ヤスクウケ・セクステットJaskułke Sextet 「Komeda Recomposed」
プログレッシブな~格好いいジャズだ!!
<Jazz>
Jaskułke Sextet 「Komeda Recomposed」
CORE PORT / JPN /RPOZ-10041 / 2018
スワヴェク・ヤスクスケSławek Jaskułke (作曲、グランドピアノ、アップライトピアノ)
エミル・ミシュクEmil Miszk (トランペット、フリューゲルホルン)
ピョトル・ヘンツキPiotr Chęcki (テナー・サックス)
ミハウ・チェシェルスキMichał Jan Ciesielski(アルト・サックス)
ピョトル・クワコフスキPiotr Kułakowski (ベース)
ロマン・シレファルスキRoman Ślefrarski (ドラムス)
上のアルバムの演奏メンバーを見て解るとおりセクステットなのだ。ピアノ・トリオ+トランペット、テナー・サックス、アルト・サックスという珍しいタイプ。とにかく私の好きな編成じゃないのだが、聴いてみると結構格好いいジャズを展開している。
ポーランドが舞台のジャズの話題となると、なんだかんだ言っても、ポーランド・ジャズ史上最高の作曲家クシシュトフ・コメダ(Krzysztof Komeda:1931-1969)(→)と言うことになる。
そのコメダの曲を楽しませてくれたのは過去にも取りあげたMarcin WasilewskiのSimple AcousticTrio(『Lullaby for Rosemary』(2001))やNBS Trio(『Plays KOMEDA』(2010)) とかLeszek Moźdźer(『Komeda』(2011))ですね、そうそうKomeda Project(『Crazy girl』(2006))もあった。
そしてここに又ポーランドの人気ピアニストのスワヴェク・ヤスクウケSławek Jaskułke(←) によってのコメダの登場となったのだ。
しかし・・・・それが安易にコメダの美メロディーということに期待したら、なんと一発食らうのは間違いない。ポーランドのジャズとなると今やオラシオ氏の登場となるが、彼のライナー・ノーツを見ても、これは「カヴァー・アルバム」じゃないと強調している。難しい話だが、コメダの名曲を文字通りアルバム・タイトルにある”Re-Composed”つまり”再構築”するという斬新と言えば斬新な内容。まあ原曲はそう多く私は知っているわけでは無いので、完全にここではヤスクウケのオリジナル曲に近い。
(Tracklist)
1. KATO(「Astigmatic」(1965)収録Kattoma、その他より)
2. OXIS
3. NASTIC
4. CRAZY(映画「水の中のナイフ」収録曲Crazy Girl、その他より)
5. SVANTE(「Astigmatic」(1965)収録Svantetic、その他より)
6. ETIC(SVANTEのPart2)
7. SZARO(Szara Koledaより)
8. EPILOG
こうして見ると、あの名作と言われるコメダ・クインテットのアルバム『Astigmatic』(1965)とか、映画ロマン・ポランスキ監督の『水の中のナイフ』の曲”Crazy Girl”あたりが注目点なんですね。素人っぽい私から見ると”ローズマリーの赤ちゃん”などが最右翼なんだがちょっと違う。
そして曲はその曲をただなぞるという手法で無く、その血となる部分、骨となる部分をヤスクウスケ流に構築し直してのコメダ独特の短いリフが複数のコメダ曲から取り出して組み上げる手法で、まさに彼自身の曲として再構築されている。成る程これが「Recomposed」という事なんだと解る。
セクステットのメンバーは結構若くて、これが又ロックとジャズといったジャンルに拘らない世界のコンテンポラリー・ジャズを演じて、流れは静寂性を描いたり、ダイナミックなパワーを見せつけたり、この絶妙にコントロールされた両極の世界はとにかく格好いいのです。特にピアノの流れとドラムスの迫力のリズム(ジャズでも時にはこれだけ叩くのも有りだ)は聴きどころ。不思議な世界を頭に描かせる冒頭のM1." KATO"が典型。
又ピアノとトランペット、サックスとのインタープレイも奥深い。
アルバムを通してM1." KATO"からM8. "EPILOG"までで起承転結がきちっと出来ているところもお見事。
ヤスクウケのピアノがこうしてコメダを自己表現の世界に引っ張り込んだでの新しいジャズ・シーンに打って出た格好で、いやはや驚きのポーランド・ジャズだ。
[スワヴェク・ヤスクスケSławek Jaskułke]
1979年1月2日生まれ、ポーランド・プツク出身のジャズ・ピアニスト/コンポーザー。名門カトヴィツェ音楽大学へ進むも退学し、2年間欧州の各地を放浪しながら音楽を演奏。ポーランドへ戻るとサックス奏者のズビグニェフ・ナミスウォフスキに見出され、プロキャリアをスタート。自身のピアノ・トリオやショパンのカヴァー・プロジェクトなど、多彩な活動を展開。かつてはポーランドの人気パンク・ジャズ・ユニット、ピンク・フロイトでの活動経験も。映画音楽やモダン・クラシカルの仕事にも関与。2002年の初リーダー作以来、10枚以上の作品を発表。2017年にピアノ・ソロ作『夢の中へ』(原題:SENNE)をリリース。(ネットに見る紹介内容)
(評価)
□ 演奏・曲 ★★★★★☆
□ 録音 ★★★★★☆
(参考視聴)
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コメント
風呂井戸さま、トラバをありがとうございました。
風呂井戸さまが、仰る通り、本当に油断ならぬ音楽大国ですよね。
この辺もまさに氷山の一角。。
オープニングの曲「KATO」は、私も好きですよ。
一気に引き込まれますよね!
カヴァー集でないとありましたが、コメダ色は濃厚だと思いました。
こちらからも、トラバいたしますね!
投稿: Suzuck | 2018年7月17日 (火) 18時01分
Suzuckさん、コメント、TB有り難うございます。
この猛暑の中、ジャズ鑑賞も体調や部屋のコンディションをよくしてと・・・一仕事してと言ったところですネ(笑)。
ポーランドでは、ショパンは当然ですが、ジャズではコメダは伝説的存在なんですね。こうしたアルバムが出てくることすら凄いです。
このアルバムはあまり一般的に広くは聴かれていないようですが、聴く方は物好きなんでしょうか(笑)。でもポーランドは私にとってはかなり関心と意識することの高い国なんです。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2018年7月17日 (火) 21時03分