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2018年11月19日 (月)

アンナ・マリヤ・ヨペクの新作 Anna Maria Jopek 「ULOTNE幻想」

「ポーランド民族音楽への愛」からの回想か・・・・・

<Jazz>

Anna Maria Jopek & Branford Marsalis 「ULOTNE 幻想」
AMJ / Import / AMJ001 / 2018


Ulotne1

Jopek Anna Maria (voc)
Marsalis Branford (ts,ss)
Krzysztof Herdzin (p,arr)
Mino Cinelu (per)
Maria Pomianowska (Bilgoray suka)
Robert Kubiszyn (b)
Piotr Nazaruk (cytra)
Marcin Wasilewski (p)
Atom String Quartet

 近年、世界各地の音楽とミュージシャンとの共演に挑戦してきたアンナ・マリヤ・ヨペクのニューアルバム。
 これは自主製作盤といってよいものであるが、おそらく彼女の意志が大きく働いてのものと推測する。ジャケ、ブックレットもポーランド語、英語、日本語が記されている。今や日本は彼女にとっては音楽的にも最愛の国でも有り、その結果であろう。

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 彼女としてみれば、ポーランドから発して世界各地の民族的愛を探究してきたことより、なんとしても根本的には自己の”ポーランド民族音楽への愛”をアルバムにしたかったという究極の一枚と思われる。それにはクラリネットとか、ソプラノサキソフォンの音が欲しかったのかも知れない。その結果ソプラノ・サックスにブランフォード・マルサリスBranford Marsalis をフィーチャーしての二人名義のアルバムを完成させた。又ピアニストはクシシュトフ・ヘルジンKrzysztof Herdzin が務めているが、彼の編曲も大いに力を発揮した作品とみる。日本での人気の高いピアニストのマルチン・ヴァシレフスキMarcin Wasilewski の登場もある。更にこのアルバムへの貢献は夫のマルチン・キドリンスキMarcin Kydrynskiであることが、曲の作曲者を見ても伺える。

(Tracklist)
DISC 1
1. W Polu Lipenka (tradycyjny)/野に立つ菩提樹
2. W Kadzidlanskim Boru (tradycyjny/Tadeusz Sygietynski)/カジドランスキ森
3. Niepojete i Ulotne (Marcin Kydrynski)/おぼろげ
4. Patrz i Sluchaj (Anna Maria Jopek/Marcin Kydrynski)/見て、耳を澄ませて
5. Niezauwazone (Anna Maria Jopek/Marcin Kydrynski)/見過ごされしもの
6. Czekanie (Anna Maria Jopek)/待ち侘びて
7. Na Droge (Anna Maria Jopek)/旅立ち
8. Opowiesc (Krzysztof Herdzin)/物語
9. Czule Miejsce (Anna Maria Jopek/Marcin Kydrynski)/繊細な心
10. Nielojalnosc (Andrzej Zieliński/Adam Kreczmar)/移り気

DISC 2 Bonus CD
1. Pozegnanie z Maria- pamieci Tomasza Stanko (Tomasz Stanko)/マリアとの別れ
2. A Night in the Garden of Eden (Karry Kandel)/
3. To i Hola (tradycyjny)
4. Czekanie – Alternate Version (Anna Maria Jopek)/待ち侘びて

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           (当アルバム・ゴールド・ディスクの獲得)

 上に紹介したように、このアルバムはアンナ・マリア・ヨペックとブランフォード・マルサリス(Sax)のコラボレーションアルバムの型を取っていて、通常のCD にボーナスCD がついたスペシャル・エディションとなっている。
 タイトルの「ULOTNE」は、「幻想」と訳されていて、中身はスラブ民族のトラディッショナルとポーランド民族音楽にインスピレーションを受けたものからの作曲など、ヨペクの民族音楽への拘りと思い入れの曲集である。又トマシュ・スタンコを追悼して、2年前に共演し、レコーディングされた楽曲「マリアとの別れ」もボーナス盤に収録されていた。

Na こんな事からして、彼女のキーバのゴンザロとの前作『Minione』(Universal Music Poland/2017→)とは全く趣向の異なった作品で、我々日本人からしても馴染みのない民族音楽に若干戸惑うのである。音楽ジャンルもこれというものでなく色々なタイプが混在し、文化の多様性を集約している作品として受け取れる。そんなところから、一般的ジャズ・アルバムとは性質を異にして、マルサリスの美しく歌いあげるソプラノ・サックスや、ピアノの音もそれぞれ美しいのだが、如何せん私の聴く立場としてスラブ民族音楽旋律を理解してついて行くことが出来ず、又肝心のヨペクのヴォーカルも情緒たっぷり引きつけるところがあり、高音部への歌いあげなどかなりの技能を発揮してはいるが、今回は私の鑑賞能力に無理があり、聴くに大きな感動というものには巡り会えなかった。

 まあこうしたアルバムは、ヨペクのようにジャズ・ヴォーカリストとして一定の評価を勝ち取ったものとして、彼女の今だから出来る事としての「拘り」として、ポーランドにおける一つの自己の世界の格調を高めたものとして作られた感がある。従って若干自己満足的なニュアンスもあり、一般ジャズ愛好家に広く愛着あるアルバム作りをしたというものではないと思う。もともと過去の彼女のアルバムにはこうしたトラッドものが顔を出していたのは事実で、その拘りは感ずるが・・・・・ここまで迫られるとちょっと難物となった。

参考)
62557_444917708535_5510521_n<ブランフォード・マルサリスBraford Marsalis>  (ネットにみる紹介)
  1960年8月26日、ルイジアナ州ニューオリンズ生まれ。教育者エリスを父に持つ音楽一家に育ち、4歳でピアノ、小学校でクラリネット、15歳でアルト・サックスを演奏。父親が教鞭を執るニューオリンズの芸術専門学校と、ボストンのバークリー音楽大学に学び、’80年にクラーク・テリー・ビッグ・バンドでプロ・デビューした。’81年には、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズと、実弟ウィントンのグループに加入。’83年に、故ケニー・カークランドやジェフ・ワッツらと初リーダー作『シーンズ・イン・ザ・シティ』を発表し頭角を現した。以後、『ロイヤル・ガーデン・ブルース』『ルネッサンス』などの話題作を出す一方、マイルス・デイヴィス・グループでも活動し、『デコイ』の録音に参加。’85年にスティングの『ブルー・タートルの夢』に加わると、ツアー・メンバーとしても後援し、’88年には同バンドの一員として来日した。
 ’92年のアルバム『ブルース・ウォーク』で、グラミーの「最優秀器楽ジャズ・グループ賞」を受賞。’00年は、ピアノにジョーイ・カルデラッツォを迎えたカルテットによる『コンテンポラリー・ジャズ』で3つ目のグラミーを獲得。それに並行し、オルフェウス室内管弦楽団との近代フランス音楽集『クリエイション~20世紀フランス音楽作品集』もリリースし、ジャズ以外の舞台にも成果を残してきた。カルテットによる最近作は、『ブラッグタウン』と『メタモルフォーゼン』で、共に世界的なヒットになった。

(評価)
□ 曲  :  ★★★★☆
□ 演奏 : ★★★★☆
□ 録音 : ★★★★☆

(視聴)

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2018年11月15日 (木)

チャリー・ヘイデンとブラッド・メルドーのデュオ作品登場 Charlie Haden & Brad Mehldau 「LONG AGO and FAR AWAY」

まさに優しさあふるる最高アルバムだ

<Jazz>
Charlie Haden & Brad Mehldau 「LONG AGO and FAR AWAY」
Impulse! / International / 678 950 0 / 2018
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Charlie Haden : Bass
Brad Mehldau : Piano

Recorded at The Christuskirche in Mannheim, Germany on Nov. 5. 2007
 
    2014年に逝去した多くに愛されたベーシスト、チャーリー・ヘイデンCharlie Haden(1937.8.6-2014.7.11)と、今や現代ジャズ・ピアノの最高峰であるといわれるブラッド・メルドーBrad Mehldauとの2007年の初デュオ・ライヴのアルバムが登場した。プロデュースを見ると案の定ヘイデンの妻のRuth CameronとBrad Mehldauの名が連なっていて、そこにはこのアルバムをリリースする良好な関係が窺い知れるのである。

 これは2007年のドイツ・フェスティバルの一環として行われたライブ。それは教会でのステージを収録されたものらしい。そのためか全曲、とにかく優しさ溢るる演奏だ。もともとヘイデンの流れは何時も優しさに溢れているのだが、メルドーとここまで優しいアルバムを作ってくれて喜んでいるのである。

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1.Au Privave
2.My Old Flame
3.What'll I Do
4.Long Ago And Far Away
5.My Love And I
6.Everythings Happens To Me






 1993年ヘイデンがメルドーの演奏を観て気に入ったことから話は始まったようで、二人は1996年にリー・コニッツとのトリオ『Alone Together』(BlueNote)、2011年にはポール・モチアンが入ったトリオで『Live At Berland』(ECM)の二枚のライブ版を録音している。
 そしてメルドーとの初のデュオ演奏が2007年に実現し、それがこのライブ盤だ。
 とにかく聴くが一番という素晴らしいアルバム。教会といってもそう大きなところではなさそうで、非常に親密なるムードでの二人の対演を納得の世界で堪能できる。
                                                                                       *
Zblqyk6d_400x400_2 近年のメルドーの作品は、名手であるだけに若干難解になりつつ在るのだが、このアルバムはヘイデンに敬意を表しつつのヘイデンの地に着いた優しさと人間愛をサポートしてのメルドーの美しいピアノの音を優しく散りばめている。
 M1."Au Privave"と、アルバム・タイトル曲M4."Long Ago And Far Away"は、やはり彼らのフリー・ジャズのニュアンスを演じてはいるが、しかしけっして乱れること無く、説得力のあるピアノとベースのデュオ作品となっている。
 一方M2."My Old Flame"M3."What'll I Do"では、優しくメロディアスで美しい両者の演奏には心も洗われる。
 そしてM5."My Love And I"となると、メルドーの優しく美しいメロディーが流れ、中盤からはこれまた心が安まるヘイデンのベースが響き、それを弱音で澄んだ音での美しいピアノがサポートとしてゆく。この流れはもう何も語る必要の無い安堵の世界。そして最後はベースの最弱音で終わる。
 M6."Everythings Happens To Me"も、教会とは言えこの安らぎ感は最高峰。

 晩秋に素晴らしいアルバムが届いた。

(評価)
□演奏 : ★★★★★
□録音 : ★★★★★☆

(My Image Photo)
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at IIZUNA-KOGEN on Nov.2018

(試聴)

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2018年11月13日 (火)

アレキサンドラ・シャキナAlexandra shakina「All The Way」

なんと言っても、中低音の魅力が・・・・・・

<Jazz>
Alexandra shakina「All The Way」
Venus Records / JPN / VHCD-1239 / 2018


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Alexandra Shakina (VOCALS)
Massimo Farao (PIANO)
Aldo Zunino (BASS)
Ruben Bellavia (DRUMS)

Recorded at Riverside Studio in Torino on April 5&6, 2018
Produced by Tetsuo Hara
Engineered by Alessandro Taricco
Mixed and Mastered by Tetsuo Hara

   全く知らなかった女性ヴォーカリスト、そしてVenusレコードときたので、若干尻込みしがちな私ですが、美女狩りを得意とする友人からの勧めで聴いたアルバムである。
   アレキサンドラ・シャキナAlexandra Shakina は、ロシアのジャズ・シンガーだがこれがデビュー・アルバムのようだ。彼女に関しては現在のところ情報も少なく詳しいことは解らないのだが、とにかく宣伝では”妖艶なハスキー・ヴォイスが魅力的な本格的ヴォーカリスト”ということになっている。
 更にそこまでの流れも解らないが、このアルバムはトリノにての録音であり、バックの演奏は近頃も取りあげたマッシモ・ファラオ・トリオMassimo Farao' Trioが努めていて、どうもイタリアでの活動であるのかと思うのである。
 しかしイタリアと言ってもマッシモ・ファラオ・トリオの特徴であるアメリカン・ジャズ・ムードも上手に描いており、取り敢えずは立派なジャズ・ヴォーカル・アルバムに仕上がっている。
 
Imagew(Tracklist)
01.All The Way (J. Van Heusen)オール・ザ・ウェイ
02.Let Me Love You (H. Bart) レット・ミー・ラブ・ユー
03.Get Out Of Town (C. Porter)  ゲット・アウト・オブ・タウン
04.Dedicated To You (Cahn, Chaplin, Zaret) デディケイテッド・トゥ・ユー
05.I Concentrate On You (C. Porter)  あなたに夢中
06.Weaver Of Dreams (V. Young) 夢織人
07.I’m Just Lucky So And So (D. Ellington) アイム・ジャスト・ラッキー・ソー・アンド・ソー
08.That Old Black Magic (H. Arlen) ザット・オールド・ブラック・マジック
09.Come Fly With Me (J. Van Heusen)  カム・フライ・ウィズ・ミー
10.Where Or When (R. Rodgers)何時か何処かで

 いずれにしても、ポイントである彼女の声の質はちょっとジャケの顔の印象とは異なって、低音の重量感というところだろう。とにかく中低音部に魅了する厚みがあり、これを生かしてのこれからへの展望も持っている。
 M10."Where Or When"などのように、彼女向きの独特な編曲もなされており、 この点は取り敢えず合格点だ。
 唄う曲はスタンダードものというところであり、ほぼ一般ジャズ・ヴォーカル・アルバムとして捕らえてよい。そして全体的に曲仕上げはマッシモ・ファラオ・トリオの流れで有り、ジャズとしては最も一般的な、言いようによっては特徴のあまりない世界に納まっている。

 Venus Recordもかなり意欲的にこのアレキサンドラ・シャキナに取り組んでいて、このアルバムの売れようによっては、彼女のヴォーカルものは今後立て続けにリリースされてくる可能性も秘めている。取り敢えずは期待株としておこう。

(評価)
□ 歌唱・演奏 ★★★★☆
□ 録音     ★★★★☆

(My Image Photo)

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初冬の花・石蕗   Nikon D800,  Lensbaby

(視聴)

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2018年11月 9日 (金)

アレクシ・トゥマリラ・ピアノ・トリオAlexi Tuomarila Trio 「Kingdom」

ブラッド・メルドーお墨付きのピアノ・トリオ

<Jazz>
Alexi Tuomarila  Mats Eilertsen  Olavi Louhivuori
「Kingdom」

EDITION / ADN 1090 / 2017

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Alexi Tuomarila (アレクシ・トゥオマリラ, piano)
Mats Eilertsen (マッツ・ アイレットセン, bass)
Olavi Louhivuori (オラヴィ・ロウヒヴオリ, drums)

Recorded on 5th December 2017 at K.K.Studio, Finnland
Produced by Alexi Tuomarila
Executive Producer: Dave Stapleton

15977464_1382560951794505_296827606 このピアノ・トリオは初聴きである。この秋、日本ライブが行われて知るに至った。
 ピアニストアレクシ・トゥオマリアAlexi Tuomarila、1974年-)は、Brad Mehldauが絶賛しているというだけあって、なかなかのピアノ・テクニシャン。又ミュージック・パターンもメルドーに一脈通ずるところもある。
 彼は、フィンランドのジャズピアニストだ。クラシック・ピアノを始め、20歳からブリュッセル王立音楽院へと留学しナタリー・ロリエなどに従事した。在学中に自己名義のアレクシ・トゥオマリア・カルテットを結成し、1999年にベルギーのHoeilaartで開催された国際ジャズ祭で最優秀賞に選ばれているとか(アルバムは、二枚リリースされている。末尾Discograpgy参照)。
 ジャズ界の新生と言えば新生だが、既にその後トリオによるアルバムもリリースし、5枚のアルバムが認められる。又賞の受賞もあって年齢的にも円熟のときを迎えていると思う。

(Tracklist)
1. The Sun Hillock (Alexi Tuomarila)
2. Rytter (Mats Eilertsen)
3. The Girl in a Stetson Hat (Alexi Tuomarila)
4. Vagabond (Alexi Tuomarila)
5. The times they are a-changin’ (Bob Dylan)
6. Shadows (Olavi Louhivuori)
7. Aalto (Alexi Tuomarila)
8. Bruin Bay (Alexi Tuomarila)
9. White Waters (Olavi Louhivuori)


 曲は上記の如く、M5は、Bob Dylanの曲で、ほかの8曲はトリオ・メンバーのオリジナル(リーダーのトゥマリラは5曲)である。
 トゥオマリラのピアノ演奏内容は、コンテンポラリーな面と、一方クラシックに通ずる面との混在で、なかなか面白い。ありきたりのジャズは既に超越していてレベルは高い。
 又ポーランドのベテラン名トランペッター・トマシュ・スタンコTomasz Stankoの下で研鑽を積んでいて、そのせいか演奏も中身は濃い。
 このトリオは、メンバーそれぞれが個性を持って演奏するなかなか一筋ならないトリオであり、しかしそのコミュニケーションは素晴らしくお互いが上手く通じ合ってのことであろう、それぞれの存在が録音も良くベースの弱音やドラムスのシンバルの音も明解に解るが、決して乱れては居ない。そのあたりが敬服してしまうところ。

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 M2. "Rytter"の流れは、アイレットセンがアルコ奏法をもみせるなか、三者の流れの統一感と盛り上がりは納得もの。
 ただユーロ独特の抒情性溢れるメロディーが心に浸みるというタイプでなく、それぞれ及び三者一体の技量の濃さが聴く者に迫ってくると言うタイプで、プロ好み。M4."Vagabond"やM8. "Bruin Bay"の後半は少々難解である。こんなところは、今まで一般受けはもう一つといったところのポイントか。
 私は結構M9."White Waters"は、北欧的世界を頭に描くことが出来、又フィロソフィーも感じられて評価は高い。

<Alexi Tuomarila Discography>
▼Alexi Tuomarila Quartet
2001: Voices Of Pohjola (Igloo - IGL 158)
2003: 02 (Finlandia Records, Warner Jazz - 0927-49148-2)

▼Alexi Tuomarila Trio (Mats Eilertsen, Olavi Louhivuori)
2006: Constellation (Jazzaway Records - JARCD 030)
2013:  Seven Hills (Edition Records - EDN1041)
2017:  Kingdom (Edition Records - EDN1090)

(評価)
□ 曲・演奏 : ★★★★★☆
□ 録音   : ★★★★★☆

(参考視聴)

**

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2018年11月 5日 (月)

キング・クリムゾンKing Crimson Live in Mexico「MELTDOWN」

8人バンド「ダブルカルテット・フォーメーション」でのパワーは圧巻
   ~2018ジャパン・ツアー記念盤~

<Progressive Rock>

King Crimson Live in Mexico「MELTDOWN」
WHD Entertainment / JPN / IEZP-122 / 2018

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Robert Fripp – Guitar
Jakko Jakszyk - Guitar, Vocals
Mel Collins - Saxes, Flute
Tony Levin - Basses, Stick, Backing Vocals
Pat Mastelotto - Acoustic And Electronic Percussion
Gavin Harrison - Acoustic And Electronic Percussion
Jeremy Stacey - Acoustic And Electronic Percussion, Keyboards
Bill Rieflin - Mellotron, Keyboards, Fairy Dusting

Cwhbowcueaayusmw 何回と終止符を打ったキング・クリムゾン、いつもロバート・フリップに騙されてきた我々は、多分気分転換だろうと、過去の経過から今回も見ていたのだが、案の定2014年ライブ活動を再開。同年6月に発表されたメンバー構成は、リーダーのフリップに、メル・コリンズ、トニー・レヴィン、ジャッコ・ジャクスジク、そして3人のドラマー、パット・マステロット、ギャヴィン・ハリソン、ビル・リーフリンという「トリプルドラム」編成の7人構成キング・クリムゾンで圧倒的パワーを見せつけた。そして同年9月9日よりアメリカにて17回公演のツアーを開始した。
 
 ついに日本にも2015年に12年ぶりに上陸、その高松サンポート公演が、2016年リリースの映像とオーディオ版の「ラディカルアクション~ライブインジャパン+モア」 としてお目見えした。
 しかし、2016年ビル・リーフリンが休養、代わりにジェレミー・ステイシーが加わる。彼はドラムスとキーボードを熟している。
 その後、2017年ビル・リーフリンが復帰、ステイシーはそのままで、なんと8人クリムゾン「ダブルカルテット・フォーメーション」となった。

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News01 この8人編成の2017年7月のメキシコ・シティ5公演を収めた映像・オーディオのブルーレイ・ディスクとメキシコ・シティ5公演で演奏された楽曲をCD3枚に収めたライブ・アルバムが、なんと立派な重量級パッケージで登場したのである(オマケにキング・クリムゾン・オリジナル・チケット・ホルダーが付いてきた→)。

 そしてこの延長上に「2018ジャパン・ツアー」が行われるが、その来日記念盤というニュアンスもある。(内容は↓クリック拡大)

List

 Blu-rayは”映像版”では、熱狂的ファンに迎えられた2017年北米ツアーのハイライトとして、ただでも加熱ぎみのメキシコ・シティ公演の熱気をそのまま収録。”オーディオ版”とともにサラウンド・サウンドで聴ける。クリムゾンはやはりこれだと、8人バンドの迫力を実感できる。今回はこれを観ると、エンジニアとしてアルバムを仕上げているビル・リーフリンは、ドラムスをステイシーに渡し、キーボードに専念している。

 また、メキシコ・シティ5公演マスターから制作されるライヴCDはフリップの総指揮の下とは言え、CD収録には、オーディエンスの騒音を如何にカットするか苦労したようだ。しかし『ラディカル・アクション』の音像をクリエートし好評であったデヴィッド・シングルトン以下ファミリー・チームが再度挑戦して仕上げている。

 とにかく、リアル・プログレッシヴ・ロック・バンドと言われるキング・クリムゾンが史上4度目となる決定的ラインナップを完成させたわけで、『ラディカル・アクション』以上にファンを唸らせるのである。

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 とにかく、中身は濃い。ジャッコ・ジャクスジクも、声の質にはもう一歩と言われてはいたが、もうこれで良いだろうとクリムゾン・ファンにも容認されて熱唱する。
 1960年代からのクリムゾンの歴史を辿る演奏曲目も、このバンドとしてのアレンジも加わって、十分納得して聴けるのである。フリップの言う”過去とは一線を画した演奏”は、なかなか強者の集まりで、お見事である。"Larks' Tongues In Aspicでは、ジェイミー・ミューアのパーカッションとまではゆかなくても、それなりの納得演奏。"特に"21st Century Shizoid Man"は、確実に一歩前進、昔の暴れ者メル・コリンズも紳士になっての奮戦、ギャビン・ハリソンのドラムスも感動もので、会場と一体になった演奏は楽しめる。何回観て聴いても飽きないクリムゾンだ。しかしやっぱり映像ものは説得力がある。

 今回の来日ライブを逃すと、おそらく50周年記念でのこの全開パワーには多分再びお目にかかれることはないだろうと思う状況にある。このアルバムと共にクリムゾを手中にしよう。

(評価)
□演奏    : ★★★★★
□録画・録音 : ★★★★★☆

(参考視聴)  2015年 高松版 

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2018年11月 3日 (土)

ロジャー・ウォーターズの世界~ストラヴィンスキー「兵士の物語The Soldier's Tale」

これは彼の生き様からの教訓の物語か?
     ~クラシックに迫るプログレッシブ・ロッカーの道

<Classic>
Roger Waters
IGOR STRAVINSKY'S THE SOLDIER'S TALE (兵士の物語)

Sony Classical / EU / 19075872732 / 2018

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(演奏)
ロジャー・ウォーターズ(語り)
ブリッジハンプトン室内楽音楽祭の音楽家たち

   スティーヴン・ウィリアムソン(クラリネット)   
   ピーター・コルケイ(ファゴット)
   
デイヴィッド・クラウス(トランペット/コルネット)
   デミアン・オースティン(トロンボーン)
   コリン・ジェイコブソン(ヴァイオリン)
   ドナルド・パルマ(コントラバス)
   イアン・デイヴィッド・ローゼンバウム(パーカッション)

Recorded at The Bridgehampton Presbyterian Church, December 11-12,2014

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 ここで先日取りあげた~このロジャー・ウーターズのクラシック・アルバムを聴くに、何故どうして今このストラヴィンスキーなのかと・・・・疑問はなかなか晴れるわけで無いのだが、しかし逆にそれであるから、いろいろと思い巡らしての面白い機会を持てたというところである。
 彼とクラシック・アルバムと言えば、難産の結果生まれた2005年のフランス革命を描いたリアル・オペラ「サ・イラ~希望あれ」がすぐ思い出すところである。そこにはウォーターズの意識というものが必ず存在していた訳で、たまたまこの「兵士の物語Soldier's Tale」の作曲家が、ロシアのストラヴィンスキーIgor Stravinsky(1882-1971)と来れば、まずはある意味での過激性のある問題の意識をどうしても持たざるを得ない。彼は20世紀クラシック界において、そこに大きな変革期を演じたその一人であるからだ。
 そしてしかもその彼の異色作と言われる「兵士の物語」であるからこそ、そこにウォーターズの意志を感ずると同時探りたくもなるのである。

 さてこのクラシック曲は3人のナレーション(語り、兵士、悪魔)と小オーケストラ(7人の器楽奏者)によって演奏される舞台作品で、1918年、第一次世界大戦直後の疲弊した社会環境の下で生み出された作品。ウォーターズの祖父は第一次世界大戦で戦死しており(また父親は第二次世界大戦、イタリア戦線・アンツィオの激戦で戦死)、そのことがこの作品を録音するきっかけになっているとの事とは言え、果たしてそれだけなのかと、単純に捕らえられないウォーターズのこと、一歩掘り下げてみたくなるのである。

79280004429d2dcf_2 そもそもこの「兵士の物語」は、ストラヴィンスキーがロシア革命後の政策下で資産没収により困窮し、その困難を打破するために仕事を展開した。かといって戦争直後の疲弊した状況下では大規模な作品の上演はまずもってあり得ない状況だった。そこで少人数の巡業劇団クラスで上演できるような作品を考えたことにこの曲は生まれることになったらしい。原作を民俗学者・アレクサンドル・アファナーシェフの編纂によるロシア民話集に求め、スイスの小説家・ラミュに脚本の執筆を依頼し、ストラヴィンスキーが曲を構成したと言う経過。

 [そしてその内容]は、ロシア民話の実は教訓をその実とした物語で、兵士ジョゼフが休暇をとってかって幸せであった故郷の母の下に婚約者に会いに行く。そこに悪魔が表れ彼の背にあったヴァイオリン(心)とお金やなんでも手に入るという本の交換をしてしまう。金持ちになった兵士は故郷に帰るも、たった3日間というのが騙され3年の経過があり、婚約者は結婚し夫と子供も居る。故郷では彼を相手にしない。彼は怒りヴァイオリンを悪魔から取り返し、その音色で王室の娘の病気を治して結婚し幸せになる。そこで兵士は昔の故郷の幸せも懐かしくなり結婚した姫と二人で、国境を越え故郷に向かうも又悪魔の仕業により、越えた瞬間に再び悪魔のヴァイオリンにより破綻する。

 (コラール)
   今持っているものに、昔持っていたものを足し合そうとしてはいけない
   今の自分と昔の自分、両方持つ権利は無いのだ
   全て持つ事は出来ない
   禁じられている
   選ぶことを学べ

   一つ幸せなことがあればぜんぶ幸せ
   二つの幸せはなかったのと同じ

You must not seek to add
To what you have, what you once had;
You have no right to share
What you are with what you were.

No one can have it all,
That is forbidden.
You must learn to choose between.

One happy thing is every happy thing:
Two, is as if they had never been.
 

673576878 さて、このような人間の生き方を教訓として歌いあげるこの「兵士の物語」は、ウォーターズの手による改変が成されているようだが、そこまで私は深めていない(私の手にあるアルバムは輸入盤で、当然ナレーションの英語の内容は記されているが、私にとって十分に訳せるものではない。日本盤には和訳があるのだろうか)。

 いずれにせよ、語り手、兵士、悪魔の3人をウォーターズが一人でナレーションしているその業には真迫感が有りお見事で脱帽だ。彼にはいまやそうした世界にも深める事を試み、そしてこの曲の教訓までも訴えているところが恐ろしい。
 目下の「US+THEM Tour」の延長による延長の成功も、今や彼はピンク・フロイドの頭脳として作ってきた時代評価の強者として、更に昇華して存在している。ここにはAnti-Warとしての共通点は見いだされるが・・・・。

 しかし、彼のロッカーとしての人生は、才能と努力によってその道による成功をもたらし財産家となってはいるが、少年期の父不在の不幸、戦争のもたらした人間的不幸を反省しきれない世情の不信感、これは一向に晴らすことは出来ないでいる。そして果たして家族的幸せも獲得できているのだろうか、それは度重なる離婚劇は彼にとって何なのか、ここにはこの「兵士の物語」を彼が熱演する何かがありやしないだろうか。

 The Soldier's Tale is a Modern Fairytale and at the sametime an Anti-War piece

 このアルバムの録音は2014年。その時のメンバーによって翌2015年にブリッジハンプトン室内音楽祭(ニューヨーク州)で実演にもかけられている。 採算性は全く考えられないこうしたアルバムをリリースするウォーターズの生き様は益々目を離せない。

「THE SOLDIER'S TALE」
Part 1:
1. “The Soldiers March”
2. “Slogging Homeword”
3. “Airs by a Stream”
4. “As You Can Hear…”
5. “The Soldiers March (Reprise)”
6. “Eventually, Joseph Reaches his Home Village…”
7. “Pastorale”
8. “The Soldier, Disconsolate…”
9. “Pastorale (Reprise)”
10. “The Soldier, Slowly Coming Back to Himself…”
11. “Airs by a Stream (Reprise) - To Stretch Out on the Grass…”
12. “Hey Satan, You Bastard…”
13. “Airs by a Stream (2nd Reprise)”
14. “Now to be Gained Here…”
Part 2:
15. “The Soldiers March (2nd Reprise) - Down a Hot and Dusty Track…”
16. “He Doesn't Even Know Himself…”
17. “The Soldiers March (3rd Reprise) - Will he Take the Road to Home…”
18. “He doesn't have a Home Anymore…”
19. “The Royal March”
20. “So all was Arranged…”
21. “Later that Night…”
22. “The Little Concert - Light Floods the Eastern Sky…”
23. “The Soldier, with a Confident Air…”
24. “Three Dances - Tango, Pt. 1”
25. “Three Dances - Tango, Pt. 2”
26. “Three Dances - Waltz & Ragtime”
27. “So First a Tango…”
28. “The Devil's Dance”
29. “The Devil, Confused…”
30. “The Little Chorale”
31. “The Devil Recovers Some of his Wits”
32. “The Devil's Song - All Right! You'll be Safe at Home…”
33. “Hm, a Fair Warning…”
34. “Grand Chorale (Part 1)”
35. “Spring, Summer, Autumn…”
36. “Grand Chorale (Part 2)”
37. “Steady Now…”
38. “Grand Chorale (Part 3)”
39. “Steady, Just Smell the Flowers…”
40. “Grand Chorale (Part 4)”
41. “Now I have Everything…”
42. “Grand Chorale (Part 5)”
43. “The Princess, all Excited…”
44. “Grand Chorale (Part 6)”
45. “And so, Off They Go…”
46. “Triumphal March of the Devil”

(視聴)

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2018年11月 1日 (木)

この10月は、ちょっと「城巡り」~その2

名城四国編

 昨年の10月に続いて、今年もちょっと城巡りの機会がありました。
 城でもやはりなんと言っても天守閣が魅力があるのですが、現在日本全国でも「現存天守」と言われるものは、寂しいことですが12城しかないわけで、そのあたりは全て見ておきたい気持ちがある。つまり再建した城はどうしても味わいに欠けると言うか、どこか空しいのですが、現存天守はやはり心に響きます。

 (参考1)「天守閣の分類」
    ■ そのまま現存している天守
     ①現存天守 : 江戸時代からのそのまま現在に残った天守
    ■ 復元した天守
     ②木造復元天守 : 図面をもとに忠実に復元
     ③外観復元天守 : 図面の外観のみ復元
    ■ 忠実な再現なし
     ④復興天守 : 天守はあったが忠実な再現はせず
     ⑤模擬天守 : 本来は天守なしの場合に作られたもの 
 
(参考2)「現存天守」
   全国見渡してわずか12城しかない。それは弘前城、松本城、丸岡城、
犬山城、彦根城、
   姫路城、松江城、備中松山城、丸亀城、松山城、宇和島城、高知城、の12城。

 

□ 高知城 (現存天守) 2018.10.19

Pa190567w2_4 好天の高知城を拝見できた。高知市の中央にある。規模は大きいとは言えないが、なかなか美しいたたづまいである。日本100名城に選定されている。別名鷹城(たかじょう)。
 江戸時代に建造された天守や本丸御殿、追手門等が現存している貴重な城。

 江戸時代初期(慶長8年1603年)に、関ヶ原の戦いの功績者・土佐藩初代藩主・山内一豊によって着工され、2代忠義の時代に完成したもの。3層6階の天守は、一豊の前任地であった掛川城の天守を模したといわれているらしい。名称は一豊により河中山城(こうちやまじょう)と名付けられたが、その後、高智山城と名を変え更に現在の高知城。 
 一度城下町の大火で焼失し、寛延2年1749年に再建されたもの。
 追手門が現存し、そのバックに天守が見られ、美しい。現在、自由民権運動の板垣退助の像も置かれている。

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□ 松山城  (現存天守) 2018.10.20

 愛媛県松山市にある城。現在は「松山城」と呼ばれいるが、別名金亀城(きんきじょう)、勝山城(かつやまじょう)。(各地の松山城と区別するため『伊予松山城』と呼ばれることもある)。この10月好天の下、訪れることが出来た。

Img_1221trw 松山城は、松山市の中心部である標高132mの城山(勝山)山頂に本丸があり(今回宿泊した道後温泉から見た写真→)、裾野に二之丸(二之丸史跡庭園)、三之丸(堀之内)がある、広大な平山城だ。
 大天守(現存天守の1つ)を含む21棟の現存建造物が国の重要文化財に、城郭遺構が国の史跡に指定されている。
 昭和初期の1933年に大天守を残して焼失した。その為連立式天守群の小天守以下5棟をはじめとする22棟(塀を含む)が木造で復元された。したがって現在、かっての立派な威容を誇っている。

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  天守は安政元(1602)年に落成したもので、三重三階地下一階の層塔型天守という様式で、江戸時代最後の完全な城郭建築だそうだ。
 天守と小天守、隅櫓を渡櫓で結ぶ天守建造物群は、連立式天守を備えた城郭と言われるもの。なかなかお見事な構造である。
 親藩・松平家によって建築されており、そのことを物語る「葵の御紋」が瓦などに見られる。

Pa200677tr3w 現在はこの城址は市民や観光のための公園の形で管理され、市の中心観光地である。私の訪れたのは秋の好天で、多くの観光客で賑わっていた。山頂の天守までは昇るのは大変なため、ロープウェイ、リフトが途中まで運行されていて、かなり観光客にとってはスムーズな鑑賞が出来る(右のように地元の大学生の暖かい歓迎を受けた→)。

 昨年、ここでジャズ・ブロガーのJamkenさんに勧められた城で、是非とも、と・・・・訪れた次第。     (click to enlarge)

(参考)

① 高知城

            *              *

② 松山城

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