ロジャー・ウォーターズRoger Waters 「Roger Waters With Eric Clapton / Chicago 1984」
クラプトンのギターが美しく響くウォーターズのライブ
今となれば貴重な記録が・・好録音で
<Progressive Rock>
Roger Waters 「Roger Waters With Eric Clapton / Chicago 1984」
IAC( KING STREET) / JPN / KING2CD4105 / 2019
(Tour band)
Roger Waters: Lead vocals, Bass guitar, Acoustic guitar
Eric Clapton: Lead guitar
Tim Renwick: Rhythm guitar, Bass guitar
Michael Kamen: Keyboards
Andy Newmark: Drums
Chris Stainton: Hammond organ, Bass guitar
Mel Collins: Saxophone
Katie Kissoon: Backing vocals
Doreen Chanter: Backing vocals
しかし相変わらすロジャー・ウォータースの話題は尽きない。つい先日は世界的に「US+THEM」映画の公開で話題をさらったが、ここに彼がピンク・フロイドから一歩引いてのソロ活動当初に再び関心が高まるのである。まずその一つがこのエリック・クラプトンとのライブ録音の驚愕とも言える素晴らしい音源が出現した。このライブは話題高かったがその記録版は、私も何枚かを所持しているが、どちらかというと見る耐えない何となく解る程度の映像モノ、そしてサウンド版も良好と言ってもかなり聴くに問題の多いモノ。しかし中身はさすがクラプトンのギター世界は素晴らしい、そしてメル・コリンズのサックスも、マイケル・カーメンのキー・ボードもと聴きどころは多かったのだ。
とにかくギルモアとは全くの趣違いのクラプトンのギターと、ピンク・フロイド時代のウォーターズの手による曲をとにかくアグレッシブに編曲したところの楽しさだ。当時は最も脂ののったウォーターズのこと、エネルギーに満ち満ちたプレイが凄い。
ピンク・フロイドの熱気最高潮の「アニマルズ・ツアー」、莫大な資金をかけた「ザ・ウォール」ツアー。しかしその後の、1983年にリリースする12thアルバム『ファイナル・カット』以後、ピンク・フロイド は内部亀裂によりコンサート・ツアーを行わず、バンドは活動休止する。そんな中で、 ロジャー・ウォーターズは1984年にソロ・アルバム『ヒッチハイクの賛否両論(原題:The Pros And Cons Of Hitch Hiking)』(右下)をリリースした。これは彼が『ザ・ウォール』時代に既に出来上がっていたものだが、ピンク・フロイド・メンバーに受け入れられず、アルバム・リリース出来なかったモノだが、ギタリストにエリック・ クラプトンを起用して、彼の心の内面にある不安の世界を描いた作品として、クラプトンのギターの美しさと共に注目された。そしてエリック・クラプトンと共にメル・コリンズをも帯同して大規模なライヴ・パフォーマンスを披露する。同年6月16日の スウェーデンのストックホルムからスタートし、ヨーロッパ~北米で19公演を行う。その中で最終公演 となる7月26日のイリノイ州シカゴでのコンサートは地元のロック専門FMラジオWXRT-FMのスペシャル番組として収録・放送されたのであった。このアルバムはそれが音源となっているためサウンドはオフィシャル級で、30年以上経ってのこのオフィシャル・ブートレグの出現は驚愕を持って受け入れられているのだ。
(このライブの評価)
□ ロジャー・ウォーターズの世界に何をみるか
http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/post_aff8.html
(Disc 1)
01 太陽讃歌
02 マネー
03 もしも
04 ようこそマシーンへ
05 葉巻はいかが
06 あなたがここにいてほしい
07 翼を持った豚
08 イン・ザ・フレッシュ?
09 ノーバディ・ホーム
10 ヘイ・ユー
11 ザ・ガンナーズ・ドリーム
(Disc 2)
01 4:30 AM トラベリング・アブロード
02 4:33 AM ランニング・シューズ
03 4:37 AM ナイフを持ったアラブ人と西ドイツの空
04 4:39 AM 初めての出来事 パート2
05 4:41 AM セックス革命
06 4:47 AM 愛の香り
07 4:50 AM フィッシング
08 4:56 AM 初めての出来事 パート1
09 4:58 AM さすらう事そして生きる事をやめる
10 5:01 AM心のヒッチハイキング
11 5:06 AM ストレンジャーの瞳
12 5:11 AM 透明なひととき
(Encore)
13 狂人は心に
14 狂気日食
セット・リストは第1部、第2部、そしてアンコールを含めて全25曲で、このアルバムは上のように完全収録している。このコンサートの特筆すべき点はウォーターズがピンク・フロイドから一歩離れてのロックらしい世界に原点回帰している事と、やはり エリック・クラプトンの参加である。自己の世界を持つクラプトンが、自らの楽曲は一切演奏せず、ピンク・フロイドとロジャー・ウォーターズの楽曲を一人のリード・ギタリストとして デヴィッド・ギルモアとは全く異なる世界で完璧なギター・ソロを披露している。特に前半のピンク・フロイド曲の変化が面白い、これは当時のウォーターズのフロイド・メンバーへの不満が攻撃性となり、一方クラプトンが時々見せるギター・ソロ・パーフォーマンスは、完全に彼ら自身の世界に突入し、かっての曲がむしろ異色に変化して新鮮に蘇ってくる。これはウォーターズとクラプトンのプライドの成せる技であったのかも知れない。このあたりは当時単にピンク・フロイドの再現を期待したファンには不満があったと言われているが、何度聴いてもその変化はブルージーなロックに変化していて面白い。又こうも演者によってギターの音色も変わるのかと圧倒される。
後半のアルバム『ヒッチハイクの賛否両論』の再現は、クラプトンの美しいギターによって描かれるところが聴きどころであり、相変わらずのウォーターズの造る美しいメロディーと"美・静"の後に来る"彼の絶叫"と"爆音"に迫られるところは圧巻である。そして"セックス革命"のテンションの高いギターと"愛の香り"、"ストレンジャーの瞳"の美しさにほれぼれとするのである。
商業的問題から僅か19公演で終了したこのツアーであったが、この二人を筆頭に豪華メンバーでの パフォーマンスを収録したこのライヴ・アルバムはファンにとってまさに驚きで迎えられる作品である (圧巻のライブ・バック・スクリーン映像→) 。
そして輸入盤を国内仕様としてここにオフィシャル盤以上にかなり丁寧な解説付きでリリースされているところは評価したい。久々にロジャー・ウォーターズのアグレッシブな編曲演奏に触れることが出来、又あのピンク・フロイドの転換期を体感できるところが貴重である。
(評価)
□ 曲編成・演奏 ★★★★★☆
□ 録音 ★★★★☆
(視聴)
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コメント
こんな格好してヒッチハイクしたら
日焼け跡がかなり間抜けな形になるだろうから、止めた方がいいんじゃないかなあ。
投稿: MRCP | 2019年12月17日 (火) 13時32分
MRCPさん
コメントどうも・・・です。^^
このライブのバックスクリーンは実に圧巻な映像が映されたんですね。ブート映像もので見るしかないのですが・・・。
当時、ウォーターズは自分で造った曲でもピンク・フロイド関係の演奏の映像・演奏公開は禁じられていましたので、プロ・ショット映像が無いのが寂しいことです。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年12月17日 (火) 17時53分
遅ればせながら…
2020年もよろしくおねがいします。
で、これって、ハーフオフィシャルなんでしょうかね。この辺アマゾンでやたら出てるからもうオフィシャル扱いなんでしょうけど(笑)。
いやはや、こういうのが普通に聴けるのはありがたい反面、昔は探すのも大変だったのに、などとグチも言いたくなりますが。
ただ、今の時代、ありがたく楽しめるのを楽しみましょう。
今年も美女とジャズ、お待ちしてます♪
投稿: フレ | 2020年1月 4日 (土) 19時01分
フレさん、こちらこそ2020年よろしくお願いします。
所謂オフィシャル・ブートレグとやらの謎かけみたいなアルバムですが、これが頂ける。
クラプトンとの共演(ここにメル・コリンズ、マイケル・ケーメンが参加)で、ロジャーの発展性をみるニュー・アレンジによるピンク・フロイドを超える充実度があった代物ですね。これは実は非常に貴重と思ってます。
いかし聴く方は旧態依然たるピンク・フロイドを求めていて、そこにギャップが生まれるんですね。
そんなロジャーの歴史が見れますね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年1月 4日 (土) 20時31分