ミシェル・レイスのソロ・ピアノ Michel Reis 「SHORT STORIES」
(今日の一枚) 「我が家の庭に咲く花 - オオムラツツジ」
Sony α7RⅣ, FE4/24-105 G OSS, PL
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クラシック色のあるオリジナル曲によるジャズ・ソロ・ピアノ作品集
<Jazz>
Michel Reis 「SHORT STORIES」
CAM Jazz / IMPORT / CAMJ7953 / 2019
Michel Reis : piano
Recording and mixed in Cavalicco(UD) in Feb.2019 at Artesuono Recording Studio
Recrding and mixing engineer Stefano Amerio
ジャズ界もヨーロッパにおいては若きピアニストが続々誕生している。このミシェル・レイスもその一人だ。彼は美しい小国ルクセンブルグの出身で、日本でのジャパン・カルテット形成が、やはり日本に浸透するに至る大きな一つの道であったろうと思う。
このアルバムは昨年Cam Jazzからリリースされた彼のソロ・ピアノ集である。基本的に彼のオリジナル曲による構成でその意欲が伝わってくるのだが、録音はステファノ・アメリオとくるからその出来映えに期待も大きい。
日本で結成のカルテット「Michel Reis Japan Quartet」では、YouTube等で見る限りスリリングな演奏をも披露していたのだが、ソロとなると彼の重要な一面が出てくる。それは2017年に水戸で録音したアルバム『MITO』(CSJ0006)に聴けるのだが、これは彼の初の即興曲・ソロ・ピアノ・アルバムであり、内省的な中に美しさが見える。従って当然、今回のこのアルバムにも期待が持てるのである。
(Tracklist)
01. Sunae II
02. From The Eyes Of Old
03. How It All Began (The Story Of Mr. Potes)
04. Monologue
05. Could I See You Again
06. Gratitude
07. Road To Dilijan
08. Gravity And Lightness
09. Tales Of Oleander
10. Eugene And Valentina Main Theme
11. Awakening
12. Eleni (For Eleni Karaindrou)
13. Bells
14. Goodnight
全曲、彼のオリジナル曲である。14曲と多い収録だが、2分少々の曲から始まり短編が多く、最も長いのがM5."Could I See You Again"の6分58秒だ。聴いていると短い曲が多いという印象。
ジャズ・ピアニストという世界にて活躍しているが、彼は幼少からクラシック・ピアノを学び、なんと14歳でプロ活動を開始。バークリー音楽大学、ニューイングランド・コンサヴァトリー・オブ・ミュージックを経て来ているのだという。そして2005年に第1回モスクワ・ジャズ・パフォーマー・コンペティションの最終選考に残って注目を集め、同年『A Young Mind』でアルバム・デビュー。2006年にモントルー・ジャズ・ソロ・ピアノ・コンペティションで2位。そして自国ルクセンブルクでは大きな評価を得ている。2014年1月、ピアノ・トリオ・アルバム『レイス|デムス|ウィルトゲン』を発表。
やはり印象はまずクラシック・タッチの美しい曲集という感じだ。聴いていると確かに詩情が豊かな世界に浸かっていくことになる。ピアノ・ソロであるせいか冒頭のM1." Sunae II" から静かな余韻のある演奏で、どこか懐かしい過去の世界に想いを馳せる気分に導かれる。
M2."From The Eyes Of Old " は、やや早い展開の曲であるが、やはりどこかクラシック的なところにあって、スリリングという印象は全くない。
M4." Monologue" は、高音が透き通っていて、はっとして聴き入る美しさが秀でている。曲もジャズ的即興の流れがあって、こうしたところはやはりヨーロッパ系のメロディーとハーモニーの美しさが引き立ったジャズ・ピアノ世界だ。実は私としてはその他の殆どの曲のクラシックの延長という感じよりこの線に期待したいところだ。
しかし、M7."Road To Dilijan"、M9."Tales Of Oleander" にみるピアノの響きとメロディはやっぱり非凡な美しさを持っていて楽しめる。そしてジャズ的面白さはM11."Awakening" にも見いだすことも出来た。
とにかく新進気鋭のピアニストとして期待は大きいが、私の愛するノルウェーのトルド・グスタフセンのような、哲学的深遠さという処においては、今一歩届いてはいない。日本における彼のカルテット「Michel Reis Japan Quartet」は、注目の須川崇志 (bass)、石若駿 (drums)、西口明宏 (sax)という構成(↓)で、そこには良い刺激があってのことか、ややアヴァンギャルドなスリリングな展開も見せていて、そんな世界との関係も含めてこれからどのように発展していくかは、確かに楽しみな存在である。
参考までの話だが、2018年の彼の日本の水戸のコルテスで録音されたソロでの即興ピアノ曲集『MITO』もなかなかのもの、内省的美の世界が素晴らしい。彼はこのアルバムを第2の故郷のような水戸の街に捧げますと言うぐらいこの地での活動に感動していたようである。そして内容的には、むしろジャズ的に見るとこちらの方が、楽しめるところもあるので紹介しておく。
(参考)
『MITO - Solo Piano Improvisations』
(Cortez Sound/ JPN / CSJ-0006 / 2018)
(Tracklist)
1. ライジング 10'50
2. スナエ 3'20
3. フォレスト・エッジ 6'35
4. ロスト・テンプル 6'51
5. ルッキング・グラス 4'19
6. エコーズ 2'54
7. フォーク・ソング 5'39
8. ラビリンス 2'31
9. リポーズ 3'12
Recorded 21st July 2017
Mixed Ken Tadokoro
Masterd Ken Tadokoro
Recorded at Jazz Room Cortez
(評価)
□ 曲・演奏 85/100
□ 録音 85/100
(視聴)
"Sunae Ⅱ"
"How it all began"
,
"Looking Glass" from 「MITO」
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コメント
風呂井戸さん、こんばんは。
ミシェル・レイス、この人も初耳ですね。
一体どこから仕入れて来るんでしょうか? (笑)
行ったことないけど、水戸のコルテス共々興味津々です。
ではでは。
投稿: nanmo2 | 2020年5月29日 (金) 18時53分
nanmo2さん
こんばんわ、コメントどうも有り難うございます。
しかし、今やユーロ系はクラシックを学びそしてジャズで開花する若きピアニストが多いですね。
歴史的なアメリカン・ジャズの流れとやはり時代は変わってきていますね。
私自身の関心は、ミュージックとして追求してゆく時代としてのジャズ世界に惹かれるモノが有ります。
蛇の道は蛇で・・・いろいろと出てくるので嬉しい限りです。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2020年5月29日 (金) 22時42分