アレッサンドロ・ガラティ・トリオALESSANDRO GALATI TRIO 「Shades of Sounds」
[My Photo Album (瞬光残像)] Spring/2018
(Nikon D800/90mm/PL/Apr.2018)
ガラティの「メロディー信仰の世界」で描ききった作品
~寺島レコード、気合いでリリース~
<Jazz>
ALESSANDRO GALATI TRIO 「Shades of Sounds」
TERASIMA RECORDS / JPN / TYR-1062 / 2018
Alessandro Galati : piano
Gabriele Evangelista : bass
Stefano Tamborrino : drums
Recorded in Nov. 2017 at Artesuono Studio (Italy)
Recorded, Mixed & Mastered by Stefano Amerio
Producer : 寺島靖国Yasukuni Terashima
先日このアルバムが到着して、「今年の目玉の一つは遂に手に」と私は感じ取った。1994年のアルバム『TRACTION AVANT』(VVJ007)以来、アレッサンドロ・ガラティ(1966年イタリア・フィレンツェ生まれ)に虜になってしまっている私が、ここに来て今年は彼のアルバムを近年リリースしてきた「澤野工房盤( 『OUTER GOLD, INNER LORD』(AS161) )」と、それに加えてあの寺島靖国が名エンジニアであるステファノ・アメリオの手による録音に興味を持って企画されたこの「寺島レコード盤」と、立て続けに2枚手に入ると言う事になったのである。そんな訳で、この春は私にとっては大変な感動の時となってしまった。
もともとガラティはイタリアVia Veneto Jazzレーベルからのリリースだが、日本盤としてBLUE GLEAM盤が頑張っていたのだ。ところが、ここに来て澤野工房そして寺島レコードと、今や人気のこの両レーベルが競ってリリースしてくれることは、何に付けても頼もしい話である。
そしてアレッサンドロ・ガラティ・トリオは、この現メンバーで落ち着いてますね。ガラティ自身もベースのGabriele Evangelistaには絶対の信頼を置いているし、Stefano Tamborrinoのドラムスの演奏についても”空気をプレイする”と絶賛している。
それがこのところの『Seals』(VVJ090/2014)、『On a Sunny Day』(VVJ105/2015)、『Cold Sand』 (AS155/2017)などの成功アルバムをリリースしている原点なのかもしれない。
さて、このアルバムの音に関しては、ステファノ・アメリオの技量を十分に堪能できる。しかもそれには寺島靖国の介入がどこまで具体的にあったかは不明だが、私の聴くところによると見事寺島サウンドの味付けをも感ずることが出来た。そしてそれを聴き分けるには格好のアルバムがある。それは、つい先日リリースされた澤野工房の『OUTER GOLD, INNER LORD』である。こちらも同じガラティ・トリオでアメリオの同じスタジオにおける録音・ミックスであるが、これが若干違うところが面白い。私の気のせいかも知れないが、ドラムスの取り入れが異なっている。この寺島盤ではかなり効果を上げているのだ。
もう一つ言うならば、さすがガラティのピアノ演奏とアメリオによる録音だ。ピアノの音色が出色の出来だ。寺島靖国の昨年の自慢のアルバム『BALLADS』(TYR-1058/2017)と比較しても、明らかにこちらは格段上の艶のある美しさだ(ピアノは名機Fazioli)。これは、演奏技術、録音技術、ピアノの質による相違であろう・・・この音こそピアノ・トリオの真髄と言いたくなる。
(Tracklist)
1. After You Left
2. Stella By Starlight / Victor Young
3. You'll Walk In The Field
4. Blue In Green / Bill Evans
5. Coracao Vagabundo / Caetano Veioso
6. Andre / Alessandro Galati
7. The Two Lonely People / Bill.Evans
8. Nobody Else But Me / J.Kern , O.Hammerstein
9. Moments Notice / John Coltrane
収録曲は9曲で、彼のオリジナル曲はM6のみ。Bill Evans、 Victor Young、John Coltraneなど登場するが、
M1とM3は、なんとイスラエルのトラッドということだ。この2曲は当然我々には聴いたことがない曲で、まさに新曲なのである。実は私が思うには、これがこのアルバムの一つのポイントにもなっていると思っている。
それはまずM1. "After You Left" の抒情性溢れたメロディーとガラティの手によるピアノの哀感の響きはもはや究極のイタリア情感そのものである。これを冒頭に持ってきた寺島靖国のしたたかなこのアルバムの狙いが見えてくる。そしてM3. "You'll Walk In The Field"に置いても、ベースの語りやシンバルの響きが全くこのピアノの哀感を更に盛り上げての描いていて、そこにみる世界は歴史的に流れているイタリアの抒情性の奥深さを感じて聴き入ってしまう。
M2. "Stella By Starlight"も、この抒情性の流れに完全に同化させ、スローにして哀感をも助長する。
M4. "Blue In Green"はエヴァンスの色がイタリアのやや湿度のある色に描かれる。ここにもガラティの所以たるところが聴ける。
M6. "Andre"は、ガラティの唯一の曲だが、私をしてかって虜にしたこの曲。これはかなり日本を意識しての彼の美学を再現してくれたのではないだろうか。今回の演奏と録音は、かってのものと比較して、かなりドラムスの効果を上げる録音となって、如何にも三位一体のトリオ作品として聴き取れる。
リズム感たっぷりのM8. "Nobody Else But Me"、M9. "Moments Notice" にしても、やや押さえられた演奏で、ピアノの美しい音が生きていて”優美な印象の世界”に導かれる。
とにかくこのアルバムは全体を通して流れはバラード調に仕上げられていて、抒情的、耽美的な流れをしみじみと感じさせる心の奥深いところに響くものになっている。ガラティの繊細な感覚による美旋律家たるところの面目躍如、これはおそらく寺島靖国の目指したアルバムに仕上がったモノと言えると思う。当然私は万歳である。
(評価)
□ 曲、演奏 : ★★★★★
□ 録音 : ★★★★★
(視聴) このニュー・アルバムに関する映像は未だ見当たりませんので・・・
| 固定リンク
« ポーランドのマテウス・パルゼクMateusz Pałka Trio「SANSA」 | トップページ | インドラ・リオス・ムーアIndra Rios-Moore「CARRY MY HEART」 »
「音楽」カテゴリの記事
- アルマ・ミチッチ Alma Micic 「You're My Thrill」(2024.11.10)
- メロディ・ガルドー Melody Gardot 「THE ESSENTIAL」(2024.11.05)
- エレン・アンデション Ellen Andersson 「Impressions of Evans 」(2024.10.31)
- アーロン・パークス Aaron Parks 「Little Big Ⅲ」(2024.10.27)
- サマラ・ジョイ Samara Joy 「Portrait」(2024.10.22)
「JAZZ」カテゴリの記事
- アルマ・ミチッチ Alma Micic 「You're My Thrill」(2024.11.10)
- メロディ・ガルドー Melody Gardot 「THE ESSENTIAL」(2024.11.05)
- エレン・アンデション Ellen Andersson 「Impressions of Evans 」(2024.10.31)
- アーロン・パークス Aaron Parks 「Little Big Ⅲ」(2024.10.27)
- サマラ・ジョイ Samara Joy 「Portrait」(2024.10.22)
「アレッサンドロ・ガラティ」カテゴリの記事
- アレッサンドロ・ガラティ Alessandro Galati 「TRACTION AVANT vol.2」(2023.01.07)
- アレッサンドロ・ガラティ alessandro galati 「The Freeway」(2023.01.02)
- アレッサンドロ・ガラティ Alessandro Galati Trio「Portrait in Black and White」(2022.12.27)
- アレッサンドロ・ガラティ Alessandro Galati Trio 「EUROPEAN WALKABOUT」(2022.03.24)
- アレッサンドロ・ガラティ Alessandro Galati Oslo Trio 「SKYNESS」(2021.09.27)
「ピアノ・トリオ」カテゴリの記事
- トルド・グスタフセン Tord Gustavsen Trio 「Seeing」(2024.09.27)
- グレン・サレスキ Glenn Zaleski Trio 「Star Dreams」(2024.10.12)
- マニュエル・ヴァレラ Manuel Valera Trio 「 Live At l'Osons Jazz Club 」 (2024.09.17)
- ダニエル・ガルシア Daniel Garcia Trio 「Wanderland」(2024.09.12)
- マイケル・ウルフ Michael Wolff 「MEMOIR」(2024.10.07)
「ユーロピアン・ジャズ」カテゴリの記事
- エレン・アンデション Ellen Andersson 「Impressions of Evans 」(2024.10.31)
- メラニー・デ・ビアシオ Melanie De Biasio 「Il Viaggio」(2024.10.16)
- クレア・マーティン Claire Martin 「Almost in Your Arms」(2024.10.02)
- トルド・グスタフセン Tord Gustavsen Trio 「Seeing」(2024.09.27)
- ダニエル・ガルシア Daniel Garcia Trio 「Wanderland」(2024.09.12)
コメント
全く同感。今年は春から縁起がいいわい!
投稿: 爵士 | 2018年5月 6日 (日) 23時50分
爵士さん、コメント有り難うございます。
ほんとに今年の春は、澤野工房盤と寺島レコード盤と、揃ってアレッサンドロ・ガラティの美学をリリースしてくれて満足満足と言ったところです。
しかも両方ステェファノ・アメリオの手による録音とミックスで、これ又快感の極みですね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2018年5月 7日 (月) 18時59分
風呂井戸さま、今年は、初頭から年末に残りそうなアルバムが続いています。そこに、ガラティさまの2枚続けてのリリース。
ベースの音の立ち上がりと、ドラムの金属音が少し際立っているような気がします。どっちが、良いとか悪いとかの問題ではないと思うのですが、そのおかげでピアノの美音がより生かされてる気がします。
しかし、ガラティさま、、ここまでしたら、来日して欲しいですよねぇ。。
寺島氏と澤野工房と組んで呼んでくれないかしら。。
トラバをありがとうございました。
投稿: Suzuck | 2018年5月 8日 (火) 18時20分
Suzuck様の高評価で、ほっとしている私であります(ニッコリ)。おっしゃるように以前よりは、ベースの立ち位置が鋭くなって、シンバルやハイハットの効果は上がっているいるように思うのは、寺島靖国が頭にあるせいでしょうか?>又ご本人に聞いておいてください(笑い)。そうそうピアノは美しいの一言です。
と、言うことで2018年度賞候補作品といたしましょう。
そうそうTBも有り難うございました。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2018年5月 8日 (火) 22時37分