シゼル・ストームのニュー・アルバム Sidsel Storm 「AWAKE」
ソフトでテンダリーな円熟ムードで
<Jazz>
Sidsel Storm 「AWAKE」
CALIBRATED / JPN / CALI146 / 2019
Sidsel Storm (vocal)
Magnus Hjorth (piano)
Lasse Mørck (double bass except 9)
Snorre Kirk (drums except 9)
Tobias Wiklund (cornet on 1, 2, 3, 4, 5)
*guests:
Pernille Kristiansen (violin on 6)
Jenny Lüning (viola on 6)
Nicole Hogstrand (cello on 6)
シゼル・ストームSidsel Stormのニュー・アルバム、考えてみると久しぶりのような感じだが、前作は「CLOSER」(2015)だと思うで4年ぶりという事になるか。手持ちとしては4枚目のアルバムとなる。今までのアルバムはラーシュ・ヤンソンとかヤコブ・カールソン、マグネス・ヨルトといった欧州人気ピアニストのバックでのヴォーカル・アルバムであったので、それも手伝って結構人気があった。
彼女はデンマークの美人歌手として紹介がされて、端正な清澄ヴォイスとして評価もある。今回のアルバムは久しぶりという事での彼女に進化があるか、期待をこめて興味津々で聴いたところだ。
(Tracklist)
1. Comes Love (Stept/Brown/Tobias)
2. The Road (Hjorth/Storm)
3. You're Getting To Be A Habit With Me (Warren/Dubin)
4. I Didn't Know About You (Ellington/Russell)
5. Back To You (Hjorth/Storm)
6. I Got It Bad (And That Ain't Good) (Ellington/Webster)
7. All Through The Night (Porter)
8. Too Marvelous For Words (Whiting/Mercer)
9. Awake (Otto/Storm) (vocal & piano duo)
まず聴いての感想は、彼女の瑞々しく誠実感あるどちらかというと優し気な温かみある美声派は変わっていない。
オープニングM1."Comes Love"は、快調なスタート、そしてM2."The Road"でがらっとバラード調にしっとりと聴かせる。両曲ともPianoとCornetが彼女のヴォーカルのバックと曲のメロディーとを演じてのムード作りが功を奏している。
M3."You're Getting To Be Habit With Me"のハイテンポに続いて、M4."I Dn't Know About You"のしっとり寄り添ったヴォーカルと、多彩なところで飽きさせない。
その後もリズムカルとバラードの交互な展開をして単調でなく聴きやすいアルバム仕上げ。
M6."I Got It Bat"は特に説得力のあるテンダリーな情感的なヴォーカルとViolin、 Viola、 Cello のストリングスと共に大人の味付けが妙に説得力がある。
最後のM9."Awake"が、落ち着いた語り聞かせるような曲展開で、ピアノの調べと共にソフトなヴーカルが聴きどころ。
デビュー・アルバムから10年、来日公演なども経て日本では北欧の気風とマッチングして人気を獲得しつつある彼女も、なかなか円熟してきたという印象を持つ。今回のアルバムは快調なスウィング感からラテンタッチそして本領のソフトに語りかけてくるようなバラードと幅広く網羅していて聴きごたえ十分。今や、なかなか洒落たバックの好演にのって、北欧の重要なヴォーカリストの位置を築いた感がある。
(評価)
▢ 選曲・演奏・歌 : ★★★★★☆
▢ 録音 : ★★★★☆
(視聴)
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コメント
2週間ほど前、大阪・難波のタワーで、試聴機に入ってたので、買いました。こういう真っ当なジャズがもっと売れて欲しいなあ。
ビリー・ホリデイみたいな、やさぐれた歌で、ジャズボーカル嫌いになった人、山のようにいるんですよね。世の中、疲れたおじさんだらけなのに、疲れたおじさんを鬱にしてどうしようというんだよ。疲れたおじさんを慰める歌が少ないから、みんなこっそりこんなの探し求めてるんだよね。
タワーに疲れたおじさんコーナー作って欲しい(笑)
投稿: MRCP | 2019年6月18日 (火) 02時03分
MRCPさん、コメントありがとうございます。
"疲れたおじさんを慰める歌が少ないから、みんなこっそりこんなの探し求めてるんだよね。"と言うお話・・・なるほど、そんなところが一つのポイントかなぁーーとも思いました。
今やジャズ愛好家も結構高齢化しているし、そんな人たちに何か訴えてきて、ほっとする安らぎが感じられると確かにいいですね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年6月18日 (火) 10時21分
結局のところ、ジャズに何を求めるのかということですね。tensionとrelaxationのバランスです。若人のように、最高のtensionばかりを求めてられませんわ(笑)
大抵のサラリーマンは疲れ果てて帰宅するわけです。
さあ、奇妙な果実がぶら下がったビリー・ホリデイ聴こうとなります?
ベルリンでわめきちらすエラ?
やさしく慰撫してくれる50年代の女性ボーカル聴く女性ボーカルファンが多いわけですよ。
苦しいだけのビリー・ホリデイや神がかりのコルトレーン、tensionだらけのマイルス。
ジャズオタク絶賛の音を一般人に売りつけようという販売戦略が間違いだったと思います。(笑)
普通の人はそんなの聴きたくない(笑)
ヘビメタファンばかりの社員の音楽会社で、最高のロックを売ろうぜ、みたいな(笑)
投稿: MRCP | 2019年7月 4日 (木) 19時08分
MRCPさん、なかなか本質を突くコメント有り難うございました。
ミュージックに何を求めるか、それはそれぞれ聴きたいものを聴けば良いわけで、その人なりきの評価が当然ある訳ですね。
又、同一人物でもそれなりの環境とコンディションによっては、その人の求めるものが違ってきても不思議はないというところもあって・・・そこが又楽しいと言うか面白いところです。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年7月 4日 (木) 21時56分
好みはそれぞれだということじゃなくて、
一般人に、ジャズオタク絶賛の音を売ろうとするのは、商売として間違っているよと言っているわけで(笑)一般人が楽しめない前衛ジャズが滅びるのは当たり前ですね(笑)tensionとrelaxationがほどよく調和してなくちゃね。
先日、二十歳の女子大生に、ジャズ聴いてみたいんだけどと言われて、定番のWaltz for DebbyのCDあげたら、すごく良かったと。初めての人にも、超ベテランにも、喜ばれるジャズはちゃんと存在するわけです。ジャズ業界は、ジャズオタクのたわごとにこだわらず、高品質でかつ売れるものを作らなくちゃ。(笑)
投稿: MRCP | 2019年7月 6日 (土) 23時49分
MRCPさん、おっしゃっておられることは解っているつもりです。
ジャズオタクによくある"これこそがジャズだ"と・・・売り込まれても、聴く我々がどこかに聴いて良かったと自然に(ここが重要)思えるモノがなかったら意味ないですね。^^
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年7月 8日 (月) 16時56分
くたびれたおじさんはさておき、ジャズを聴いたことがない二十歳の女子大生には何が受けるのかということで、別の子にはコルトレーンのバラードをあげました。
これでもかって感じしますけど(笑)
万人が好むジャズってなかなかないですね。まあ、個性の音楽ですからね。
もう一人の子にあげたビートルズ 1とカーペンターズ・ベストの方が受けたかも。(笑)サイモンとガーファンクルの方が良かったかなあ(笑)
投稿: MRCP | 2019年7月12日 (金) 01時22分
MRCPさん、私のようなくたびれたおじさんでも・・気分によっては聴きたいものが変化することもあります。・・・と言うことはしょっちゅうです。
もともとロックに陶酔したりと・・・いうこともありますし、まあそれなりに好むところで納得してゆくことですね。
ニュー・アルバムを期待しているミュージシャンって結局のところ自分は好きってことですね。他人に無理強いはしませんが・・・。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年7月12日 (金) 13時12分
振り幅はたぶん僕の方が広いと思います。(笑)近頃聴いてるのが、ジャズ以外では
ディラン、Sylvie Vartan、ハワイアン名曲集、ジョビン、サニーデイ・サービス、山崎まさよし、50年代ポップスにラヴェル。演歌は森進一(勿論、吉田拓郎の襟裳岬)
気分転換にはこれくらいしなくちゃね。
ジャズやロックのマニアのおじさんは、逆に普通の女子大生に受けるには?なんてね。(笑)(昨日、ビートルズのTシャツプレゼントした方が喜んでもらえましたけど)
ところで、俺は自分の好きなものを聴くんだ、エラ、サラ、カーメン、ビリー・ホリデイなんか大嫌いだ 評論家の絶賛するものじゃなくて、みんな自分の好きなの聴けばいいんだ何が悪いと昔言ってのけた寺島靖国さん。勇気あるなあ。
投稿: MRCP | 2019年7月15日 (月) 13時38分
MRCPさん楽しいお話どうも・・・です。
いやはや、懐かしいというか・・・Sylvie Vartanですか、もう70歳代でしょうね。今も頑張っているんでしょうか、私はもう何十年前のアイドル時代以降全く知らないで来ています。^^
そうですよ、自分の好きなモノを聴けば良いんです。ただし他人の好きなモノを聴いてみたら、"こりゃ良いわ"ってのもありますね。私は知らずに来たモノも結構多いのです。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年7月15日 (月) 18時05分