エミール・ブランドックヴィスト Emil Brandqvist Trio 「SEASCAPES」
ドラマーのリーダー・トリオ
牧歌的な自然の広がる大地に根ざした美しさを展開
<Jazz>
Emil Brandqvist Trio「SEASCAPES」
SKIP RECORDS / GERM. / SKIP 9128-2 / 2015
Emil Brandqvist : Drums, Percussion, Keyboads
Tuomas Turunen : Piano
Max Thornberg : Bass
スウェーデンのドラマーのエミール・ブランドックヴィストEmil Brandqvist の結成したピアノ・トリオは、その演ずる世界の美しさは格別である。私はこのトリオの3枚のアルバムと、ピアニストであるTurunenのソロ・アルバム1枚を所持しているのだが、今回ここで取り上げる2015年のアルバム『SEASCAPES』以外は、全て過去に取り上げてきた。(下記参照)
Emil Brandqvist Trio 「FALLING CRYSTALS」(SKP 9135-2 / 2016) (下左)
Emil Brandqvist Trio 「WITHIN A DREAM 」(SKP 9141-2 / 2018) (下中央)
Tuomas Turunen 「Ornaments of Time」(SKP 9139-2 / 2017) (下右)
ところが先日寺島靖国がリリースした『for Jazz Audio Fans Only vol.12』(2019)に、アルバム『ESCAPES』からの曲"Vals"が納められていたことから、これももちろん私好みのアルバムであったので、それならばとこのアルバムをもここで取り上げようと言うことになったのだ。
(Tracklist)
1.Vals
2.Silloin Lennän*
3.Skog
4.Färdas Under Vatten
5.Du Håller Min Hand
6.Bobergs Udde
7.Den Sista Isbjörnen
8.Savotta*
9.Stormsvala
10.Grimsholmen
11.Havsanemon
11曲中9曲の殆どがドラマーのBrandqvistのオリジナル曲(*印以外)。
なんと言ってもM1."Vals"が美しい曲。特にTuomasのピアノが透明感あり美しいメロディーを奏で、冒頭よりうっとりする。
M4."Färdas Under Vatten" はかなり珍しく攻めの曲。これはトリオに加えてフルーゲルホーン、クラリネット、フルートなどが加わる。
M5."Du Håller Min Hand" もBrandqvistの曲だが、ピアノが美しく、そしてM6."Bobergs Udde" の穏やかにして静かな広大な土地に広がる安堵感のような世界も聴きどころ、ここでもクラリネットがピアノと共にメロディーを美しく描く。
M7."Den Sista Isbjörnen" は、クラシック世界のにじみ出てくる曲。フル-ゲルフォーンがメロディーの重要なところを担っていて、後半に入ってピアノが美しくその役を変わる。やはり牧歌的な安定感。
M8."Savotta" はちょっと異色でハイリズムからピアノの展開が主力の曲、やはりピアニストのTurunenの曲だ。彼はこのアルバムにM2(*印)と2曲提供している。アルバムの色づけには寧ろ良いと思う。
M9."Stormsvala" ピアノに語らせ、シンバルやブラッシがメリハリ付けて、ベースが支えるBrandqvistらしいクラシック的な安寧の世界。
やはり全体には北欧的牧歌的な世界であり、ドラマーのトリオとしては意外にピアノの美しさが印象に残って、それ程ドラムスは表に出てこない。とにかくしっとりとした精神安定剤的流れの中に浸かれる曲群が主力で、聴いた後の気持ちは透明感に浸れるところ。
このトリオはドイツからのリリースで、このファースト・アルバム「Seascapes」はドイツのエコー賞にノミネートされ、次の「Falling Crystals」はドイツのジャズリストの7位にリストさたとか。そして昨年のアルバム「 Within a Dream」のリリースは、絶賛されている。
思うに、美旋律曲を創造するのは Brandqvistが得意で、それを演ずるTurunenがその美を更に高めているように思う。今後も楽しみなトリオである。
(評価)
□ 曲・演奏 ★★★★☆
□ 録音 ★★★★☆
(視聴)
*
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