キアラ・パンカルディChiara Pancaldi 「PRECIOUS」
歌唱能力は高いが、全体に馴染めないコンテンポラリー・ジャズの極み
<Jazz>
Chiara Pancaldi 「PRECIOUS」
CHALLENGE Records / AUSTRIA / CR73497 / 2020
Chiara Pancaldi キアラ・パンカルディ (vocal)
Roberto Tarenzi ロベルト・タレンツィ (piano except 3, 7, 8) (electric piano on 3, 8)
Darryl Hall ダリル・ホール (bass except 5)
Roberto Pistolesi ロベルト・ピストレージ (drums except 5)
Diego Frabetti ディエゴ・フラベッティ (trumpet on 2, 9)
Giancarlo Bianchetti ジャンカルロ・ビアンケッティ (guitar on 4, 7)
キアラ・パンカルディ(1982年イタリアのボローニャ生まれ)のヴォーカル・アルバム3作目。過去の2作はここでも既に取り上げてきた1st『I WALK A LITTLE FASTER』(CR73409/2015)、2nd『WHAT IS THERE TO SAY』(CR73435/2017)で、スタンダード・カヴァー集という形あったが、今作はなんと自己のオリジナル曲で埋め尽くされている(9曲中7曲)。そんなところは、イタリア・シーンで活躍中の彼女の意欲作と言ってよいものだ。そしてロベルト・タレンツィ(p)以下のピアノ・トリオ(+ゲスト入りも4曲)をバックにしたもの。
1stアルバムは、なんと突然のデビューで「ジャズ批評」企画の年間ジャズオーディオ・ディスク大賞2015ヴォーカル部門を取ってしまったものだった。あれは私自身は若干疑問に思っていたのであったが、新たらしモノに弱い大賞という感じでもあった。しかしこの3作目となると新人のインパクトでなく、実力がかなり評されるところである。
1. Better To Grow *
2. Nothing But Smiles*
3. Urban Folk Song
4. Adeus *
5. Precious (vo & p duo) *
6. The Distance Between Us*
7. Songs Don't Grow Old Alone (omit piano)*
8. You And I (We Can Conquer The World)
9. Our Time*
( *印:キアラのオリジナル曲 )
まずは印象は、ジャズ・ヴォーカルの線はしっかりしている。しかしどちらかというと躍動感ある現代風の流れが感じられるが少々難物。
オープニングのM1." Better To Grow "では、やはりとマイナスの予想が当たってしまった。この曲は彼女のクリーン・ヴォイスは解るが、曲自身が魅力が感じられない。なにせブラジル音楽からの影響を受けていると言うとおりのテンポが快調なコンテンポラリーものであるが、私にとってはよりどころのない曲。
そのイメージが続いて、彼女のかなり歌い上げる力量は理解しつつ、どうも旋律自身心に響いてこない。演奏の美旋律という処ではなく、フリー・ジャズっぽいところにむしろ興味は行ってしまった。
アルバム・タイトル曲M5."Precious "は、初めてゆったりした物語調の曲となる。このあたりになってようやくピアノの美しさをバックに彼女のヴォーカルが私にとって美を感じられる世界となった。
いずれにしても残すところM7.,M9.の2曲ぐらいが、馴染めると言えば馴染めた曲だ。
M7."Songs Don't Grow Old Alone"はギターの美しい音と旋律を主としたバックに彼女の深みのある美しさのある歌声が展開して、スキャット系のヴォーカルも色づけしてなかなか技量の深さも感じ、これはなかなか良い。M8."You And I"はS.Wonderの曲というが、それも彼女のジャズ世界に変容していて見事言えば見事。
そして最後のM9."Our Time" この曲はピアノの美しさに誘われての彼女の深い歌い込みが聴かれ好きなタイプ、そこには美しさと哀感も感じられてトランペットの響きもナイス、これはいい。変にブラジルっぽくなくこうした曲なら私は大歓迎だ。
アルバムを通して、彼女の美声と歌う技量の高さは実感できる。ただこれは好みの問題だが、私にとっては受け入れられる曲がなんと3-4曲のみと言うところで、少々残念であった。やはり何曲かはスタンダードをじっくり歌って欲しいと思うのであるが如何なものだろうか。
彼女は私の好きなピアニストのアレッサンドロ・ガラティとの共演ものが次に控えているようで(「The Cole PorterSongbook」→)、そちらはピアニストのパターンからして期待に添ってくれるかもしれないと思うところである。
(評価)
□ 曲・演奏・歌 ★★★★☆ 曲より技量をかって 80/100
□ 録音 ★★★★☆ 80/100
(試聴)
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コメント
トラバをありがとうございました。m(_ _)m
仰ることは、わかるつもりです。
たぶん?彼女の望んだことなのではないでしょうかねぇ。。
でも、やっぱり、上手いなって、思いましたし、よしとします。
次作、楽しみですね。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2020/02/post-a0a621.html
投稿: Suzuck | 2020年2月29日 (土) 09時21分
Suzuckさん
コメントどうも有り難う御座います。
そうですね、そろそろ自分を訴えてみたいという段階に入ったのでしょうね。
しかし、声の質の魅力とか、なんといっても技量はしっかり持っていますので、大きく羽ばたいて欲しいです。やっぱりガラティとのデュオは期待ですね。ジャケもなかなかいいムードです。
TBも有り難う御座いました。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年3月 2日 (月) 19時40分