ドイツのメランコリック・ゴシックロック=モノ・インク MONO INC.「THE BOOK OF FIRE」
メロディーに美しさのあるポシティブパンクのゴシックロックを展開
<Gothic Rock>
MONO INC. 「THE BOOK OF FIRE」
NOCUT / EU / SPV263342 / 2020
Vocals – Martin Engler
Bass, Vocals – Manuel Antoni
Drums, Vocals – Katha Mia
Guitar, Vocals - Carl Fornia
Producer [Produced By] – Martin Engler
もう三十数年前に今のインターネット社会は存在しない頃、パソコンがある層では個人的にも使われ始め、そしてネット通信としてパソコン通信(NECとNIFTY)という時代があった。そんな時代に音楽でも私が興味があって関係したロック(主としてプログレ=NEC・PC-VAN(PROGRESSIG)分野では、仲間が全国規模で出来て、それが今やおじさんから老人という事になるのだが、未だにそれなりにロックを愛しているのである。実はつい先日その仲間から私に刺激を与えてくれたのが、日本ではあまり知られずのドイツのエレクトロ・ゴシック・ユニットの「MONO INC.」だ。
その「MONO INC.」は、2000年から活動開始し、スタジオ・アルバムは2003年から11枚リリースしていて、ドイツでは絶大な人気バンドであるらしい。このアルバムはそのユニットの最新アルバムである。ここで取り上げたと言うことは、それなりに私にとっても十分興味の持てる演奏を展開していると言うことに他ならない。
それはゴシック系の暗さのなかただ埋没しているのでは全くなく、メタル系の疾走感もあり、特にメロディーの美しさを重視した音楽性の高いゴシックプロジェクトである。所謂パンクのネガティブさを変えたポジティブパンクの部類にも入るようだ。哲学的、神学的ニュアンスのある耽美性、芸術性をなんとなく持ったまあクサメタルといっても言いところも感じられ、私のようなクサメタラーにも受け入れられるところがあるのだ。
(Tracklist)
1 The Book Of Fire 7:21
2 Louder Than Hell 4:26
3 Warriors 4:16
4 Shining Light Featuring – Tilo Wolff 5:22
5 Where The Raven Flies 7:38
6 The Last Crusade 5:01
7 Death Or Life 5:07
8 Nemesis 4:34
9 Right For The Devil Featuring – Tanzwut 5:18
10 Run For Your Life 5:58
11 The Gods Of Love 3:39
12 What Have We Done 3:00
このアルバムは従来作よりは若干暗めが感じられるところだが(もっとも以前のモノは総集編的スタジオ盤とライブ盤しか私は持っていないのだが)、そのテーマ自身がこれまた暗く重苦しい難解のもの。
過去のアルバムの中ではダントツの人気が"Children of The Dark"という曲で、これがなかなかメロディアスである上に疾走感もある。その味に迫れるかどうかというところだ。
とにかくリーダーの Martin Englerは 独特な中低音を主体としたヴォーカルを展開しているのがまずの特徴で(このバンドのスタート時はドラムス担当)、そしてドラマーはKatha Miaで女性というのが又異色(2007年、2ndアルバムから)、彼女は主としてバッキング・ヴォーカルを務めるが、時にツイン・ヴォーカルとしても演じてソプラノ系の高音も聴かせる。この対比が魅力と言えば魅力でこれで曲のカラーを作り上げているわけだ。
冒頭のM1." The Book Of Fire"がこのアルバムの主題の曲と言うことになろうと思うが、オフィシャルに公開している映像からも、何世紀にも及ぶ秘密の知識を含む神秘的な文化書の「火の本(Book of Fire)」の物語に焦点を当て、暗黒時代、血に飢えた異端審問と自由のための戦いを描いていると言うのだ。
これは物語を構築してのアルバムであり、彼らの民族的歴史文化に入らないと理解は実際の処難しいところである。まあ東洋日本人の我々はそれはあくまでも曲展開のネタとして曲自身が面白く聴けるかどうかと言うところでしょうね。
この Martin Englerのヴォーカルがこれまでのアルバムからも、北欧民謡トラッド的世界を独特の癖のある声で演じ、それが女性ヴォーカルの美しさによって清涼なる世界も覗かせるところが聴きどころで、結構病みつきになる。演奏も時にはHM/HR的なギターの味も加わって、しかも意外に乗りの良いところもあるので結構面白く聴けるのである。
ドイツの音楽畑をある意味では代表しているような雰囲気を持ったメランコリックな結構クオリティーの高いバンドであり、過去のアルバムも少々聴いてしまったという不思議な魅力を持っている。もっと日本でも聴いて欲しいと思うところだ。
(参考)
<MONO INC.の Studio albums>
2003 Head Under Water
2007 Temple of the Torn
2008 Pain, Love & Poetry
2009 Voices of Doom
2011 Viva Hades
2012 After the War
2013 Nimmermehr
2015 Terlingua
2017 Together Till the End
2018 Welcome to Hell
2020 The Book of Fire
(評価)
□ 曲・演奏 ★★★★☆ 85/100
□ 録音 ★★★★☆ 80/100
(視聴)
*
もはや名曲"Children of The Dark"ですね ↓ (Shymphonic Live)
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コメント
ニュートロルスにジョンウェットンが入ったらこんな感じかというのが始まりで、これくらいが年相応で丁度いいかなと。
コロナのせいで外出もせず、ANCIENT BARDSとか大仰なのばっかり聴いてましたが、速いのはついていけなくなってしまいました。
暇しているので、おいおい外付けドライブつないで、ディスク見ていきたいと思っています。
投稿: nr | 2020年4月 1日 (水) 22時22分
nrさん
こんばんわ、コメントどうも・・・です。
私も仕事以外は自宅謹慎状態です。あれやこれやと室内でも時間任せにネットに向かっていて・・・かえって失費が多くなってしまってます。^^
ANCIENT BARDS ってイタリアなんですね・・・イタリアは音楽では最高の国だと思ってますが、あそこの国の気風はなにせいい加減なんですが、なんであんなにいいメロディーがうまれるのでしょうかね。そんな国だから意外に日本の歌謡曲を持って行くと受けるのではと思ってるんですが・・・
そうそう、取り敢えず、現在Nightwishのニューアルバムを注文して待ってます。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年4月 1日 (水) 23時51分