スーザン・トボックマン Susan Tobocman のニュー・アルバム「LOVE FROM DETROIT」
独特の発声と歌い回しで・・・・オールマイティーに
<Jazz>
SUSAN TOBOCMAN 「LOVE FROM DETROIT」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1079 / 2019
Susan Tobocman スーザン・トボックマン (vocal except 12)
Cliff Monear クリフ・モネア (piano)
Paul Keller ポール・ケラー (bass)
David Taylor デヴィッド・テイラー (drums)
Recorded Live at The Steinway Gallery on Nov. 7th, 2018
過去に2アルバムが手元にあるニューヨークやデトロイトで活躍する女性歌手のスーザン・トボックマンの、5年ぶりのリリースとなるニュー・アルバム。
ここで彼女を最初に取り上げたのは2013年に寺島レコードからアルバム「WATERCOLOR DREAM」がリリースされたときだった。彼女のヴォーカルは、所謂都会派ジャズ・クラブにぴったりスタイルで評判だった。
過去の2アルバムは、2013年「WATERCOLOR DREAM」(TYR-1036)、翌年「Live in Detroit」(TYR-1040)がリリースされていて、今回はその2作目の続編といってもよいものである。
前作に引き続いてバックはクリフ・モネア(p)率いるピアノ・トリオだ。今回もデトロイト(場所も前作と同じスタインウェイ・ギャラリー)でのライヴ録音盤。
1. Let's Face The Music And Dance (Irving Berlin)
2. The Way To You (Susan Tobocman)
3. I Should Care (Paul Weston, Alex Stordahl / Sammy Cahn)
4. Jim (Caesar Petrillo, Milton Samuels / Nelson Shawn)
5. I Could Have Danced All Night (Frederick Loewe / Alan Jay Lerner)
6. Too Late Now (Burton Lane / Alan Jay Lerner)
7. Fragile (Sting)
8. Frim Fram Sauce (Joe Ricardel / Redd Evans)
9. Every Time We Say Goodbye (Cole Porter)
10. Isn't It A Pity? (George Gershwin / Ira Gershwin)
11. I Wish I Knew (Harry Warren / Mack Gordon)
12. Touch And Go (Susan Tobocman) (instrumental)
13. I'll Be Seeing You (Sammy Fain / Irving Kahal)
収録以上13曲。ますますジャズ・クラブ・ムードたっぷりの彼女のヴォーカルは円熟味を増しての感がある。ただし、ライブ録音の技術的問題の為かもしれないが、声量は以前より落ちているような印象がする。
軽快にM1."Let's Face The Music And Dance"がスタートする。そうそうこの歌い方は彼女独特の世界だ。しぶいしゃがれ声と彼女独特のアクセント、それは彼女のオリジナル曲M2."The Way To You"のようにじっくり歌い上げる曲だとなおさら強調される。これは声の出し方に一息溜めて出す手法で実感は深い。ライナーの後藤誠一はこの技法に旨さの深みを強調していたが、私は少々気になる。これは1stアルバムでも見られたが、このアルバムに来てなお強調されている。
M4."Jim"となると、クリフ・モネアのピアノ・トリオの味付けが如何に生きているのが解る。
M5."踊り明かそうI Could Have Danced All Night "誰もが聴き慣れたこの曲の軽快な展開に、やはりこのトリオの生きの良い演奏と彼女の気合いの入ったヴォーカルが会場を喜ばせる。そして一転してじっくり歌い込みのM6."Too Late Now "、しかしこの曲途中からの転調してのスウィング・リズムを混ぜての旨い編曲が見事。
M7." Fragile "は、スティングの代表曲。これも結構トボックマン節に化けている。こうして聴いているとやっぱり彼女の歌は旨いのが実感出来る。このアルバムでも出色の出来だが・・・・。
M8."Frim Fram Sauce"は陽気そのもの。コール・ポーターのM9."Every Time We Say Goodbye"の歌い込みは情緒たっぷり。M11." I Wish I Knew"の情感はやっぱり並ではない。こうゆうバラッドはお手の物なんでしょうね。
M12."Touch And Go"トボックマンのオリジナルでしかもインスト曲。トリオの溌剌とした演奏。 M13. "I'll Be Seeing You "最後にふさわしいお別れの曲。ここでも情感が溢れている。
とにかく彼女の全てを感じ取れるライブ録音盤だ。ドスの効かした低音、しっとりと聴かせる説得力、パンチの聴いた熱唱と、スカっとした晴れやかさと、歌い込み・テクニック・情感全てトップクラス、ただ後は聴く者の好みにあるかどうかでしょうね。先に触れた彼女の独特の節回しとアクセント、これはハートフルと言えばそうだけど、私は若干というかかなり抵抗がある。アルバム全編これで攻められると、途中で参ったと降参してしまう。最後の挨拶なんかを聞くと良い声をしているので、このままで素直に歌っているのも織り込んだらどうなんでしょうかね、それは無理な相談か。
(評価)
□ 選曲・歌・演奏 ★★★★☆
□ 録音 ★★★★☆
(試聴)
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コメント
これだけ癖があると、一部のファンのみの信仰を受けて、ジャズクラブで終わりそうな感じですね(失礼)
じゃあ、誰もが愛する歌ってどうなのって観点から、ブックオフ500円で仕入れた、これでもかって感じのポピュラーボーカル2枚組コンピを聴いてみました。トニー・ベネット、シナトラ、ナット・キング・コール、ジュリー・ロンドン、アンディ・ウィリアムス、ペギー・リー、ディーン・マーティンなどなど。
やっぱり違うわ(笑)
まあ、個性を愛するのがジャズだから何聴いてもいいんだけど、ある程度は売れるくらいのポピュラリティーがないとね(笑)
BGMにして、CT診断してたら、 fever!fever!とペギー・リーが。
肺炎だから、そりゃ熱が出るよね。
投稿: MRCP | 2019年8月 2日 (金) 19時22分
MRCPさん、いつもユーモアたっぷりのコメント有り難うございます。そうなんですよね、このトボックマン、寺島靖国も"旨すぎるという程のシンガー"と褒めたぎってますが、このパターンでCD一枚通して攻められると私は途中で降参です。先日何年ぶりかの新譜を発表した弘田三枝子も、大抵途中で万歳してしまうといったところと似てます。
ジャズ・ヴォーカルをBGMにしてCT診断ですか、MRCPではドラムスの音と重なって凄いでしょうね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年8月 2日 (金) 22時29分
仕事のBGMは何がいいのか
吉田拓郎なんか、岡本おさみの歌詞が深くて、聞き入ってしまうので、歌詞のまったく判らないフランス・ギャルやモゴモゴムニャムニャのポルトガル語でボサノバなんかが気持ちいいです。ハワイアンなんかも。ブルーノートは暑苦しいぞ。
とにかく暑いし。
土日は岡山のうらじゃ祭りで女子大生の写真を撮りまくってたら、死にそうになりました。顔見知りがやたらたくさんいるし、2日で5万枚も撮るからだけど。(笑)
投稿: MRCP | 2019年8月 5日 (月) 13時32分
MRCPさん
そうですね・・・・MRIやCTのバッククラウンド・ミュージックなら、本日取り上げたSteve Rudolph Trioのようなタイプはいかがですか。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年8月 6日 (火) 08時59分