クラーラ・ヴーストClara Vuust のアルバム「BEFORE」&「HERE'S TO LOVE」
デンマークよりの端正な美声
<Jazz>
Clara Vuust 「BEFORE You Walk Away」
STORYWILLE / EU / 1014322 / 2018
Clara Vuust クラーラ・ヴースト (vocal)
Francesco Cali フランチェスコ・カリ (piano, accordion, arrangement)
Jeppe Holst イェッペ・ホルスト(guitar except 04, 06, 09, 10)
Andreas Hatholt アンドレアス・ハットホルト(bass except 06, 10)
Carsten Landors カーステン・ランドース(drums except 06, 10)
Gerard Presencer ジェラード・プレゼンサー (trumpet, flugelhorn on 01, 04, 05, 09)
2018年2月 デンマーク録音
何時も思うのはジャズ界は、ヴォーカルものは9割以上女性ものになってますね。そこがロック界とは逆で不思議と言えば不思議。このアルバムも、北欧デンマークの女性歌手クラーク・ヴーストの3rdアルバムだ。しかし若干異色である。ここで取り上げるポイントは、最新盤は昨年のリリースだが、とにかく美声、爽涼さや透明感があって、何といっても気持ちよく聴ける技巧を凝らさない端正な歌声と言うところにある。そこがジャズとしてはちょっと珍しいというか、稀有の部類に入る。
しかしバックはピアノ、ギターなど小編成で選曲はスタンダードが中心である。4曲にトランペッターのジェラード・プレゼンサー(英国)がゲスト参加していて、ジャズとしては一般的。
1.Some Other Time
2. Estate
3.I Will Wait For You
4.Out Of Nowhere
5.Sea Lady
6.One November Day (vocal & piano duo)
7.I Wish You Love
8.Watch What Happens
9.Tomorrow
10.When I Look In Your Eyes (vocal & piano duo)
11. Joana Francesa
とにかく曲の展開がゆったりとしていて、しっとり歌いあげる。そしてこのクラーラの声は低音から高音まで美声で訴えてくる。しかもその歌い方は、きめ細かく丁寧で清涼感があり、端正で好感度が高い。ここまでクリーンな技巧を凝らさない素直な歌は、もはやジャズという世界からは逸脱しているのではとでも言いたくなる程のところにある。
そんなところからか、結構好評で2013年の1stアルバム(下に紹介)からここに3rdの登場となった。
聴いてみてM3."I Will Wait For You"は親しみのある曲であるからと言うだけでなく、ギターの落ち着いたバックとのバランスもよく良い曲に仕上がっている。M4."Out Of Nowhere"はトランペットの演奏ベースの響きなど中盤にはジャズ色を高めているが、リズムカルでありながら彼女の落ち着いたヴォーカルはそれにも結構マッチングしていて無難にこなしている。
M6."One November Day "、M10."When I Look In Your Eyes"はピアノのみのバックでのデュオ・タイプであるが、これがどうも一番彼女のヴォーカルとはマッチングがいいのではと思うところにもあった。このピアノ担当のフランチェスコ・カリはアルバム製作の主役にある。
又M7."I Wish You Love"は冒頭はギターのみとのデュオが続くが、又このスタイルもいい。
全体には、ジャズ・アルバムでありながら、クラシック的歌声にちょっと気持ちが洗われる世界に導かれて、異色のジャズ・ヴォーカル・アルバムと言っておきたい。決して悪くないです、一聴の価値ありだ。
このクラーラは、音楽一家で育ちデンマーク・コペンハーゲンのThe Rhythmic Music Conservatoryにて学び、2013年にStoryvilleから「HERE'S TO LOVE」の1stアルバムをリリースしている(参考↓)。
◇ ◇ ◇
(更に)
Clara Vuust 「HERE'S TO LOVE」
Storyville Records / EU / 10014288 /2013
Clara Vuust (vocal)
Francesco Calì (piano & acc)
Nico Gori (clarinet)
Daniel Franck (bass)
Jeppe Holst (guitar)
Flemming Agerskov (trumpet track 8)
All music arranged by Francesco Calì
2012年12月 Italy録音
クラーク・ヴーストの1stアルバム。私は3rdの後からこのアルバムを聴いたのだが、彼女の清楚にして端正な極めて美しい歌には全く変わりが無い。
(Tracklist)
1.Don't Care Much (J.Kander/F. Ebb)
2.Here's to Life (A. Butler/P. Molinary)
3.Once Upon a Summertime (M.Legran/J. Mercer/E.Barclay)
4.Samba Em Preludio (B.Powell/V.de Moraes)
5.Sicilian Lovesong (E.Cali/C.Vuust)
6.Time After Time (S.Cahn/J.Styne)
7.Evening (E.Cali/C.Vuust)
8.It's Happening Again (E.Cali/C.Vuust)
9.Smile (C.Chaplin/J.Turner/G.Parsons)
10.Você Vai Ver (A.C.Jobim)
曲はM9のチャーリー・チャップリンの曲で、このようなアメリカン・スタンダードを取り上げ、誰もが愛するミッシェル・ルグランのM4、バーデン・パウエル、カルロス・ジョビンによるボサM4、M10 も登場。そして、アルバム造りに主たる役割を果たしているフランチェスコ・カリ(右上)のオリジナル曲など、広く選曲されている。アルバム通してゆったりと優雅であって、気持ちが洗われるような技巧なしのヴォーカルで気持ちが良い。
(評価) 2枚のアルバムは取り敢えず合格点
□ 選曲・歌・演奏 ★★★★☆
□ 録音 ★★★★☆
(視聴)
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