« 2018年11月 | トップページ | 2019年1月 »

2018年12月29日 (土)

アントニオ・サンチェスANTONIO SANCHEZ & MIGRATION 「LINES IN THE SAND」

今年の締めくくりはこれに尽きる!!

<Jazz, fusion, crossover>
ANTONIO SANCHEZ & MIGRATION 「LINES IN THE SAND」
Cam Jazz / Import /CAMJ 7940-2 / 2018


Lineinthesand

Antonio  Sanchez(ds,  voice,  additional  keys), 
John  Escreet(p,  fender  rhodes,  prophet  synth), 
Matt  Brewer(b,  el-b), 
Thana  Alexa(voice,  effects), 
Chase  Baird(ts,  EWI)
Nathan  Shram(viola  on  Travesía  Part  II),
Elad  Kabilio(cello  on  Travesía  Part  II  and  Long  Road)

Migratio

 メキシコ人のアントニオ・サンチェスAntonio  Sanchez、彼は今や最も注目度の高いドラマーだ。その彼の結成するバンド「MIGRATION」が放つ問題作がこれだ。彼はメキシコ人であるが今は移住派のアメリカ人。
Trumpw 今、語るとしたらなんと言っても米国の現状についてであろう。容認できないメキシコとの関係についてサンチェスは訴えている。それは誰が何の為に引き起こしているのかと問うてみれば答えは一つ、トランプ大統領の誕生からの不幸な世情。そしてそれに対峙しているのである。
 彼は自ら書いたライナーノーツで言う「トランプが人々の不安に付け込んみ、デマや憎悪と頑迷に満ちた詭弁で彼らを利用したに違いないと思っている。この国に25年住む間、そんなことをする大統領は見たことがない」と・・・・。そしてここに大統領の政治姿勢に対する憤りと、それによって犠牲になっている人々に想いをよせた心の作品が誕生したのである。

35129204_003

 メキシコで大々的にトランプ・アンチ・テーゼを掲げたライブを演じたロジャー・ウォーターズは、2017年にトランプはじめ世界の第二次大戦後の反省を忘れた現状を嘆いた『is this the life we really want?』(SICP5425/2017)をリリースした。そして二年間の世界ツアー「Us+THEM」ライブを展開、圧倒的支持を得た。それから始まって足掛け二年、ここに来て、立ち位置は異なっているも、アントニオ・サンチェスはやはり2017年作品の『Bad Hombre』(CAM Jazz/ITA/CAM7919)に続いて、更にトランプ批判作品のこの『Lines in the Sand』を登場させた。両者の作品の充実度は群を抜いている。
 この年末に来て、今年はこのアントニオ・サンチェス作品をもってしてそれ以外に締めくくれる術が無い。こうした群を抜いた充実度の高いアルバムの出現は、憂うべき世情に彼らを奮い立たせた結果でなのある。

A3167011425651799w(Tracklist)
1. Travesía Intro (1:23)
2. Travesía (Part I - Part II - Part III) (20:08)
3. Long Road (6:57)
4. Bad Hombres Y Mujeres (8:43)
5. Home (6:17)
6. Lines In The Sand (Part I - Part II) (26:15)

▶ M1."Travesía Intro"イントロから不穏の雰囲気に包まれる。ここまでSEでやるかという冒頭からパトカーのサイレン、私の耳では聞き取れないが、紹介によると、大衆の“This is Wrong”“ Shame on You” といった人々の叫びが収録されている不穏な現場。サンチェスの危機感が表現されている。
▶ M2. "Travesía (Part I - Part II - Part III)"M6."Lines In The Sand (Part I - Part II)"の2曲はそれぞれ20分、26分という壮大な組曲。M2は静かに迫る不安な世界、M6は心に誓う決意の激しさと、悩める心の不安定感を感じさせる。
▶ M3. "Long Road" 怒り、憤りというよりは哀しみに満ちている。そして不安を抱きながらの長い道程を歩む姿、そこには意欲の表現が伺える。
▶ M4. "Bad Hombres Y Mujeres"強烈なアクセントとなる曲。彼らのパワーが全開する。圧巻のユニゾンとアンサンブル、そのスピード感あるスリリングと言うか緊迫感ある展開は見事。サンチェスのドラミングが炸裂。
▶ M5. "Home " アルバム「Bad Hombre」に登場した曲の再登場。静かに響くベースの調べから、Alexaのヴォーカルが哀しく美しい曲。シンバルとトラムスが危機感を描く。

 全編、静と動、哀愁と悲惨、ドラマチックにして深遠な世界、圧巻である。

Imin_kokkyouhen_2_2

  とにかく、ジャズ畑(このアルバムは、そのジャンルは明らかに越えているが)としては珍しい壮大にしてアルバム全編一貫してのコンセプト版。前アルバム『Bad Hombre』に飽き足らず、ここにその延長線上といってよい自作自演作品で迫ったサンチェスに敬意を表したい。

 アントニオ・サンチェスは1971年生まれ、47歳ということになる。彼のリ-ダ-・アルバムは7を数えるが(↓)、ドラマーとしてPat Methenyと多くのアルバムを残し、Enrico Pierannunziとのアルバムも多い。その他Chick CoreaやGary Burtonとも共演している。更にドラマーというだけでなくコンポーザーとしての能力も評価されているのだ。どちらかというとラテン系の影響を受けているjazzだとは思うが、Rockのニュアンスもあり、Fusionと言った方が良いのか、死語ではあるがCrossoverといったところだ。彼のドラミングは緊張と緩和の絶妙なバランスが評価され今やそれは現代最高峰と言われている。(彼を取りあげたのは初めてであるのでリーダー・アルバムを下に記す)

(Antonio Sanchez : Leader Albums)
Migration (CAM Jazz, 2007)
Live in New York at Jazz Standard (CAM Jazz, 2010)
New Life (CAM Jazz, 2013)
Three Times Three (CAM Jazz, 2015)
The Meridian Suite (CAM Jazz, 2015)
Bad Hombre (CAM Jazz, 2017)
Lines In The Sand (CAM Jazz, 2018)

 今年は「地球規模の不安定」、「人間社会構造の不安定」が現れた一年であった言える。このようなアルバムの出現をしっかりかみしめ一年の締めくくりとすべきである。
 来年こそ、我々に課せられた課題は大きい。
 皆さん、良いお年をお迎えください。

(評価)
□ 曲・演奏・コンセプト : ★★★★★ 
□ 録音          : ★★★★★☆

(視聴)

*

| | コメント (6) | トラックバック (2)

2018年12月25日 (火)

クラウディオ・フィリッピーニ Claudio Filippini Trio 「THE ENCHANTED GARDEN」 & 「BEFORE THE WIND」

ピアノの美しさにコンテンポラリーな味付けのトリオ

<Jazz>

Claudio Filippini Trio 「THE ENCHANTED GARDEN」
CAM Jazz / ITA / CAMJ7839 / 2011


51giyfvagqlw

Claudio Filippini (p,key)
Luca Bulgarelli (b)
Marcello Di Leonardo (ds)


  寺島靖国が『For Jazz Audio Fans Only Voll.11』(TYR-1074/2018)で取りあげた曲"Django"の納まっているアルバムである。当然これは聴いておかねばと注目したもの。
 あのエンリコ・ピエラヌンツィが、ライナーノーツを担当し、その才能を褒めたたえるイタリアのピアニスト、クラウディオ・フィリッピーニClaudio Filippini(1982年ペスカーラ生まれ) の2011年のリリースもの。当時30歳前後の新進気鋭の作品だった。これは日本でも評価が高くそれなりに売れたアルバムだったようだが、私は未聴だったもの。

(Tracklist)
List

Cf なるほど、ピエラヌンツィが目をつけるだけあって、まずはピアノの音が瑞々しく透明感のあるところで、M1."Il Fiore Purpureo"はそのピアノ・ソロからスタートして、シンバル音、ベースと入ってくるところがこれはなかなかと魅力を感じさせる。次第にペースを上げてジャズの世界に突入するも騒がしさが無い中にしっかりと主張はしている。
 M2."Verso Sera"は、所謂スウィング・ジャズとは一線を画して、フリー・ジャズに近い世界を展開。しかしそこにはふとピアノがクラシックを思わせる中に、シンバルの繊細な響き、ベースは曲の支柱になって支えるの音が十分対等に交錯して違和感の無いジャズにしてみせる。これが又録音エンジニアはStefano Amerioとくるから、なかなか快感の音であるのだ。
 寺島靖国はこのアルバムの最後の曲ジョン・ルイスのM13."Django"を選曲したのだが、これが静かにメロディアスな優しいピアノ、そしてベース、ブラシ・ドラムスの音がゆったりと繊細に響き、なんとも言えない魅惑の快感の世界に包まれる。ユーロの世界、イタリアの世界と華々しいアメリカン・ジャズとは別の感覚を楽しませてくれる。
 ミッシェル・ルグランの曲M8."You Must Belieave in Sprig"のピアノの美しさには惚れ惚れする。

  このアルバムは13曲盛り込まれているが、彼らのオリジナルが多く、曲によっては三者の責め合いもあって、単なる抒情性の世界では無く、既成の世界から一歩出て行くフリー・ジャズの色も見せてコンテンポラリーなところは将来楽しみなところである。

(評価)
□曲・演奏 : ★★★★☆
□録音   : ★★★★★☆

                              - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

(参考)

 Claudio Flippini Trio 『BEFORE THE WIND』 
                    (Cam
Jazz/CAMJ 7936-2/2018)

 彼らのトリオは不変で、今年はこのニュー・アルバムをリリースしている。このアルバムもついでにと手に入れてみたが、ここでもクラウディオ・フィリッピーニのややクラシックがかった美しいピアノが展開し、決して難解にならないコンテンポラリーさもやはり持っていて、結構快感で楽しめるところにある。なんとエレクトリック・サウンドも交えるという一幕もある。又ベースのLuca Bulgarelliは、ソロ演奏で聴かしたり、アルコ奏法を交えてうやはり美しいバックを構築するところもある。これもAmerioの録音で、サウンドにうるさい人には是非聴いて欲しい魅力的トリオ・バランスを構築している。

81rz6q5hbclw_2(Tracklist)
1. Maia (4:41)
2. Andromeda (5:50)
3. Don’t Elevarsi (6:19)
4. Bassever (1:09)
5. Forever (5:36)
6. Goa (6:21)
7. Mentre Dormi (4:59)
8. Haze (6:14)
9. Encore (4:06)

All music by Claudio Filippini except tracks #4 Luca Bulgarelli;
#6 Claudio Filippini, Luca Bulgarelli, Marcello Di Leonardo

Claudio Filippini(p, keys),
Luca Bulgarelli(b),
Marcello Di Leonardo(ds)

Recorded in Decem.2017 at ARTESUONO RECORDING STUDIO
Recording & Mixing engineer Stefano Amerio

(視聴)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年12月21日 (金)

寺島靖国プレゼンツ 第18巻 「Jazz Bar 2018」

18年目を迎えたシリーズは、やっぱり欧州ムード美旋律曲集

<Jazz>
Yasukuni Terashima Presents 「Jazz Bar 2018」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1075 / 2018

41zztd4xoelw

 このシリーズは、なんとなく毎年手に入れて一年を回顧する習慣になっているもの。そんなところから今年の18巻目は多分寺島レコードからリリースされたAlessndro Galati などを筆頭に、選曲はおそらくこんなところだろうと数曲予想していたのだが、なかなか一筋縄では行かない寺島靖国、完全に予想を翻されて、なんと私の購入アルバムはゼロ。それは予想に反してかなり古いモノを掘り起こしているためだ。そんなわけだか、皮肉にも極めて意外にフレッシュな感覚で聴く事の出来たコンピ・アルバムとなった。ただ予想したるところは、ユーロ系が多いというところにあって、これは私の期待に添っていたことになる。

(Tracklist)
1. SAD TO SAY [Vladimir Shafranov]
2. PIENSA EN MI [Marco Mezquida]
3. MISSION [Varga Gabor Jazz Trio]
4. GIORGIA MOOD [Giorgio Azzolini]
5. FENESTA CHE LUCIVI E MO NON LUCI [Alessandro D'Episcopo]
6. OLD FOLKS AT HOME [Moncef Genoud Trio]
7. MY LAMENT [Martin Terens Trio]
8. JUSTE AVANT [Jean-Pierre Mas]
9. LA CHANSON DES VIEUX AMANTS [Charles Loos Trio]
10. HIDDEN MESSAGE [Laszlo Gardony]
11. MARCIA FUNEBRE [John Taylor]
12. DUST IN THE WIND [Philippe Lemm Trio ]
13. TRES PALABRAS [Abe Rabade]

71dtr2ik0rlw2_371pawheehylw2_281husagvx7lw2_2412bssyls9l_4

*
  さて上の選曲をみても、意外にも売れ筋ではマイナーと言って良い布陣です。そこが味噌と言えば味噌なのだが、私にとってウ~ンそんなところもあるのかと、ニヤっとして紹介された曲の気にいったアルバムを押さえたくなるんですね。しかし今回少々調べてみると結構古いモノが多く、ここまで来るとちょっと寺島靖国もこのところは苦労しているのだなぁと想像もしてみるんです。そんなに無理しないで今年の人気モノも載せておけば良いのにと若干同情もしてしまう。
 それもそう近年は『For Jazz Audio Fans Only』、『For Jazz Vocal Fans Only』、『For Jazz Drums Fans Only』と、立て続けにコンピ・アルバム・シリーズをリリースしているわけで、どうも若干ネタ切れかと想像もしてしまう。

 それもなんと、M3. "MISSION" [Varga Gabor Jazz Trio]は、このシリーズの7年前の「2011年版」の2曲目にも同じモノが登場しているんです。これはやっぱりまずいでしょう。それでも許さなければいけないのかとなると、このアルバム結構値段もお高いので、その分まけて頂戴と言いいたくもなった次第。周りのスタッフも気がつかなきゃいかんでしょう。でも許しましょう、得るモノも大きいので・・・・。

M1. "SAD TO SAY" [Vladimir Shafranov]  は、ジャズという感覚無しで聴ける美旋律。(アルバム上左)
M5."FENESTA CHE LUCIVI E MO NON LUCI"は、まさにイタリアの歌心で心にしみ込んでくる。(アルバム上左から二番目)
MartinterensM7."MY LAMENT"これはちょっと注目もの。ドイツのMartin Terens Trio(→)、どこかアグレッシブな世界を求めている演奏で興味を持つ。録音がシリアスで、ドラムスのブラッシ奏法が効果的(アルバム上左から三番目)
M9."LA CHANSON DES VIEUX AMANTS"なんとなく泣かせる曲。余韻の捕り方がなかなか上手い演奏。(アルバム上右)
M10."HIDDEN MESSAGE"哀愁曲のまあ及第点モノ。

 選曲されたものに関しては、先日リリースの『For Jazz Audio Fans Only Vol.11』と刺激性はかなり低い。まあ優しいというムードといってよいのかとも思う。このシリーズはどちらかというとロマンチックな面や抒情性を重んじての選曲として、我々も受け入れてきたのであるから当然なのかもしれない。そんな世界に作り上げられているアルバムだ。そこが魅力の一つであると言っておこう。しかし少々残念なのは、今回は古いアルバムからの選曲が多く、「2018」と銘打っているにしては?・・・・と、疑問も無いわけではない。取り上げた曲の納められたアルバムにせまってみようという意欲は若干過去に比べると低かったことは否めない。

(試聴)

*

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2018年12月17日 (月)

シモーネ・コップマイヤーSimone Kopmajer 「SPOTLIGHT ON JAZZ」

キュートから円熟味の加味されたロマンチィック・スタイルへ

11667383_10153991571834829_15266126


<Jazz>
Simone Kopmajer 「SPOTLIGHT ON JAZZ」
Lucky Mojo / EU / LMR 1801 / 2018

61myzpkv1l__slw

Simone Kopmajer (Vocals)
Terry Myers (ts,cl)
Paul Urbanek (p)
Martin Spitzer (g)
Karl Sayer (Bass)
Reinhardt Winkler (Drums)

 オーストリア出身のジャズ・シンガーでヴィーナス・レコードからデビューしたシモーネ・コップマイヤーSimone Kopmajerのニュー・アルバム。ジャズ・スタンダードにスポットライトを当てたそのままのタイトルの付いたアルバムの登場だ。これはVenusでなくLucky Mojo Recordsからのリリース。彼女は最近は米国での活動も多い。

61qu5ysczl__w_2 私の知る限りだと、かっては"シモーネ"と言う名前でアルバムがリリースされていた。私が持っているのはデビュー当時のアルバムを二枚組にしたVenus Recordsの"The Best Coupling Series"のもので、『Moonlight Serenade 』+『 Romabce』(VHCD-1147/2013 →)である。この当時はキュートと言った表現に当たる可愛い声でのジャズを歌ったアルバムであった。これはもともと2003年に彼女のデビューした時のもので(彼女は1981年生まれであるから、当時22歳)、もう15年前になる。従って今回のアルバムはどんなムードか、若干彼女の変化に興味を持ちつつこれを聴いた訳だ。

319779_101509324183w_2(Tracklist)
1 Spotlights 3:56 *
2 Pennies From Heaven 5:10
3 You Don ́T Call Me 3:30
4 Mighty Tender Love 4:17 *
5 Poinciana 6:46
6 Dig That Riff 4:00
7 Remember Jeannie 6:58 *
8 Struttin ́ With Some Barbecue 4:08
9 Exactly Like You 4:44
10 A Gift From Buddy 4:40
11 Stompin ́ At The Savoy 4:25
12 We ́Re Goin ́ In 4:32
13 Mood Indigo 4:04
14 Dig That Riff 3:02

 (*印:Simoneのオリジナル曲)

  それでもあのキュートは残しつつ若干卒業して、適当に垢抜けた円熟味が加味され大人のジャズヴォーカル色が加わったロマンテイック・スタイルになった彼女をこのアルバムで聴ける。
 バックはピアノ・トリオにテナー・サックス、ギターが加わって、ジャズの条件はしっかりとそろえている。全体に標準的なサウンドで、荒れることの無い、コンテンポラリーな変化も無い大人しいバックで、やはり彼女のヴォーカルを主体とした演奏だ。
 実は彼女の前作『Good Old Times』は昨年リリースされたアルバムだが私は聴いてなかった。その中身はロック・ポップスに近いモノだったようだが、今回はしっかりジャズ・シンガーを表に出している。

  オープニングのM1,"Spotlights"から、やや陽気な展開で、その流れはアルバム全体の印象となっている。まあ声の質から言っても深刻さの無いお手軽ジャズ・ヴォーカル・アルバムとして聴くのがよいのだろうと思う。
 私的は M2、M3、M5あたりは落ち着いたムードで好感。
 M10 "A Gift From Buddy" M13 "Mood Indigo"の2曲は、大人のムード仕立てで、このアルバムでは出色。

(評価)
□ 歌・演奏 : ★★★★☆
□ 録音   : ★★★★☆

(視聴)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2018年12月13日 (木)

寺島靖国プレゼンツ「For Jazz Audio Fans Only~ Vol.11」

今回もサウンド・演奏に充実感に浸れる

<Jazz>
Yasukuni Terashima Presents
「For Jazz Audio Fans Only~ Vol.11」

TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1074 / 2018

Forjazzfans

 オーディオ・ファンに向けたコンピレーション「For Jazz Audio Fans Only」の第11巻が登場した。ジャズを聴くにはまずそのサウンドが良くないと納得しないと言う寺島靖国の選曲シリーズだ。なにしろ「ジャズは音で聴け!」のコンセプトの下に集められたもので、なるほどと思わせるに十分だ。私もその傾向にあるといえば・・・・そうかも知れない。なんと言っても昔の録音の名演奏シリーズも音にがっかりしてしまうことは何度も経験している。そんな中でこのような企画はこれからのCD製作に良い刺激を与えていることは間違いないだろう。
 今回はそう有名で無いミュージシャンものが多いと思うが、それが私にとっては良い発掘の場ともなっていて楽しみなのである。

(Tracklist)
1 OLD CITY (LOUIS PERDOMO)
2 BALLAD FOR L (MARIO NAPPI TRIO)
3 INTERLUDE (FABIAN MEYER TRIO)
4 DJANGO (CLAUDIO FILIPPINI TRIO)
5 ULTIMO GIORNO IN VIA PALAZZI (MICHELE DI TORO TRIO)
6 AUTUMN LEAVES (SWEET BABY J'AI)
7 WHERE OR WHEN (THE LYNNE ARRIALE TRIO)
8 ILTER FABEL (MAKIKO HIRABAYASHI TRIO)
9 WHEN THE DAY IS YOUNG (STEPHAN BECKER TRIO)
10 SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE (SILVES TRIO)
11 LONGING (EMIL BRANDQVIST TRIO)
12 MISS (ALEXI TUOMARILA TRIO)
13 NO REGRETS (SIMON DENIZART TRIO)

51giyfvagql
814ylccyuylw_4
91dtqyb2kgl__sl1383w_6





**今回も圧倒的にトリオものが多い。まぁ私のようにビック・バンドを好まない人間にとっては、これ又歓迎である。

  そしてまずの注目株は2曲目の”BALLAD FOR L”のイタリアの若武者マリオ・ナッピ・トリオMARIO NAPPI TRIOだ。これがなかなかのくせ者。アルバム『Triology Vol.2』からの曲が取りあげられた。彼らはなかなか一筋縄では行かないアグレッシブな世界を築く。そしてそれに相応しいトリオ対等の録音位置にありシンバルも冴える。
 次の注目はM4 "DJANGO" (アルバム『THE ENCHANTED GARDEN』上左)のクラウディオ・フィリッピーニ・トリオCLAUDIO FILIPPINI TRIO、イタリアのトリオだ。このトリオを知っただけでも十分このアルバムを手に入れた成果はある。とにかくピアノが素晴らしい上にドラムスはどちらかというと繊細派、ベースは意外にリード派だ。エンリコ・ピエラヌンツィが才能を認知しているトリオである。そう言えば押して知るべしと言った所。
  M6 "AUTUMN LEAVES" ベースとSWEET BABY J'AIのヴォーカルが低音で迫ってくる。
 M9 "WHEN THE DAY IS YOUNG" (STEPHAN BECKER TRIO、アルバム『Solar Energy』上中央)が録音が素晴らしくピアノが冴える。演奏も思索的で素晴らしい。
 M11 "LONGING" (EMIL BRANDQVIST TRIO)あたりは優しく美しくで気持ちが良い。
 M12 "MISS"は、先日ここで取りあげたALEXI TUOMARILA TRIOで、絶妙なピアノ・プレイが聴き応え十分(アルバム『Seven Hills』より、上右)。

 こんな調子で、なかなか今回のこのコンピ・アルバムは充実感があります。まあ年に一回のリリース・ペースで、あまり第一線の注目盤は避けているようで、その為若干古いリリースものもありましたが、私にとっては意外に新鮮で面白かった。
 

(試聴)

① CLAUDIO FILIPPINI TRIO

           *

② STEPHAN BECKER TRIO

                     *

③  ALEXI TOUMARILA TRIO

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年12月 9日 (日)

ラーシュ・ヤンソンのニュー・アルバム Lars Jansson Trio 「JUST THIS」

端麗なピアノ・タッチは緩急・メリハリの効いたメロディーに乗って

<Jazz>
Lars Jansson Trio 「JUST THIS」
Spice of Life / JPN / SOLSV41 / 2018

6199ff9hyilw

Lars Jansson ラーシュ・ヤンソン (piano)
Thomas Fonnesbaek トーマス・フォネスベック (bass)
Paul Svanberg ポール・スヴァンベリー (drums)

 スウェーデン抒情派ピアノのベテラン・ラーシュ・ヤンソンLars Jansson (1951年スウェーデンのオーレブロ生まれ)の、レギュラー・トリオによる全曲13曲をオリジナルで構成したアルバムの登場だ。2015年の『Facing The Wall』(SV-0033/2015)以来3年ぶりとなる。
 前回ここで取りあげたのは2年前のセルフ・カヴァー・アルバム『More Human』(SOLSV-00371/2016)だったが、あのアルバムからは、人間性が溢れていたところにどっぷりと浸かることが出来たが、さてこのオリジナル曲集は?と興味の湧くところである。

20170720_210108trw 少し難題にはなるが、タイトルの「Just This」は彼の探求する禅の心「ビギナーズ・マインド “初心”」の見地から生まれたと説明されている。全13曲には全てが彼の人生への深い想いと彼自身の心の反映されたものとして受け入れられているが・・・・。
 更に、このアルバムをレコーデイングする直前に夫人のクリスティーナの重篤な病気という精神的に苦悩する中での作品作りとなったものと言うことで、彼の持ち前の人間性の表現がここにありと言う世界のようだ。

 ”その追い込まれた精神の中で葛藤する彼のピアノは今まで以上に人間味溢れ極めて説得力のある力強いものになっている”と評価されているが・・・・。
 ヤンソンの言うところよると「人生の全てを受け入れるということは簡単なことではない。しかし現在を見つめ完全に自分を没頭させること、Just This。」と・・・・。

(Tracklist)
01. ジャスト・ジス / Just This
02. ピュア・センセイション / Pure Sensation
03. ワルツ・フォー・ビル / Waltz For Bill
04. レシーヴィング / Receiving
05. ボーヒュースレン / Bohuslan
06. ムスタファ / Mustapha
07. インティメイト・トーク / Intimate Talk
08. チェリッシュド / Cherished
09. ターン・ザ・ホール・シング・アップサイド・ダウン / Turn The Whole Thing Upside Down
10. ノー・パーパス / No Purpose
11. セイフ・トリップ / Safe Trip
12. アナッタ/ Anatta
13. トゥー・ハヴ・オア・トゥー・ビー/ To Have Or To Be

(all tracks composed and arranged by Lars Jansson)


Larsjansson01 スタートからアルバム・タイトル曲M01."Just This"が登場するが、なるほどヤンソンの陰影の感じられない家族愛的優しいメロディーが流れる。
 M02."Pure Sensation"やビル・エヴァンスに捧げたと言うM03."Waltz For Bill"は、ややアップ・テンポに展開する曲。しかし意外に印象に残らない、それは難点らしいところが無いのだ。これが実はヤンソンの演ずる曲の一つの特徴であるように思う。
 M04."Receiving"は、彼の技巧の妙による流れの魅力的な曲。
 中盤には、トリオとしての三者の技量の交錯が聴きどろの数曲が展開する。
 M10."No Purpose"M12. "Anatta"は、彼らしい心に落ち着きと安らぎを与えてくれる。
 最後のM13."To Have Or To Be"は、締めくくりに相応しいどこか愛情のあるバラッド。

  相変わらず彼の持ち味どおりで、難解な展開にはならない。やはり「ピアノ・トリオの教科書」的安定感があり、安心して聴いていられるピアノ・トリオ世界だ。そこがヤンソンの特徴だろうと思うが、聴き終わって”これだ!”というインパクトがない。逆にそうしたところが魅力なのかも知れないが、私にとってはどこか”毒”とまでは言わないが、そんな刺激がないところがちょっと寂しいのである。
 

(評価)
□曲・演奏 ★★★★☆
□録音   ★★★★☆

(試聴)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年12月 5日 (水)

ソニア・スピネロのニュー・アルバム Sonia Spinello Quintet 「CAFÉ SOCIETY」

実力派のヴォーカルは情感たっぷり

<Jazz>
Sonia Spinello Quintet 「CAFÉ SOCIETY」
Abeat Jazz / ITA / ABJZ182 / 2018

51pclyy4txl

Sonia Spinello : voice
Fabio Buonarota : trumpet
Gianni Cazzola : drums
Lorenzo Cominoli : guitar
Attilio Zanchi : doublebass

45327647_2214351592178953w_2  私の注目のロベルト・オルサーRobert Olzerとのカルテット・アルバム『WONDERland』(ABJZ162/2017)の素晴らしさで知ったイタリアの実力派女性歌手ソニア・スピネロ。今度はクインテットによるスタンダード・ナンバーのアルバムだ。
 相変わらず、彼女のディープにして情感充ち満ちたヴォーカルで歌い上げられているが、彼女は1974年生まれで目下充実の年齢、ジャズ・ヴォーカルの研究者でもあるらしい。
 そして今度はピアノに変わって、トランペット、ギターがムードを盛り上げ役になっている。
 しかしそれにつけても、もうちょっと洒落たアルバム・ジャケにして欲しかった。それによりガラっと変わったムードとして聴けると思うのだが・・・。

20374504_1940449609569154_112946471(Tracklist)
1. Body And Soul
2. But Not For Me
3. Love For Sale
4. Misery
5. Our Love Is Here To Stay
6. Sophisticated Lady
7. You Don’t Know What Love Is
8. Yesterdays

 M1. "Body And Soul" ギターとミュートを効かせたトランペットがムード盛り上げ、ソニアのソフトにして厚みのある深く沈むヴォーカルがしっとりと聴かせる。
 M4. "Misery" も良いですね。これは”悲嘆”と言う意味だろうか、トランペットも哀しく響き、彼女のヴォーカルも美しくも哀しく歌って心打つ。
 M6. "Sophisticated Lady "このあたりは彼女の独壇場。
 M7. "You Don’t Know What Love Is"が、しっとりと訴えてきて、こうゆうムードには私は痺れて弱いんですね(笑)。

  まあどちらかというと、ユーロというよりアメリカン・ナイト・ムードといったところだ。この世界もジャズ・ファンの中では結構好きな人は居るんじゃないかと思うところ。ユーロ好きの私もこのような世界であればOKなんですね。なかなかこのような大人のムード・ヴォーカルも最近少なく、暫く聴き入ってしまった。

(評価)
□ 歌・演奏 : ★★★★★☆
□ 録音   : ★★★★☆

(試聴)  

(視聴)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年12月 1日 (土)

ペトラ・ヴァン・ナウスPetra van Nuis 「because we're night people」

女性ヴォーカルを堪能したかったら・・・これだ!

 

<Jazz>

 

Petra van Nuis & Dennis Luxion 「because we're night people」
MUZAK.Fab./ JPN / MZCF1378 / 2018

 

81wizgklsnlw

ペトラ・ヴァン・ナウスPetra van Nuis (vocal)
デニス・ラクションDennis Luxion (piano)
2018年3月14日 録音
Live recording at PianoForteChicago

 

 女性ヴォーカリストのペトラ・ヴァン・ナウスPetra van Nuisは、近年アンディ・ブラウン(多分、夫)のギターをバックにしたジャズ・ヴォーカル・アルバムで好評を得てきていたが、この新作品はピアノのみをバックにしてのヴォーカル・アルバム。ピアニストには、まさにベテランのデニス・ラクションDennis Luxionを迎え、彼は如何にも優しく親密に一歩ひいて彼女に寄り添い支えるプレイに徹している。
 その作り上げられた世界は、大人の静かな夜を描く彼女の知性派を感じさせる歌声が何の邪魔になる音の無い空間に響き渡ってくる。なんと言ってもアルバム・タイトル「because we're night people」と言うのが、ふるってます。

 

Petradennisrecordingw

(Tracklist)
1.
Street Of Dreams
2.
Night People
3. The Piano Player
4.
Moonlight Saving Time
5.
You And The Night And The Music
6.
While My Lover Sleeps
7.
Small Day Tomorrow
8.
Dreamsville
9.
No Moon At All
10. The Night We Called It A Day
11.
Shadows Of Paris
12.
Black Coffee
13.
Count Your Blessings Instead Of Sheep 

 

Yjimage_2  とにかくラクションのピアノはリリカルにして流麗で、ムード作りに於いては最高である。そして彼女のヴォーカルは、どちらかというと技巧の凝らした巧さというのはなく、むしろ素直な歌い方で、ジャネット・サイデルほど上手いわけでは無いがどこか似ている。今回私は初めて彼女のアルバムをしっかり聴いたのだが、そうそうダイアナ・パントンもふと思い出したというそんなタイプの歌声である。
 とにかくアルバム全編を通して、しっかり歌詞をかみしめて歌いあげているところは好感が持てる。

 彼女は、米シンシナティ出身。クラシック・ピアニストの父親の影響で幼少期より音楽に接してきて、11歳でシンシナティ・オペラ・カンパニーでデビュー。大学卒業後もミュージカル・タレントとして活動したようだが、ギタリストのアンディ・ブラウンの影響でジャズ・シンガーに転向したという。シンシナティやニューヨークでの活動を経て、2004年からシカゴに拠点を移し、2009年にはブラウンとのデュオ作『Far Away Places(いつも二人で)』を発表。これが日本でも2011年にリリースされファンを獲得している。
 
 これは女性ジャズ・ヴォーカルそのものというアルバムだ。
   (推薦曲)   "You and The Night and The Music",  "The Night We Called It A Day",  "Black Coffee"

(評価)
□歌・演奏 :★★★★☆
□録音   :★★★★☆

(試聴)

 

 

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2018年11月 | トップページ | 2019年1月 »