Tigran Hamasyan 「They say Nothing Stays the Same (ある船頭の話)」 SEEBEDON Records / JPN / SBD1001 / 2020
Tigran Hamasyan (p)
ティグラン・ハマシアンが映画音楽を手掛けた映画邦題『ある船頭の話』のオリジナルサウンドトラック集である。アルバム・タイトルは「They Say Nothing Stays the Same」だ。彼が言うには「この音楽は旅と共に生まれました。アルメニアの僕の家から始まり、イギリス、エルサレム、テル・アビブ、マドリッド、そして、最後に僕の両親の住むロサンゼルスの家で完成した」と言うことのようだ。その経過はオダギリジョー監督から直々にオファーされ、脚本に深い感銘を受け、自身初となる映画音楽を担当することになったと言うこと。今回のアルバムについてハマシアンは「この映画のための音楽制作の過程と、その一瞬一瞬は、どれも忘れられないものでした。僕にとって、とても創造的な制作で、またジョーさんとの共同作業も素晴らしい体験でした。」とコメントしている。
(Tracklist)
1.The Boatman (Prelude) 2.The River 3.Toichi's Life 4.Changing Time 1 5.Deconstructed Image 1 6.The Boatman (Interlude) 7.The Sacrifice 1 8.The Ghost 9.Underwater 1 10.Changing Time 2 11.Deconstructed Image 2 12.Underwater 2 13.The Sacrifice 2 14.Processional 15.Into the Forest 16.Changing Time 3 17.The Sacrifice 3 18.The Boatman (Postlude)
Floor Jansen – vocals Tuomas Holopainen – keyboards Marco Hietala – bass & vocals Emppu Vuorinen – guitars Kai Hahto – drums Troy Donockley – Pipes, flutes & whistles
フインランドのシンフォニック・メタル・バンドのナイトウィッシュの5年ぶりのスタジオ・ニューアルバムの登場だ。既に世界的バンドに成長した彼らが6作連続でナショナル・チャート1位という金字塔を建てたところで、ここに9thアルバムは“ヒューマン=人類”と“ネイチャー=自然”を2大テーマにした壮大なCD2枚組アルバムだ。メンバーは変化なしの歌姫は前作以来のオランダのフロール・ヤンセンが相変わらず務めている。又ドラムスはカイ・ハートがこのところのメンバーとして落ち着いての初アルバムとなる。 2枚目CDは、そのすべてを使ったインストゥルメンタル組曲「All The Works Of Nature Which Adorn The World」は、フル・オーケストラをバックにシンフォニックな演奏の世界を披露する。
(Tracklist)
CD1 01. Music 02. Noise 03. Shoemaker 04. Harvest 05. Pan 06. How’s The Heart? 07. Procession 08. Tribal 09. Endlessness
CD2 01. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Vista 02. All The Works Of Nature Which Adorn The World – The Blue 03. All The Works Of Nature Which Adorn The World – The Green 04. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Moors 05. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Aurorae 06. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Quiet As The Snow 07. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Anthropocene (incl. “Hurrian Hymn To Nikkal”) 08. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Ad Astra
Anne Ducros, Adrien Moignard, Diego Imbert 「SOMETHING」 SUNSET RECORDS / IMPORT / SUN29 / 2020
Anne Ducros - Vocal Adrien Moignard - Guitar Diego Imbert - Double Bass
フランスのアンヌ・デュクロAnne Ducros(アン・デュクロとも言われている)の最新アルバム。彼女をここで取り上げたのはもう6年前で、アルバム『Either Way from Marilyn to Ella』(NJ623611/2013)であった。彼女は1959年生れですから、もうなかなかのベテランで、当時も落ち着いたオーソドックスなヴォーカルに評価を付けていたのを思い出す。私にとっては久しぶりのアルバムで興味深く聴いたというところであった。 このアルバムはスタンダードを歌い上げているが、ベース、ギターのみのバックであり、それだけでも彼女のヴォーカルの占める位置の大きさが解る。
(Tracklist)
1. The Very Thought of You 2. Something 3. Estate 4. Honeysuckle Rose 5. I Didn't Know What Time It Was 6. Nuages 7. Samba Saravah 8. I Thought About You 9. April in Paris 10. Your Song 11. Tea for Two 12. The Good Life
スタートM1."The Very Thought of You"、そして ビートルズ1969年の「アビイ・ロード」ナンバーのM2." Something"のアルバム・タイトル曲と、静かなギターをバックに手に取るように聴けるしっとりとバラード歌を展開。それは誰をも心から包む魅力を発揮。 そして圧巻はなんとM3."Estate"だ。これは多くのミュージシャンが取り上げているイタリアのブルーノ・マルティーノの曲で、私の好きな曲だけに注目度は高かったのだ。それがやはり静かにゆったりとしたバックのギター、ベースに彼女の編曲を凝らした展開を歌い上げる。特に中盤以降は彼女独自のオリジナル曲風に語り調を交えて歌い、いやはや暦年の実力派を知らしめる。 M6."Nuages"も古い曲ですね、超スロー編曲でいやはや引き込まれますね。そしてM7." Samba Saravah"サンバも登場して雰囲気を明るくし、アルバムを通して聴いているものに変化を与える。 M11."Tea for Two"の編曲も凄いですね、ハイテンポでギター・プレイと共に変調展開。こりゃ全く別の曲ですね M12."The Good Life"、アルバム最後曲らしく先への展開を夢見るグッバイである。
Kandace Springs 「THE WOMEN WHO RAISED ME 私をつくる歌」 Universal Music / Jpn / UCCQ-1118 / 2020
Kandace Springs (vocal, piano, electric piano) Steve Cardenas (guitar) Scott Colley (bass) Clarence Penn (drums)
featuring: Christian McBride (bass on 01) Norah Jones (vocal, piano on 02) David Sanborn (alto saxophone on 03) Avishai Cohen (trumpet on 04, 06) Elena Pinderhughes (flute, vocal on 05, 11) Chris Potter (tenor saxophone on 07, 08)
01. Devil May Care / featuring Christian McBride 02. Angel Eyes / featuring Norah Jones 03. I Put A Spell On You / featuring David Sanborn 04. Pearls / featuring Avishai Cohen 05. Ex-Factor / featuring Elena Pinderhughes 06. I Can't Make You Love Me / featuring Avishai Cohen 07. Gentle Rain / featuring Chris Potter 08. Solitude / featuring Chris Potter 09. The Nearness Of You 10. What Are You Doing The Rest Of Your Life 11. Killing Me Softly With His Song / featuring Elena Pinderhughes 12. Strange Fruit * 13. Lush Life 14. You've got a Friend / featuring Masayoshi Yamazaki
(13,14 : Bonus Tracks for Japan)
アルバム・タイトル『The Women Who Raised Me』は日本盤では『私をつくる歌』と訳されているが、その通りのキャンディスをアーティストとして、さらには人作りにおいても色々なインスピレーションを与えた女性アーティストたちの曲をこのアルバムでは取り上げているのだ。それもさすがにBlueNoteですね、上に紹介したような豪華メンバーをフューチャーして、そして彼女は彼女なりの歌に仕上げているところが立派。 彼女の歌声は、さすが黒人系の重量感がある中でも、基本的には温かい歌声であり、低音から高音まで優しいしなやかさ、そして力強さをもっていて、曲によっては切なさも歌い上げてくれる。聴きどころ満載のアルバム。
M1. "Devil May Care"、オープニングからクリスチャン・マクブライドのベースが効いていいムード、それにキャンディスのジャズ・ヴォーカルがリズムに乗って濃厚な味付けで登場。そしてM2."Angel Eyes "小節を効かしての情感たっぷりのヴォーカル。ここではノラ・ジョーンズのピアノが美しく流れそしてヴォーカルがデュエット風に流れる。M3."I Put A Spell On You"は完全に原曲から離れてキャンディス節、それにデヴィッド・サンボーンのアルト・サックスも加わっての盛り上がりがお見事。 M4."Pearls",M6." I Can't Make You Love Me "では今度はアヴィシャイ・コーエンのロマンチックなトランペットが加わっての、やや暗めの世界を朗々と歌い上げる。 M7."Gentle Rain", M8." Solitude" はクリス・ポッターのテナー・サックスが優しく情緒たっぷりに響き渡る中に、彼女のヴォーカルはサックスとデュエットをしての歌い上げで、このバラード世界もなかなかのもの。
1. Easy To Love 2. Just One Of Those Things 3. Night And Day 4. So In Love 5. All Of You 6. My Heart Belongs To Daddy 7. It's Delovely 8. Let's Do It 9. Dream Dancing
そして今回のように、コール・ポーターの曲を何故選んだのかと言うことでは、ガティもパンカルディも曲の良さと言うことに一致していた。そしてこのアルバムで私が好きなのは、M4."So in Love"で、彼女の歌が情感豊かでいいですね、ムードが最高。続くM5."My Heart Belongs to Daddy"のガラティのピアノは美しい。 しかしちょっと期待に反して、ガラティは対等なデュオというのでなく「伴奏者」に徹していて、彼の味のあるメロディーの表現は、ヴォーカルを生かす為に仕組まれたピアノの味をしっかり作り上げているのだ。
Executive Producer: Teruhiko Ito / Recorded & Mixed & Mastered by Ken Tadokoro / Recorded on May 19 2018 at Jazz Room Cortez / Photo by Tatsuo Minami Mikio Tashiro
最近知ることとなったジャズ・ピアニストの浅川太平のソロピアノのアルバム。2枚組で、誰もが愛するビル・エバンスの名盤『Waltz for Debby』と、同日録音された『Sunday at the Village Vanguard』の2枚からの選曲により構成されている形をとっている。 彼は1977年生まれということで、40歳代になっての目下脂がのってきたと言える歳で期待度は高い。私にとっては過去の彼のアルバムには接してこなかったのだが、このアルバムのビル・エバンスの変化に驚きを隠せず、さっそくこのソロ・スタイルを演ずるところは何処に ? と、参考までに彼のピアノ・トリオ盤の『Touch of Winter』(DMCD26)(→)を取り寄せてみたという経過であるが、それはそれとしてこの『Waltz for Debby』を検証してみよう。
(Tracklist)
DISC1 01.My Foolish Heart〔13:34〕 02.Waltz for Debby〔10:02〕 03.Detour Ahead〔7:06〕 04.My Romance〔11:12〕 05.Some Other Time〔11:51〕
DISC2 01.Milestones〔7:15〕 02.Porgy〔9:40〕 03.Gloria's Step〔4:18〕 04.My Man's Gone Now〔7:03〕 05.Solar〔3:42〕 06.Alice in Wonderland〔5:09〕 07.All of You〔8:06〕 08.Jade Visions〔4:29〕
さて、ビル・エバンスに迫ると言うことで、それだけでもそんな世界を目指しているのか想像が付くところだが、どんなアレンジの世界かと興味津々。しかし結果は想い以上に、簡潔に言うと緊張感と静寂の世界にピアノによる描かれる空間に響く繊細な音に驚きを隠せなかった。 まず、DISC1"My Foolish Heart", "Waltz for Debby"の冴えたる代表曲、ビル・エバンスの世界を日本的(?)にリラックスして聴きやすく再現してくれるのかと思いきや、はっきり言うとそんな生やさしい世界では無い。気楽に聴こうと居直ってみたが、そこに描かれる情景は、双方10分を超える演奏で、静寂にして一音一音意味の込めた音には美しさという処をある意味で超えたむしろ厳しさも感ずるところであり、しかしそう言っても優しさの美しさはちゃんと散りばめらていて、その世界はエバンスと違った浅川自身の個性ある変化に圧倒されるのである。 そして"My Romance"も、ここまで深淵の美といったところに演じられるのも聴きどころ。
DISC2になって、ややリラックスを誘導してくれるところを演じてくれている。そんな意味では、特に"Porgy"や"Alice in Wonderland"では、ゆったりした気持ちで美しく優雅に聴けるところである。
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