イリアーヌ・イリアスEliane Elias のニュー・アルバム「Love Stories」
ストリングス・オーケストラを擁しての「いろいろの形の愛」を歌う
<Jazz>
Eliane Elias 「Love Stores」
CONCORD Jazz / JPN / UCCO-1210 / 2019
Eliane Elias- vocals, piano
Marc Johnson – bass
Mark Kibble – background vocals (2)
Marcus Teixeira – guitar (1, 2, 3, 6, 9)
Daniel Santiago – guitar (2)
Roberto Menescal – guitar (8)
Edu Ribeiro – drums (1, 2, 3, 9)
Rafael Barata – drums (5, 8)
Paulo Braga – drums (4)
Celso de Almeida – drums (6)
円熟のイリアーヌ・イリアスのニュー・アルバム登場。近年では、2015年作品『メイド・イン・ブラジル』でグラミー賞を獲得し、その後も『DANCE OF TIMES』(2017)、『MUSIC from Man of La Mancha』(2018)と矢継ぎ早にアルバムをリリースしているピアニストのイリアス、もうこれで26・7枚目位になる。彼女は1960年生れですから、すぐ還暦です。しかしアルバム・ジャケの写真は若くて驚きますね。写真というものは恐ろしいです(笑い)。
今作は新たなオーケストラ・プロジェクトを擁して、「イリアーヌの愛へのオマージュ」と銘打っている。中身は多彩で、全て彼女のアレンジによるもので、当然と言えるボサ・ノヴァ、そしてなんとシナトラ・ヒット、更に自己のオリジナル曲(3+1)までを収録している。とにかく彼女のピアニスト、ヴォーカリスト、アレンジャー、コンポーザーそしてプロデュサーとしての多彩な才能発揮のアルバムである。
(Tracklist)
1. A Man and a Woman
2. Baby Come to Me
3. Bonita
4. Angel Eyes
5. Come Fly with Me
6. The Simplest Things *
7. Silence *
8. O Barquinho (Little Boat)
9. The View *
10. Incendiando * (Bonus Track)
*印 Music by Eliane Elias
まず聴いてみて解るのは、所謂ピアノ・トリオのスタイルに曲によりギターが加わり、そして全曲ストリングス・オーケストラが支えていて、所謂ジャズ演奏よりはムーディーな彼女のヴォーカル・アルバムと言うところを優先している。前作『MUSIC from MAN of La MANCHA』が彼女のヴォーカル抜きの本格的ピアノ・トリオ・ジャズだったので、おそらく、ここではジャズ・ファン向けと言うより広く一般向けに仕上げたアルバムを企画したのだろう。又全曲英語で歌っていることもあり、これは久々にかなりのヒット作となりそうだ。
アルバム・テーマは「愛」だが、イリアーヌは、「ロマンチックな愛は、感情の現れる様々な愛のうちの一つにすぎず、本作収録の様々な曲を通じていろいろな形の愛を実感してもらい、また愛おしく感じてほしい」というのだ。
スタートは、M1."A Man and a Woman"と、なかなか振るっている。この曲の出典である映画「男と女」はここでもふれたので、中身はそちらに譲るが世界的ヒット曲だ。この冒頭からイリアーヌのマイルドにして中低音がソフトな包容力ある歌声が広がる。
M4."Angel Eyes"は珍しく中盤から後半には、ピアノ・トリオの演奏が中心となるが、やはりストリングス・オーケストラが加わる。この曲は、むしろオーケストラ抜きの方がよかったのでは、というのは私だけだろうか。
M6."The Simplest Things"は、彼女のオリジナル曲で、なかなかムーディーで、彼女の優しさ溢れる歌が堪能出来る。
M7."Silence"も彼女のオリジナル。更に静かに流れるような曲で、ストリングス・オーケストラが美しく曲を流して、これぞオーケストラの有効な曲だ。歌も微妙な愛の姿を切々と歌い上げての佳曲。
M8."Little Bout"は、取り敢えず定番のボサノバ。
M9."The View"も彼女のオリジナル、やはりやや哀感のあるラブストリーだ。このアルバムはこれで締めくくりとなる。
日本版は、更にM10のボーナス曲が収録されているが、イメージは全く異なる曲で、このアルバムの仕上げの描いた世界をむしろ壊している。曲は良いのだが、アルバムをトータルに仕上げているのに対して意味の無いボーナス曲、ちょっとセンスを疑う。
イリアーヌのジャズ・ピアノを期待すると少々空しいが、ヴォーカル・ファンにとっては最上級の仕上がりだった。又彼女の作る曲はかなり美的な説得力があって、そうなのかとやや驚きつつ納得した。そんなアルバムとして取りあえずは無難な良盤と評価しておこう。
(評価)
□ 曲・演奏・歌 : ★★★★☆
□ 録音 : ★★★★☆
(試聴)
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