カラブリア・フォーティCalabria Foti のニュー・アルバム 「prelude to a kiss」
バラードをロマンティックに・・・抵抗感のない聴きやすさ
<Jazz>
CALABRIA FOTI「prelude to a kiss」
MOCO RECORDS / IMPORT / KKJ139 / 2019
Calabria Foti (vocal, violin solos Track 1,10) with Strings Orchestra
Roger Kellaway (piano)
Trey Henry (bass)
Peter Erskin (drums)
Larry Koons (guitar Tracks 2,4,10),
Bob McChesney (trombone Tracks 1,5,7),
George Doering (guitar Track 6),
Luis Conte (percussion Track 2, 6),
John Pizzarelli (vocal,guitar Track10)
ちょっとヨーロッパ的雰囲気のある米国(ニューヨーク)のカラブリア・フォーティの2年ぶりのニュー・アルバム登場。"魅惑のシルキー・ヴォイス"という看板の彼女、ジャケに見られる容貌は、過去のアルバムを含めて美人である。
今回はロジャー・ケラウェイ(p)、ピーター・アースキン(ds)、トレイ・ヘンリー(bass)のピアノ・トリオとストリングス・オーケストラをバックにヴォーカルをしっとり聴かせ、2曲では自身の得意技ヴァイオリンも演ずる内容となっている。そして更に曲により、プロデューサーであり夫でもあるボフ・マックチェスニーのトロンボーンやゲストミュージシャンのギターなどが入る。
彼女が我々の前に登場したのはもうずいぶん前になる。それはアルバム「A Lovely Way To Spend An Evening 恋に過ごせし宵」で2007年である。そしてこのアルバムは、それから10年経っての前作「In The Still of the Night」に続いてのおそらく第3作目だ。
1. Prelude To A Kiss 6:34
2. I Had To Fall In Love With You 4:37
3. On The Street Where You Live 2:26
4. Waltz For Debby 5:13
5. When I Look In Your Eyes 7:04
6. Goodbye 3:31
7. The Man With The Horn 5:48
8. Backyard Medley 3:59
9. The Folks Who Live On The Hill 6:34
10. It's The Mood That I'm In 4:27
11. I'm Home 5:21
これはまさにラブ・ソング集ですね。スタート曲 M1."Prelude To A Kiss"は、ストリングス・オーケストラの効果も抜群で、そこに彼女のヴァイオリンが入り、Duke Ellintonのどちらかというと難解な曲をムードたっぷりにジャズというところを超えての、かってのダイアナ・クラールのアルバムに似た曲づくり、しかも旦那様のBob McChesney のトロンボーンも入って、かなり健闘してのバラード曲。まあこれも一手法なんでしょうね、決して悪くはない、むしろ納得仕上げ。
なにせ M4."Waltz For Debby" は、Bill Evans ですね。こうゆう曲を歌おうとするのはやはり、ジャズ・マンの亭主の影響でしょう。どうしたって女性ヴォーカルものとしては聴いてみたくなる。やはりこの曲、ピアノのバックを重要視していて、そこに彼女はやっぱりバラード調で歌い上げる。中盤にギター・ソロを挿入しての演奏もかなり重要視しているところは印象も良い。
M5."When I Look In Your Eyes"では、彼女の低音を効かしたヴォーカルで、単なるセクシー・アッピールの仕上げでなく、ジャズを歌い込もうというところがあってストリングスをバックにして好印象。ここでもトロンボーンのソロが歌い上げるところもあって、こうしたポピュラーなスタンダード曲では独自のジャズを深めようというところも感じられる。
M6."Goodbye"は、彼女の曲で、意外にこのアルバムでは軽快な曲。どっかで聴いたような気のするメロディーだが、なかなか面白い。
M7."The Man With The Horn"もご亭主のトロンボーンが活躍します。これが結構プロ的曲選択で、女性ヴォーカル主役のアルバムではおそらくこうした曲の取り上げ方はしないだろうと思われ、このアルバムに風格をつけている。
何故か、こうして聴いているとM9."The Folks Who Love On The Hill" でも聴かれるストリングスの入ったゆったりした仕上げが、このアルバムの主役曲に聞こえてくる。
M10."It's The Mood That I'm In"はやはり彼女のヴァイオリン・ソロが入り、デュエット・ヴォーカルも面白く注目曲。
結論的には、ご亭主のジャズ演奏センスが功を奏した女性ヴォーカル・アルバムで、彼女の歌や声も癖がなく誰もが抵抗なく聴かれる曲づくりアルバムと言うところだった。
ニューヨークで生まれ、父親はトロンボーン奏者、母親はピアニストという音楽一家の中で育ったカラブリア・フォーテイ、シンガーであると同時に10 代からヴァイオリンニストとしても頑張ってきたようだ。2曲で彼女のヴァイオリンソロを聴くことができるが、これからどのような曲づくりに向かうのか、意外にこのアルバムの売れ行きが方向性を決めるような気がする。
(評価)
□ 選曲・演奏・歌 : ★★★★☆
□ 録音 : ★★★★☆
(試聴)
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コメント
いや懐かしい名前。ご健在でしたか ・・・。「A Lovely Way To Spend An Evening」は愛聴盤です。
投稿: 爵士 | 2019年7月16日 (火) 23時18分
爵士さん、コメント有り難うございます。
前作は2年前でしたので、これはおそらく3rdアルバムと思いますが、私の手持ちは3枚目です。
変な癖がないのが良いですね。1stは愛聴盤でしたか。ご主人様のジャズが効果をあげているとも思います。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年7月17日 (水) 13時14分
神戸三宮のタワーの試聴機に入っていたこの盤とニッキ・パロットのラテン集とエルのソーテンダリーを購入。疲れたおじさんコーナーでした(笑)
ついでにNorah Jonesのメジャーデビュー前のマイナー盤、ポール・マッカートニーのアメーバ・ギグと、訳ありのサイモンとガーファンクル・グレイテストヒッツを(笑)
ところで、ドリス・デイのラテン集を何となく購入、聴いてみました。誰の心にも響く王道のヴォーカル。やさぐれたビリー・ホリデイなんかとは比べものにならない何ランクか上のポピュラリティに納得しました。やっぱりメジャーな人は違うわ(笑)
フランク・シナトラにジャズボーカルとポピュラーボーカルは何が違うんですかと尋ねたら、歌う場所が違うんだよと(笑)
投稿: MRCP | 2019年7月21日 (日) 01時23分
MRCPさんコメント有り難うございます。
いろいろと購入するんですね。
ドリス・デイですか・・・・しばらく聴いてませんでした。ヤッパリネ・・というところですね。
シナトラのお話、面白いですね。それが正解かとも、納得させられます。
ところで Calbria Foti はどうでしたか。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年7月21日 (日) 07時58分
浅川マキと石川さゆりを比べているような話です。(笑)
京都の真夏のロックフェスで石川さゆりが津軽海峡冬景色を歌うのをテレビで見て、やっぱりうまいわ(笑)あの曲、演歌じゃないし。
普段、世間様の関心外のジャズを聴いている人間としては、何故、ジャズに陽が当たらないのか、少しわかってきたような(笑)
タワー・レコードの4枚組コンピ 4シーズンズ・オブ・ジャズと
ジェームズ・テイラー初期6枚組ボックスも買ってしまったので、いずれ聴きたいと思います。
投稿: MRCP | 2019年7月21日 (日) 21時08分
MRCPさん
なかなかそこまで幅広く到達できない私ですが・・石川さゆりは知らないことはないですね。^^)
「普段、世間様の関心外のジャズを聴いている人間としては、何故、ジャズに陽が当たらないのか、少しわかってきたような(笑)」これが核心ですね。そうなんです・・私の話も周りの人達には通じません。でも・・それはそれなりの理由があるんですね。でも・・・いいです、私は好きなのは聴くんですから・・・。
タワー・レコードの企画、意外に馬鹿にならないと思ってます。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年7月21日 (日) 23時01分
リアルタイムのビートルズ少年から50年以上経過して、ずいぶんマニアックな地点まで来てしまったなあという思いです。
今時の女子大生達と話してて、話が伝わりませんもの(笑)年金おじさんと女子大生の会話には無理がある(笑)
だからと言って、マニアックな現代日本のロックバンド、サニーデイ・サービスや秘密のミーニーズやネバーヤングビーチとなると、若者にも年寄りにも通じない(笑)
誰も知らない。
毎日、仕事と勉強だけしているような生活してますから、気分だけ若いんですけど(笑)
投稿: MRCP | 2019年7月23日 (火) 13時49分
MRCPさん・・・そうですか、
いっやーー若い!!
それらのバンド、全く解りません。しかし、恐ろしいですね、仕事と勉強だけとは(笑い)。なんといっても気分の若いのが絶対大事ですね。私もその口です。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年7月23日 (火) 17時45分
MRCPでググったら、どんな仕事してるかわかりますけど(笑)
この世界、燃え尽きるほど働いている人はいくらでもいます。(笑)
年取っても、若人にまけないようにがんばらなくちゃね。
そのかわり、土日は完全に休んで、大学生達とわいわいやってます。
若い奴らってうらやましいなあ。
これからバイト行ってきます。(笑)
投稿: MRCP | 2019年7月23日 (火) 19時04分