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2020年5月28日 (木)

ミシェル・レイスのソロ・ピアノ Michel Reis 「SHORT STORIES」

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(今日の一枚) 「我が家の庭に咲く花 - オオムラツツジ
        Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS, PL

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クラシック色のあるオリジナル曲によるジャズ・ソロ・ピアノ作品集

<Jazz>

Michel Reis 「SHORT STORIES」
CAM Jazz / IMPORT / CAMJ7953 / 2019

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Michel Reis  : piano
Recording and mixed in Cavalicco(UD) in Feb.2019 at Artesuono Recording Studio
Recrding and mixing engineer Stefano Amerio

 ジャズ界もヨーロッパにおいては若きピアニストが続々誕生している。このミシェル・レイスもその一人だ。彼は美しい小国ルクセンブルグの出身で、日本でのジャパン・カルテット形成が、やはり日本に浸透するに至る大きな一つの道であったろうと思う。
 このアルバムは昨年Cam Jazzからリリースされた彼のソロ・ピアノ集である。基本的に彼のオリジナル曲による構成でその意欲が伝わってくるのだが、録音はステファノ・アメリオとくるからその出来映えに期待も大きい。
 日本で結成のカルテット「Michel Reis Japan Quartet」では、YouTube等で見る限りスリリングな演奏をも披露していたのだが、ソロとなると彼の重要な一面が出てくる。それは2017年に水戸で録音したアルバム『MITO』(CSJ0006)に聴けるのだが、これは彼の初の即興曲・ソロ・ピアノ・アルバムであり、内省的な中に美しさが見える。従って当然、今回のこのアルバムにも期待が持てるのである。

190814michelreisw (Tracklist)
01. Sunae II
02. From The Eyes Of Old
03. How It All Began (The Story Of Mr. Potes)
04. Monologue
05. Could I See You Again
06. Gratitude
07. Road To Dilijan
08. Gravity And Lightness
09. Tales Of Oleander
10. Eugene And Valentina Main Theme
11. Awakening
12. Eleni (For Eleni Karaindrou)
13. Bells
14. Goodnight

  全曲、彼のオリジナル曲である。14曲と多い収録だが、2分少々の曲から始まり短編が多く、最も長いのがM5."Could I See You Again"の6分58秒だ。聴いていると短い曲が多いという印象。
  ジャズ・ピアニストという世界にて活躍しているが、彼は幼少からクラシック・ピアノを学び、なんと14歳でプロ活動を開始。バークリー音楽大学、ニューイングランド・コンサヴァトリー・オブ・ミュージックを経て来ているのだという。そして2005年に第1回モスクワ・ジャズ・パフォーマー・コンペティションの最終選考に残って注目を集め、同年『A Young Mind』でアルバム・デビュー。2006年にモントルー・ジャズ・ソロ・ピアノ・コンペティションで2位。そして自国ルクセンブルクでは大きな評価を得ている。2014年1月、ピアノ・トリオ・アルバム『レイス|デムス|ウィルトゲン』を発表。

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 やはり印象はまずクラシック・タッチの美しい曲集という感じだ。聴いていると確かに詩情が豊かな世界に浸かっていくことになる。ピアノ・ソロであるせいか冒頭のM1." Sunae II" から静かな余韻のある演奏で、どこか懐かしい過去の世界に想いを馳せる気分に導かれる。
 M2."From The Eyes Of Old " は、やや早い展開の曲であるが、やはりどこかクラシック的なところにあって、スリリングという印象は全くない。
 M4." Monologue" は、高音が透き通っていて、はっとして聴き入る美しさが秀でている。曲もジャズ的即興の流れがあって、こうしたところはやはりヨーロッパ系のメロディーとハーモニーの美しさが引き立ったジャズ・ピアノ世界だ。実は私としてはその他の殆どの曲のクラシックの延長という感じよりこの線に期待したいところだ。 
 しかし、M7."Road To Dilijan"、M9."Tales Of Oleander" にみるピアノの響きとメロディはやっぱり非凡な美しさを持っていて楽しめる。そしてジャズ的面白さはM11."Awakening" にも見いだすことも出来た。
 
 とにかく新進気鋭のピアニストとして期待は大きいが、私の愛するノルウェーのトルド・グスタフセンのような、哲学的深遠さという処においては、今一歩届いてはいない。日本における彼のカルテット「Michel Reis Japan Quartet」は、注目の須川崇志 (bass)、石若駿 (drums)、西口明宏 (sax)という構成(↓)で、そこには良い刺激があってのことか、ややアヴァンギャルドなスリリングな展開も見せていて、そんな世界との関係も含めてこれからどのように発展していくかは、確かに楽しみな存在である。

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 参考までの話だが、2018年の彼の日本の水戸のコルテスで録音されたソロでの即興ピアノ曲集『MITO』もなかなかのもの、内省的美の世界が素晴らしい。彼はこのアルバムを第2の故郷のような水戸の街に捧げますと言うぐらいこの地での活動に感動していたようである。そして内容的には、むしろジャズ的に見るとこちらの方が、楽しめるところもあるので紹介しておく。

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『MITO - Solo Piano Improvisations』
(Cortez Sound/ JPN / CSJ-0006 / 2018)
(Tracklist)
1. ライジング 10'50
2. スナエ 3'20
3. フォレスト・エッジ 6'35
4. ロスト・テンプル 6'51
5. ルッキング・グラス 4'19
6. エコーズ 2'54
7. フォーク・ソング 5'39
8. ラビリンス 2'31
9. リポーズ 3'12
Recorded 21st July 2017
Mixed Ken Tadokoro
Masterd Ken Tadokoro
Recorded at Jazz Room Cortez

(評価)
□ 曲・演奏  85/100
□ 録音    85/100

(視聴)
"Sunae Ⅱ"

 

"How it all began"

,

"Looking Glass" from 「MITO」

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2020年5月24日 (日)

ジェニファー・ウォーンズ Jennifer Warnes 「Another Time, Another Place」

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(今日の一枚)  我が家に咲くエゴノキの花
       Sony α74RⅣ, FE4/24-105 G OSS, PL

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ソフトにマイルドに優しくフォーク、カントリー調の世界
~~~18年ぶりのスタジオ・アルバム

 

<Folk, Country-and-Western>

Jennifer Warnes 「Another Time, Another Place」
IMPEX / US / IMP8317 / 2019

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Jennfer Warnes : Vocals

81gqtkgtpul850   とにかく18年ぶりのスタジオ・ニュー・アルバムですから、まあシェニファーが健在であったことをまず喜ぶべきでしょう。前作『The Well』(→)は傑作というよりは既に記念碑的取り扱いで、ここで取り上げてたのは2001年のこのアルバムの2009年リニューアル再発のGold Editionがリリースされた頃であった。あのアルバムはフォーク、カントリーをベースに、ブルース調の曲、更にトラディショナルに至るまでカヴァーして、彼女の総集編的なもので文句の付けようのないモノだった。
 ところが昨年驚きの70歳代の彼女が、ヴォーカルをこなしてのニュー・アルバムをリリースしたのである。そんなところから我が友人がそれは見落とせないと私に紹介したわけである。そうなれば、当然ここで考察しておこうというところとなった。

 そして注目しておきたいのは、ここに彼女の長年の友の一流ミュージシャンが参加している。彼女にぴったりついてのバックにギターの名手、ディーン・パークス、そしてベーシストのエイブ・ラボリエル、ペダル・スティールのグレッグ・ライズ、ドラマーのヴィニー・カリウタ、さらにパーカッショニストのレニー・カストロ、バック・コーラスにはブロンディ・チャップリン、そしてブルース・ギタリストのソニー・ランドレスなど、所謂ヴェテラン陣が協力・参加しての名を連ねての祝賀盤の気配だ。

Image_20200524193701   更に、彼女はレナード・コーエンとの関係も重要だが、かってのアルバム『Famous Blue Raincoat』(→)ではコーエンのトリビュート・アルバムでヒットしたのだったのだが、そのコーエンのバンドメンバーであった友人のロスコー・ベックが、共同プロデュースという形でに協力している。

(Tracklist)
01. Just Breathe
02. Tomorrow Night
03. Once I Was Loved
04. So Sad
05. I See Your Face Before Me
06. I Am The Big Easy
07. The Boys And Me
08. Back Where I Started
09. Freedom
10. Why Worry

  ゆったりとしたテンポのフォーク、カントリー調の曲が中心。アコースティックな演奏をバックに彼女は一曲一曲慈しむように丁寧に歌い上げている。しかし声では年齢は解らない、刺激のないソフトにして美声の癖のない歌声は健在。いやはや70歳を超えたお婆ちゃんとはとても思えない。古き良きアメリカ音楽の遺産とも言える曲を伝えてくれる心地よい作品。アルバムジャケットのイメージどおり、昼下がりのテラスに腰掛けて、カセットテープ・プレイヤーを横に置き、ゆったりとした世界が伝わってくる。

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 アルバムのレコーディングはテキサス州オースティンで行われ、幅広いジャンルから名曲をえりすぐってのカヴァーしたと言う。ロスコーとともに、30から50曲に亘る候補の中から選んだ結果らしい。
 オープニングのパール・ジャムの曲M1."Just Breathe"が良いですね、往年の彼女が思い出されます。
 そして最後はマーク・ノップラーのM11."Why Werry"で締めくくっているんですが、アコースティック・ギターの響きの中に、これぞ優しさと癒やしの究極の姿ですね。
7d4a5ff7ad6c56d13bebddec0f344aea  とにかく、古き良き仲間と再会しながら演奏し歌い上げた古き良き時代を想い起こすべく造られたアルバムであって、現代の再び歪み始めた時代に何か教訓らしい気持ちにもさせるところがニクイと言えるアルバムであった。
 歌うために戻ってきたと言う彼女のプロらしさに、なにはともあれ喝采したい。

(評価)

□ 選曲・演奏・歌  85/100
□ 録音       80/100

(試聴)

 

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2020年5月19日 (火)

リン・エリエイル Lynne Arriale Trio 「CHIMES OF FREEDOM」

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(今日の一枚) 薔薇の開花 (我が家の庭から)
       Sony α7RⅣ,  FE4/24-105 G OSS , PL
 
       
           --------------------------------

リン・エリエイルの強い意志の情熱的芸術的表明
・・・深刻さのあるコンセプト・アルバム

<Jazz>

Lynne Arriale Trio 「CHIMES OF FREEDOM」
Challenge Records / AUSTRIA / CR73494 / 2020

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Pianist : Lynne Arriale (USA)
bassist/co-producer : Jasper Somsen (NL)
drummer : E.J. Strickland (USA) 
guest vocalist : K.J. Denhert (USA)

  所謂「コンテンポラリー・ジャズ」の注目女流ピアニストのリン・エリエイルのニュー・アルバム。前作『GIVE US THESE DAYS』に続いて、オランダのChallenge Recordsから(2作目)、自身のリーダー作全体としてはもう15枚目となるベテランの作品。
 しかし今作は彼女の作品群からみても異色である。ボブ・ディランの初期の名曲「自由の鐘(Chimes of Freedom)」を中心に、自身のオリジナル7曲とポール・サイモンを取り上げ、その精神を通して、現在の社会現象に自由と高邁な思想の文化を取り上げて訴えるアルバムとして作り上げている。そこには所謂メロディーの美しさといったところから一歩厳しさに打って出ていて、彼女の一つの世界を思い知らされる。

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 メンバーは、オランダの名ベーシストであり副プロデューサーのイェスパー・サムセンとニューヨーク・ジャズ・シーンで活躍するE.J.ストリックランドとの強力トリオで、ややアグレッシブなテクニックを展開している。
 なんと、ボブ・ディランの「自由の鐘」、ポール・サイモンの「アメリカン・チューン」では、アーバン・フォーク&ジャズ・シンガーのK.J.デンハートがゲスト参加でのヴォーカルが入ってくる。 

 

Imageasset (Tracklist)

1.Sometimes I Feel Like A Motherless Child (Harry Burleigh)
2.Journey *
3.The Dreamers *
4.3 Million Steps *
5.Hope *
6.The Whole Truth* 
7.Lady Liberty *
8.Reunion *
9.Chimes Of Freedom (Bob Dylan)
10.American Tune (Paul Simon)

*印 compositions by Lynne Arriale

 アルバム・タイトルからしてボブ・ディランの「自由の鐘」が中心であることが解る。そこには自由という基本的な流れが見て取れるが、このアルバムでの彼女のオリジナル曲のM2-M8までの7曲が、如何にも今までのアルバムと変わって意志の強さが聴き取れるし、彼女の個人的な人生からの感覚的でありながら、社会にも向いている姿が現れている。それはM1."Sometimes I Feel Like A Motherless Child"を取り上げ、彼女自身の感覚「ときどき母のいない子供のように感じる」というところからの人生の過去も振り返りつつ、この曲を重低音で始めて、このアルバムで語る物語の重要性を意識させ、ピアノで語る哀しい旋律にはどこか人間性を語っているように聴ける。
 M2."Journey"から始まるリンの刺激的な人生の旅の物語からの7曲によって、自由と文化、そして世界に見る難民への心、それは彼らが民主的な国家によって安全に迎えられることを祈ると言うことに通じてゆく彼女の世界を演じているようだ。従って甘い演奏はこのアルバムでは見られない。強いて言えばM7."Lady Liberty"に、どこか広く包容力のある愛情の感じられる曲が救いでもあった。
Safe_image_20200518201501  最後のM9"Chimes Of Freedom",M10"American Tune "は、デンハート(→)のヴォーカルが入る。彼女はジャズ、フォーク、レゲエなどを身につけている。そしてそのスピリチュアルな歌唱力によって、ボブ・ディランとポール・サイモンのアメリカンチューンを歌い上げ、そこにかってのアメリカに見た精神を訴えているのかも知れない。

 前作もそうだったが、ベーシストのイェスパー・サムセンの力は、あまり目立たないがトリオとしての土台の役割を果たしつつ、曲仕上げにも大きく貢献している。又ストリックランドのドラムスもアグレッシブなところがテーマの意志と決意を表すに十分だ。
 
 このアルバムはリン・エリエイルとしては異色の範疇に入る。ここに来て世界的にも戦後の真摯な姿勢からやや異常な世界に変動しているところに、自己の歴史と重ね合わせ、このような深刻なコンセプト・アルバムを作り上げ、一つのけじめを付けようと試みているように感じた。

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□ 録音    85/100
 
(視聴)

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2020年5月15日 (金)

キャメルのライブ映像盤 Camel 「ROYAL ALBERT HALL / LONDON」

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(今日の一枚) モッコウバラ(我が家の庭から)
       Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS, PL

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ラティマー復活のCamel」の一つの頂点

<Progressive Symphonic Rock>

Camel 「ROYAL ALBERT HALL / LONDON」
 MARQUEE / JAPAN / DVM106 / 2020

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  Andrew Latimer : Guitars, Flute, vocals
  Colin Bass : Bass, vocals
  Denis Clement : Drums, Percussion
  Pete Jones : Keyboads, vocals, Sax

 2018年5月に「Japan Live」を行ったキャメル、その 映像盤を2018年の7月にブートで出現しここで取り上げたのだが、その2ヶ月後の2018年9月のご本家英国ロンドン(ROYAL ALBERT HALL)でのライブ映像盤がオフィシャルにリリースされた。
 今回のライブは1976年の4thアルバム『MOONMADNESS 月夜のファンタジア』の全曲再現と過去のポピュラーな曲群という構成。ミュージシャンにとっては由緒あるロイヤル・アルバート・ホールでの価値あるライブで、それをプロショットで納めたオフィシャル盤であるだけに映像も安定しており、収録サウンドも良好で見応えがある。

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Gettyimagesw_20200515174301  キャメルと言えば、やはりアンディー・ラティマー(→)のギターだが、ラティマーがオリジナル・キャメル(1973年1stアルバム『Camel』)がメンバーの交代繰り返しほぼ解散状態から、1984年にアルバム『Stationary Traveller』で復活させた。それにより創始者といえるピーター・バーデンスも加わってのオリジナル・メンバー総結集でライブまで行うに至った。
 その後、ラティマーのバンドといってよい状態となりながらも、ベースのコリン・バスと共に『Dust and Dreams 怒りの葡萄』('92)、『Harbour of Tears』('96)などの名作も残してきた。ところがラティマーが不幸にも2007年に骨髄線維症という大病を患ってしまった。そして奇跡的にも回復して2010年より徐々に活動再開して、人気を不動にした3rdアルバム『Snow Goose』('75)の再演をしたり、この2018年には『MOONMADNESS』('76)の再演を中心にライブ活動を展開して日本にもお目見えしたわけだ。
  話題は、キーボードのピート・ジョーンズ、彼は盲目の天才プレイヤー。ヴォーカルもいいし、サックスも演ずる。このバンドで良い役割を果たしている。

(Tracklist)

<セット1:月夜の幻想曲(ファンタジア)>
1. アリスティラスへの誘い
2. 永遠のしらべ
3. 転移(コード・チェンジ)
4. 水の精
5. 月夜の幻想曲(ファンタジア)
6. Air Born ゆるやかな飛行
7. Lunar Sea 月の湖

<セット2>
1. Unevensong 心のさざ波
2. ヒム・トゥ・ハー
3. エンド・オヴ・ザ・ライン
4. Coming of Age 時代
5. ラージャーズ
6. アイス
7. マザー・ロード
8. Hopeless Anger 絶望の怒り
9. ロング・グッドバイ
10. レディー・ファンタジー

650pxcolin_bass  セット・リストを見て解るように、アルバム『MOONMADNESS』全曲披露のファースト・セットに続いて、セカンド・セットではかってのヒット曲を10曲を演じている。アンディ・ラティマーと盟友コリン・バス(→)をはじめとするキャメル復活メンバーは不変で、デニス・クレメント(drums)と盲目のプレイヤー・ピーター・ジョーンズ(keyboards, vocals)の 四人は今や完璧に一つのバンドと化していて気持ちが良い。

 この年の日本ライブと若干セットリストは異なっているが、アルバム『Dust and Dreams』からの曲"Rose of Sharon"でのラティマーのギター・ソロが無くなったのがちょっと寂しい。というのも実は、私はこの昔の『MOONMADNESS』よりは、このラティマー主導の後期Camelが好きと言うこともある。私の好きな曲"stationary Travellar"も期待していたんだが・・・それでも各アルバムから一曲づつサービス演奏しているので・・・良しとしておこう。
 かってのヒットの10曲披露サービスは、ラティマーの年齢と病後の体力を考えると、ほぼ完璧というところか。

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 もともとの幻想的な雰囲気や緊張感のある展開、さらには泣きのギターなどあってやはりキャメルは良いですね。このバンドの特徴はテンポの早い曲であっても刺激性が少なく、なんとなく優しくゆったりと心に響くところが魅力。そしてどこかで甘いメロディーが流れる。こんなところが聴く方は気持ちが良い。
 そして又一方、非常に哀しい世界の現実を描いて訴えるところも後期キャメルの特徴で、スタインベックの『怒りの葡萄』などをテーマにしたりと、そんな世界はラティマーの人生観に通じているのだろうと何時も思うのである。
 セット1では、"Lunar Sea"では、老雄ラティマーは十分テクニカルな部分をこなしているし、セット2では、やはり "Ice", "Mother Road ", "Hopeless Anger"は心打つ。そしておなじみの"Lady Fantasy "はアンコールで聴かせている。

 ある意味でのキャメルの総決算的なライブであり、貴重として記録しておく。

(評価)
□ 選曲・演奏  90/100
□ 画像・録音  85/100

(視聴)

 

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2020年5月10日 (日)

[記録に残したいアルバム]ジュリアン・オリヴァー・マッツァリエーロJulian Oliver Mazzariello 「DEBUT」

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(今日の一枚)  我が家に咲く花 ハナミヅキ
      (Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS, PL)

なかなか味なグルーヴィー感たっぷりのムードとリズム感の両翼をこなす演奏

<Jazz>

Julian Oliver Mazzariello , André Ceccarelli, Rémi Vignolo「DEBUT」
Via Veneto Jazz / ITA / VVJ125 / 2018

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Julian Oliver Mazzariello (P)
André Ceccarelli (Ds)
Rémi Vignolo (Ac-B)

Recorded at the Recording Studio of Joel Fajerman
Sound Engineer: Manu Guiot
Mastered by Eugenio Vatta

 昨年の寺島靖国「Jazz Bar 2019」(2019年12月リリース)に取り上げられたこのピアニスト=ジュリアン・オリヴァー・マッツァリエーロのピアノ・トリオ・アルバムである。実はそれまで知らなかったトリオで、そのムードの良さにアルバムを購入してみたもの。
 このアルバムの曲は、下のリストにみるように、殆どこのピアニストのオリジナル曲で占められている。従って彼の意志によるところのアルバムであろうが、ドラムスには重鎮アンドレ・チェカレリがいてこのあたりも聴きどころでもある。
 このピアニストのマッツァリエーロはイタリアの俊英といわれる存在であるが、1978年ロンドン生まれであり、その後1996年1月にイタリアに移り、現在Cava de 'Tirreniに在住。多くのミュージシャンとの共演を経て現地では広く知られている存在と。彼の流麗でグルーヴィーなそして一方躍動感に富んだピアノプレイが魅力。

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(Tracklist)

1. Accarezzame (Calvi - Nisa) 4:27
2. Funky Chunks (Mazzariello) 4:02
3. Dream Cycling (Mazzariello) 6:18
4. Battement Fondu (Mazzariello) 2:55
5. Monk in Paris (Mazzariello) 6:12
6. Modal Blues (Mazzariello) 4:05
7. Que Reste-t-il de nos Amours (Trenet - Chauliac) 4:32
8. Five for Troc (Mazzariello) 4:33
9. J's Ballad (Mazzariello) 6:37

 イタリアのトランペッターFabrizio Bossoとのデュオで何となく名前が出てきたピアニスト・マッツァリエーロの初のリーダー・アルバムとのことで、タイトルも「DEBUT」であるのだが、冒頭のM1." Accarezzame"がなかなかグルーヴィーでいいのですね。これを聴くとジャズ・ピアニストのセンスの良さが滲み出ていてジャズ・ムードの良さを知らしめられる。確か寺島靖国もこの曲を取り上げていたはずである。

Andrececcarellipaiste1_20200510174501  そしておもむろに、自己のオリジナル曲が5曲連続して出てくるのだが、まずM2." Funky Chunks "はちょっとムードが変わってなかなか軽快なジャズを展開し、M3."Dream Cycling"になると、なるほどユーロ・ジャズの匂いがしてくる。そしてバックのアンドレ・チェカレリ(右)のベテランの味のあるシンバルやブラッシ、そしてビグノーロ(右下)のベースが適度に響いて、リズムを大事にしたトリオの楽しさが伝わってくる。
 M4."Battement Fondu "などは、イタリアの伊達男の洒落たセンスというルンバ調のムードが出てきて、こうして聴いているとマッツァリエーロの流れは、M1のようなバラード調でなく、むしろ近代的流れに味付けされたリズムカルな世界なのだと知らしめられる。

Dsc_0312  更にM6."Modal Blues"の早弾きと展開するリズムなどは、アメリカ・ジャズの面白さをちゃんと身につけている。
 ただ、私好みからすると、バラード調のM1や、M7."Que Reste-t-il de nos Amours"のソロで演ずるようなこの2曲のムードたっぷりに演ずるカヴァー曲が良いのですね。こんなジャズの魅力の両者をなんとなく軽く演じてみせるというところが、ニクイニクイ魅力ですね。

 さてこれから如何様にも発展する要素をしっかり持っているマッツァリエーロは、このアルバムをベースに今後楽しみなのである。

(評価)
◇ 曲・演奏 :  ★★★★☆  85/100
◇   録音   :  ★★★★☆  85/100

(視聴)
 " Accarezzame"

*
  参考 :  Bossoとのデュオ

 

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2020年5月 6日 (水)

[記録に残したいアルバム] ジョルジュ・パッチンスキーGeorges Paczynski Trio 「LES VOIX DU SILENCE 静寂の声」

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(今日の一枚)  我が家に咲く花 三つ葉ツツジ
        Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS

 

品格すら感じさせる静寂の奥深さの世界
オーディオ・ファンも注目の音質と音場

<Jazz>

Georges Paczynski Trio 「LES VOIX DU SILENCE 静寂の声」
Art & Spectals / Import / ASCD 191101 / 2019

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Georges Paczynski (drums,piano #13)
Ètienne Guéreau(piano)
Marc Buronfosse (bass)

Recorded on June 7th, 2019
All compositions by Georges Paczynski

Georgesphoto  昨年末リリースのジョルジュ・パッチンスキー・トリオ、2 年半ぶりの新作。過去5作は私にとっては貴重なアルバムとして存在している。そして既にここで何度か取り上げてきている(カテゴリー: ジョルジュ・パッチンスキー)。

『8 years old』(ATEIER SAWANO 005/2000)
『GENERATIONS』 (ASCD060401/2006)
『LE CARNET INACHEVE』 (ASCD130701/2013)
『LE BUT, C'EST LE CHEMIN』(ASCD140901/2015)
『LE VOYAGEUR BANS BAGEGE』 (ASCD161101/2017)

 そして、リーダーのパッチンスキーは、“この作品でラスト”と語る注目アルバム。アルバム・ジャケも上のように、なんと日本語の「静寂の声」という文字がアートとなっているところも注目したい。
 既に「ジャズ批評」誌による"2019年ジャズ・オーディオ・ディスク大賞"を獲得している。この大賞はかなり音質、つまり録音技術にもウェイトが高いので、と言うことは、以前からのヴァンサン・ブルレVincent Bruleyの相変わらずの録音、ミックスの技術も評価の対象だ。

 このドラマーであるジョルジュ・パッチンスー率いるトリオだが、ちょっと気になるのは、今回はベースは変わらずのMarc Buronfosseだが、ピアノがStephane TsapisからÈtienne Guéreau(下右)に変わっている。

(Tracklist)

1. Le Chemin (6:07)
2. L'ombre (5:14)
3. L'attente (5:24)
4. L'inquietude (1:34)
5. L'apaisement (1:49)
6. Le Regard (4:25)
7. Le Sourire (2:41)
8. Le Geste (5:09)
9. Le Toucher (3:46)
10. L'eclair (6:07)
11. L'ineffable (2:04)
12. Le Silence (5:42)
13. Madame d… (4:00)
14. L'eternite (3:07)

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 今回も前作同様、長曲は無く比較的短曲がパッチンスキーのオリジナル曲14曲で埋め尽くされている。ピアニストの変更は大きな印象に無く、むしろそのピアノの美しさは粒立ちの良い音と繊細さに流れやや陰影すら感ずるところにあって素晴らしい。
 冒頭M1." Le Chemin"M2."L'ombre" から、品格のあるそして美しさのピアノの音、繊細にしてスティックによって演じられるシンバルが適度の音量で響き非常に気持ちが良い空間の世界を展開する。
 Paczynski3tyrw_20200504134801 フランス人の洒落た世界が感じられる独特なセンスある思索的演奏が続くが、M8."Le Geste"では見事なスウィンギーに展開し、M9." Le Toucher "になると静かに落ち着いた中にピアノの調べが訴えてくる。
 M10."L'eclair "では、終盤にドラムスによる盛り上がりが見事である。
 M12."Le Silence"の静の世界ではパッチンスキーのブラッシ奏法、繊細なスネアの響きと聴くに事欠かない。

  ユーロ・ジャズの陰影と哲学的センスにビル・エヴァンスの美しさとテンション感の高さが融合した感のあるパッチンスキーがリーダーとなるピアノ・トリオの一連の世界観はなかなか味な世界である。
 そしてそこにヴァンサン・ブルレの録音・ミックス技術が奏功して名盤を作り上げた。これが最後の作品とパッチンスキーは表明しているが、本当とすると寂しい事だ。

(評価)
◇ 曲・演奏 ★★★★★☆   90/100
◇ 録音   ★★★★★☆       95/100

(視聴)

 

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2020年5月 2日 (土)

[記録に残したいアルバム] ギヨーム・ポンスレGuillaume Poncelet 「QUATRE VINGT HUIT」

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(今日の一枚)
我が家に咲く花 「クレハモクレン」 Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS, PL

 

メロディーの美しさにどこか哀愁のあるピアノ・ソロに浸れる

<Jazz>

Guillaume Poncelet 「QUATRE VINGT HUIT」
BLEND / FRANCE / BLEND2017 / 2018

Quatrevingthuitw

Composition, Piano, Trumpet, Additional Programming by  Guillaume Poncelet

Artistimgzazw  きちんと記録しておきたいアルバムというのがある。これはフランスのシンガー・ソングライターのZAZ(本名イザベル・ジェフロワIsabelle Geffroy →)のアルバム「EFFET MIROIR」(WPCR-18126/2018)で、彼女がオリジナル曲とは別に最後に取り入れた曲"LAPONIEラップランド"と言うのがあるが、それが何ともいえない美しさと哀愁とに満ちた曲で気になった。彼女が北の国に旅立つ心を"過去の息を吐き出し、新たに息を吸い込む"と語る曲で印象的。
 そして調べたところ、このギョーム・ポンスレGuillaume Poncelet (フランス・グルノーブル1978年生れ)というフランスの若手ピアニストであり作曲家の曲であることが解り、その彼のアルバムを昨年取り寄せてみたのである。何回か聴いているアルバムで記録しておきたいとここに取り上げた次第。
 そしてその目当ての曲は彼のこのアルバムでは冒頭の"Morning Roots"という曲で、ここで彼のソロピアノの演奏が聴けるのである。

 

(Tracklist)

1.Morning Roots
2.Duty
3.Reverse
4.Gus Song
5.Homo Erectus
6.Le Cahier
7.Apres
8.Au Bout Du Souffle
9.Derriere La Porte
10.Teano
11.L'Ennui
12.Iceberg
13.Othello
14.The Two Of Me
- - - - - - - - - -
15.Bonus - Last Breath
16.Bonus - Mon Terroir

Guillaumeponcelet

 私が目当てにしていた曲"Morning Roots"は、このアルバムのオープニング曲で、彼のソロピアノで演奏される。非常に美しく繊細な流れの旋律で、どこか哀愁のあるところが印象的で、心に響く曲である。そして全14曲、この線を乱さず彼により作曲された曲が続く。彼はピアニストとして私は認識していたのだが、実はトランペット奏者でもあり。M10."Teano"などには静かなトランペットの調べが入る。
 又、M11."L'Ennui "では、更にストリングス・カルテットがバックに流れる。しかしそうした変化を盛り込んでいるのだが、全く彼のどちらかというと内向的なピアノ曲が深く沈みそしてまた静かに心安まる世界を演ずるのである。 
 このアルバムのタイトルは『88』であり、彼の話によるとその数はアップライトピアノのキーの数なんだそうだ。そしてピアノはそれだけでオーケストラだといい、彼の言葉によると"ピアノのおかげで多くの事柄を想像することが出来、88のキーは、色、調和、多くの雰囲気、多くの可能性を演ずる"と言っている。
 フランスのジャズ音楽界でも特異であると思うが、貴重な存在であると思っている。

 彼は、1978年フランスのグルノーブルで作家・劇作家の父親と介護者の母親に生まれました。 8歳にして彼はピアノを弾くことを学びながら、9年間グルノーブル地域音楽院に在籍し学ぶ。 その後4年間、ピエール・ドレヴェ率いるシャンベリーにある国立音楽学校(ENM)のジャズ科に参加し、トランペット、ジャズのハーモニー、アレンジメントのテクニックを学んだ。
 21歳のとき、彼はパリの国立音楽音楽ダンス学校に入学し、noJazzのバンドに参加して北米でのツアーに出た。ちょっと信じられない世界であるが、noJazzとともに、彼はStevie WonderやMaurice White( Earth、Wind&Fire )などの有名なアーティストとコラボレーションして来ている。
 こんな経歴の持ち主であるが、長編映画「Razzia」のオリジナル・サウンドトラックも担当したりしてきている

(視聴)
"Morning Roots"

*
ZAZ / "Laponie"

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