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2019年7月29日 (月)

寺島靖国プレゼンツ 「For Jazz Ballad Fans Only vol.1」

この新シリーズはジャズ・バラッドに焦点を当てて・・・

<Jazz>

Yasukuni Terashima Presents 「For Jazz Ballad Fans Only vol.1」
Terashima Records / JPN / TYR-1082 / 2019

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 寺島靖国のシリーズものも十数年前からの「Jazz Bar」から始まって、まさにここに来て増えている最中だが、又しても新シリーズのスタートだ。とにかく"難解にして疲れるジャズはもう聴かない"と宣言した彼だが、あのジャズ・オーディオ喫茶を閉じてから怒濤の寺島レコードの新譜をリリースしている。その中で、とにかくジャズ・バラードを聴こうと、又しても新企画に着手、出来上がったのがこのシリーズということになる。
 コンピレーション・アルバムですから、まあとにかく面倒なことは抜きにして聴くことにしましょう。中身はトリオ、カルテット、女性ヴォーカルなど広くカヴァーしている。

(Tracklist)

1. My Foolish Heart/Harry Allen Quintet
2. Estate/The Lynne Arriale Trio
3. Polka Dots and Moonbeams/Claire Martin & Jim Mullen
4. I'll Be Seeing You/The Fred Hersch Trio
5. Deep In A Dream/Don Lanphere
6. Smile/Melissa Stylianou
7. Trane's Mood/Andreas Mayerhofer Trio
8. California Dreamin'/Tomomi Fukui Mt. Nonet
9. I Fall In Love Too Easily/Emil Viklicky Trio
10. 'Round Midnight/Miriam Bayle
11. Petite Fleur/Jan Harbeck Quartet
12. I Get Along Without You Very Well/Steve Rudolph - Drew Gress - Phil Haynes

  ざっと見て、この中で私の手持ちのアルバムは3枚であった。収録全12曲であるから、そのうち1/4は持っていることになる。これがもっと多いとこのシリーズの意味は半減してしまうので、さすが寺島靖国、うまくポピュラーなアルバム以外からも上手に盛り込んでいる。

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 M1."My Foolish Heart" (上左)これが驚きのライブ録音、Harry Allenのテナー・サックス・バラッド。とにかくスタート時右のスピーカーからしか音が出ない。オヤオーディオ装置がおかしくなったのかと思いきや、バリバリ音の混じったテナーが次第に左によって中央に来る。音質と演奏はかなり迫力がある。これは面白そうだと思わせるに十分のスタート。
 M2."Eatate"、(上左から2番目)このLynne Arrale Trioの演奏がいいんですね。と・・聴いていると私の持っているアルバム「Live at Montreux」からだった。アリエールのピアノ演奏の強弱・流れは一級品。このアルバムでも一・二を争う出来。
 M3."Polka Dots and Moonbeams"の円熟のクレア・マーチンのヴォーカル。M4."I'll Be Seeing You"ハーシュの美しいピアノに降参。M5."Deep In A Dream" 美しいピアノ、ソプラノ・サックスの歌。M6."Smile" (上左から3番目)メリーサのソフトな美しいヴォーカル 。
 M7."Trane's Mood" は、2015年に気に入ったアルバム「DEDICATIONS」のピアニスト・マイヤーホファーの名オリジナル曲・トリオ名演。
   M9."I Fall In Love Too Easily"、(上右)ピアノ・トリオの本質をゆく名演、ビクリッキーのピアノに注目。
 M10."'Round Midnight" やや投げやり風の味なヴォーカルとミュートを効かせたトランペットの印象的な演奏。
 M11."Petite Fleur" 極めて標準的テナーに満足。
 M12."I Get Along Without You Very Well" これぞ本格的ピアノ・トリオのトリオとしての醍醐味。 

 もともとバラード好きな私ですので、このアルバムの出現は嬉しいですね。寺島靖国の選曲はもともと若干癖があって、それが結構楽しめるところが魅力。そんなところからも又知らなかったミュージシャンにお目にかかれて楽しみました。

(評価)
□ 選曲・演奏  ★★★★★☆
□ 録音     ★★★★☆

(試聴)

Lynne Arriale Trio / ESTATE

 


  Melissa Stylianou / SMILE

 

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2019年7月25日 (木)

エルELLEのファースト・アルバム「SO TENDERLY」

美しいガラティのピアノをバックにウィスパー・ヴォイスで

<Jazz>

ELLE 「SO TENDERLY」
TERASHIMA Records / JPN / TYR-1081 / 2019

Sotenderly

Elle (vocal)
Alessandro Galati (piano)
Guido Zorn (bass)
Lucrezio De Seta (drums)

Ag1   初お目見えのエルElle本人が期待していたとおりの、日本盤としてはビックリのデビュー・アルバムですね。これは寺島レコードとイタリアのピアニストのアレッサンドロ・ガラティAlessandro Galati(→)とのプロジェクト、その結果の産物なんですね。ガラティはジャズ畑での私の最も愛するピアニストであり、その彼に見いだされたというエルであるが、彼女がイタリアのジャズ・クラブで歌っているのを見つけたようだ。
 そんな結果生まれたアルバムであるので、ガラティの優しい美旋律の生きたピアノ・トリオの演奏で、彼女のヴォーカルがしっとりと聴ける。それはまあウィスパー・ヴォイスという世界ですね。寺島靖国もお気に入りとか・・・そうなれば聴かねばならない一枚となってます。

(Tracklist)

1. How Insensitive
2. Tenderly
3. Time After Time
4. These Foolish Things (Remind Me Of You)
5. Moon River
6. The Nearness Of You
7. Body And Soul
8. Over The Rainbow
9. I Wish You Love

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 やはり日本向け仕上げか、ポピュラーなスタンダード曲を中心に収録されている。
  そして成る程M1."How Insensive"での冒頭からソフトにしてマイルド、やや物憂いエルのウィスパー・ヴォイスが迫ってくる。続くM2."Tenderly"でもその流れは続き、中盤にガラティのソロに近いピアノ、そしてGuido Zornのベースが聴かれ、成る程ガラティの優しく美しくといった演奏もテーマになっていることが解る。
 とにかくエルはもともとはオペラ歌手も務めたとはいうが、極力抑えた発声で夜のジャズ・ムードを盛り上げている。
   しかし、その点はアルバム作りにも有能なガラティのこと、M3.,M4ではメディアム・テンポ曲を配して、そして再びM5."Moon River"、M6."The Nearness Of You"はスロー・テンポに仕上げている。そして彼女のややハスキーで語りかけるような歌声が相変わらず続く。それならむしろM3.,M4.ではもう少し明るく歌い上げたほうがアクセントがあって良かったのではとも思ったところである。まあ私にしてみれば、肩の力を抜いたガラティの美しい旋律のピアノを聴けるのであまり文句はないのだが、とくにそれはM6.M8."Over The Rainbow"の中盤にも顔を出して、しっとりとした中に美しさがあるピアノは出色である。まあこれが目当てでこのアルバムを手に入れているというところもあって、取りあえず満足のアルバムであった。

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 エルに関しての情報は少ないのだが、ボサノバ曲を自作自演していたふしもあり、かなりの実力派か。年齢も30歳代 ?。又こうして聴いていると彼女の押さえられたややハスキーなウィスパリング型の声はむしろ作られたもので、かなり透明感のある声を持っている様子も窺える。そしてかなりチャーミングな面も持っていそうだ。又これからのガラっと変わった発展もありそうな予感がする。

(評価)

□ 選曲・歌・演奏  ★★★★☆
□ 録音       ★★★★☆

( 試聴 目下、この関係の映像等は見当たらないので・・・ちょっとお預け)

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2019年7月20日 (土)

スノウィー・ホワイトのニュー・アルバム Snowy White and The White Flames 「THE SITUATION」

枯れた味が魅力のロックとブルース

<Rock, Blues>

SNOWY WHITE AND THE WHITE FLAMES 「THE SITUATION」
Soulfood / IMPORT / SWWF2019  / 2019

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SNOWY WHITE & THE WHITE FLAMES
Snowy White : Guitor & Vocals
Walter Latupeirissa : Bass & Vocals
Max Meddleton : Keyboards & Percussion
Juan Van Emmerioot : Drums & Percussion
Kuma Harada : Bass
etc.
  
 スノーウィー・ホワイトの"THE WHITE FLAMES"バンドのアルバムだ。このバンドの前作は久々に一昨年「Reunited...」(2017)がリリースされた。それはスタジオ・ニュー・アルバムとして2011年の「Realistics」以来で久しぶりであった。バンド名は彼の1983年の初のアルバム・デビューの「White Flames」の名前をつけている。そしてメンバーも変わらずに今回それに続いて順調にお目見えした訳である。
 実は私は、彼らの総集編のような映像とCDのライブを納めた「Live at Rockpalast」(2014年)がリリースされて、これでこのバンドは一応納めたのかと思ったのだが、こうして2017年再結成アルバム、続いてこの2019年のニュー・アルバムと順調にアルバムがお目見えすることは、何につけても結構なことだ。
 一方つい一昨年彼は個人名義でアルバム「RELEASED」(2017)をもリリースしていて、これは彼としては例外的多作である。それはロジャー・ウォーターズとの長い「世界THE WALLツアー」などを終えてからの、経済的余裕と時間の確保と両方が実ってのアルバム制作だったのだろう。

 先日ここで英国ロックからのブルース・ギタリストPeter Frampton を取り上げたとなると、私はこのスノーウィ・ホワイトがどうしても気になる。彼は、主としてこの"The White Flames"と"The Snowy White Blues Project"の2つのバンドで、ロックからブルースを展開していて、なにせ極めて紳士プレイヤーで派手な動きがない。しっかり注意していないとニュー・アルバムにも気がつかずにいることになってしまう。もう彼もいい歳になって枯れた味が滲んできた。実はそれを聴きたいのである。
 これは完全にアルバム制作のスタジオ録音盤。このバンドの11作目か。

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1.The Situation
2.This Feeling
3.L.A. Skip
4.Can't Seem To Do Much About It
5.Crazy Situation Blues
6.Blues In My Reflection
7.Why Do I Still Have The Blues?
8.You Can't Take It With You
9.Migration
10.The Lying Game
11.Hard Blu
12.I Can't Imagine

  とにかく前編スノーウィ・ホワイトらしく優しいムードに包まれている。このバンドのメンバーも、もう結構いい歳になっいるので、荒々しさはない。日本人で英国で活躍してきたベーシストのKuma Haradaも名を連ねていて、これも私にとっては久しぶりだ。
 やはり主体はブルースだが、全体的にしっとりとしたムードだ。相変わらずのホワイトのはヴォーカルは、歌というよりは語っているといったニュアンスである。

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(若き日のTHE WHITE FLAMES ↑)

 タイトル曲のM1."Situation"はパーカッションが響いて、珍しく軽快なラテン・ロック調。
   M2."This Feeling"は、今度はホワイトのシンセが、そしてギターが静かに神妙に流れるちょっと物思いに誘う曲。
 M5."Crazy Situation Blues" ここに来てブルースが全開。この曲は非常にゆったりとした静かなブルース。ホワイトの独特のヴォーカル、そしてギターも美しく流れる。
 M7."Why Do I Still Have The Blues" は、なんと8分以上の長曲仕上げ。静かな美しいゆったりしたギターでスタートして変調しての後半のロックとしての盛り上がりをみせるなど聴き応え十分。
   M9."Migration"は、珍しくキーボードも加わってヴォーカルなしのインスト曲。

 全体に聴きやすく、ホワイトの美しいギターが聴けるアルバム。このバンドとしては、やはり年齢的充実感といったところだろうか。前作に続いて初期のメンバーが再結集して人生を描いている風情を感じたところだ。

(評価)
□ 曲・演奏 : ★★★★☆ 
□ 録音       : ★★★★☆

(試聴)  "Crazy Situation Blues"

 

 

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2019年7月15日 (月)

カラブリア・フォーティCalabria Foti のニュー・アルバム 「prelude to a kiss」

バラードをロマンティックに・・・抵抗感のない聴きやすさ

<Jazz>

CALABRIA FOTI「prelude to a kiss」
MOCO RECORDS / IMPORT / KKJ139 / 2019

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Calabria Foti (vocal, violin solos Track 1,10) with Strings Orchestra
Roger Kellaway (piano)
Trey Henry (bass)
Peter Erskin (drums)
Larry Koons (guitar Tracks 2,4,10),
Bob McChesney (trombone Tracks 1,5,7),
George Doering (guitar Track 6),
Luis Conte (percussion Track 2, 6),
John Pizzarelli (vocal,guitar Track10)

  ちょっとヨーロッパ的雰囲気のある米国(ニューヨーク)のカラブリア・フォーティの2年ぶりのニュー・アルバム登場。"魅惑のシルキー・ヴォイス"という看板の彼女、ジャケに見られる容貌は、過去のアルバムを含めて美人である。
 今回はロジャー・ケラウェイ(p)、ピーター・アースキン(ds)、トレイ・ヘンリー(bass)のピアノ・トリオとストリングス・オーケストラをバックにヴォーカルをしっとり聴かせ、2曲では自身の得意技ヴァイオリンも演ずる内容となっている。そして更に曲により、プロデューサーであり夫でもあるボフ・マックチェスニーのトロンボーンやゲストミュージシャンのギターなどが入る。
  彼女が我々の前に登場したのはもうずいぶん前になる。それはアルバム「A Lovely Way To Spend An Evening 恋に過ごせし宵」で2007年である。そしてこのアルバムは、それから10年経っての前作「In The Still of the Night」に続いてのおそらく第3作目だ。

Cf1tr (Tracklist)

1. Prelude To A Kiss 6:34
2. I Had To Fall In Love With You 4:37
3. On The Street Where You Live 2:26
4. Waltz For Debby 5:13
5. When I Look In Your Eyes 7:04
6. Goodbye 3:31
7. The Man With The Horn 5:48
8. Backyard Medley 3:59
9. The Folks Who Live On The Hill 6:34
10. It's The Mood That I'm In 4:27
11. I'm Home 5:21

 

 これはまさにラブ・ソング集ですね。スタート曲 M1."Prelude To A Kiss"は、ストリングス・オーケストラの効果も抜群で、そこに彼女のヴァイオリンが入り、Duke Ellintonのどちらかというと難解な曲をムードたっぷりにジャズというところを超えての、かってのダイアナ・クラールのアルバムに似た曲づくり、しかも旦那様のBob McChesney のトロンボーンも入って、かなり健闘してのバラード曲。まあこれも一手法なんでしょうね、決して悪くはない、むしろ納得仕上げ。
 なにせ M4."Waltz For Debby" は、Bill Evans ですね。こうゆう曲を歌おうとするのはやはり、ジャズ・マンの亭主の影響でしょう。どうしたって女性ヴォーカルものとしては聴いてみたくなる。やはりこの曲、ピアノのバックを重要視していて、そこに彼女はやっぱりバラード調で歌い上げる。中盤にギター・ソロを挿入しての演奏もかなり重要視しているところは印象も良い。
 M5."When I Look In Your Eyes"では、彼女の低音を効かしたヴォーカルで、単なるセクシー・アッピールの仕上げでなく、ジャズを歌い込もうというところがあってストリングスをバックにして好印象。ここでもトロンボーンのソロが歌い上げるところもあって、こうしたポピュラーなスタンダード曲では独自のジャズを深めようというところも感じられる。 
 M6."Goodbye"は、彼女の曲で、意外にこのアルバムでは軽快な曲。どっかで聴いたような気のするメロディーだが、なかなか面白い。
 M7."The Man With The Horn"もご亭主のトロンボーンが活躍します。これが結構プロ的曲選択で、女性ヴォーカル主役のアルバムではおそらくこうした曲の取り上げ方はしないだろうと思われ、このアルバムに風格をつけている。
 何故か、こうして聴いているとM9."The Folks Who Love On The Hill" でも聴かれるストリングスの入ったゆったりした仕上げが、このアルバムの主役曲に聞こえてくる。
   M10."It's The Mood That I'm In"はやはり彼女のヴァイオリン・ソロが入り、デュエット・ヴォーカルも面白く注目曲。

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 結論的には、ご亭主のジャズ演奏センスが功を奏した女性ヴォーカル・アルバムで、彼女の歌や声も癖がなく誰もが抵抗なく聴かれる曲づくりアルバムと言うところだった。
 ニューヨークで生まれ、父親はトロンボーン奏者、母親はピアニストという音楽一家の中で育ったカラブリア・フォーテイ、シンガーであると同時に10 代からヴァイオリンニストとしても頑張ってきたようだ。2曲で彼女のヴァイオリンソロを聴くことができるが、これからどのような曲づくりに向かうのか、意外にこのアルバムの売れ行きが方向性を決めるような気がする。

(評価)
□ 選曲・演奏・歌 :  ★★★★☆
□ 録音               :  ★★★★☆

(試聴)

 

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2019年7月12日 (金)

梅雨空の7月の高原にて・・・・

鬱陶しい梅雨空に少し青空ものぞく高原にて・・・・

 < 赤外線写真の世界 >          ( 画像クリック拡大 )

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LUMIX DMC-TZ20,  LEICA Vario-Elmar 1:33-5.9/4.3-68.8 ASPH
                  改造  IR76 filter

 

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2019年7月 8日 (月)

ステファン・オリヴァのニュー・アルバム Stephan Oliva「Orbit」

久々のオリジナル曲によるインテリジェンス溢るるピアノ・トリオ盤


<Jazz>
Stephan Oliva, Sebastien Boisseau, Tom Rainey 「Orbit」
YOLK MUSIC / j2075 / 2019

Orbit

Stephan Oliva (p)
Sebastien Boisseau (b)
Tom Rainey (ds)

Recorded and mixed by Gerard De Haro
Mastering by Nicolas Baillard at Studio La Buissonne in 2018

 フランスのピアニスト、ステファン・オリヴァの久しぶりのピアノ・トリオ・アルバム。マイナー・レーベルからのリリースで取りあえず手に入れた。まずは注目点はアルバム・ジャケにもトリオ3人の名前が列記されていて、いわゆるピアニストの為のトリオというスタイルでなく、三者が三位一体型のトリオでの演奏型。そうは言ってもステファン・オリヴァが全11曲7曲を、そしてベースのセバスチャン・ボイソウが3曲を提供している。まあ彼らがジャズを極めんとする一つのパターンであるオリジナル曲アルバムだ。
  アルバム・タイトル「Orbit」の意味は、所謂人工衛星などの"周回軌道"のことのようだが、"人生の流れる環境"などの意味もあるようで、そんなところからも哲学的世界を感ずる。

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(Tracklist)

1. Split Screen (Stephan Oliva)
2. Wavin (Sébastien Boisseau)
3. Gene Tierney (Stephan Oliva)
4. Processione (Stephan Oliva)
5. Le Tourniquet (Sébastien Boisseau)
6. Cercles (Stephan Oliva)
7. Inflammable (Marc Ducret)
8. Polar Blanc (Stephan Oliva)
9. Around Ornette (Stephan Oliva)
10. Spirales (Stephan Oliva)
11. Lonyay Utça (Sébastien Boisseau)

  このアルバムは、所謂オーソドックスなピアノ・トリオ・ジャズを期待してはいけない。"フランスらしい気品に溢れ、冷気漂うインテレクチュアルな美的ピアノ・トリオ作品"と評されているが、まさにそんな作品だ。そしてこのトリオの三位一体型の演奏も群を抜いている。これぞこの3人が互いに目指すものを融合させたといったパターンは随所に感じられる。
 とにかく所謂叙情的優しさ美しさというものではない。しかしその気品あるインテリジェンスの高く、フィロソフィカルな世界は、ある意味での前衛性も加味して響き渡る。いっやーーなかなかスパイスの効いた刺激と深遠さとで、あっという間にアルバム一枚を聴いてしまう。

 とにかく、スタートのM1."Spilit Screen"から三者の絶妙なスリリングな連携に驚きながらも、この先の展開に不安をかき立てられながら聴くことになるが・・・。M2."Wavin"の静寂にして深遠な世界によって、なる程このアルバムの思索的世界を知らしめられる。
 中盤は、M7."Inframmable"にみるように、ピアノの高音と低音で深遠な世界にリズムを刻み、一変して途中から変調し三者のメロディーというよりはリズムの妙が前衛的にインタープレイし展開する曲だ。そしてそのながれからM8."Around Ornette"のスリリングな演奏と深遠な世界の三者の交錯への世界と流れる。
 M9."Spirales"はベースのソロが低音で響き、そしてピアノ、ドラムスが、独自の世界を作りながら次第に合流する流れに入ってゆく。
 こうしたトリオ展開は、次世代ピアノ・トリオの一角を築き上げているという印象である。
   そして終曲M11."Lonyay Utca"は、静かな永遠の世界に導きつつアルバムを納める。

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 このアルバムは一曲一曲よりは、全曲をトータルに構成されたアヴァンギャルド・トリオ作品として聴くと良い。それはこのトリオ三人のインテリジェントにしてアグレッシブな姿勢によって作り上げられたものとして知ることが出来る。そこにポイントをもって聴くと、ちょっとした多くのピアノ・トリオ作品の中で、この作品のある意味での重要性に接することが出来る。しかしそれにつけてもステファン・オリヴァ(↑)の繊細なプレイとフィロソフィカルな世界は凄い。

(評価)
□ 曲・演奏 :  ★★★★★☆
□   録音   :  ★★★★★☆

(視聴)

 

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2019年7月 4日 (木)

ピーター・フランプトンのニュー・アルバム Peter Frampton Band 「All Blues」

ブルースで最後の花を・・・・

<Blues,  Rock>

Peter Frampton Band 「 All Blues」
Ume(USM) / IMP / 7764424 / 2019

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PETER FRAMPTON(El.Guitar, Voc)
ADAM LESTER (El.Guitar)
ROB ARTHUR(Key. Voc)
DAN WOJCIECHOWSKI(Drums) 

Mv5bmtywotm5  英国出身でロック全盛期にギタリストとして生きてきた男のブルース・ギターは、やっぱり40-50年の経過の中から築かれた世界であって、それなりに味わい深いのだ。ブルースはその起源からして英国の白人とは一線を画しているかの如くであるが、ギタリストからみるとロックとは離しても離されない流れにあって、ブルースを極めんとする心は自然と生まれたものでもあるといえる。

 このピーター・フランプトンPeter Framptonも1950年生れだから、70歳に近くになって、深刻な病に冒されていて今年ライブ活動の引退宣言ということになってしまった。しかしここにブルース曲のニュー・アルバムをリリースしたことは、ロッカーである彼のブルースに対する思い入れをみる思いである。

(Tracklist)

1.I Just Want To Make Love To You (with Kim Wilson)
2.She Caught The Katy
3.Georgia On My Mind
4.You Can't Judge A Book By The Cover
5.Me And My Guitar
6.All Blues (featuring Larry Carlton)
7. The Thrill Is Gone (with Sonny Landreth)
8. Going Down Slow (with Steve Morse)
9. I'm A King Bee
10.Same Old Blues

 6番目の曲のタイトルをアルバム・タイトルに持ってきて、全曲ブルースのオンパレード。
 60年代末のロック・グループ・ハンブル・パイHumble Pie結成からブルースをも演じてきた彼にとっては、やはりブルースなんでしょうね。
 このアルバム、勿論冒頭からブルース・ギターが全開して楽しめる。
   ボギー・カーマイケルのM3."我が心のジョージア"なんかが登場するが、ピアノから始まって彼のしっとりした泣きギターが歌い上げていいですね。
 M6."All Blues"はマイルス・ディビスの曲だがLarry Carltonのギターも呼び込んでの演奏だ。それが又美しい曲の仕上げに驚きますね。この曲もヴォーカルなしで、ピアノも生きていて共にメンバーどおし演奏を楽しんでいる雰囲気すらある。このあたりはロックというよりはジャズですね。
 M7."The Thrill Is Gone"は、 やや哀愁のあるブルースで、泣きのギター、ヴォーカルがしっとりと迫ってきて、これも私好みだ。
 M10."Same Old Blues"は、なんとなく昔懐かしい歌と演奏で始まり、最後は泣きのギターが登場して幕を閉じるところはちょっと感傷的になってしまう。

 とにかくこのアルバムはやはりフランプトンの記念碑的ニュアンスが濃い。メンバーも長年のツアー・メンバーと共にしていて、彼らと共にナシュビルにある彼のスタジオであるスタジオ・フェニックスに集結して録音されたものいう。そしてそこにラリー・カールトン、サニー・ランドレス、スティーヴ・モーズらがゲスト参加という豪華さである。

 かっての1976年の当時のLP二枚組というライブ・アルバム「Frampton Comes Alive」の世界的大ヒット以来「ライブの人」と言われ、ステージの演奏を数十年楽しませてくれた彼が、今年で病(封入体筋炎)でライブは終了宣言したわけであるが、この病気が本当であれば、これは難病で四肢の筋力低下、嚥下障害を起こす。特に上肢の手指、手首屈筋の筋力低下が進行するので、ギタリストとしては致命傷だ。

そんなことを考えながら聴くと、非常に心引かれるアルバムということになった。

(評価)
□ 選曲・演奏 :  ★★★★☆
□ 録音           :  ★★★★☆

(試聴)

 

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