久々のトリオで・・・トルド・グスタフセンTord GustavsenTrio「The Other Side」
グスタフセンのピアノが待望のトリオで・・・・・
<Jazz>
Tord GustavsenTrio 「The Other Side」
ECM / Germany / 2608 6751618 / 2018
Tord Gustavsen (piano, electronics)
Sigurd Hole (double bass)
Jarle Vespestad (drums)
Recorded January 2018, at Rainbow Studio, Oslo
Produced by Manfred Eicher
久々のノルウェーのトルド・グスタフセンTord Gustavsen のピアノ作品がトリオでリリース。2007年の『Being There』 (ECM/2017 B0008757-02)以来となりますね。近年は彼のレパートリーの拡大と新分野への挑戦などで、カルテットやアンサンブルといったところがお目見えしてきたわけだが、私にとっては待望のピアノ・トリオ作品で、これは今年の一月の録音だ。
トリオのメンバーは、ベーシストが、Harald JohnsenからSigurd Holeに変わっている。ドラムスはもう長年のお付き合いで変更無しのJarle Vespestad だ。ノルウェー出身の三者によるトリオで、グスタフセンの緩徐で深く沈み込むピアノの流れは変わらずに、心に染み込む静かなメロディーによるトリオの世界を構築している。
録音もピアノに対してベース、ドラムスも生きていて、なかなかトリオ・バランスを重視した好録音である。
(Tracklist)
1. The Tunnel
2. Kirken, den er et gammelt hus
3. Re-Melt
4. Duality
5. Ingen veinner frem til den evige ro
6. Taste and See
7. Schlafes Bruder *
8. Jesu, meine Freude * Jesus, des eneste
9. The Other Side
10. O Traurigkeit *
11. Left Over Lullaby No.4
12. Curves
今回はトルド・グスタフセン自身の曲が主だが、J.S.Bachが取りあげられている(上記*印の3曲)。
オープニングM1. "The Tunnel" から、グスタフセン世界が迫ってくる。何度聴いてもドップリと浸れるグスタフセン世界は、やはり深遠であり哲学的でも有り、人間心理の究極の姿を描くが如くで、このアルバムも全編を通して真摯な気持ちで聴くことが出来る。
M4. "Duality" M5.、 "Ingen veinner frem til den evige ro"に来るともう自他共に許すグスタフセン世界だ。
アルバム・タイトル曲である彼の曲M9."The Other Side "は、珍しく”彼独特の静寂の中に流れる美しさと深遠さ”というタイプでなく、静かに物語り調に淡々と描いてどこか明るさも感じられる。この"Other Side"の意味はそんなところにあるのだろうか。
これに続いてM10. "O Traurigkeit"は、やや対比的にJ.S.Bachのメディーをオリジナルの世界とは全く異なる完全なグフタフセン世界に沈み込ませるが、中盤から後半にかけてはトリオで盛り上がる珍しいタイプ。これも彼の今回の一つの試みの曲とみる。
そしてM11. "Left Over Lullaby No.4"は、彼のファン・サービスの演奏。完全に本来の静寂と沈静の世界ですね。
いっや~~、やはりトルド・グスタフセンはいいですね。完璧と言ってしまいたいアルバムだ。ピアノの弾くメロディの深遠さ、そして緩急、強弱、余韻の生かし方もハイレベル。何時もニュー・アルバムを待っているのだが、期待を裏切らない。北欧の世界感なのであろうか、又彼の学んだ心理学が生きているのか、この世界はしっかりと守りつつ、今後にも発展していって欲しいものである。
(評価)
□演奏:★★★★★
□録音:★★★★★☆
(私のイメージPHOTO=「夏の記憶に2018」)
2018.9.3撮影(志賀高原) Sony α7Ⅲ ILCE-7M3, FE 4/21-105 G OSS, PL
(視聴)
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コメント
いや出ましたか。早速注文してみます。
投稿: 爵士 | 2018年9月 6日 (木) 17時07分
確かに、トリオ盤ですから”お待ちかね”って感じですね。何はともあれ飛びつきました(笑い)。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2018年9月 6日 (木) 21時27分
トラバをありがとうございました。
そうそう、深く沈み込むピアノ、最高でしたね。
この秋は、ECMのピアノ攻撃がとまりませんね…。
トラバしますね♪
投稿: Suzuck | 2018年9月11日 (火) 12時07分
Suzuckさん、コメント、TB有り難うございます。
Tord Gustavsenの彼独特の空気感は最高です。
心理学などを学んだ成果もあるのではと思ってます。
そしてやはりトリオがいいですね。
又Suzuckさんの雑誌での感想も楽しみにしています。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2018年9月12日 (水) 10時04分
すんなりと聴けてしまうトリオなんですが、バッハとか、トラディショナルも溶け込んでしまっているようで、それらが混然一体となっていて、なかなか素晴らしいです。ECMにはなくてはならないトリオではないでしょうか。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2018年9月15日 (土) 21時47分
910さん、コメント・TB有り難うございます。
ECM派の910さんのお褒めがあれば間違いないところでしょう(笑)。
この流れ、秋の風と共にリリースでピッタリですね。
バッハがこうなるのにはびっくりしました。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2018年9月16日 (日) 10時03分
風呂井戸さん,こんにちは。
Tord Gustavsenって非常に安定していて,彼のアルバムには,一部例外はあるものの,ほとんど失望させられたことがありません。今回もいかにも「北欧」って感じの清冽な響きを楽しませてもらいました。やっぱりこの人,大したものですね。
ということで,TBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2018年9月22日 (土) 15時10分
中年音楽狂さん、コメント・TB有り難うございます。海外出張大変なようですが・・・北欧はどうなんでしょうか?>北欧もそれぞれの個性があるのでしょうが・・・日本人にとってはどこか世界感が共通するのでしょうか?私はこの空気感というか、そのあたりがたまらないのです。彼のトリオ盤は期待しておりましたので・・・もう次作に心を馳せています(笑)。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2018年9月22日 (土) 18時59分