ナイトウィッシュNightwishのニューアルバム「HVMAN NATVRE」
"人類"と"自然"をテーマに、オーケストラをフィーチャーしての壮大なドラマ
<Symphonic Metal Rock>
Nightwish「HVMAN NATVRE」(Human Nature)
WardRecords / JPN / GQCS90881-2 / 2020
Floor Jansen – vocals
Tuomas Holopainen – keyboards
Marco Hietala – bass & vocals
Emppu Vuorinen – guitars
Kai Hahto – drums
Troy Donockley – Pipes, flutes & whistles
フインランドのシンフォニック・メタル・バンドのナイトウィッシュの5年ぶりのスタジオ・ニューアルバムの登場だ。既に世界的バンドに成長した彼らが6作連続でナショナル・チャート1位という金字塔を建てたところで、ここに9thアルバムは“ヒューマン=人類”と“ネイチャー=自然”を2大テーマにした壮大なCD2枚組アルバムだ。メンバーは変化なしの歌姫は前作以来のオランダのフロール・ヤンセンが相変わらず務めている。又ドラムスはカイ・ハートがこのところのメンバーとして落ち着いての初アルバムとなる。
2枚目CDは、そのすべてを使ったインストゥルメンタル組曲「All The Works Of Nature Which Adorn The World」は、フル・オーケストラをバックにシンフォニックな演奏の世界を披露する。
CD1
01. Music
02. Noise
03. Shoemaker
04. Harvest
05. Pan
06. How’s The Heart?
07. Procession
08. Tribal
09. Endlessness
CD2
01. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Vista
02. All The Works Of Nature Which Adorn The World – The Blue
03. All The Works Of Nature Which Adorn The World – The Green
04. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Moors
05. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Aurorae
06. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Quiet As The Snow
07. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Anthropocene (incl. “Hurrian Hymn To Nikkal”)
08. All The Works Of Nature Which Adorn The World – Ad Astra
昨年リリースされた最新ライヴ・アルバム/映像作品『DECADES:ライヴ・イン・ブエノスアイレス』もチャート1位に輝いたし、フロール・ヤンセン(ヴォーカル)が初のソロ・ツアー。マルコ・ヒエタラ (ベース、ヴォーカル)もソロ・アルバムとライヴを行うなど、昨年はそれぞれのメンバーの活動も盛んであった為、ナイトウィッシュはどんな状態かと、若干いろいろな噂も多かったが、遂に5年の間をおいての待望のニュー・アルバムが我々の前に出現した。
メインはCD1で、スタートM1."Music"はメタル・バンドとは思えない静かな深遠なスタートである。大地の鼓動を感じさせる。そして美しいコーラス、次第に盛り上がる中にヤンセンの高音の優しいヴォーカル、ドラマの開幕にふさわしい。そしてギターが響き、成る程、テーマ"自然"にふさわしい世界が出現する。これは完全にコンセプト・アルバムとして受け入れられるが、バンドのリーダーであり全曲作曲しているツォーマス・ホロパイネン (キーボード)は、本作のコンセプトは当初から考えたので無く、曲を作っていく中での“偶発的コンセプト・アルバム”と言っている。
M2."Noise"冒頭から軽快なリズム、そして中盤からはメタリック・サウンドに。人類の、自然界の不安な部分を歌い上げる。
M3."Shoemaker" なんといっても美しい曲だ。未知の世界へ夢を。
M5."Pan"、M6."How's the Heart"は、 人間を取り巻く世界の夢と現実の現象をドラマチックに歌い上げる。
M7."Procession" ヤンセンの美しく優しいヴォーカルでスタート、地球の生命の誕生そして人類賛歌に流れてゆく。
M8."Trival" ここに来て神と宗教に、メタリック・サウンドで対峙。最後は深遠なる世界に。
M9."Endlessness" 大地、宇宙、人間の物語を壮大に演奏し、ヒエタラのヴォーカルが締めくくる。
深遠さとドラマチックと疾走感と神秘のシンフォニック・サウンド、そして優しさと美しさと・・・更にドノックレイのパイプによるトラッドぽい匂いも加味して見事に色彩豊かな世界を織り交ぜての一大ドラマの展開である。ここに来てヤンセンの世界も完全にナイトウイッシュの世界と同化し、曲展開も緩・速、強・弱、美しいメロディー、ドラマティックな重厚感と壮大な展開などメリハリが効いているために飽きさせない。そしてトータルの流れは、なんと芸術的匂いすら感じられる。お見事。
CD2は、ツォーマス・ホロパイネン(→)がおそらくやりたかったシンフォニック・オーケストラとの共演によるインストメンタル交響詩だ。なんとクラシック音楽を聴く感覚で"地球と自然"に想いを馳せて、一時を納得してに聴き込める。
とにかくゴシック・メタル、シンフォニック・メタルで世界を制覇したナイトウィッシュの壮大な絵巻のアルバムの登場である。
(評価)
□ 曲・演奏 : ★★★★★☆ 95/100
□ 録音 : ★★★★☆ 80/100
(視聴)
"Music"
"Noise"
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コメント
何度か聴いてるのですが今の所まだピンと来なくて…。悪くないんですが、どこか興奮度が足りないと言うか。
何を求めてるんだろ?と自分で不思議に思っちゃいました。
もうちょっと聞き込まないと、です。
投稿: フレ | 2020年4月19日 (日) 21時21分
フレさん、こんばんわ
コメントどうも有り難う御座います。
フレさんの感想そのものだと思います。シンフォニック、オペラチック、コンセプト主義といったところに作風がいってますね。ツォーマスはもともとその因子が持っていたのが、私にとっては一つの評価のポイントでもあったのですが、それを更に高めていますね。私はそれを評価しています。
従ってロック愛好家の一つの焦点であるメタルというか、ロックの金属的シャープさと疾走感は低下していると思いますし、録音もシンフォニックに向いていて、個々のの楽器の音をあまり全面に出してこない手法をとっていますね。その二点がフレさんには刺激が少ないのかも・・と、勝手に想像しています。ツォーマスのやりたかったところを評価してあげましょう。CD2に顕著ですね(これだけだったらロック・ファンはそっぽを向きますから)。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年4月19日 (日) 21時41分
今のところ、耳新しいのでフロールに変わってからの最高傑作だと一応思います。もうあとから足す要素が何もありません。前回になかった新しい何かを、すでに完成しているものに求めるという贅沢を言ってはいけないのでしょう。イーリアンパイプが入ったとき、フォーク系に行くかと思いきや、そうでもなかったし。かといって、ビージーズがディスコになったときみたいにダンスビートやラップは入れて欲しくないし。
聴き手が、もう何やっても驚かないのが事前にわかったから、ヴォーカル替えていってるのかもしれません。歴代ヴォーカル2人再雇用してメリーゴーランド乗せて8人ナイトウィッシュ回転ステージツァーしたら驚きます。
投稿: nr | 2020年4月22日 (水) 07時20分
IONAのトロイ・ドノックリーを引っ張り込んだのは一つの成功でしょうね。彼は結構ヴォーカルもイケますからね、イリアン・パイプもケルト・ムードには最高ですし、今回のテーマにはぴったり。
おそらくこのシンフォニックなパターンはツォーマスの昔からの持っているところでしたので、彼は一度はこの線を前面に出したかったのではと思って今回は私は称賛しました。
フロール・ヤンセンもこれでよかったんでしょうね。彼女結構オペラチックに頑張ってますね。ところでメリーゴーランドによる歴代ヴォーカル並べての8人ナイトウィッシュ回転ステージツアーですか、こりゃいいですね、そうゆう発想が大切だなぁーー。アネッテは今どうしているのかしら。このナイトウィッシュ、何年後に売れなくなったら、その企画が、おそらく最も有力な手段でしょうね。^^)
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年4月22日 (水) 14時56分