入きっかけは、910さんのブログでのお話しが参考になりました(^^))。いつもECM紹介有り難うございます。
しかし、ノーマのキャリアから出てくる味は見事としか言えません。まさにに引き込まれました。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2018年3月 3日 (土) 09時59分

Suzuckさん、コメントTB有り難うございました。私もSuzuckさんの評価ポイントは賛同組です(^^))。おっしゃるところの「幻想的で繊細で仄暗いアンビエントな世界は大好きです」というところは、まさに一つのポイントですね。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2018年3月 3日 (土) 10時05分

風呂井戸さん,こんにちは。

このアルバム,非常に優れた作品だったと思います。私は結構映画も好きですが,これだけいろいろな映画の曲を揃えても,アルバムとしての一貫性が崩れていないのが素晴らしいと思いました。

それにしても,絶妙な選曲,絶妙なアレンジ,そして何よりも絶妙な歌唱でした。

ということで,TBさせて頂きます。

投稿: 中年音楽狂 | 2018年3月24日 (土) 14時25分

 中年音楽狂さん、コメント・TB有り難うございました。
 おっしゃるように、これだけ多彩な曲を一つの世界に作り上げるという個性をそのまま演じきれるというのは・・・やはり「芸術」という世界になるのでしょうね。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2018年3月24日 (土) 20時47分

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