マーク・コープランドMarc Copland 「AND I LOVE HER」
今年一年お世話になりました。
来たる2020年もよろしくお願いします。
(今年の最後は、ジャズらしいベテランもので締めくくります ↓)
完璧に描ききる深遠にして繊細な世界観のピアノ・トリオ・アルバム
<Jazz>
Marc Copland Drew Gress Joery Baron「AND I LOVE HER」
Illusions / USA / IM4004 / 2019
Marc Copland(p)
Drew Gress(b)
Joey Baron(ds)
今年の締めはやっぱりベテランものと言うことになった。
マーク・コープランドはフィラデルフィアで1948年生れだから、もう70回以上年を越し新年を迎えている訳だ。その彼の最新アルバムと言えばこのドリュー・グレス(b)、ジョーイ・バロン(ds)という文句なしのリズムセクションを迎えて臨んだピアノ・トリオ作品。このメンバーは2017年から共演している。久々に完璧なピアノ・トリオのサウンドを頭に響かせ年越しとなる。
演ずるは、自己の曲やグレスの曲の他、Mongo Santamaria, Herbie Hancock, Lennon-Mccartney, Cole Porter 等の曲である。
(Tracklist)
1.Afro Blue 6:22
2.Cantaloupe Island 8:20
3.Figment 7:21
4.Might Have Been 5:46
5.Love Letter 8:11
6.Day And Night 10:41
7.And I Love Her 6:44
8.Mitzy & Johnny 4:29
9.You Do Something To Me 9:16
post bop jazz pianist と言われるコープランドだが、昔はサックス奏者だったと思えない完璧なベテラン・ピアニストの世界を演ずる。
オープニングのMongo Santamariaの曲M1."Afro Blue " 、印象的なグレス(→)のベースとバロンのドラムスから始まって、ピアノの深遠さと美しさが襲ってくる。
更にM2."Cantaloupe Island" は、Harbbie Hancockの曲だが、同じピアニストの曲かと不思議に思わせるほど、別物の世界に導かれる。これがコープランドなんですね。
そしていつも思うのだが、ビートルズの曲というのは別人が演じてみるとなかなか良い曲だと言うことに気がつくことがある。このアルバム・タイトルとなっている曲M7."And I Love Her"はまさにそのパターン。しかしそれにつけてもこれだけ深遠な緊張感ある物思いに導く曲とは驚きだ。これぞコープランド世界であって Lennonには是非聴かせたいと思う程である。
そしてこのアルバム全曲、全くその流れは曲のテンポの変化やリズムセクションのリードがあっても、自然にコープランドのピアノが入ると不思議にその深淵にして緊張感ある世界に突入するのだ。
それはM2,M3で明瞭になるが、前衛性のニュアンスの強いバロン(→)のドラムスも大いに貢献しているのだろう。トリオ・アルバムとしての録音も少々変わっていて、ベースの中央配置は標準的だが、ドラムスが全面に出ていてかなりリアルであり、ピアノが広く広がりをもってサポートするが如く配置されている。これも曲の雰囲気作りに貢献していると思う。
そしてその曲のイメージは、繊細な中にクールにも一見感ずるところにあるも、どこか人間の世界観の多様性にアプローチしている姿が迫ってくる思いである。
この年の最後にこの一年を締めくくり、今年の一年の経過を総括し来たる年に向かって発展的に思いを馳せるにはおあつらえ向きのトリオ演奏アルバムであると評価した。
(評価)
□ 編曲・演奏 ★★★★★☆
□ 録音 ★★★★☆
(参考視聴)
Marc Copland Trio
*
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コメント
風呂井戸さん,こんにちは。当方ブログにリンクありがとうございました。
私がMarc Coplandにどっぷりつかってしまって結構な時間が経過していますが,Coplandももう古希に達しているということには正直驚いてしまいます。この個性はOne & Onlyと言ってもよいかもしれませんね。
ということで,当方の記事のURLを貼り付けさせて頂きます。本年もお世話になりました。よいお年をお迎え下さい。
http://music-music.cocolog-wbs.com/blog/2019/11/post-7d5785.html
投稿: 中年音楽狂 | 2019年12月29日 (日) 15時35分
中年音楽狂さん、コメントどうも有り難う御座います。
最近は、私は殆どユーロ系ピアノ・トリオに傾倒してしまってまして・・・Fred Hersch, Brad Mehldau などの活躍が頼りみたいなUSAですが、このMarc Copland を忘れてはイケマセンネ。久しぶりにこのトリオ作品に興奮しました。
そこで、この拙い私のブログの今年の締めのテーマとした次第です。
今年もいろいろと有り難う御座いました。話題の多い2020もよろしくお願いします。良いお年をお迎えください。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年12月29日 (日) 22時55分
「Some Love Songs」を聴いたときは、「アメリカにもこんな弾き手が ・・・」と思いました。風呂井戸さんと同じように、「And I LOve Her」を今年の収穫の一つにあげるジャズ・ファンもいますね。来年もよろしくお願いします。
投稿: 爵士 | 2019年12月30日 (月) 14時48分
爵士さん、こんばんわ
いよいよ今年も押し迫りました。あっという間の一年でした。
ジャズ分野のCD漁りも、今年は少々熱が低下していましたが、それなりに聴いてきました。ピアノ・トリオ分野では、USAは少々ユーロの新展開から見ると低調でしたが、Marc Copland のこのアルバムは貴重でした。
又来年もぞっこん惚れ込むようなアルバムに出会えることを期待して納めます。
今年同様、来たる新年もよろしくお願いします。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年12月30日 (月) 21時18分
こんばんは
今年一年間ありがとうございました。新譜を常に追いかけていてすごいと、風呂井戸さんの記事を拝見していました。限られた出張の際に、ジャズ東京の店頭で新譜を試聴するのですが、自分の趣味にあったCDは残念ながら2019はあまりありませんでした。来年に期待です。
このコープランドの作品は面白そうですね。どちらかで試聴してみたいと思います。来年もよろしくお願いします。
投稿: azumino | 2019年12月31日 (火) 18時07分
azuminoさん
こんばんわ、今年ももう締めですね。
ブログで山やジャズ喫茶やグルメなど興味深く拝見しています。
来年もご健闘ください。良い年をお迎えになられますように。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年12月31日 (火) 23時41分
遅ればせながら、一年間お疲れさまでした。当方、ジャズはさっぱりなのでよくわかりませんが、該博な知識と先鋭な審美眼には恐れ入ります。また、コンテンツも徐々に増えていって、その趣味性の広さにも驚かされました。いつまでも長くご活躍ください。ありがとうございました。2020年もよろしくお願い致します。
投稿: プロフェッサー・ケイ | 2020年1月 1日 (水) 13時45分
プロフェッサー・ケイ様
コメントどうも有り難う御座います。
特に難しいこと無く、ロックで活力を、ジャズで心を癒やす(プログレからの流れのようなモノです・・一度推薦させて頂きたいものがありますが)・・という選曲が私の流れです。ただロック3 : ジャズ7 位の比率で2019年は流れたように思ってます。歳のせいですかね。
新しい令和2年(2020年)はどう流れるか解りません。取り敢えずケイ様の世界も覗かせていただいて充実したいです。よろしくお願いします。又ケイ様にとって良いお年でありますように。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年1月 1日 (水) 17時14分
今年も、よろしくお願いします。m(_ _)m
遅くなりましたが、コープランドのリンクを。
この方の陰りと捻りは、曲者ですよね。
このアルバムも冒頭から、ノックアウトでした。
そして、メンバーも素晴らしい!!
このアルバムで、一年を締める心意気に乾杯です。
投稿: Suzuck | 2020年1月 5日 (日) 14時24分
Suzuckさん
こちらこそ今年もよろしくお願いします
元祖アメリカの所謂ピアノ・トリオは、今やユーロ系に押されていることは事実でしょう。しかし、フレッド・ハーシュやメルドーの奮戦はよいとしても、コープランドがいて何となくホッとしたんです。
キース・ジャレットが挑戦したように、ジャズはデキシー・ランド・ジャズに未だにこだわっているようでは寂しいですからね(笑い)。思い起こせば2018年の締めは、アントニオ・サンチェスでした。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年1月 5日 (日) 20時13分
And I Love Her って、作風から考えて、おそらく McCartneyが一人で書いたんじゃないかと思ってるんですけど。どうでしょうね。
I WillならPaul、JuliaならJohnという具合に。
投稿: MRCP | 2020年1月24日 (金) 18時53分
MRCPさん、こんばんわ
今年も楽しくよろしくお願いします。 ^^
「And I Love Her」は調べましたら、Lennon-Mccartney となっています。どうも二人のようですね。
私はビートルズには弱いのですが・・・こうして皆に曲は愛されていますね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年1月24日 (金) 22時42分
ジョンとポールは、どちらかが1人で作っても、レノン=マッカートニー名義で発表することにしていたのです。
イエスタデーは、ポール一人で作詞作曲、一人で歌って、ギターも自分で弾いて、ビートルズからは一人だけの参加でも、レノン=マッカートニー作で、ビートルズの作品なのです。
後年、小野洋子さんに、せめてマッカートニー=レノンにして良い?って頼んだら、絶対ダメ!と断られたという逸話が残っています。
投稿: MRCP | 2020年1月25日 (土) 22時33分
MRCPさん
こんばんわ、コメントどうも有り難う御座います。
そうゆうことなんですか、ビートルズに弱い私に良い教えを有り難う御座いました。
とにかく、ビートルズを蹴落としたと言われるキング・クリムゾン・ファンてしたので・・・^^)
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年1月26日 (日) 20時55分
藤子不二雄みたいなものですね(笑)
同じくコンビ解消しましたけど。
僕もリアルタイムで大口あけたの買いました。昔のリスナーは、プログレもツェッペリンもサンタナもエルトン・ジョンもクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングもCCRもシカゴもみんなロックだとして聴いてました。フォークルや拓郎や五つの赤い風船なんかもきいてましたものね。ヘビメタを細かく分類するような聞き方はしてませんでしたよね。
本日、四角佳子(六文銭。拓郎の最初の奥さん。結婚しようよの相手です)の何十年かぶりの復帰、ファーストアルバムがアマゾンから来ました。雑食系ですね(笑)
投稿: MRCP | 2020年1月27日 (月) 02時52分
MRCPさん、なかなかの雑食系ですね。^^)
あの「大口アルバム」は、日本でなかなか手に入らずイライラしたのを思い出します。まだ当時はその位の音楽事情でした。
CCRはいいですね。ビートルズは早い話がガキっぽいというところでしたが、CCRは大人でした。"スージーQ"なんかは私にとっては革命的でした。これぞロックでした。 ^^)
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年1月27日 (月) 16時07分
もの凄く遅い紹介に反応していただきありがとうございます。
本作は、「響」がテーマと感じるくらい、残響を含む響きにいろいろな「響」の妙を込めた作品と聴きました。
こちらからもコメント内TBをさせていただきます!!
https://jazz-to-audio.seesaa.net/article/473495390.html#comment
投稿: oza。 | 2020年2月16日 (日) 19時26分
ozaさん、こんばんわ、こちらまでわざわざ有り難う御座います。
「響」ですか、なるほど焦点をそこに当てましたか。
ところで、須川崇志BanksiaTrioを教えて頂いて感謝しています。少し研究させてください。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年2月16日 (日) 20時25分
最近、NHK-FMの「世界の快適音楽セレクション」で
Marc CoplandとGary Peacockのデュオアルバム「What It Says」を知り、CDを手に入れてから火がついてしまいました。心に染み入るMarc Coplandの演奏に心奪われた感じで、他のアルバムも漁っています。心象風景を描くあたたかさと鋭さが漂うピアニズムに、どこか和の響きさえも感じ、安らぎを覚えます。他にもお薦めのディスクがありましたらぜひご紹介ください。
投稿: カムイミンタラ | 2021年8月15日 (日) 19時20分
カムイミンタラさん、こんばんわ、
お勧めアルバム、なかなか難しいですが・・・
Marc CoplandとGary Peacockということでしたら、「Insight」というデュオものがあります。
又、ソロでも「Night Fall」なんかは夜に静かに聴くに最高ですね・・・
と、勝手なことでゴメンナサイ。なかなか好みというのは人それぞれですので、あしからず。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2021年8月15日 (日) 21時03分
風呂井戸さん、さっそくコメント頂きありがとうございます。「Nightfall」ネットで早速試聴しました。素晴らしいですね!ありがとうございました。
投稿: カムイミンタラ | 2021年8月16日 (月) 08時55分