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2020年3月 5日 (木)

寺村容子YOKO TERAMURA & 山中千尋 CHIHIRO YAMANAKAのピアノ・トリオ対決

日本女性ピアニスト・ジャズにちょっと耳を
まさに対照的なジャズ・ピアノ・トリオ世界

 

 日本女性ジャズ・ピアニストの寺村容子と山中千尋を取り上げる。たまたま昨年ニュー・アルバムを両者リリースしていて、ただし私はここで取り上げてこなかったのだが、なんと今年の「ジャズ批評」214号のジャズ・オーディオ・ディスク大賞に銀賞と7位に入っていたので、ちょっと感想を書いておきたくなった。

 

<Jazz>
YOKO TERAMURA TRIO 「GRACEFUL TOUCH」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1084 / 2019

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寺村容子(ピアノ)
新岡 誠(ベース)
鳥山 悠(ドラムス)

Yokot (Tracklist)

1.No Problem 危険な関係のブルース (Duke Jordan)
2.Last Tango In Paris ラスト・タンゴ・イン・パリ (Gato Barbieri)
3.These Foolish Things ジーズ・フーリッシュ・シングス (Jack Strachey)
4.Who Wants To Live Forever リヴ・フォーエヴァー (Brian Harold May)
5.Graceful Touch グレイスフル・タッチ (Tord Gustavsen)
6.Children's Crusade チルドレンズ・クルセイド (Sting)
7.You Must Believe In Spring ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング (Michel Legrand)
8.Bay Walk ベイ・ウォーク (Yoko Teramura)
9.Left Alone レフト・アローン (Mal Waldron)
10.Wish Of The Ancients いにしえの願い (Yoko Teramura)

 寺島レコードが気合いを入れているどちらかというと美旋律ピアノを演ずる寺島容子の2019年リリース新作だ。私の場合どちらかというと録音が話題になったアルバム『TERAMURA YOKO MOODS』(TYR-1026)以来である。
  アルバム・タイトルが、あのトルド・グスタフセンの名曲"Graceful Touch"で、彼女はここでその曲のカヴァーを披露している。こんなところからも目指している方向が解ると言うところだが、なにせトルド・グスタフセンは哲学的深遠な世界に踏み込むという強者、これを描くにはまだ荷が重いと言わざるを得ない。このアルバムでは一番の聴きどころであり、しかし今後に期待で目指すことは悪くない。

 おそらくプロデューサー寺島靖国の方向性を描こうとしたところは、その録音からも解るところだ。なんと同一音源に二種類のマスタリングを行って、二枚組にしている。一枚は通常と思われるトリオのエネルギー・バランスで、もう一枚はピアノをやや引っ込めてドラムス、とベースが少し表に出てくる。私は後の方のタイプが良かったのですが、演奏よりもこんなオーディオ的遊びが出来る楽しいアルバムである。
 いずれにしてもバラード系演奏を聴かせてくれて私好みであるのだが、ならばもう少し情感のあるピアノタッチの強弱による描く世界が欲しいと思うところであった。まあ彼女もこれからなんでしょうね。録音にもよるのかも知れないが、音ばかりが表に訴えてくるアルバム。

                  - - - - - - - - -

<Jazz>
Chiro Yamanaka 「Del Tramonto」
UNIVERSAL MUSIC / JPN / UCCJ-2167 / 2019

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Chihiro Yamanaka : Piano, FenderRhodes, Hammond B-3 Organ

Yoshi Waki: Bass
John Davis: Drums
Vincente Archer: Bass
Damion Reid:Drums

録音年 2019年5月
録音場所 Boomtown Studio Brooklyn

Profile_3w (Tracklist)
1 ジェンナリーノ Gennarino (Chihiro Yamanaka)
2 パソリーニ Pasolini (Aldo Romano)
3 シンキング・オブ・ユー Thinking Of You (Chihiro Yamanaka)
4 ネヴァー Never (Chihiro Yamanaka)
5 チェロキー Cherokee (Ray Noble)
6 スイート・ラヴ・オブ・マイン Sweet Love Of Mine (Woody Shaw)
7 ルッキング・アップ Looking up (Micheal Petrucciani)
8 ブルー・マイナー Blue Minor (Sonny Clark)
9 ソリチュード〜C・ジャム・ブルーズ Solitude〜C jam blues (Chihiro Yamanaka / Duke Ellington)
10 プリマ・デル・トラモント Prima Del Tramonto (Chihiro Yamanaka)

 このアルバムは数多い山中千尋ピアノ・ジャズの最新作である。ブルーノート80周年記念作としての位置にもある。そして中身はソニー・クラークなどブルーノートの名曲をカバーし、フランスの障害を克服した最高のジャズ・ピアニストと評されていたミシェル・ペトルチアーニの没後20年にも焦点を合わせた作品を収録している。しかしそれでも主たるは彼女自身のオリジナル5曲が占めている。 リズムセクションは、ニューヨーク・トリオのレギュラーであるヨシ・ワキとジョン・デイビス。そして、ロバート・グラスパー・トリオのリズムセクションであるヴィセンテ・アーチャーとダミオン・リードという2組のリズムセクションとの共演もの。

 M1." Gennarino "は軽快なタッチでスタートし、M3."Thinking Of You"彼女の特技である転がるような打鍵さばきが惚れ惚れするほど見事である。
 M5."Cherokee"は、ドラムソロから始まり、疾走するベース、そして続くピアノの早引き、この流れはピアノ・トリオの醍醐味を地でゆき圧巻。確かに彼女の技量はハイレベル。
 M10."Prima Del Tramonto"はバラード調で聴きやすい流れ、しかしドラムスは疾走しており、後半は変調するという一筋縄ではゆかない。

 これは彼女の技量の高さをいやでも迫ってくるアルバムでジャズ古典的スタイルでの超絶技巧はナンバー1だ。しかし面白みという点ではやや欠けている。ニューヨークを拠点に活躍し、ボストンのバークリー大学の助教授という実力者だからこそ、彼女はもう一歩力まず余裕を持って新しい現代ジャズ手法に迫ってくれると面白いのだがと思う。又録音も一世代前の標準型で面白くない、寺島レコードのようなサウンドに挑戦があればアルバムの価値も上がろうとゆうところ。

(評価)

         (寺村容子)         (山中千尋)

□ 曲・演奏    75/100                    90/100
□ 録音      90/100              75/100

 

█ 日本女性ピアニストの二人のアルバムを並べてみたが、とにかく対照的。技量は圧倒的に山中千尋、アルバム作りは寺村容子というか寺島レコードに、というところで面白い対決となった。「ジャズ批評」の"ジャズオーディオ・ディスク大賞2019"の「インストゥルメンタル部門」では、寺村容子が銀賞、山中千尋が7位というところであった。やっぱりこの賞は演奏より録音にウェイトがあるのかなと、又は演奏の技量と深さより聴きやすさを選んだのかと思わせる、そんな結果であったが、これからも両者の奮闘に期待したい。

(試聴)

寺村容子

 

*

山中千尋

 

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コメント

風呂井戸さんこんばんわ。
さっそくですが、「日本女性ピアニスト対決」大変興味深く拝見させていただきました。
私的には、録音が普通以上であれば演奏内容の方を取るかなと思いました。
山中さんのこのアルバム中々良いと思います。ラスト曲のフェードアウトがちょっと残念ですが。

投稿: baikinnmann | 2020年3月16日 (月) 19時55分

baikinnmannさん
 こんばんわ、コメントどうも有り難う御座います。「ジャズ批評」では寺村容子に軍配が上がってますが、やっぱり録音でしょうね。それから寺島靖国もここのメンバーですから、少々忖度も・・・というところでしょうか。
 私も録音の良し悪しはかなり気になる方でして・・よって古き良き時代物にはあまり手を付けません。ピアノなんかはその冴えたるモノで、いい音で聴きたいです。^^)

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年3月17日 (火) 20時08分

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