フロネシスPHRONESIS 「A LIVE」
[My Photo Album (瞬光残像)] 四月の高原
欧州情緒を秘めての緊迫感に圧倒される・・・・
現代感覚のモダン・ジャズ
<Jazz>
PHRONESIS 「A LIVE」
AGATE/Inpartmaint Inc./ JPN / AGIP-3608 / 2017
Jasper Høiby (bass)
Ivo Neame (piano)
Mark Guiliana (drums)
デンマーク出身のベーシスト・ジャスパー・ホイビー Jasper Høiby を中心にロンドンで活動するピアノトリオPHRONESISの2010年のUKツアーを収録したもので2枚組。
これは2010年にリリースされた3rdアルバムだが、隠れた名作とされており、ここに国内にてCDリリースとなったらしい。ちなみにこのトリオは今日までに7枚のアルバムをリリースしている。 ジャスパー・ホイビー(→)は77年生まれで40歳、コペンハーゲンのベーシストであるが、メンバーは彼自身の活躍の場である英国におけるミュージシャンでの構成であるが、このアルバムはドラムスには、アヴィシャイ・コーエン・トリオの注目株の米国のマーク・ジュリアーナMark Guiliana が参加している。本来このトリオのメンバー構成はドラムスは、2007年の1stアルバム『Organe Warfare』からアントン・イガーAnton Egerとなっているが、この時は替わっている。又ピアノは、私はマークしていなかったのだが、英国の1981年生まれの若きサキソフォン奏者でもあるという現代ジャズ天才肌のマルチ奏者のアイヴォ・ニーム Ivo Neame が担当している。
近年はJasper Høiby、Ivo Neame、Anton Egerに落ち着いたトリオで、彼ららしい三者のバトルを繰り返している。(最近作『Parallax』(EDN1070))
(Tracklist)
▶Disc 1
1. Untitles #1
2. Blue Inspiration
3. French
4. Eight Hours
5. Abraham’s New Gift
6. Rue Cinq Diamants
7. Happy Notes
8. Love Songs
▶Disc 2
1. Untitled #2
2. Smoking the Camel
(all music by Jasper Høiby) とにかく優しいピアノ・トリオではない。ここではジャスパー・ホイビーの重低音ベースが響き渡るが、マーク・ジュリアーナ(→)のドラムスも決して奥に引っ込んでいないで明解にリズムを刻む。ピアノ・トリオではあるが、ピアノ主役にしてドラムス、ベースがバックのリズム隊として支えていくというパターンではない。見事な三者対等のインター・プレイだ。録音もピアノだけがいやに前に出ているのでなく、三者が対等にその位置を確保され明解にそのプレイが聴く事が出来る。ライブ録音であるため時折会場のオーディエンスの音が入るがそれ程気になるほどでなくうまく仕上げている。
しかしライブだけあって、長曲が多い。10分以上が5曲ある(Disc1-M2, M5, M7, M8, Disc2-M2 )。それだけ三者それぞれが納得の演奏で仕上げにもっていってのトリオ作品とみる。
全曲リーダーのジャスパー・ホイビーの作曲。ユーロ独特のピアノの哀愁ある美旋律でうっとりというタイプでなく、ピアノの響きはやはりどこか哀感を含んだ響きを繰り返す中に、ベースは独自の低音を響かせるのだが、なんとそれはしっかり融合して聴くものに快感を味合わせてくれる。そしてこれに又ドラムス、シンバルの響きが的確に誘導していくパターンはスリリングで緊迫感あってにくいところだ。
特にハイテンポで疾走感あるベースに平行してドラムスのステック音が共鳴し、そこにピアノが乗ってくるM5."Abraham’s New Gift"では、10分の中に、ベース、ピアノ、ドラムスの順にそれぞれの締める位置が明確に演じきり、聴く者にとっての緊張感と共に、十二分にトリオのインター・プレイが次第に天空に昇華する気分を楽しませてくれる。 M6."Rue Cinq Diamants"は、静かに美しいアイヴォ・ニーム(→)のピアノ・プレイから始まって、ドラムスの響きが緊張感を高めて行く。そして中盤にはベースがやはり深遠な世界を描いて次第に三者の交錯は格調高く展開。
とかく全曲無駄なしのトリオ・アンサンブルが光り、つい引き込まれてしまう。
最後の締めくくりDisc2-M2."Smoking the Camel"は、どことなく哀感あるピアノ旋律、響くベース音、シンバル音がメリハリを付ける・・・・といったなかなか深遠な流れから始まって、中盤のドラムス・ソロが次に来る三者のアンサンブルの妙を暗示する。後半もスティックが軽快な流れを聴かせてのドラムスのソロが説得力をみせ、そして三者の競演に展開。これぞジャズと思わせる。
成る程このアルバムは、ユーロのロマンとスリリングな現代ジャズを演ずるピアノ・トリオの隠れた名作と言うのが解るところ、お勧めだ。
(評価)
□ 曲・演奏 ★★★★★
□ 録音 ★★★★☆
(視聴)
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コメント
風呂井戸さん こんばんわ。
PHRONESISお気に入りのピアノトリオです。
「A LIVE」を含め6枚有しています。(私のは2枚組ではありませんが)ファーストの「Organe Warfare」(ピアノがマグナス・ヨルト)が良かったのでずっと追っかけている次第です。
投稿: baikinnmann | 2018年4月12日 (木) 23時56分
baikinnmann さん、お早うございます。コメントどうも有り難うございます。
このトリオは明らかにアヴァンギャルドな因子を持っていますね。E.S.Tと比較されるところですが、少々違うと思いますが、目指すところプログレッシブで快感です。基礎にユーロの地盤をしっかり持って居るところが又聴き所と思います。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2018年4月13日 (金) 08時34分