エンリコ・ピエラヌンツィEnrico Pieranunzi 「COMMON VIEW」
オリジナル曲による創意の結晶といった流れ
<Jazz>
Enrico Pieranunzi Jesper Somsen Jorge Rossy
「COMMON VIEW」
CHALLENGE RECORDS / AUSTRIA / CR73459 / 2020
Enrico Pieranunzi エンリコ・ピエラヌンツィ (piano)
Jasper Somsen イェスパー・サムセン (double bass)
Jorge Rossy ホルヘ・ロッシー (drums)
Recorded at MotorMusic, Mechelen(Belgium)
Recording dates : September 10 & 11,2018
はっきり言ってこのアルバムも難物です。これは2018年の録音モノだが、エンリコ・ピェラヌンツィは近年この傾向にあることは解っての上でのアプローチであった。とにかくヨーロッパ叙情派ピアノの代名詞的彼であるが(1949年、ローマ生まれ)、このアルバムは極めて端麗なピアノ・タッチが聴かれるもハードにして軽快な転回をみせたり、美旋律を奏でるので無くトリオのそれぞれのアクセントを許容し協調してゆく妙を描く世界に専念していての曲作り。安易な叙情的美を求めるとしっぺ返しが来る。
01. Falling From The Sky (JS)
02. Silk Threads (JS)
03. Sofa (JR)
04. Turn In The Path (EP)
05. Love Waiting Endlessly (JS)
06. Perspectives (EP)
07. Instant Reveal I *
08. Who Knows About Tomorrow (JR)
09. Instant Reveal II *
10. Recuerdo (JR)
11. Song For An August Evening (EP)
(JS):Jasper Somsen、(JR):Jorge Rossy 、(EP):Enrico Pieranunzi 、*印:三者
それにしてもこのトリオのそれぞれの演奏の切れ味は見事と言いたい。けっしてピアノを前面に出してのベース、ドラムスが単なるリズム隊としてのサポートという単純なトリオ演奏では無い。収録曲は彼らがそれぞれ3曲づつ提供し、そして三者による2曲のオリジナル計11曲である。単なるカヴァーという世界で無いので、それは彼らの意志の見せ処としての曲構成展開が演じられているところにある。
とにかく私にとってようやくゆったり許容できたのは、M2."Silk Threads "、M11."Song For An August Evening "の2曲くらいであった。多分こうゆうアルバムは聴いたことのある旋律が顔を出してホッとさせてくれるというものでないので、恐らく何回と聴いていく内に何かが見えてくるのであろうという世界なのだ。
冒頭のM1." Falling From The Sky "は三者のお披露目、コラボレーションの妙。M2."Silk Threads "はがらっと変わってゆったりした世界。M3.Sofa""、M4."Turn In The Path"はコンテンポラリーにして実験音楽的ニュアンス。
M7."Instant Reveal I"はピアノの音の美しさが演じられるも、曲の展開が異様で緊張感を誘う。そしてM9."Instant Reveal II"に繋かがり、三者の交錯が興味をひく。
近年のエンリコ・ピエラヌンツィの単なる耽美性から一歩も二歩も歩んだ彼の創意の意欲から生まれる世界だ。それはトリオのコラボレーションを楽しむ瞑想感覚のあるミステリアスにしてスリリングな一つの世界なのである。
私からすると、とくにM11."Song For An August Evening "が往年のエンリコ・ピエラヌンティの演奏を思い起こさせて、救われた感じを持ったエンリコ・ワールドであった。
(評価)
□ 曲・演奏 ★★★★☆ 80/100
□ 録音 ★★★★☆ 80/100
(試聴)
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コメント
そうなんですね。難物と感じる方もいるようですね。
私はフリーでもメカニカルな旋律のものでもなんでも聴いてしまう方なので、このアルバムでの旋律に強いものを感じました。全曲オリジナルなんで、逆にスカッとしたというか。まあ、こういう楽しみ方もありということで、お許し願います。
当方のリンク先は以下の通りです。
https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2020/02/post-e33468.html
投稿: 910 | 2020年3月 1日 (日) 20時51分
910さん
コメントどうも有り難う御座います。
いやいや、このタイプもそれなりに評価があることはよく解ります。又演奏者はこの道に何かを掴もうとしているのも解ります。
単なる叙情美のみを描いているというのも進歩の無いことだし、それのみに甘んしていられないからこそ、今にして評価が得られていることも事実でしょう。アレッサンドロ・ガラティもちゃんとそうした面を持っていますね。
後は聴く人の個性で評価してゆけば良いことですもね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年3月 2日 (月) 17時43分
注文して到着を待っている状況。お二人のコメントで期待がもてますね。
投稿: 爵士 | 2020年3月 8日 (日) 23時25分
爵士さん
コメントどうも・・・です。
そうですね・・・待っているときが一番良いですね。そうですね、私には少々難物でしたが・・・。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年3月 9日 (月) 20時22分