寺島靖国プレゼント 「For Jazz Drums Fans Only VOL.2」
結構このコンピレーション・アルバムも聴き応えあり
<Jazz>
Y.Terashima Present 「For Jazz Drums Fans Only VOL.2」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1068 / 2018
もともとピアノ・トリオを愛する私からすると、ピアノの描く気品ある抒情性やどこか心に響くメロディの美しさ・優しさというのは他の楽器では得られないところにある。楽器の個性によってそれぞれの迫ってくる味は異なっていて、そこに味わいが生まれるのだと思うのだが・・・・・。
ところが、ライブに参加して思い知らされるのだが、オーソドックスなピアノ、ベース、ドラムスというピアノ・トリオ位の小編成の場合、実はその重要な位置に意外にもドラムスがあると言っても過言では無い。実はそこがCD再生によって聴く場合と、ライブ会場での場合との大きな違いであるとも思っている。これはレコーディング・エンジニアやプロデュサーによって作られる世界と現実の差なのかも知れない。
ドラムスは、リズム隊として若干軽んじられるところにある場合があるが、決してそうでは無い。ライブではドラムスのリードなくしてその充実感は得られないのではないかと思うところにある。
寺島靖国の選ぶコンピレーション・アルバムであるから、まあドラムスに注目してのものとは言え、3曲ぐらいは私の持つアルバムからの選曲だろうと高をくくっていたら、なんと1枚のみで完敗(Fred Herschのみ)。しかしそれだけ初聴きもあって結果的には儲けたと言うところなのである。
(Tracklist)
01.Alone Together [Robert Glasper Trio]
02.Ringo Oiwake [Kenny Barron Trio]
03.Autumn Leaves[Orrin Evans]
04.Arcata[Fred Hersch]
05.Peaple Will Say We're In Love[Dave King]
06.Nar-this [Antonio Sanchez]
07.My Shining Hour [Ulysses Owens, Jr.]
08.Tears Inside[Mike Melillo Trio]
09.I'll Be Seeing You [Barry Green New York Trio]
10.Another Uphill Morning [Juan Ortiz Trio]
11.So In Love [Gregg Kallor]
12.Keep It Fresh [Inaki Sandoval]
寺島靖国プレゼントとしてのコンピレーション・アルバムは、なんと言っても「Jazz Bar」だが、なんと17巻リリースされている。そして更に「For Jazz Audio Fans Only」は、オーディオ・ファン向けに、又「For Jazz Vocal Fan's Only」も女性ヴォーカルが主体でジャズ・ファンの一面をくすぐって・・・と言うところで支持がある。この三者は年一枚のペースでのリリースであるが、確実に人気が続いているのだ。
そして新たに始まったこの「For Jazz Drums Fans Only 」も、今年で一年経っての二枚目というところで、ようやく軌道に乗ろうかとしている盤のリリースとなった。
このアルバムの特徴は、前三者に比べると一口に言わせてもらうと”マニアック”と言ったところか?、私のようにECMに代表されるユーロ系の抒情派ピアノ・トリオ・ファンとすれば、日頃手にする事の少ないアルバムが納得の世界で聴けるところが素晴らしい。
M1."Alone Together" は、ドラムスに限らず、ベース、ピアノのスピード感は圧巻。ここには靖国一押しのハイテクニックが支配している。オーソドックスのようでいて、違うんですね。そこが聴きどころ。
M2."リンゴ追分"Kenny Barronによって、これが出で来るから笑っちゃう、しかし笑っては居られない。支えるドラムスが東北の世界になっているところが恐ろしい。
M3."Autumn Leaves"の編曲、インプロが圧巻だ。これも所謂従来から聴きならされたリズムでは刻んでこない。ここが何とも言えずプロフェッショナルっぽいのだ。
M5."Peaple Will Say We're In Love"のDave King(右上)のドラムスの音はリアルでお見事。
M6."Nar-this"Antonio Sanches(右)、この流れ、いかにもプロ・ミュージシャンの面目躍如。Brad Mehldauも貢献。
M7."My Shining Hour" Ulysses Owens, Jr.(右下)の健闘。
最後の曲M12."Keep It Fresh" のようにドラムスが・・・チン、シャイーン、カンと響いてドカン、ドスンと来る迫力も楽しいもの。
こんな調子で全編気を許さない選曲には驚いた。寺島靖国をなめちゃいけませんね。オーディオ感覚優先と本人は何時も言ってますが、ここに選ばれたものはドラムスの収録が優れていることは事実だが、決してそれだけでは無い。ジャズを知っての離れ業だ。
このアルバム、一枚のCDとしては、かなり収録時間が長いのだが(80分近いか)、飽きることを知らずに一気に聴いてしまう。これで私は今更彼を見直してしまった。
(評価)
□ 収録選曲 ★★★★★
□ 録音 ★★★★★☆
(My Image Photo)
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