ウォルター・ラング Walter Lang Trio 「PURE」
ラング渾身のピアノ演奏で真摯な美世界を構築
<Jazz>
Walter Lang Trio 「PURE」
Atelier Sawabo / JPN / AS167 / 2019
Walter Lang (piano)
Thomas Markusson (bass)
Magnus Öström (drums)
ウォルター・ラング・トリオのニュー・アルバムが澤野工房よりリリースされた(前作『Translucent Red』(AS164/2018)に続いて)。彼は1961年生れのドイツのピアニストだ。これまでにも何枚かのアルバムに聴き寄せられてきたのだが、このアルバムはその魅力の姿をたっぷりと擁して登場した。
トリオ・メンバーを見ると、Magnus Öströmの名前が見られる。彼はあのE.S.Tでのドラマーとして知ったのだが、最近はBugge Wesseltoftのトリオでも活躍中で、ここではWalter Langと共演していて今や人気者のようだ。
このアルバム・タイトルの「PURE」は音楽的には"Pure Tone"のことか、はたまた描く世界が"高潔"、"純粋"という意味に使っているのかと思いを馳せるのだが、このアルバムの内容がそんなところに焦点をおいているのかと、収録11曲中8曲が彼のオリジナルとくるからちょっと震えますね。彼には美旋律派とアヴァンギャルド派の二面があって、このアルバムは日本人好みの美旋律派に属するタイプ。
01. Branduardi *
02. Always and Forever
03. Little Brother *
04. Meditation in F min *
05. 2 You *
06. Sad Song *
07. You Must Believe in Spring
08. Half Moon Bay *
09. Phases *
10. Who Can I Turn To
11. Meditation in Bb min *
*印 music by Walter Lang jun
オープニングM1."Branduardi " を聴いて、ええ、これが"PURE"と若干疑いを持つが、Pat Methenyの曲M2." Always and Forever"に入ると、ベースがもの哀しく旋律を演じ、それに続いて美しくも哀しいピアノのメロディーが流れ、ドムスはブラシングで静かにサポート、ウーンこれぞウォルター・ラングと納得し、このアルバムへの期待がぐっと高まる。
そして彼の曲M3."Little Brother"も、その流れの中で低音のピアノ、高音のベースと繋いで物思いの世界に導き、後半は今度はベースが低音、ピアノが美しい高音の響きで、なんとなく"PURE"な世界に。
更にM4."Meditation in F min"も、真摯な感情でやや暗めに沈んだ思索的世界に導きながら、落ち着いた美しいピアノの旋律が優しく心を洗う。
M5."2 You "はM2.3.4.と打って変わって弾む心が演じられる。この軽さは最近彼のアルバムによく顔を出すパターン。
続くM6."Sad Song"は、一転して美しいピアノの調べにどこか物寂しさが襲ってくる曲。
そしてM7.M8.は、やはりスローな展開の曲だが、これといった特徴はない。
M9."Phases"は、なんか不思議な世界に誘われる。ここでもベースが旋律を奏で良い役割を果たしている。
最後のM11."Meditation in Bb min"は、静かに流れる中に安堵と展望のあるピアノの美しさで包み静かに終わる。
これは久々にウォルター・ラングの「心」の曲を聴いた思いである。8曲に及ぶオリジナル曲を駆使して、人間の深層の美しさを信じての世界に相違ない。まさに清水が流れるが如くの美しさである。テクニカルに凄いという世界では無いのだが、"Meditation 瞑想"の付けられた2曲が私にとっては特に印象に残る曲であり、万人に心を打つとして受け入れられるアルバム作りも、それはそれ評価に値すると思うところである。
(評価)
□ 曲・演奏 ★★★★★☆ 90/100
□ 録音 ★★★★☆ 85/100
(視聴)
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