エスペン・バルグ・トリオEspen Berg Trio 「Free To Play」
ジャズの欧州的進化か ~そこにはスリリングな展開とアンサンブルの妙が
<Jazz>
Espen Berg Trio 「Free To Play」
BLUE GLEAM / JPN / BG011 / 2019
Espen Berg (p)
Barour Reinert Poulsen (b)
Simon Olderskog Albertsen (d)
ノルウェーのエスペン・バルグ・トリオの3作目。ますます波に乗る彼らの進化形が体感できるアルバムの登場だ。とにかくリーダーのピアニストのエスペン・バルグは、キース・ジャレット、ブラッド・メルドー、エスピョルン・スヴェンソン等に影響を受け、フレッド・ハーシュに師事したという新鋭で、既に1st「Mønster」 2nd「Bølge」は魅力有るトリオとしてここでも取り上げてきた。そして欧州のハイセンス・アルバムをリリースするBLUE GLEAMレーベルからの3作目なのである。
(Tracklist)
1. Monolitt
2. Skrivarneset
3. Kestrel
4. Camillas Sang
5. Gossipel
6. Episk-Aggressiv Syndrom
7. ’Oumuamua
8. Meanwhile in Armenia
9. Furuberget
10. Body and Soul (日本盤 Bonus track)
曲はリーダーのエスペン・バルグ(↑)が作曲している。ピアノ・トリオとして所謂北欧の牧歌的ピアノ美旋律を期待すると大きな反発を感ずるだろう。しかし演奏はトリオが対等にがっちり組んでのアンサンブルが見事で、ピアノが前面に出てバックにベース、ドラムスという単純なパターンでない。
いわゆる北欧流の牧歌的美旋律という顔もチラホラはするが、基本的にはピアノも単に美旋律を追ってゆくのではなく、時としてリズム隊としての役割を対等に果たしつつ三者の結合は聴きどころ。
そうは言っても、M4."Camllas Sang" が美しいですね、ピアノとベースによる流れの妙に圧倒される。
M6."Episk-Aggressiv Syndrom"の前半の熱っぽい演奏から、ガラッと変わって中盤からの宇宙空間をさ迷うがごとく展開に彼らの挑戦的世界が見えてくる。
M7."'Oumuamua"は終盤に来ての流麗なピアノの流れを聴くとそこには彼らの美しさが滲んできて、アルバム最後の2曲M9."Furuberget"、M10."Body and Soul"でのゆったりした流れの中に、ようやく北欧的な美とピアノの美が実感できる。
前2作に比べると、更に実験性と進化した形態のジャズの色が濃い。昔から"スウィングしなけりゃジャズでない"といった世界とは確実に決別している。私的には少々理解に困惑するところも有り、もう少し優しさと美旋律も織り込んで欲しいところだが、ちょっとそんな甘さは否定されてしまう。これは好みから見ると確実に賛否両論別れるピアノ・トリオであるが、進化と言う面からは一歩前進形の世界は間違いなく音楽的な評価はおそらく高いところにあると見る。
(評価)
□ 曲・演奏 : ★★★★★☆
□ 録音 : ★★★★☆
(視聴) このアルバムからは見当たらなかったので・・・参考に
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コメント
自分のblogでは。3曲めをベストとして挙げていますが、個人的嗜好が大きいので参考程度にしていただければと思います。
3作品聴いて、曲の方向性の幅広さがあることが見えてきているので、自身の嗜好と、バンドの方向性との兼ね合いを見ながら、今後の行く末を見ていきたいところです。
(嗜好に拠りすぎるのも、どうかと思うので..)
コメント内TBをさせていただきます。
http://jazz-to-audio.seesaa.net/article/470090178.html#comment
投稿: oza。 | 2019年9月22日 (日) 18時54分
ozaさん、コメントどうも有り難うございます。
彼らの北欧的美旋律とその流ればっかり追っても、それに飽き足らないジャズへの試行錯誤が彼らにはあると見れますので・・・その部分にozaさんの注目するのはよく理解できます。
今後、どのように発展してゆくかは、楽しみでもあり、・・・そんな気持ちを持たせてくれる彼らですね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年9月22日 (日) 20時06分