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2019年10月 7日 (月)

マット・スローカムMatt Slocum 「 sanctuary」

ハイセンスのどこか格調の高いフリージャズ

<Jazz>
Matt Slocum 「sanctuary」
SUNNYSIDE / US / SSC1547 / 2019

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Gerald Clayton(p)
Larry Grenadier(b)
Matt Slocum(ds)

 私にとっては初物のマット・スローカムMatt Slocumというニューヨークを拠点としているドラマーのピアノ・トリオ・アルバム。これはSunnyside からの第一弾で、これまでは自主制作盤を中心にリリースしていたようで、これで5作目となるらしい。と、言うことはそれなりにキャリアーがあるようだ。

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 このトリオ・メンバーを見て気がつくのが、あの名ベーシストのジョン・クレイトンの息子で、いわゆる本道をゆくジャズを継承していながらも近代的なセンスと才能で現代的なジャズを追求しているといわれるピアニストのジェラルド・クレイトン(下左)がおり、又ブラッド・メルドーとの共演でも知るラリー・グレナディア(下右)というなかなか話題性のあるところにある。

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(Tracklist)

1. Romulus 5:01
2. Consolation Prize 5:10
3. Aspen Island 6:07
4. Star Prairie 4:22
5. A Dissolving Alliance 4:30
6. Days of Peace 4:56
7. Sanctuary 5:35
8. Anselmo 6:28

All compositions by Matt Slocum
except "Romulus" by Sufjan Stevens, arranged by Matt Slocum

 オープニングのM1." Romulus"で、なんとグレナディアのベース・ソロといった感じでスタート。リーダーのスローカムのドラムスは特に全面には出ず淡々と曲を進める。
 M2."Consolation Prize "はテンポをハイにした演奏だが、これでもスローカムは静かにリズムカルにスティックを主体に演ずる。クレイトンのピアノはかなりアヴァンギャルドにコンテンポラリーなフリージャズを演じ、ベースもしっかり応対する。しかし決して激しさといものを感じさせないハイセンスの格調あるとでも言えるようなインター・プレイだ。後半にドラムス・ソロが入ってむしろほっとする。
 M5."A Dissolving Alliance",  M6."Days of Peace",  M7."Sanctuary"と、所謂アメリカ的な派手さは全くなく、知的とも言える思索的な展開をみせて、心にむしろ安定感を与えてくれるような技巧のレベルの高いトリオ演奏を聴かせてくれるのだ。
 
 これはドラマーのリーダー作と言うことで、それなりに意識はしていたが、全く聴く前の予想と反してハイセンスな展開とハイレベルの演奏能力により、派手さの無いところにむしろ心を引き寄せられる世界を描いている。むしろそれがインパクトがあった。
 クレイトンのピアノはフリーな世界に入りながらも、決して暴れること無く人間の深層に迫るようなところがあって、私は彼をいままでよく知らなかったのであるが、このアルバムを聴いて興味を持った。
 全体の印象は静かに淡々としていて、なんとバッククラウンド・ミュージック的に流していても、一向に抵抗はない。なかなか得られない世界に導いてくれた好盤であった。

(評価)
□ 曲・演奏  ★★★★★☆
□ 録音    ★★★★☆

(試聴)  このメンバーのトリオものは見つかりませんので・・・SlocumとClaytonを
  (参考1) Matt slocum Trio

 

  (参考2) Gerald Clayton Trio

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コメント

風呂井戸さん,こんにちは。台風が迫っているので,家でおとなしくしています(笑)。

このアルバム,趣味のよさを感じさせますが,これはリーダーのみならず,メンツによるところも大きいと思いました。出来のいい人たちのやることは相応にレベルが高いということを実証していますね。

ということで,当方記事のURLを貼り付けさせて頂きます。
http://music-music.cocolog-wbs.com/blog/2019/06/post-9f1b76.html

投稿: 中年音楽狂 | 2019年10月12日 (土) 16時45分

中年音楽狂さん
 コメント有り難うございます。台風の影響はよかったでしょうか。
 おっしゃるように、このアルバムはリーダーが統率して、ピアニスト、ベーシストそれぞれの個性を生かしたほんとの意味のトリオ作品というのが良いのでしょうね。
 私は特にジェラルド・クレイトンには驚きました。こうゆう人達が育ち頑張っているんですね。やっぱりジャズの本場アメリカですね。日本がこのような人達の新展開に弱いだけと言うか、知らないだけなのでしょうね。なにせエヴァンス、マイルス、キースと言っていた方が商業的には安定していますから・・・。私はユーロ系に最近偏っていますが、なになにアメリカはそれなりに頑張っていることを今回知らしめられました。
TB有り難うございました。受けた印象は同じだと感じました。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年10月13日 (日) 09時12分

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